SCP-4500

登録日:2018/09/10(月) 17:40:08
更新日:2023/06/16 Fri 15:56:07
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ウィキコモリオス:ソクラテス、あなたが解説してくださるという項目は、いかなるものなのでしょうか?

ソクラテス:親愛なるウィキコモリオスよ、われわれはそれをSCP-4500と呼んでいる。それは怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」に投稿されたオブジェクトのひとつだ。またそれは記念すべき「SCP-4000コンテスト」において5位を勝ち取った。

ウィキコモリオス:ところで、なぜわれわれは質疑応答をしているのでしょうか?

ソクラテス:それは、元のページもそうなっているからだね。

ウィキコモリオス:SCP-1?1!-RUのパクリのように見えます。

ソクラテス:ゼウスに誓って、とんでもない!たしかに問答法(ディアレクティケー)という同じ技法を採用している点において、似通っている部分があることは認めよう。だがSCP-4500は、その記述法ではなく、それによって言及される対象にこそ意味があるのだ。またこの項目の書き手は、かの項目との差別化を図るべく、できるだけ文体をソクラテス風あるいはプラトン風に近づけようと努力していることも忘れてはならない。

ウィキコモリオス:たしかにすばらしい試みです。簡潔さという美徳が失われることを除けば、ですが。ともかく、そのSCP-4500が何であるか、このわたしに教えてください。

ソクラテス:いいとも。まずは先人の例に従って、表題ならびにフレーバーテキストを読み上げることからはじめようではないか。


SCP-4500

ソクラテス式収容プロトコル
Socratic Containment Procedures


熟考の末に辿り着く、それはまるで神話のようで。



第一講 SCP-4500とは何か

ソクラテス:SCP-4500とは、わが弟子プラトンが言うところの「イデア」のひとつだ。オブジェクトクラスは、聡明なる学徒エウクレイデスにちなんだEuclidとなっている。

ウィキコモリオス:ちょっと待ってください。プラトンの学説をあなたが紹介するとタイムパラドックスが発生しませんか?それにエウクレイデスが生まれたのもあなたの死後ですよね。いったいわれわれは何時代の人間という設定なんですか。

ソクラテス:こまかいことはいいのだよ。それにプラトンに関しては、かれはわたしの中の人であり、わたしはかれの配信用アバターである、と考えれば、さほどおかしな話でもない。

ウィキコモリオス:プラトンをVTuberの走りみたいに言うのはやめてください。もういいです、話を進めましょう。
 SCP-4500とはイデアである。ということは、概念系オブジェクトのようですね。それは何のイデアなのでしょう?正義のイデアか、 ニワトリのイデア か、6番ボールのイデアか、それによって話はまったく違うものになります。

ソクラテス:原文にはこうある。わけあって編集済みとしか書けぬ「SCP-4500-1」という特定の観念、それをさらに抽象化したものがSCP-4500である、と。

ウィキコモリオス:おお、ソクラテス!それでは何もわかりません!せめて何か手掛かりはないのですか。

ソクラテス:そこが悩ましいところなのだ。SCP-4500の付随的な情報、たとえば「それは何からなっているか」「かつては何であったか」といった情報ならばいくつか公開されているので、手掛かりとすることはできるだろう。しかしSCP-4500とはあくまでイデアなのだから、これらの情報を意識しすぎれば、SCP-4500のことを具体的に言い表せる存在であるかのように誤解してしまうことになる。しかし、わが友よ、今回ばかりはソフィストたちの流儀にならい、正しさよりも明快さを優先することにしよう。

ウィキコモリオス:知ったつもりになるより、知らないことを受け入れるほうがよいとはあなたの言葉ですが、知るための道筋もないのでは困りますからね。さあ、その情報とはなんなのです?

