ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス(漫画版)

登録日:2018/9/19 (水) 21:15:21
更新日:2023/06/28 Wed 17:45:10
所要時間:約 7 分で読めます




2006年末に任天堂から発売されたゲーム『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』。
本項はその公式コミカライズ作品について解説する。
作者はこれまでも多数のゼルダ漫画を手がけてきた姫川明。
2016年の2月から2022年の1月まで小学館のマンガアプリ「マンガワン」にて連載されていた。

じつはこの漫画、本来はゲーム発売すぐ後の2007年4月より連載が予定されていた。掲載予定誌はこれまでのゼルダ漫画と同じ小学館の学年誌*1
しかし当のゲームがレーティング審査でCERO Bの指定を受けたことで、小学生向け雑誌で12歳以上対象のゲームを扱うのはまずいとされ、
学年誌版『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』はその存在が発表されることもなく連載取り消しの憂き目に遭ってしまった。
その後さまざまな紆余曲折を経て、ついに再始動と相成ったのが本作というわけである。
ゲーム発売より9年以上経ってからの漫画化はゼルダシリーズファン&姫川ファンを驚かせるとともに歓喜させた。
ちなみに、連載開始とほぼ同時期にゲームのリマスター版が発売されているが、それに合わせたわけではないとのこと。

本作の特徴として、複数巻をまたぐ長編という点が挙げられる。
そんなの普通のことではないかと思われるかもしれないが、これまでのゼルダ漫画は掲載が学年誌という都合上か、単巻、長くて上下巻という形で物語を短く収めざるをえなかった事情がある。
しかし本作ではゲームのメインストーリーがほぼ省略なしで描かれており*2、さらにゲームで語られなかった部分の補完が随所で行なわれている。
特にリンクはその生い立ちや性格、心情などが大幅に肉づけされた。物語の中心軸がミドナにあったゲームに比して、漫画版は「リンクの物語」としての色合いが強い。
また、肉体の切断描写など学年誌ではまずできないハードな描写も描かれている。
そのためすでにストーリーを把握している既プレイヤーが読んでも楽しめるコミカライズに仕上がっている。

登場人物

この項ではゲームにない漫画版独自の設定、展開を中心に記述する。

メインキャラクター
リンク
トアル村に住む牧童。
村の生まれではなく1年半前にどこかからやってきて村に住み着いた。
村人たちに頼りにされ好かれる一方で、自身の過去をかたくなに話そうとしない、「暗闇」や「剣」を忌避するなど謎めいたところがある。
ハイラル城に剣を届ける役目を頼まれた時は、これを拒否するというゲームと明確に異なる行動をとった。

+ リンクの過去
リンクは砂漠に近い国境沿いの町で生まれ、国境警備兵になることを目指して剣の修練を積む少年だった。
2年前のある日、リンクは友人たちとともに秘剣「ガウロフの剣」がある堂に忍びこむ。
ずっと昔から岩に突き刺さったまま誰にも抜くことができないと言われていたその剣を、確信があるかのようにいとも簡単に引き抜くリンク。
しかしその瞬間突如として大量の闇が噴き出し周囲のすべてを吸いこんでいく。
闇の中に飲まれ、長い時間もがき続け、ようやく脱出したリンクが見たものはしかし、家も住民もなにかもが消え失せ荒野と化した町の姿だった。
惨事を起こした原因が自分だと気づき恐ろしくなったリンクはその場から逃走。そして半年の放浪ののちトアル村にたどりつく。
その後は過去から目をそらすようにして出自を隠し、村になじもうとしながら、ひとり闇にまつわる魔術書を探したり、闇に追いかけられる夢にうなされる日々を送っていた。
ハイラル城行きを断ったのも過去の自分を知る人間と会うのではないかと恐れたためであった。

魔物たちに村が襲撃され、親しいイリアたちがさらわれたと聞いて過去のトラウマがよみがえり動揺。
しかしモイに自身の過去と心情を打ち明け、諭されたことで再び剣を手にすることを決意する。
その後出会ったミドナともに影の結晶石を探す旅に身を投じ、ときに苦悩しながらも心身ともに勇者として成長していく。

ミドナ
影の世界の姫。
ゲームでは最後の最後に見ることのできた彼女の真の姿が、1話冒頭でいきなり披露された。
影の世界の存在やミドナが姫であること、ザントのクーデターなどもまとめて語られ、ミドナ周りのおおよその事情が読者に明らかになったところから物語が始まる。
ゲームとの相違点として、姫時代のミドナのそばにはつねに金色の狼が付き添っている。
また影の世界はガノンドロフ以外にもたびたび罪人が光の世界から捨てられており、それによる汚染の処理に苦慮していた。そのため影の世界の住民から見た光の世界の人間への印象はすこぶる悪い。

ゼルダ
ハイラル王国の姫君。
じつは幼い頃にミドナと何度か逢い、会話を交わしていた。
回想ではゼルダとミドナ、二人の少女時代の姿を見ることができる。

ザント
ミドナを追放し影の世界を支配する僭王。
力を得る以前から光の世界への侵攻を訴えており、過激な思想は昔からだったようだ。

エポナ
リンクの愛馬。本作では軍馬の子孫という設定になっている。


トアル村
イリア
村長の娘。
キングブルブリンに囚われている時の様子やハイラル城下町の酒場で働くようになった経緯など、登場シーンが増えている。
記憶をなくして城下町にたどりついた後は酒場に保護され「リーザ」として働き、面倒を見てくれたシャッドと親しくなる。
その後治療のためにカカリコ村に向かう途中で魔物に襲われたところをリンクに助けられ、ゲームより早い時点で記憶を取り戻した。
地味目の顔立ちだった原作と異なり、正統派の美少女なキャラデザインになっている。

