邦題(音楽)

登録日:2018/9/17(月) 23:13:48
更新日:2024/03/18 Mon 20:58:37
所要時間:約 42 分で読めます




※当項目では音楽の邦題を扱っています。
※映画の邦題についてはコチラをご覧下さい。


概要

映画・小説だけでなく、分かりやすさ・キャッチーさ等の観点から、様々な楽曲・アルバムにも邦題が付けられている。
近年では、下手に曲名やアルバム名を変えない方が配信や著作権登録(管理)の際に手間が起こらないというメリットもあり、邦題が無い場合も多く、せいぜい原題をそのままカタカナにしただけのシンプルなタイトルが多くなっている。
しかし、1980年代頃までは積極的に用いられており、アルバムだけでなく収録曲の全てに邦題が付けられている事も珍しくなかった。

傾向としては古いアーティストほど邦題が付けられている場合が多く、ジャンルもハードロック/ヘヴィメタルプログレッシブ・ロックなどに多い。
逆に比較的最近のアーティストやR&B・ヒップホップ系のアーティストの作品には少ない傾向がある。
例外としては、所謂パリピ受けを狙った曲や、コメディ・下ネタ的側面の濃いアーティスト、甘いルックスや歌詞をウリにしているアーティストなどの作品には邦題が付けられる事もある。

当然それらの中には意訳・直訳・超訳を問わず多種多様なものが存在しているため、本項目ではそんな魅力的な邦題たちを、大雑把なパターン別に分類し紹介していく。


※なお、原題をカタカナに変換しただけのタイトルは除く
※曲のタイトルの場合は、アルバムの場合はと表記する


分類


男は黙って【直訳系】


一番シンプルなパターン。原題をそのまま直訳するだけの簡単なお仕事
ジューダス・プリースト殺人機械(原題:Killing Machine)」のように、ワザワザ邦訳するほどか?と思うような邦題もあるが。

イエス「フラジール」

と書くか

イエス「こわれもの」

と書くかでニュアンスが随分変わってしまうので、直訳だからと言って別に手を抜いてる訳ではない。


☆例
  • ザ・クラッシュ「白い暴動(原題:White Riot)」
  • アイアン・メイデン「鋼鉄の処女(原題:Iron Maiden)」

  • クイーン「谷間のゆり(原題:Lily of the Valley)」
原題をそのまま直訳しただけのタイトルだが、英語で「Lily of the Valley」はスズランの事を指すのでユリの曲では無いし、百合とか谷間に反応してはいけない。
エンジェルリリィとも無関係…のはず。

「アァア~、アァ♪」という特徴的なイントロは、プロレスラーのキングコング・ザ・ブルーザー・ブロディの入場テーマだったためかよく各種バラエティ番組などで不穏な雰囲気を演出する際に多用されるため、洋楽に詳しくない人でも聞いたことがあるであろう曲の一つ。

  • チャールズ・ミンガス「直立猿人(原題:Pithecanthropus Erectus)」
奇才ジャズ・ベーシストの初期の代表作。原題は「ジャワ原人」の意で、邦題の直立猿人は当時のジャワ原人の呼称の一つだが、今はほぼ死語となっているようで、本作で初めてその呼び名を知ったという方も多いはず。
人類の進化の過程をジャズの演奏で表現した意欲作で、ブルースを基調とした厳かなテーマの後に、各種管楽器がサルの叫び声のようなけたたましいアドリブを三度に渡って披露するのが最大の特徴。
50年代ジャズ随一の異色作だが、邦題のおかげで聴覚だけでなく視覚的にも目を引く一作となっている。

  • アンダーワールド「2番目のタフガキ(原題:Second Toughest in the Infants)」
ダンス・ミュージック業界からの刺客。
なお、2番目と言いつつ実際には4作目。テクノ・ハウス路線に舵を切った後の彼らのアルバムとしては2作目ではあるが。

「Toughest」をタフと縮小するのはまだ分かるが、幼子を意味する「Infant」は何故ガキになってしまったのか。命名者は子供嫌いか何かか?
結果として「タフガキ」なる謎のパワーワードが誕生することとなってしまった。
彼らのアルバムでこの様な邦題が付いているのは本作だけなので、ディスコグラフィ的に妙な存在感を放っている。

さすがにこれはおかしいと思われたか、2001年頃に再販された際には番目のタフガキ」と題名が変更された。おい、そこじゃないだろ。

余談だが、日本のアイドルグループ・私立恵比寿中学は「枚目のタフガキ」という、本作の名の一部を借りた楽曲を発表している。
もし本作が上のタイトルで出ていなかったら、エビ中の方も全く違うタイトルに変わっていたかも知れない。

  • スレイヤー「血塗ラレタ世界(原題:World Painted Blood)」
スラッシュメタルの絶対王者スレイヤーの、意外と貴重な邦題付きアルバム。
「られた」ではなく「ラレタ」なトコロがいい感じにダサかっこよさを演出している。
この邦題を見てメタラー及び固定ファン達は「まだ血の雨を降らせ足りないのか」と歓喜したとかしなかったとか。

  • ジョン・レノン「冷たい七面鳥(原題:Cold Turkey)」
ジョン・レノンがビートルズを離れて製作した楽曲。
タイトルは直訳すると邦題の通りだが、ここではヘロインなどの薬物の禁断症状をいうスラングである。
歌詞の内容も薬物の禁断症状による苦痛を歌ったものとなっており、アウトロでは激しく歪んだギターリフに乗せて生々しいうめき声がひたすら続く。
薬物の禁断症状の警告として歌ったというが、当時単なるドラッグ・ソングと誤解され放送禁止になったという。

  • T・レックス「ズィンク・アロイと朝焼けの仮面ライダー(原題:Zinc Alloy and the Hidden Riders of Tomorrow)」
んなバカな、と思われるだろうがまさかのほぼ直訳。「Zinc Arroy」は亜鉛合金の意味だがそのままカタカナにされている。T・レックスのメンバーが来日時に見た仮面ライダーにインスパイアされた、との説もあるが事実関係は不明。
なお収録曲の邦題は「悪魔のしもべはのろまが嫌い(原題:Sound Pit)」「いやな液体(原題:Liquid Gang)」「僕たちの復讐者(ひどいもの)(原題:The Avengers (Superbad))」など結構トバしたものも散見される。


