ルグランはこれを1つの文字を別の1つの文字へと変換する「単一換字式暗号」と予想。
これは暗号の中でもかなり単純な部類に属するため、解くのはさほど難しくはないはず。
これを解くために必要なのはまず「何の言語か」。これに関しては「キッド」は基本的に英語圏でしか通用しないため、英語と仮定することが出来る。
続いて行ったのが「頻度分析」。文字の中で出ている回数がいくつなのかを調査すると…。
- 8 … 33
- ; … 26
- 4 … 19
- ‡ , ) … 16
- * … 13
- 5 … 12
- 6 … 11
- † , 1 … 8
- 0 … 6
- 9 , 2 … 5
- : , 3 … 4
- ? … 3
- ¶ … 2
- ― , . … 1
英文の単語において洗われるアルファベットの頻度は多い順に e , a , o , i , d , h , n , r , s , t , u , y , c , f , g , l , m , w , b , k , p , q , x , z となっている。さらに一番多いeは単語内で二度重なる事が多く、実際に8は2つ連なっている箇所が多いという理由もある為、8をeであると仮定する。この時……
53‡‡†305))6*;4826)4‡.)4‡);806*;48†8
¶60))85;1‡(;:‡*8†83(88)5*†;46(;88*9
6*?;8)*‡(;485);5*†2:*‡(;4956*2(5*—4)8
¶8*;4069285);)6†8)4‡‡;1(‡9;48081;8:8‡
1;48†85;4)485†528806*81(‡9;48;(88;4
(‡?34;48)4‡;161;:188;‡?;
という風に文中には「;48」と言う言葉の羅列が合計で7回出てくる。これは定冠詞の「the」と仮定すると自然である。
これによって「; … t , 4 … h」と出来る。
この時点で暗号は以下の通り。
53‡‡†305))6*the26)h‡.)h‡)te06*the†e
¶60))e5t1‡(t:‡*e†e3(ee)5*†th6(tee*9
6*?te)*‡(the5)t5*†2:*‡(th956*2(5*—h)e
¶e*th0692e5)t)6†e)h‡‡t1(‡9the0e1te:e‡
1the†e5th)he5†52ee06*e1(‡9thet(eeth
(‡?3hthe)h‡t161t:1eet‡?t
この時点で5行目最後の「t(eeth」の部分に注目するとこの部分には英単語として当てはまるアルファベットはない事から単語として「t(ee」と言う形にできる。この条件に合うのはtreeのみ。これによって「( … r」を得る。これによって直後に現れる「th(‡?3h = thr‡?3h」は同様のアルファベットのあてはめによってthroughを得られる。
以上によって「‡ … o , ? … u , 3 … g」となる。
この時点で暗号は以下の通り。
5goo†g05))6*the26)ho.)ho)te06*the†e
¶60))e5t1ort:o*e†egree)5*†th6rtee*9
6*ute)*orthe5)t5*†2:*orth956*2r5*—h)e
¶e*th0692e5)t)6†e)hoot1ro9the0e1te:eo
1the†e5th)he5†52ee06*e1ro9thetreeth
roughthe)hot161t:1eetout
2行目中盤に現れる「†egree」はすぐにdegreeと分かるので「† … d」。
2行目終盤の「th6rtee*」も同様に「thirteen」となり、「6 … i , * … n」。
この様に芋づる式に暗号内の文字はアルファベットを求められる。
これらも当てはめると……。
5goodg05))inthe2i)ho.)ho)te0inthede
¶i0))e5t1ort:onedegree)5ndthirteen9
inute)northe5)t5nd2:north95in2r5n—h)e
¶enth0i92e5)t)ide)hoot1ro9the0e1te:eo
1thede5th)he5d52ee0ine1ro9thetreeth
roughthe)hot1i1t:1eetout
この分の最初を見ると、「good」と言う文字が浮かび上がってくるので、最初の文字は不定冠詞の「a」になる。これで「5 … a」も分かる。
こうして19個の暗号文字の内過半数の11個の正体が得られた。作中ではカットされているが以後も文中に浮かび上がる単語で簡単に続けていく以下のようにできる。
)hot → shotより、「) … s」。
9inutes → minutesより、「9 … m」。
hoste0 → hostelより、「0 … l」。
lim2 → limbより、「2 … b」。
bran—h → branchより、「— … c」。
se¶enth → seventhより、「¶ … v」。
1rom → fromより、「1 … f」。
bisho.s → bishopsより、「. … p」。
e:e → eyeより、「: … y」。
これらを最終的にまとめると以下の通り。
agoodglassinthebishopshostelinthede
vilsseatfortyonedegreesandthirteenm
inutesnortheastandbynorthmainbranchse
venthlimbeastsideshootfromthelefteyeo
fthedeathsheadabeelinefromthetreeth
roughtheshotfiftyfeetout
適切な区切りやアポストロフィの付加、そして句読の追加をすることで以下の文が出来た。
A good glass in the bishop`s hostel in the devil`s seat ―
― forty-one degrees and thirteen minutes ―
― northeast and by north ―
― main branch seventh limb east side ―
― shoot from the left eye of the death`s head
a bee-line from the tree through the shot fifty feet out.
(僧正の旅籠にある悪魔の腰掛には上等のガラスがある。
41度13分、北よりの北東にある東側の主枝、
七番目の大枝―髑髏の左目から撃て。
その後は木から狙撃地点を経て
50フィート(15メートル強)向こうまで直進せよ。)
こうして文章は意味あるものへと変化したわけだがその意味は依然難解なままである。
少なくとも後半は実際に見つけた髑髏の左眼からのアクションをそのまま書いているだけだが、前半は意味のよく分からない比喩表現が用いられているからだ。
ルグランは「上等のガラス」が望遠鏡である事は事前に予想していた為、次の比喩表現である「僧正の旅籠」にあたる建造物を古表現のhostelをhotelに言い換えた上で探し始めた。島内に知るものがいなかった為、別の手を探そうとしたが、ここで島の北方にある「ベソップ」という字面の似た家があるのを思い出して、調査したところ「ベソップの城」と呼ばれる高い岩がある事を知る。
残る「悪魔の腰掛」だが、これは岩の周辺を調べる内に岩の中で一部が高くなり、中央が椅子の様にくぼんでいる事から場所を見つけられた。
そこからは文章通りに調べることであのユリノキの髑髏の発見、そして作中で行われた掘削へと至った。
なぜ目印に髑髏を選んだのかについては「長年経っても白い色を保つので目印にしやすい」からではないかとルグランは推測している。(語り手は「海賊の旗」から想像している。)
一度はジュピターのミスで骨折り損になりかけたが最終的にキッドの財宝へと彼らは到達することが出来たのだった。
(ちなみに「暗号文通りに弾丸を落とさなかったのは何故か?」や「黄金虫を垂らさなくても、単に真下に来ればいいのでは?」と思う人もいるかもしれないが、これは語り手とジュピターが自分をキ○ガイ扱いしたことに対するちょっとした報復として彼らを煙に巻く為にしていた。)