ソクラテス:うむ。これまでの研究によると、SCP-4500はかつては物理的に存在する場所であり、ここアテナイの地の一角を占めていたという。また、現在のそれは複数の「部屋のイデア」から構成されている、ということも明らかとなった。すなわち、かつては実体を持ち部屋を持つ施設であったものが、何らかの理由によりイデア化した存在だ、と言うことができるだろう。

ウィキコモリオス:物理的な施設が「イデア化した」ですって?そのようなことがありうるのですか?まるで人が死んで霊になったかのような言い方ですが、それを「人がイデア化した」とは言いませんよ。同じように、仮に肉の目には映らぬ建物というものが存在したとしても、それはいわば建物の幽霊であって、建物のイデアとは呼ばないでしょう。

ソクラテス:よい指摘だ。ひとつ、イデアというものが何であったか、わたしの記憶を呼び覚ましてくれるかな?

ウィキコモリオス:もちろんですとも。イデアとは、なるものではなく、世界のはじめからあるものです。それを通して世界が作られる金型です。
 りんごを例に挙げましょう。市場には、丸いりんご、いびつなりんご、様々なりんごが存在しますが、われわれはそれを見て「どれもりんごだ」と理解します。それは、すべてのりんごが等しく「りんごをりんごたらしめる本質」を分有しているからにほかなりません。これこそ「りんごのイデア」であり、市場のすべてのりんごを食べ尽くしても消えぬ「りんごという概念そのもの」です。実体のりんごが生まれるよりも前からあるのですから、実体のりんごが後からイデアになるなどということはありえないのです。
 このようなイデアはすべての物や観念について存在します。しかし、われわれの意識はいわば洞窟の中に縛られており、外界に置かれたイデアの存在に気付かない。それどころか洞窟の中にわずかに差し込む影を見て、それを物事の実体だと思い込んでいるありさまです。「哲学をする」とは、この洞窟の束縛を打ち破り、イデアを知ろうとする試みのことだと、あなたから教わりました。

ソクラテス:きみの言うことはおおむね正しいと思う。だが心配はいらないよ。この報告書がSCP-4500を「イデア」と呼ぶとき、それは実体部分を別の質料(ヒュレー)*1に置き換えた幽霊などではなくて、まさにきみの説明どおりのイデアを指しているのだ。
 SCP-4500とはイデアである。しかしそれは「SCP-4500-1という観念の抽象化である」と記されるのみで、「建物のイデアだ」という記述はどこにもなかったことを思い出して欲しい。すなわちそれは、もはやいかなる意味でも建物ではない。それは物理的にも霊的にも、異次元にも別時間軸にも、どこにも位置を占めていない。「概念と化した建物」ではなく、まったく別の「概念」なのだ。

ウィキコモリオス:何か根本的な意味論的変化が起きた、と考えるのがよいようですね。想像が難しいことには変わりませんが、ひとまずはそういうものだと納得することにしましょう。

【第一講のまとめ】
  • SCP-4500はイデアであり、それはある特定の観念(SCP-4500-1)を抽象化したものである。
  • SCP-4500はかつてはアテネに物理的実体を持つ施設であった。
  • SCP-4500は複数の「部屋のイデア」の集合からなる。

第二講 SCP-4500をいかに収容すべきか

ウィキコモリオス:すると、概念であるSCP-4500を、われわれはいかにして収容すべきでしょうか。

ソクラテス:なに、いまわれわれが交わした言葉の中にそのまま答がある。イデアとは、肉の目でも霊の目でも知覚できぬ本質的概念ということだったね。イデアを認識する唯一の方法は、われわれの持つ知性を働かせることだ。つまり、SCP-4500に接触する唯一の方法もまた、哲学的思索なのだよ。
 記録によると1900年代初頭、名を伏せられた二人の哲学者が議論をしていて、偶然SCP-4500へ到達したことがはじまりだという。かれらは民間人であったため、記憶処理を施さねばならなかったが、かれらの功績により、哲学的思索はSCP-4500への道を開くことができるという事実が判明したわけだ。