センスが問われる【意訳系】


一番多いパターン。内容を噛み砕いてより分かりやすくしたり、直訳では味気ないタイトルをより魅力的に作り変える。
訳者のセンスが最も問われるパターンだけに良し悪しの差が大きい。


☆例
  • ビートルズ「ノルウェイの森(原題:Norwegian Wood)」
もはや世界中に知らない人がいないバンドであるビートルズ。村上春樹の小説の元ネタとしてもおなじみのこの曲も、結構意訳された邦題となっている。
日本語でも使う言葉だが、「ウッド(Wood)」は「木材」とかを表す単語であって、「森」と表現するなら「forest」あたりが正確。
実際、歌詞も「ノルウェイ製の木材で作られた家で女性と過ごしたひと時」を歌っている。
しかしながら、単に「木材」と直訳しなかったからこそ、なんだか味わいのあるタイトルになっているのも事実。
「単に直訳したりしても曲の良さが伝わらない」という点は、ある意味本項目で色々な曲を紹介する意義を感じさせる例だと言えまいか。

ちなみに、この曲が入っている『Rubber Soul』は、ビートルズが「世界の音楽要素も取り入れて発展する直前の分岐点」と言われるアルバムだが、邦題の付け方という意味でも分岐点になっている。
というのも、このアルバムはやたら曲に邦題をつけている(ジョージ・ハリスンとリンゴ・スターが歌った3曲に至っては全部邦題付き)のだが、このアルバム以降の曲は、基本的に原題をそのままカタカナにするだけという方針となったのだ。天下のビートルズに邦題を付けるのが怖くなったのだろうか。

『Walk This Way=こんな風に歩け』という訳詞と、ボーカルであるスティーブン・タイラーの語るような歌い方をかけた邦題。
Run-D.M.C.によるヒップホップセッションアレンジも有名で、日本では『踊る!さんま御殿!!』やソフトバンクのCMでもお馴染み。

  • バグルズ「ラジオスターの悲劇(原題:Video Killed the Radio Star)」
直訳では「ビデオがラジオスターを殺した」という物騒で味気ないタイトルに、「悲劇」というワードを与える事で哀愁を纏わせた名作邦題の代表格。
本曲が収録されたアルバム「Age of Plastic」も当初は「プラスチックの中の未来」という直訳の邦題で発売されていたが、本曲の印象が非常に強かったこともあってか、後にアルバムの邦題自体も「ラジオスターの悲劇」と改題されて再販された。
なお歌詞の内容は「テレビに仕事を奪われた歌手の哀しみ」なのだが、皮肉にもMTVが開局して最初に流されたPVこそ、この曲のPVだった。

  • カテドラル「この森の静寂の中で(原題:Forest of Equilibrium)」
「均衡の森」という直訳から「静寂」というワードを生み出すセンスと、タイトルを読み終えた後の余韻が光る一本。

フレンチポップスの名作として世代を超えて愛されている名曲。元々はカップリング曲だったそうだがA面に昇格したという意外な経緯を持つ。
当初は「可愛いいシェリーのために」の邦題で売り出されたが、さっぱり売れず、この邦題に変えたところ急激に認知度が上がり大ヒットしたという。

  • ポリス「見つめていたい(原題:Every Breath You Take)」
温かみのある曲調に甘いワードの並んだ歌詞、深く考えずに聞くとただのラブソングとしか思えない一曲。
しかし実際にはストーカーの視点から見た、歪で一方的な愛情」を綴った曲として有名。

原題は「君がつくすべての息」などといった意味に直訳できるが、そこをあえてスルーし歌い終わりの「I'll be watching you(僕は君を見ているよ)」の部分を意訳した事で、知らない人には「距離の近い人物の熱い眼差し」、知ってる人には「遠くにいる人物の悪意の眼差し」と、どちらにも解釈できるような和訳になっている。
スティングといい翻訳者といいヒネリが利いてるというか、ヒネてるというか。

  • レニー・クラヴィッツ「自由への疾走(原題:Are You Gonna Go My Way)」
洋楽に全く馴染みが無い人でも、何処かで一度はそのギターリフを耳にした事がある名曲。
直訳は「お前も俺の道を行くのか」などといった意味。歌詞の内容はいわば成功への強い思いであり、実際の歌詞には「自由」を意味するワードが一度も出てこないにもかかわらず、力強い曲調と意訳が違和感無くマッチしている。

  • ケニー・ドーハム「静かなるケニー(原題:Quiet Kenny)」
隠れた個性派ジャズ・トランペッターの代表作の一つ。本来はアップテンポな演奏が得意とされているケニーが、あえてバラードやブルースといったスローテンポな曲を中心に叙情的な演奏を披露した事で人気を博した。
単に「クワイエット・ケニー」、もしくは縮めて「静かなケニー」としても良さそうなところに「る」の一文字を加えただけで、まるで漫画・アニメの強キャラの通り名の様な存在感が生まれた名訳。


また、たまに「原題の方が意味不明過ぎるから意訳しました」といたケースもあり、超訳扱いされるか否か微妙なところである。

  • エマーソン,レイク&パーマー「恐怖の頭脳改革(原題:Brain Salad Surgery)」
直訳すれば「脳みそサラダ手術」という意味不明なタイトル。
脳みそをアレコレ弄られるイメージからか、「手術」を「改革」に言い換えてある。

  • フィオナ・アップル「真実(原題:When the Pawn Hits the Conflicts He Thinks like a King What He Knows Throws the Blows When He Goes to the Fight and He'll Win the Whole Thing 'fore He Enters the Ring There's No Body to Batter When Your Mind Is Your Might So When You Go Solo, You Hold Your Own Hand and Remember That Depth Is the Greatest of Heights and If You Know Where You Stand, Then You Know Where to Land and If You Fall It Won't Matter, Cuz You'll Know That You're Right)」
恵まれた長文からウソみたいな単語邦題。タイトルを全て邦訳すると

戦場に赴く歩兵は王様のように考えるの
戦いの中では知識こそがとどめをさせるから
そして彼はリングに上がらずとも既に勝利を手に入れているわ
知性を武器にしたとき叩きのめす相手など存在しないのだから
だから独りで歩き出すときには自分を信じて
自分を深めることだけが、頂上へと導いてくれるのだと覚えていなさい
そして自分が何処に立っているかを分かっていれば何処に向かえばいいかも分かるはず
もしも途中でつまずいたとしても、大したことじゃないだってあなたの中にこそ"真実"はあるのだから