モイ
村の剣士。
リンクの過去を聞いてもなお彼を村の仲間として受けいれ、剣を再びとる勇気を与えた。
のちにレジスタンスの一員として城下町で再会。

タロ/マロ/コリン/ベス
トアル村の子どもたち。
マロは独力でマロマートを立ち上げ高級店のオーナーになり、リンクに盾と旅装一式を格安で提供した。カッチャイナーは無かった。


カカリコ村&デスマウンテン
レナード
カカリコ村の牧師兼医者。
キングブルブリンとの戦いでは弓矢で取り巻きの雑魚を倒しリンクを援護する勇ましい姿を見せた。

ルダ
レナードの娘。
デスマウンテン行ではゴロン族の友人に会うためリンクについていった。
影状態のミドナを見ることができたり精霊のお告げを聞いたりするなど霊感めいたものを持っている。

長老たち
デスマウンテンを治めるゴロン族の長老たち。
ハイリア人との取り決めにより鉱山での採掘を許していた。しかし彼らは禁止されている領域まで掘り出し、ゴロン族が大事にしている岩を傷つけてしまう。
その場所でゴロン族の1人が化物に変わった事件も重なり、ハイリア人への信用をなくし山を閉ざす。
相撲勝負で(ズルして)勝ったリンクを信じ、同胞の救出を依頼した。


ゾーラの里
ラルス
ゾーラ族の王子。ハイラル平原で魔物に襲われていたところをウルフリンクに助けられ、城下町まで運ばれる。

ルテラ
ソーラの女王で、ラルスの母。故人。
幽霊として現れてリンクとラルスを導く。


ハイラル城下町
テルマ
酒場の女店主。
懐の深さは漫画でも変わらず。アラフォー。

シャッド
レジスタンスの一員。天空人のことを研究している学者。
何冊も本を著しているがぜんぜん売れないらしい。
ナンパ気質で、記憶を失くしたイリアに対して親身に接する。

ラフレル
レジスタンスの一員。ゼルダ姫の元教育係だった老人。
王家にかかわるごく一部の人間しか知らないハイラルの闇の歴史を語る。
ゼルダの回想の中では教育係時代の彼も登場する。

アッシュ
レジスタンスの一員。彫りの深い顔立ちの女性騎士。
騎士団長に勝ったことがある腕利き。

アゲハ
虫が大好きな少女。ちょい役として出演。
町中にひそむウルフリンクを見て悲鳴をあげた。
なんでも読者からの出演要望がとても多かったとか。



金色の狼
影の世界でミドナのそばにいた狼。
クーデター時にザントによって殺されたと思われたが、リンクたちの前に姿を現す。
彼を見たミドナは涙を流して喜ぶなど、相当に親しかったようだ。

骸骨の戦士
金色の狼に導かれた先で現れた謎の存在。リンクに剣の稽古をつける。
かつてリンクがガウロフの剣を抜いた時にも闇の中から現れている。

+ その正体
金色の狼の真の姿であり、時の勇者とも呼ばれていた男。つまりかつて時を超えながらハイラルを救った時のオカリナのリンク本人である。
死後亡霊になったものの、ゼルダ姫やハイラルを守ろうとする意志は当時から変わっておらず、今作のリンクを厳しくも優しく導いていく。


スタルキッド
森の聖域を守る魔物。人形を操って攻撃を仕掛ける。
しかしリンクの手の甲に浮かぶトライフォースの印に気づくと、「帰ッテキタノカ」「ズット待ッテイタ」と懐かしむように語り、道を開けた。


リンクが戦った敵
キングブルブリン
ボコブリンたちの長。漫画版ではよくしゃべる。
トアル村襲撃の際にはリンクの左腕を切断し死の淵に追いこんだ。
影の王からの命令に従う一方で、さらってきたイリアを自分のものにすると言い同時に「影の王女にしてやる」(=自分が影の王になる)と言い放つなど、彼なりの野心や執着がうかがえる。

ウーク
フィローネの森のボス猿。長年にわたって群れを統率してきたが、老いによる衰えを感じていたところをつけこまれて影の蟲に操られる。
火炎を起こすブーメランを操ってウルフリンクを一度は破るもセンスの力で反撃されて敗走。
呼び出したババラントも倒され、最後の蟲を除かれたことで正気に戻った。

ババラント
ウークの呼びかけによって現れた植物の化物。
リンクを飲みこんで毒ガスで殺そうとしながら「影の王」の存在について語る。
しかし弱点の目がむきだしだったために剣で斬られ、あっさりやられた。

マグドフレイモス
ゴロン鉱山に封じられていた化物。ゴロン族のダルブが影の結晶石によって変化した姿。後に族長のダルボスも取り込まれてしまっていた。
ダルブの友人だったルダの必死の呼びかけにも応じず暴れ出し、リンクに額を射抜かれたことで元の姿に戻った。

影の巨大蟲
ハイリア湖でリンクたちを襲撃した巨大な蟲。
ミドナによるキレ気味のパンチで体を貫かれて霧散した。

オクタイール
湖底の神殿にいた巨大魚。
水中戦で苦しめるが、ルテラの助力を得たリンクに弱点をつかれて倒される。

ゴベラの剣(ベリアント)
ハーラ・ジガント
砂漠の処刑場で戦った亡霊たち。
ハイラル王国への怨みを叫びながら襲いかかる。しかしマスターソードの主になったリンクの敵ではなかった。


余談

連載されているマンガワンでは、各話ごとに「ちょい足し」としてちょっとしたイラストなどを見ることができる。


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最終更新:2023年06月28日 17:45

*1 小学◯年生と題された学年別の雑誌のこと。現在はほとんどが休・廃刊

*2 ダンジョン攻略は省かれているが