ウィキコモリオス:逆に言うと、SCP-4500への不用意な接触を防ぐためには、SCP-4500にかかわる思索をさせなければよい、というわけですね。それならば情報封鎖と記憶処理だけで事足りるように思われます。

ソクラテス:まさしく。SCP-4500の知識が広く知られることのないように隠蔽しておけば、それで収容は十分だ。偉大な哲学者によって偶然発見されることは防げないかもしれないが、これはごくまれなことだから個別対応でいいだろう。
 従ってSCP-4500の収容プロトコルは、隠蔽方法のほうよりも、必要な時にアクセスするための手段を確保することのほうに主眼をおいたものとなっている。

ウィキコモリオス:研究は今も続けられているのですね。それはどのように行われているのでしょうか?

ソクラテス:自明なことだが、すべての担当研究員は古典哲学について深い知識を持っていなければならない*2。すぐれた研究員を一室に集めたら、先にも述べたSCP-4500-1という概念について、問答法による哲学的思索を行うのだ。われわれの知性が正しく真実を想起(アナムネーシス)できたとき、SCP-4500への道が確立される。
 奇妙なことだが、ひとたびアクセス経路が確立されれば、研究員たちはSCP-4500の中をまるで物理的実体かのように探索することが可能になるそうだよ。といっても、この探索も「哲学的思索によって」行うのだから、ここは初学者向けに説明を端折っている部分かもしれないね。

ウィキコモリオス:なるほど。問答法によるアクセス手続きが承認されると、イデアが一時的にわれわれになじみの深い感覚に「翻訳」される、というふうに解釈しましょうか。

ソクラテス:このような研究員たちの哲学的探索行は、サイト-28の図書館にて毎週開催されている。なお、新たな入門者は最初にコーヒーとビスケットを納めることが義務づけられている。これが何らかの由来のある習慣なのかどうかは、わたしにはわからないが。

ウィキコモリオス:入学費がわりですか?けちな習慣ですね。最初からスパゲティを食べ放題にしておくくらいの福利厚生があってもよいと思いますが。

ソクラテス:勘弁してくれたまえ。デッドロックを起こしてしまう*3

【第二講のまとめ】
  • SCP-4500に関する情報は担当研究員のみに隠蔽する。民間人に発見された場合は記憶処理を行う。
  • 問答法を用いた哲学的思索をすることでSCP-4500へのアクセスが可能。

第三講 SCP-4500はなぜ問答法で記述されるべきか

ウィキコモリオス:ちょっと待ってください、ソクラテス。問答法が研究に必須であることはわかりましたが、収容プロトコルまでも問答形式で書かなればならない理由が説明されていません。もしやこのオブジェクトには、SCP-1?1!-RUのように、報告書に影響を与える情報災害が含まれているのでしょうか?

ソクラテス:いや、そういうわけではないのだ、ウィキコモリオス。これは言うべきかどうか迷ったのだが、実のところ、原作者もこの点はあまり深く考えていなかったことを認めていて、機会があれば修正したいと思っているそうだ。

ウィキコモリオス:ええっ!必要がないなら普通の形式に戻してくれればいいのに。読みづらくてたまりません。

ソクラテス:そう言うな、友よ。かならずこの形式にしなければならない必然性はないが、この形式を選ぶ利点は存在する。
 SCP-4500を研究する際は、つねに問答法を使用せねばならないことはすでに述べた。ということは、最初から問答法で収容プロトコルを書いておけば、それはそのままアクセス手続きの一部として使えるのだよ。事実、この収容プロトコル文書は「安定性を確保するため」毎回音読されるべきである、とも書かれている。

ウィキコモリオス:問答法それ自体がSCP-4500へのアクセス条件に含まれているから、このプロトコルどおりの対話を実演するだけでもアクセスの安定性が高まるということですね。それならわかります。