となるので、最後の部分だけを採用した。
なおリリース時は「世界一長いアルバムタイトル」としてギネス記録に登録されていたが、後にベルギーのロックバンド、ソウルワックスによって更新されている。



日本語は添えるだけ【○○○+カタカナ系】


マイケル・ジャクソン「今夜はビート・イット(原題:Beat It)」のようにカタカナタイトルに何かをちょい足しするパターン。
追加される単語は「今夜は」「恋の」「涙の」等の昭和臭が漂うワードが多い。


☆例
NTRラブソングとして有名な名曲。名訳、という訳ではないが歌詞の内容とも齟齬は無い優等生。

  • ストレイ・キャッツ「涙のラナウェイボーイ(原題:Runaway Boy)」
いわゆるネオロカを代表する名曲として世界的に有名な作品。
歌詞の内容は、家に帰るにも帰れず真夜中の街をあてどなく彷徨う不良少年たちの様子を描いたもの。曲調自体はそこまで物悲しい雰囲気ではないが、発売されたのが80年代初頭ということもあり、当時の日本のヤンキー・ツッパリ文化と結び付けられてこのような邦題が付けられたようだ。
2ndアルバムの「ごーいん Down Town」という邦題にもツッコんだ人は少なくないはず。

「レッチリ」はともかく電撃はどこから来た。

なおジョジョ第4部に登場する、レッチリが元ネタの電気を操るスタンド「レッド・ホット・チリ・ペッパー」は作中で「電線や電化製品など、電気回路を経由した移動(ワープ)」という、この邦題をどことなく連想させる技を見せているが、問題の楽曲とは登場時期が食い違う(スタンドは1993年頃、楽曲は1995年)ので、両者は他人の空似と思われる。
だが、レコード会社の命名者が偶然ジョジョやスタンドの事を知っていて、バンド側に逆輸入する形でこの邦題を付けた……という線も否定はできない。

  • ダニエル・パウター「バッド・デイ~ついてない日の応援歌(原題:Bad Day)」
登場当時、英語圏のチャートを総なめにしたダニエル・パウターのデビュー曲兼代表曲。
原題だけだと「嫌な日」という風に読めなくもないが、実際は「今日はたまたま運が無かっただけだ」と自分自身に言い聞かせる応援ソングである。
邦題のおかげで、英語に詳しくない人でも「きっとそういう歌なんだな」と一目で分かるタイトルとなっている。
それを聞き手に親切と思うか、おせっかいと感じるかは人によるだろう。

  • ジェイソン・デルーロ「ワッチャ・セイ、僕のせい(原題:Whatcha Say)」
ぶっとんだ邦題が絶滅危惧種に近い状態にまでなった2010年のポップスシーンに突如投下された爆弾。
一応歌詞は「ミスを犯して彼女に別れを告げられた男の泣き言」の様なものなので、内容とは合ってはいるのだが……。
このタイトルを思いついた時の命名者はさぞしてやったりと言いたげな顔をしていたに違いない。

  • ロビン・シック feat. T.I. & ファレル・ウィリアムズ「ブラード・ラインズ~今夜はヘイ・ヘイ・ヘイ♪(原題:Blurred Lines)」
2013年、世界で最も売れた曲に選ばれた大ヒットソング。
「今夜はヘイ・ヘイ・ヘイ♪」の部分は曲中の2割ほどの部分で聞ける掛け声からとったもので、下記の「聞いた感じで~」のパターンにも当てはまる曲。後述するフロー・ライダーとほぼ同パターンだが、中点が普通なおかげであちらに比べれば大分まともに見える。
なお、歌詞はその軽い曲調から何となく想像が付くような、非常に軽薄な内容のラブソングである。


余談だが、CMソングで有名なクインシー・ジョーンズの「愛のコリーダ」はタイトルからしてこのパターンの邦題っぽいが、原題も「Ai No Corrida」である。同名の日仏合作映画「愛のコリーダ」が元ネタなのだから当たり前なのだが、米公開時のタイトルは「In the Realm of the Senses」。リスペクトを感じる。



分かりやすくしたつもり【短縮系】


単語の多い長文タイトルをそのままカタカナにすると長くなるため、シンプルに短くしたパターン。
しかし無理やり短くしたせいで、意味が変わってしまう場合も多い。

要するに、
「(宇宙を維持するためには魔法少女が魔女に成り果てる時に発生する絶望の力が必要だから)ボクと契約して魔法少女になってよ
という事である。


☆例
  • ローリング・ストーンズ「サタニック・マジェスティーズ(原題:Their Satanic Majesties Request)」
短縮型の好例。直訳すると「彼らの魔王陛下の要求」。

  • エアロスミス「ミス・ア・シング(原題:I Don't Want To Miss A Thing)」
アルマゲドンの主題歌として有名な名バラード。
原題を直訳すると「私はそれを見逃したくない」だが、肝心の前半部を削ったせいで「ソレを見逃す」と意味が真逆になっている。

  • スライ&ザ・ファミリー・ストーン「暴動(原題:There's Riot Goin' On)」
ファンクの陽気なイメージを真正面から否定する「シリアスで重い」ファンクサウンドを提唱し、70年代の音楽業界に衝撃を与えた彼らの代表作。
原題は直訳すると「暴動が起こっている」となり、マーヴィン・ゲイが1971年にリリースした、激化する公民権運動について歌われた名盤「What's Going on」(何が起きてるんだ?)への、彼らなりのアンサー。
当然というか原題と意味合いが変わってしまっているが、作品全体に漂う不穏なムードと直球タイトルのインパクトがハマっている。
表題曲が演奏時間0分00秒の無音トラックという事でも有名。

  • コールドプレイ「美しき生命(原題:Viva la Vida or Death and All His Friends)」
今や00年代以降の英国を代表するグループの一つとなったロックバンドの4th。
死生感をテーマの一つとした作品であり、原題は「人生バンザイ、または死と彼のすべての友」といった意味となるが、邦題は死にまつわるワードが全カットとなり、生の部分だけが強調されてしまっている。

なお「Viva la Vida」と「Death and All His Friends」はそれぞれ別の楽曲であり、本作はタイトル曲がふたつ存在する事になる。
前者は分厚いストリングスが特徴的な明るい曲で、iPodのCMソングにも使われたことがあった他、TV番組でも時折BGMとして使用されることがあるため、知らない内に耳にしている方も居るかもしれない。
対する後者は静かなイントロから徐々に盛り上がっていくタイプの曲。アルバムバージョンは中盤で再び静かな曲調になるが、このパートは「The Escapist」なる曲名の隠しトラックという扱い。



人は見た目が9割【ジャケット見たまんま系】


稀によくあるパターンで、原題とは関係無いがジャケットを見れば一目瞭然というもの。
ビジュアルイメージとタイトルが噛み合っているため記憶に残りやすい利点がある。


☆例
  • メタリカ「ブラックアルバム(原題:Metallica)」
黒地に黒でバンドロゴととぐろを巻いた蛇が描かれたシンプルなデザインなのでブラックアルバム。
「ブラックアルバム」というアルバムはビートルズをはじめ、プリンス、ダムド、Jay-Zなどがリリースしているが、それらのアルバムは全て原題が「The Black Album」であり、ブラックアルバムの中で原題が「ブラックアルバム」で無いのは、このブラックアルバムだけである。
一応邦題だけという訳ではなく、アメリカでも通称「ブラック・アルバム」で通るらしい。
因みにジョジョの「メタリカ」の部下であるギアッチョのスタンド「ホワイトアルバム」はビートルズのアルバム『The Beatles』の通称でありホワイトアルバムというアルバムが存在しているわけではない。
実物を見たり検索してもらえばわかるがこちらは真っ白のジャケットにうっすらThe Beatlesと書いてあるだけの非常にシンプルなデザインをしている。
こちらも本国イギリスでホワイトアルバムで意味が通じる。

  • ピンク・フロイド「炎~あなたがここにいてほしい~(原題:Wish You Were Here)」
ジャケット中央で男性二人が握手していて、一方のスーツからは炎が上がっている印象的なジャケット。
「あなたがここにいてほしい」は原題、そして本アルバムの収録曲でもある「Wish You Were Here」の邦題だが、何故かそこにわざわざ炎をプラス。

  • AC/DC「ギター殺人事件 AC/DC流血ライブ(原題:If You Want Blood)」
ステージ上でギタリストのアンガス・ヤングの腹にギター(ギブソンSG)が刺さり、その肩を抱いたボーカルのボン・スコットが悪い顔してるジャケット。たぶん名探偵の孫とかが観客にいて、メガネのガキ逃げる犯人目掛けてマイクを蹴ったりするんだと思う。



思わず口ずさんでしまう【聴いた感じで決めました系】


原題も歌詞の内容もお構いなし、一番耳に残るフレーズからタイトルを決めたパターン。
何語でもないスキャット的なフレーズがそのままタイトルになる事も多いため、悲しい歌詞であっても能天気なタイトルになってしまいがち。


☆例
  • O-Zone「恋のマイアヒ(原題:Dragostea Din Tei)」
かつて大ブームを起こした空耳ソング。歌いだしの「Ma-I-A Hi」がそのままタイトルになった。
タイトルを直訳すると「菩提樹の下の恋」で、一夏の短い恋とその別れを歌った失恋ソングである。

  • ビリー・ジョエル「ハートにファイア(原題:We Didn't Start the Fire)」
ビリーが生まれてからこの曲が完成するまでに世界で生まれた物や起こった出来事を、サビ以外のパートでひたすら羅列するという型破りな曲。
そんな突飛な内容でも、一聞して違和感の無い形に纏めるビリーのポップセンスが光る。
邦題だけ見るとラブソングにしか見えないが、上記の経緯からも分かるとおりラブソングではないし、そもそも原題は「火をつけたのは僕達じゃない」という、邦題とむしろ逆の意味である。

  • シザー・シスターズ「ときめきダンシン(原題:I Don't Feel Like Dancin')」
70年代ディスコからインスパイアされたような明るくノリの良い曲調で、一見邦題がピッタリ合った曲の様にも聞こえるが、原題を見れば分かるとおり実際は「踊る気になんかなれない」というメッセージのこもった曲である。
サビ以外の部分もひたすら無気力なワードが並んでおり、曲調とのギャップはかなりのもの。

  • ゼブラヘッド「メンタル・ヘルス ~僕たちの「サイコー!」ソング~(原題:Mental Health)」
本国アメリカより日本での評価が高いとも言われるポップ・パンクバンドの楽曲。
タイトルの「サイコー!」はサビの直前の「Psycho! Psycho!」という掛け声を「最高」と読み替えた空耳。
予備知識無しで実際に聞いてみると、本当に「最高」と言ってる様に聞こえる。
歌詞の内容としては「サイコ野郎ばりにアガッてるぜ!」といった解釈なのだろうが……。

ここを見る様な方なら恐らく知っているだろうが、サイコは「キ○ガイ」とかいった意味。
本来なら口に出すのも憚られる様なワードを、単純ながら非常にポジティブな言葉に置き換えた命名者のネーミングセンスは、一周回って光っていると言えるかもしれない。

  • ブルースウェード「ウガ・チャカ(原題:Hooked On a Feeling)」
映画「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」でお馴染みのあの曲。
B.Jトーマスのカバー曲だが、カバーする際、原曲には無い「ウガ・チャカ・ウガ・ウガ」のフレーズを追加し、それがそのまま邦題に。

  • シルバー「恋のバンシャラガン(原題:Wham Bam)」
上記映画の続編「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーVol.2」で使用された楽曲。
サビの「Wham《bam shang-a-lang》And a sha-la-la-la-la-la thing」の部分がタイトルに。



こっちの方がいいと思った【収録曲から決めました系】


アルバムに収録されている曲からタイトルが決められたパターン。


☆例
  • マドンナ「バーニング・アップ(原題:Madonna)」
同アルバム3曲目に収録「バーニング・アップ(原題:Burning Up)」から。
これに限らず、アーティスト名がタイトルになっているアルバムは邦題が付けられやすい。

  • レインボー「バビロンの城門(原題:Long Live Rock'n'Roll)」
収録曲の「バビロンの城門(原題:Gates of Babylon)」から。「ロング・リヴ・ロックンロール」も収録されているが、恐らく中世ヨーロッパやファンタジー的な世界観のバンドイメージと、「ロックンロール万歳!!」を意味する原題の雰囲気がそぐわないという判断からと思われる。

  • イエス「ロンリー・ハート(原題:90125)」
同アルバム1曲目に収録されている大ヒットシングル「ロンリー・ハート(原題:Owner Of A Lonely Heart)」から。
原題の90125とは単なるレコードの品番でありなんの意味もない。