ソクラテス:それに、このオブジェクトに限らず、SCP文書というものそれ自体が哲学との親和性が高い、と思うのはわたしだけかな。画面の向こうにしか存在しない、直接知覚することはできないアノマリーを、「その脅威はどれほどか?」「それはいかに収容すべきか?」と問答しながら、断片的な記述をたよりに理解しようとする試み。それは洞窟に差し込む影を手掛かりにイデアを想起しようとする試みと似ている、と言えはしないだろうか。

ウィキコモリオス:うーん、詩神(ムーサ)に仕える者ならばそのようなたとえを楽しむでしょうが、哲学者の言葉としては、さすがにこじつけのように感じます。それだと文学も哲学だということになりますが、あなたは文学のことを、真実に対する模倣(ミーメーシス)*4にすぎぬと言って嫌っておられましたよね。それこそミーム汚染のベクターみたいに。

ソクラテス:(´・ω・`)

【第三講のまとめ】
  • 研究目的でのアクセスを容易にするため、SCP-4500の収容プロトコル自体も問答形式で記述する。
  • SCP-4500自身に情報災害はない。

第四講 SCP-4500には何が含まれるか

ウィキコモリオス:ところで、そろそろ教えてくれませんか、ソクラテス。SCP-4500は複数の「部屋のイデア」からなっていると、あなたはおっしゃいました。その部屋はいったいどのようなもので、中には何があるのです?まさか空っぽということはありますまい。

ソクラテス:もっともな疑問だ。まず順を追って、「部屋」そのものから説明することにしよう。各部屋は「大きさ」や「材質」といった副次的なイデアを分有していて、おのおの区別をつけることができるようだ。「大きい - 銅の - 部屋」「小さい - 鉛の - 部屋」といった例があるようだね。

ウィキコモリオス:そうは言っても、あくまで物理的な部屋ではなく「部屋のイデア」なのですよね。手触りはあるのか、絨毯や窓はあるのか、そんなことをいちいち想像してしまっては、きっと本質から遠ざかるのでしょう。

ソクラテス:おそらくそうだろう。発見した「部屋という概念」についてよく調べたら、「材質」というプロパティを持っていることがわかった、その程度に考えておくのがいいのかもしれない。

ウィキコモリオス:部屋という概念。部屋のイデア。物体を抜きにして、なお部屋を部屋たらしめるものとはなんでしょう?少なくとも廊下や屋外とは違うものになるはずですが。
 そうだ。境界があり、内側と外側がある、ということはたしかだ。そうでなくては開放空間になってしまう。ソクラテス、いつだったかあなたが幾何学を論じていたとき、「図形とは、立体がその端で終わるものことである」という定義をしていたことを思い出しましたよ。
 また、その境界の中には、人や物を入れることができるはずだ。この機能がなければ、それはただの立体の塊でしかない。要約するなら、部屋とは「内側にものを収める」という(アレテー)*5を持つ存在である、という言い方はどうでしょう。

ソクラテス:なかなか面白い。担当研究員たちも、まさにきみが言ったようなことを毎週議論しているに違いないよ。
 さて、かれらが「部屋」の中を探索すると、そこにはひとつの部屋につきひとつの記録が保管されていることがわかった。中に入った研究員たちは、国籍や出身にかかわらず、この記録を「自分が使い慣れている言語による対話」として認識したそうだ。これも、もともとは観念的な形で記録されていたものが、部屋を訪れた者に合わせて自動で「翻訳」されたのだろうね。

ウィキコモリオス:問答によってのみ到達できる部屋に、問答が保存されていた、というわけですか。わたしもその対話を読むことができますか?