「入射点」「照射点」を意味する原題からは想像もつかないタイトルだが、このアルバムの面白いところは、このアルバムには「Point of Entry」という曲は収録されておらず、「Solor Angels」という曲の邦題が「黄金のスペクトル」なのである。つまり……

≪邦題≫ ≪原題≫
「黄金のスペクトル」 「Point of Entry」
嵐のハイウェイ Heading Out To The Highway
ドント・ゴー Don't Go
ホット・ロッキン Hot Rockin'
ターニング・サークルズ Turning Circles
雷鳴 Desert Plains
黄金のスペクトル Solar Angels
ユー・セイ・イエス You Say Yes
オール・ザ・ウェイ All The Way
トラブルシューター Troubleshooter
ロックンロール・オン・ザ・ラン On The Run

……というややこしい事になっている。
同じようなケースでケイト・ブッシュのアルバム「天使と小悪魔(原題:The Kick Inside)」に収録された「天使と小悪魔(原題:Moving)」があるが、こちらは「キック・インサイド(原題:The Kick Inside)」が収録されているので余計にややこしい。

オリジナル盤のラストナンバー「ワイルド・イン・ザ・ストリーツ(原題:Wild in the Streets)」から。
題名変更の理由は「スリッペリー・ウェン・ウェット」ではどことなく締りが無いからとかそんな感じだろうか。

ハードロックバンドでありながら当時の日本人にも親しみやすい音楽性がウケていたボン・ジョヴィが満を持して放ったキャリア初期を代表する名盤で、今なお日本でネタにされている彼らの楽曲の大半は本作の収録曲。日清カップヌードルの替え歌CMで一時期若年層からの知名度を上げることになった「禁じられた愛(原題:You Give Love a Bad Name)」も本作が初出。

なお、女性の胸元部分が写されたそのジャケット写真は本国アメリカでは規制に引っ掛かってしまい別のジャケ写に差し替えられてしまったが、日本ではそういう問題が特に発生しなかったため当初の予定通りのジャケ写が採用されている。



いよっ!待ってました!【毎度お馴染みシリーズ系】


スティーヴン・セガールの【沈黙】シリーズのように、内容に関係なく特定のフレーズを用いるパターン。
当然原題を無視したタイトルが多いため賛否は分かれるが、古い作品が多いせいかいくらか受け入れられている。
また、パンテラの「俗悪」「脳殺」「鎌首」「撃鉄」という二文字縛りのような、特定パターンを持つ例もある。


☆例
  • キッス《地獄シリーズ》
「キッスファースト 地獄からの死者(原題:Kiss)」
「地獄のさけび(原題:Hotter Than Hell)」
「地獄への接吻(原題:Dressed To Kill)」
「地獄の凶獣 キッス・ライヴ!(原題:Alive!)」
「地獄の軍団(原題:Destroyer)」
「地獄のロックファイアー(原題:Rock and Roll Over)」
「地獄からの脱出(原題:Dynasty)」
「地獄の回想(原題:Lick It Up)」
「停電(地獄の再会)~Kiss アンプラグド~(原題:Kiss Unpluged)」
「アライヴ4~地獄の交響曲~(原題:Alive Ⅳ)」
「モンスター ~地獄の獣神(原題:Monster)」

悪魔を思わせる奇抜メイクから「地獄」がキーワードに。2nd「Hotter Than Hell」が日本で発売された際に「地獄のさけび」という邦題が付けられ、後から初期3作が再発売された際に改めて「地獄」のついた邦題になった。
そしてそれ以降発売されたアルバムの半数近くに「地獄」と付けられる事に。


  • スコーピオンズ《蠍団シリーズ》
「恐怖の蠍団(原題:Lonesome Crow)」
「電撃の蠍団 フライ・トゥ・レインボウ(原題:Fly to the Rainbow)」
「復習の蠍団 イン・トランス(原題:In Trance)」
「狂熱の蠍団 ヴァージン・キラー(原題:Virgin Killer)」
「暴虐の蠍団 テイクン・バイ・フォース(原題:Taken by Force)」
「蠍団爆発!! スコーピオンズ・ライブ(原題:Tokyo Tapes)」
「栄光の蠍団 ~モーメント・オブ・グローリー(原題:Moment of Glory)」
「反撃の蠍団(原題:Unbreakable)」
「蠍団の警鐘 ヒューマ二ティー:アワー1(原題:Humanity Hour 1)」
「蠍団とどめの一撃(原題:Sting in the Tail)」
「暗黒の蠍団(原題:Comeblack)」
「祝福の蠍団 リターン・トゥ・フォーエバー(原題:Return to Foever)」

scorpion=蠍だから蠍団。何故か漢字タイトルにカタカナタイトルが併記されているのが特徴。
しかも世界中で大ヒットした「禁断の刺青(原題:Love at First Sting)」や、本国ドイツをはじめヨーロッパで支持された「クレイジーワールド(原題:Crazy World)」など、何故か代表作に限って蠍絡みの邦題が付いてない。

ちなみに《蠍団》とは付かなくても、《蠍》だけ付くタイトルも2つある。
「蠍魔宮 ブラックアウト(原題:Blackout)」
「 ピュア・インスティンクト~蠍の本能(原題:Pure Instinct)」


  • トゥイスタ「早口自慢トゥイスタのアドレナリン・ラッシュ(原題:Adrenaline Rush)」の収録曲
「早口の前に(原題:Intro)」
「早口自慢トゥイスタのアドレナリン・ラッシュ(原題:Adrenaline Rush)」
「死ぬまで早口 死んでも早口(原題:Death Before Dishonor)」
「早口でカイカ~ン(原題:It Feels So Good)」
「早口過多(原題:Overdose)」
「早口による早口のためのモブスターズ・アンセム(原題:Mobster's Anthem)」
「早口でモテモテ(原題:Get Her in tha Mood)」
「早口の気持ち(原題:Emotions)」
「早口の謎(原題:Unsolved Mystery)」
「憂いの早口(原題:Korrupt World)」
「ぬれた早口(原題:Get It Wet)」
「早口で悔い無し(原題:No Remorse)」

世界一早口のラッパーとしてギネス記録に載っているトゥイスタくん。早口なのは分かるがいくらなんでもやりすぎである。
なお他に邦題が付けられているのは、アルバム「神風(原題:Kamikaze)」のみ。



分類不能【その他系】


☆例
どちらも発音不能なオリジナル記号が原題。そのため本国ですら別タイトルが付いており、前者は「Led ZeppelinⅣ」後者は「Love Symbol」と付けられいる。邦題はそれをそのまま拝借しただけ。

  • KMFDM「タイピング不可(仮)(原題:Symbols)」
上記のZepp・プリンスとは似て非なるパターン。本来タイトルが書かれるはずの部分に「爆発・ドクロ・爆弾・うずまき・握り拳」という呼称不明のシンボルが付いており、便宜上「Symbols」と呼ばれている。
上の例と違うのは、世界的にも「Symbols」で名が通っているのにもかかわらず、国内盤は上記の呼称不明シンボルを正式なタイトルとしてリリースしてしまった事である。売り上げの程は察していただきたい

  • メタリカ「メタル・マスター(原題:Master of Puppets)」
マスターは分かる、メタルはどっから来た。
この次のアルバムも同じパターンでメタル・ジャスティス(原題:...And Justice for All)だったりする。
しかしその手前は直訳のライド・ザ・ライトニング(原題:Ride the Lightning)、次々作はメタリカ(上記のブラック・アルバム)。
どうしてこの2作だけこうなった。

  • ロイヤル・ハント「CRASH ~戦慄~(原題:Martial Arts)」
アーティスト名・曲名だけだとピンと来ない人も多いだろうが、今や年末の風物詩にもなっているプロレスラー・蝶野正洋(と、たまにエガちゃん)が入場する時に流れるあの曲です。
オリジナルアルバムで登場した時点では原題ママだったが、蝶野のテーマとしてバンド側が使用を許可してから邦題が付けられたという経緯がある。
確かに、蝶野の様な厳つい男が何の前触れも無く目の前に現れたりしたら、凄いとか嬉しいといった感情よりも先に「戦慄」が来るかもしれない。

  • Van Halen「炎の導火線(原題:Van Halen)」
  • Van Halen「伝説の爆撃機(原題:Van Halen II)」
中期作品である「JUMP」は知っている人の多いヴァン・ヘイレンの1stと2nd。
4thまでこの何にも掛かっていないトンチキネーミングは続くのだが、この2つを取り上げたのはこの後が問題するため。
11thアルバムが「ヴァン・ヘイレンIII(原題:Van Halen III)」なのである。
原題の方を知ってないと「おいIとIIはどこ行った」状態になってしまう。

どうしてこうなった《ぶっとび珍訳系》


ある意味、洋楽邦題の真髄。
説明不要(というか無理)なので、ひとまず読んでいただきましょう。


☆例
  • ビートルズ「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!(原題:A Hard Day's Night)」
アチラの項目でも紹介されていた著名な珍訳。
由来については諸説あるが、映画評論家で当時映画会社に勤めていた故・水野晴郎氏が付けたという説が有名。

  • セックス・ピストルズ「勝手にしやがれ!!(原題:Never Mind the Bollocks, Here's the Sex Pistols)」
パンク・ロックの開祖、ピストルズ唯一のスタジオアルバム。
和訳を諦めた命名者の心の叫びのようなタイトルが素敵。長くて訳しづらいのも理由の一つだろうが、こんな邦題になってしまった一番の理由は、間違いなく「Bollocks(キ○タマを意味するスラング)」の解釈に困った事だろう。実際、英語圏でもソコが問題となり流通には手間取ったらしい。
しかし、ヤケクソ気味なエネルギーに溢れた各収録曲とは雰囲気がマッチしており、本作の邦題に違和感を覚えるとする声は滅多に聴かれない。
また、本作の収録曲の中のひとつ、「お前は売女(原題:bodies)」は、時代の移り変わりにより売女(ばいた)という言葉がタブーとなったため、後年の再発版では単に「ボディーズ」と改題された。

  • ザ・ポップ・グループ「最後の警告(原題:Y)」
「Y」→「最後の警告」。
命名者はこの原題から何をどう連想して「最後の警告」に辿りついたのだろう……。
…無理やり解釈して「Z」が最後なので、その一つ前なので警告 ということか。

  • デッド・ケネディーズ「暗殺(原題:Fresh Fruit for Rotting Vegetables)」
奇人ジェロ・ビアフラ率いる個性派ハードコア・パンクバンドのデビュー作。
原題は直訳すると「野菜を腐らせる為の新鮮な果物」といった感じだが、歪曲的な表現を好むビアフラの意図が翻訳者にイマイチ伝わらなかったのか、暗殺というパンテラの棚にこっそり混ぜてもバレなさそうな短いタイトルに変えられてしまった。

なお、収録曲も一部を除いて邦題が付けられているが「レッツ・リンチ(原題:Let's Lynch the Landlord)」「細菌戦争(原題:Chemical Warfare)」「他人の郵便を盗め(原題:Stealing People's Mail)」など、暗殺どこ行ったと言いたくなりそうなタイトルばかり並んでいる。

  • シンディ・ローパー「ハイスクールはダンステリア(原題:Girls Just Want to Have Fun)」
80年代を代表するポップナンバーであり、「みんなアタシにゴチャゴチャ言うけど、女の子だって楽しみたいの!」という女性を抑圧する保守的な空気を吹き飛ばす女性賛歌でもある。
実はシンディは大の親日家としても知られており、何度も訪日経験があるのだが、自ら「曲のメッセージと違いすぎる!」日本側のスタッフに直々の抗議をした事で、現在では「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン」に改められている。

  • クイーン「自殺志願(原題:Don't Try Suicide)」
逆ゥー!!!! 中学生でも分かるような英文を真逆に訳す会社員…
もちろん歌詞は「自殺をしちゃダメだ」という内容なので、なおさら意味不明である。
オジー・オズボーンの曲にも「自殺志願(原題:Suicide Solution)」という同じ邦題の曲があるが、こちらは「飲みすぎは自殺行為だぞ」という歌詞である。

  • イギー&ストゥージーズ「淫力魔人(原題:Raw Power)」
ジャケットが裸だからだろうか?
本作収録の同名シングル「Raw Power」も『淫力魔人のテーマ』として発売されているが、やっぱりイギーが裸なのでやけにホモ臭い。

  • コールドプレイ「静寂の世界(原題:A Rush of Blood to the Head)」
一見綺麗な邦題にも思えるが、見て分かるとおり原題は「頭に血がのぼる」的な意味であり、静寂どころかむしろ煮えたぎっている。
これは「頭に血がのぼる→周りが見えなくなる」ということから付けられたのだろう。