ソクラテス:もちろんだ。報告書には5つの例が載っているが、そのうちのひとつを引用しよう。

Q. 称号は何ですか?

A. 称号はΠ-Α-Νです。

Q. そして象徴する脅威は何ですか?

A. 鉄の脅威です。

Q. そして拘束の方法は何ですか?

A. Π-Α-Νは鉛の中に閉ざされるべきです。同じく2人の自由民がΠ-Α-Νに常時出席するべきです。レベルΓ以上の学徒はΠ-Α-Νとともに行われるあらゆる実験の前に相談を受けなければなりません。
パンドラ学徒が再度Π-Α-Νにアクセスすることは決して許可されません。

ウィキコモリオス:いったいなんですかこれは?いや待ってください。少なくとも、何らかの手続きを示しているように見えますね。

ソクラテス:いいところを突いている。

ウィキコモリオス:これらの記録の他に、まだあなたが語っていない発見はありますか?

ソクラテス:いや、これが財団による探索の成果のすべてだ。SCP-4500-Aと総称するこれらの記録の内容は多岐にわたっており、そのうえまだ探索できていない「部屋」も残っているので、研究が終わるまでにはまだまだ長い時間がかかることだろう。しかし目下のところ、SCP-4500から発見されたものは、すべて「部屋」と「記録」に集約される。

ウィキコモリオス:わかりかけてきた気がします。「部屋」のイデア。ものを収容するという(アレテー)。手続きの記録。脅威への言及。まさかと思いますが、わたしの考えが正しいならば、SCP-4500とは…

ソクラテス:続けたまえ。

ウィキコモリオス:SCP-4500とは、先人たちが築いた「財団」なのではないでしょうか?そして、かつてアテナイにあった施設とは、きっと「収容サイト」だ。その実体が何らかの理由によって失われ、抽象化されたイデアだけが残った。
 そうそう、今のSCP-4500は「SCP-4500-1という観念のイデアである」と定義されるのでしたね。となるとSCP-4500-1とは、「財団」から導出できるような観念で、しかし担当以外の財団職員には伏せておきたいもの。なぜ伏せておきたいかと言ったら、みな普段から関わっていることなので、身近なそれが鍵であることに気付かれたくないから。すなわちSCP-4500-1とは、「収容という観念そのもの」なのでは。

ソクラテス:すばらしい!いや、たしかに君が補足した通り、現在のSCP-4500に過去の定義をそのままあてはめることはできないだろう。しかし、「それはかつてはわれわれのような組織であったのだ」と、われわれは自信をもって言い切ってよいと思う。SCP-4500こそ、アテナイの勇敢な市民たちが、日々カーオスの淵より産み落とされる脅威に対抗せんと英知を結集した、不断の努力の記録にほかならない。

ウィキコモリオス:アテナイに実体があったころは、もしかすると脅威そのものを「部屋」の中に捕らえていたのかもしれませんね。今は「報告書のイデア」が残るばかりのようですが。かつてここにいた忌まわしきものどもが、永久にタルタロスの底に忘れられたままでいることを祈りましょう。
 それにしても、これほどの人類の遺産がなぜ物質界を離れなければならなかったのか、気になります。

ソクラテス:後ですべてのSCP-4500-Aの現代語訳を見せてあげよう。はっきり明言された箇所はないが、いくつかの文書を組み合わせれば、推測はできると思うよ。

ウィキコモリオス:ぜひお願いします。本日はありがとうございました、ソクラテス。

長い!普通に説明しろ!

SCP-4500とは

古代ギリシャにかつて存在したアノマリー収容組織、およびその施設だったもの。言うなれば「財団」の先輩みたいなもん。
かつては石やら鉄やらで建てられたアテネの建物だったのが、今では物理的なカタチを失い「SCP-4500-1という観念を表すイデア」……要するに、"思い浮かべることで認識することはできるが、決まった色や形や実体を持たないので図や実物で表すことはできない、部屋のイメージ"だけが残った。*6

SCP-4500-1が何に相当するのかは編集済みのため不明だが、伏字の文字数や文脈から推測すると、おそらくは「収容」(あるいは「収容サイト」)という概念そのもの*7