  • リル・ウェイン feat.マニー・フレッシュ「ハレンチな女の子募集(原題:Hoes)」
フェミニスト激怒不可避。
原題の「Hoe(s)」は農具のクワを意味するが、同時に「セクシー(意味深)な女性」を意味するスラングでもある。
単刀直入にビッチの事といった方が、皆様には理解しやすいかもしれない。
歌詞はそんなホーズをラップで口説き落とす様な内容なので、イメージは合っているかも知れないが……。

リル・ウェインは普通のラッパー以上に過激なワードを多用する事で知られているが、一方で小柄な体系や独特のねっとりボイスもあってかユーモラスなキャラクター性でも知られており、日本の販売元からは「軽い存在」のように思われていた可能性もある。
その為かどうかは不明だが、当初国内で発売されたアルバムには「相当ヤバくねぇ?(原題:Ain't That a Bitch)」「愛にお釣りはいらねぇぜ(原題:Receipt)」「ミセス・オフィサーのセクシー取調室(原題:Mrs. Officer)」など、見てるだけで妙な頭痛に襲われそうな邦題が並んでいる。

しかし、これが原因で本国からお叱りでも受けたのかどうかは分からないが、2010年発売のアルバム「Rebirth」以降邦題はすべてカタカナオンリーにされてしまった。

  • フロー・ライダー「今夜はロウ☆ロウ☆ロウ(原題:Low)」
酔っ払った四十路オヤジが偏差値一桁のJKに異世界転生して付けたような珍邦題。
のちに日本の歌手・鼠先輩のボーカルが追加された「今夜はポウ☆ポウ☆ポウ」というバージョンも登場したが、フィーチャリングした相手が相手なだけにフロー・ライダーファンの日本人からは苦笑いされている

2005年作という時期を考えるとかなり珍しい全曲邦題付きのアルバム。
アルバムタイトルはまだ理解できる名前だが、トラックリスト目を向けると、

「殉死と自殺の差は記事になるかならないか(原題:The Only Difference Between Martyrdom and Suicide Is Press Coverage)」

「嘘は女の子が服を脱がずに楽しめる最上の方法(原題:Lying Is the Most Fun a Girl Can Have Without Taking Her Clothes Off)」

「君が気づいていないだけでこのテーブルに番号があるのはいい意味がある(原題:There's a Good Reason These Tables Are Numbered Honey, You Just Haven't Thought of It Yet)」

……という、昨今のライトノベルのタイトルを適当に並べたかと思うような邦題がズラズラと並んでいる。
やたら長い原題を、意訳も短縮もせずにムリヤリ直訳しようとするとこのような事が起こってしまうのだ。

  • スヌープ・ドッグ「ドギュメンタリー ~実録、ドッグファーザーの栄華(原題:Doggumentary)」
(スヌープ)ドッグのドキュメンタリーだからドュメンタリー。
嘘は言ってない。が、この隠し切れない実話ナックルズ臭はなんであろうか。

  • ストラッピング・ヤング・ラッド「歌舞伎町から超鋼鉄重低爆音(原題:City)」
※カナダに歌舞伎町はありません
「音の洪水」とも形容される独特のミキシングと猛烈な演奏で、コアなメタラーに知られているカナダのメタルバンドの2nd。

このバンドの滅茶苦茶な邦題は国内デビュー当時からの名残であり、1stアルバムは「超怒級怒濤重低爆音(原題:Heavy as a Really Heavy Thing)」おかしいなりに意味の通る和訳となっている。命名者もこの強烈なサウンドを何とかして言葉で表現したかったのだろう。

その後、オーストラリアでのライブ盤には「豪州から(生)鋼鉄重低爆音(原題:No Sleep 'till Bedtime)」、3rdアルバムは活動休止からの復帰を踏まえてか「帰ってきた超高速怒轟重低爆音(原題:Strapping Young Lad)」というタイトルが踊ったが、それらも一応は理由がはっきりしているせいで余計にこの「歌舞伎町」が目立ってしまっている。

もはや言うまでも無いが「City」に町という意味はあっても「歌舞伎町」という意味は無い。
しかし由来はちゃんとあり、CDのアートワークに歌舞伎町の写真が使われていることからこの邦題が付けられた。

なお、上記の作品の後に登場した4thアルバムのタイトルはまんま「エイリアン(原題:Alien)」であり、マジキチ邦題はそこで途切れてしまった。
「地球外から超怒級怒濤重低爆音」とかではダメだったのだろうか

  • オジー・オズボーン「暗闇にドッキリ!(原題:Shot In the Dark)」
直訳すれば「暗闇の銃声」であるし、そりゃドッキリするでしょうけども。

  • フレディ・マーキュリー「男のパラダイス(原題:Man Made Paradise)」



珍邦題を付けられがちな人達


  • コルピクラーニ
北欧の民族音楽とヘヴィメタルを融合させたフォークメタルの代表的なバンド。
それまでのマニアックでダークな雰囲気が多かったフォークメタルとは違い、明るく楽しいノれる曲調で人気を博したが、本邦における人気のキッカケは「酒場で格闘ドンジャラホイ(原題:Wooden Pint)」のPVであった。
その意味不明の邦題や、森の小屋で繰り広げられるシュールなPVがネットを中心に話題を呼び、あれよあれよと人気者に。
現在ではリリースされる殆どの楽曲に邦題が付けられている。


☆例
  • 「翔び出せ!コルピクラーニ(原題:Spirit of The Forest)」
1stアルバム邦題。どうぶつの森かな?

  • 「実録!フィンランド昔話(原題:Old Tale)」
嘘は言ってないが、この隠し切れない実話ナッ(ry

  • 「森の木陰でクールビズ(原題:Under The Sun)」
原題が「太陽の下」なのに木陰とはこれいかに。

  • 「ビールこそが神の水(原題:Pellonpekko)」
  • 「ビール飲み放題(原題:Ryyppajaiset)」
  • 「吐くまで飲もうぜ(原題:Beer, Beer)」
  • 「痛快!飲んだくれオヤジ(原題:Happy Little Boozer)」
  • 「呑めや、歌えや、夏休み(原題:Midsummer Night)」
  • 「朝から飲もうぜ(原題:Let's Drink)」
  • 「ウォッカで乾杯!(原題:Vodka)」
  • 「地獄の酒盛り隊長(原題:Eramaan arjyt)」
  • 「酒でも飲むか!!(原題:Juodaan viinaa)」
  • 「いい酒、夢気分♪(原題:Uniaika)」
  • 「ビールの王将(原題:Bring Us Pints of Beer)」
  • 「酔いどれ頭(原題:Paat Pois Tai Hirteen)」
  • 「萌えろテキーラー!!(原題:Tequila)」
  • 「涙の密造酒(原題:Korpikuusen kyynel)」
コルピの酒シリーズ。飲みすぎである。


  • カーカス
イギリスが生んだ「リヴァプールの残虐王」。ゴアグラインドを生み出し、メロディック・デスメタルを作り上げたバンドのひとつとなった伝説的なバンドなのだが、何かと邦題が凄まじい。そもそもアルバム「腐乱死臭」「真・疫魔交響曲」「屍体愛好癖」からしてアレだが、曲の方も「内臓大爆発(原題:Regurgitation of Giblets)」「イボイボ尿道声明(原題:Manifestation of Verrucose Urethra)」などグロテスクなワードが踊り狂う。

しかし彼らが最も特徴的なのは"ギターソロに日本語タイトルが付けられている"ところである。
※例「グチョグチョの内臓でドロドロ」「低温殺菌済胎児シチュー」「熾烈な憎悪をはらんだ悪性陰曩ヘルニア患者の放火魔」


☆例
  • 「腐敗(ドロドロシテル)(原題:Pyosisified (Rotten to the Gore)」
インシテミル的な

  • 「硫酸どろどろなんでも溶かす(原題:Incarnated Solvent Abuse)」
ん?今、何でもって(当然ですが硫酸にそんな力はありません)

  • 「リゼルジン酸による嘔吐,吐瀉物による洗浄(原題:Lavaging Expectorate of Lysergide Composition)」
初期から医学書などから専門用語やら死体写真やらを拝借していた彼ららしいと言えば彼ららしい。

  • 「汗して肉を得る(原題:Arbeit Macht Fleisch)」
原題はドイツ語で「労働は肉を作る」。なるほど間違っては無いが、不思議な日本語になっている。


  • アナル・カント
「ケツ穴マ○コ」という卑猥なバンド名、騒音以外の何者でもない楽曲に不謹慎で挑発的な歌詞、5643曲・総演奏時間3時間超のアルバムを11分に編集した嫌がらせのようなEP発売など、存在自体が悪趣味と嫌がらせで出来ているようなグラインドコアバンド、アナル・カント。
一曲数秒の曲を無秩序に演奏しまくり、それをいくつか纏めて1曲扱いで収録する。それでもCDトラック上は数十曲になるアルバムにいちいち邦題をつける作業は想像を絶するが(まして中身は無いも同然)、それ故か否かテキトーというかやけっぱちのようなタイトルが並ぶ。
そして曲名にやたらと「Gay」を使うが、これは彼らの地元マサチューセッツの方言で「馬鹿」「間抜け」という意味である。


☆例
  • 「まず何曲かプレイするからよ!(原題:Some Songs)」
  • 「じゃ,さらにもう数曲聴いてくれ(原題:Some More Songs)」
  • 「新しいハードコア曲入りの雑音はどうだい(原題:Blur Including New H.C. Song)」
  • 「そんでもってさらにもう数曲いくぜ!(原題:Even More Songs)」
彼ら初のスタジオアルバムから、記念すべき冒頭1~4曲目の邦題。ちなみに4曲合わせても3分半程度である。

  • 「意味のない曲目を沢山付けなきゃならないなんて,もううんざり(原題:Abomination of Unnecessarily Augmented Composition Monickers)」
訳者、魂の叫び。やめちまえ

  • 「曲のタイトルなんてバカげてると言っただろ(原題:Song Titles Are Fucking Stupid)」
  • 「だから曲名なんてでっちあげなのよ(原題:Having to Make Up Song Titles Sucks)」
まさかの正統派意訳でシリーズもの。お前らみんなやめちまえ

  • 「イヤーエイクと契約するんじゃA.C.もおしまいよ(原題:I'm Not Allowed to Like A.C. Any More Since They Signed to Earache)」
イヤーエイクとはイギリスのデスメタル/グラインドコア系レコードレーベル。
ちなみに上記のカーカスとはレーベルメイトで、彼らの珍邦題は主な配給先であるトイズ・ファクトリーの社員が決めている。つまり全ての元凶。

  • 「んじゃ,2から5まで演るからよ(原題:2 Down, 5 to Go)」
※22曲目です。

  • 「怨みはパワー、憎しみはやる気(原題:It Just Get Worse)」
ここまで来ると何も驚かない。


  • フランク・ザッパ
珍邦題の話題には必ず出てくる20世紀を代表する稀代の変態作曲家/マルチプレイヤー。
約32年のキャリアで60枚以上のアルバムをリリースし、ロックの芸術性をネクストレベルまで引き上げた伝説のアーティストである。

……であるのだが、とにかくタイトルが酷い事で有名で「He's So Gay(邦題:彼はとってもゲイ)」「The Illinois Enema Bandit(邦題:イリノイの浣腸泥棒)」と邦訳するまでもなく原題からしておかしい。
しかし、さも「原題がおかしいんだから邦題がおかしくても構わんやろ!」とでも言いたげなノリで、輪をかけて頭のおかしい邦題が付けられる為、ザッパの国内版のトラックリストはもう無茶苦茶である。

☆例
  • 「フランクザッパの○△□(原題:Ship Arriving Too Late to Save a Drowning Witch)」
(●▲●)…?
ちなみに現在の邦題は原題の直訳「たどり着くのが遅すぎて溺れる魔女を教えなかった船」となっている。

  • 「いま納豆はいらない(原題:No Not Now)」
ま さ か の ダ ジ ャ レ

  • 「致命的突起物がついている女(原題:The Girl in the Magnesium Dress)」
致命的突起物……一体どこに付いているんだ…

  • 「びしょ濡れTシャツコンテスト(原題:Fembot in a Wet T-Shirt)」
直訳すれば「濡れTを着たガイノイド(女性型アンドロイド)」。そっちの方がええやんけ。無能、あゝ無能。
(ちなみに「Fembot」はフェミニストに対する侮蔑表現にも使われるらしい。ザッパ的にはそっちの意味の可能性も有るため要検証)




追記・修正、よろしくお願いします(原題:Let the Music Do the Talking)

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最終更新:2024年03月18日 20:58