SCP-4500-1について問答法を用いた哲学的思索を行うことにより、SCP-4500に入って内部を探索することができるようになる。

別に報告書が勝手に問答法になるみたいな情報災害があるわけではないが、問答法が研究の助けになるという特性上、SCP-4500の収容プロトコル自体も問答法で書かれている。
このおかげで、問答法形式で書かれている報告書を声に出して読めば簡単にSCP-4500へとダイブできる。便利。

SCP-4500の内部は複数の「部屋のイデア」から構成されている。現時点ではすべて空っぽであり、古代の収容プロトコル(SCP-4500-Aと総称)だけが残されている。
未知のアノマリーが隠れていないとも限らないためとりあえずEuclid指定にしているが、これまでの探索では危険に遭遇した例はないので、Safeへの再分類を検討しつつマッピングを継続中。

SCP-4500-A全例解説


発見の経緯(伏字解除版)

アルフレッド・ノース・ホワイトヘッドバートランド・ラッセルという二人の実在の数理哲学者が、後に共著で出版する『プリンキピア・マテマティカ』の執筆にあたってめっちゃ議論を交わした結果、偶然SCP-4500-1のイデア的理解に到達してしまい、SCP-4500が見えるようになった。
翌週、トリニティ・カレッジ(ケンブリッジ大学)の講義でなんかヤバい話が始まったことに受講中のエージェントが気づき、講義内容をノートにとったうえで関係者を記憶処理して収容。

SCP-4500-1が「収容(サイト)という概念」のことだとして… なぜ民間の哲学者がそんなものについて議論していたのだろうか?
あくまで想像だが、ひょっとしたら彼らは『プリンキピア』を書いている最中、自分でも「もしかしてこの理論って自分自身の完全性を証明できないんじゃないか*8」と気付いてしまい、「やべえなこれなかったことにできないかな」(ピタゴラスが「無理数」の概念を収容したみたいに)とか余計なことを考え始めたらそっちの議論が面白くなっちゃったのかもしれない。



ソクラテス:正しさを尊ぶことが教養人の証だとして、もし教養ある自由人がこの項目を見ているのならば、その人は当然、追記・修正をおこなうだろうね。

ウィキコモリオス:はい、かならずそうするように思われます。



SCP-4500 - Socratic Containment Procedures
by MathBrush
http://www.scp-wiki.net/scp-4500
http://ja.scp-wiki.net/scp-4500 (翻訳)

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最終更新:2023年06月16日 15:56

*1 物体は材料(ヒュレー)と設計図(エイドス)からできている、とする二元論に基づく用語。アリストテレスが導入した。「エイドス」はイデアと同じ語源の言葉だが、プラトンのイデアは物質界の外にあるのに対し、エイドスは物体自身に内包されていると考えるのが主な違い

*2 規定の試験で高スコアを収めた者の中から選抜される。なお元記事で使われている語「バッテリー」は「(主に知能検査のための)一連の試験」を意味する心理学用語

*3 「食事する哲学者の問題」で検索されたし

*4 ミームの語源。プラトンは芸術を「イデア界の模倣である現実世界をさらに模倣したもの」、いわば二次創作と見て軽視していたが、同時に「放っておけば真理を駆逐してしまう」とも言って警戒していた。まさに芸術は人の心に感染するミームなのである

*5 そのイデアが本質的に持つ「優越性」。たとえば砂糖のアレテーは「甘い」、剣のアレテーは「よく斬れる」である。プラトンはこれを前提に「では人のアレテーとは何か?」という問いを立て、倫理や知性について議論した

*6 概念がSCP認定されるのは妙なようだが、コイツは「どこにも存在しない=誰も実際の姿を見たことがないはずなのに誰もが同じ姿をイメージできる部屋」で、しかも「その部屋の中からはやはり空想すらしなかった未知の物品が出てくる」という、妄想と言うには不自然な点があるからこそ、アノマリーなのである

*7 「Anomalies Containment Rooms」あたりがぴったり収まると思うんだけどどうかな?異論求む

*8 のちにゲーデルが「不完全性定理」を発表したことによりこの懸念は現実化する