バーチャロイド(電脳戦機バーチャロン)

登録日:2018/08/13 Mon 20:23:59
更新日:2024/04/08 Mon 10:51:28
所要時間:約 24 分で読めます




「電脳戦機バーチャロン」シリーズに登場する巨大人型ロボットの総称。
ガンダムで言えば「モビルスーツ」、フルメタルパニックで言えば「アーム・スレイブ」、コードギアスで言えば「ナイトメアフレーム」なんかに相当するカテゴライズ。

基本的にゲームに登場するすべての機体はカトキハジメデザイン。
よって工業製品らしいソリッドなラインと、ロボット物らしい濃厚なキャラクター性を巧みに両立させたカトキチックなフォルムは全機に共通している。

長期にわたって展開されてきたシリーズの例にもれず設定はかなり変遷しているが、基本的に全てをプロデューサーの瓦重郎氏が考えているので、多くの人の手が入ってきたガンダムなどに比べると整合性は取れている方。


【特徴】



というリアル系ロボットとは切っても切り離せない疑問に対し、


と直球で答えてしまった特異なロボット。

そう、バーチャロイド(以下VR)が人型という非効率な構造をとっているのは、単純に「カッコイイから」、より正しく言えば「客ウケがいいから」なのである。
もっともこの場合の客とはプレイヤーのことではなく、バーチャロンの作品世界である「電脳暦(VC)」において、VRの主戦場である「限定戦争」を楽しむ視聴者たちのこと。


常に「視聴者」の存在を意識しなければならない限定戦争においては、単純に相手に勝てばそれでいいというものではない
むしろプロレスがそうであるように、視覚的な興奮要素ドラマ性カタルシスゆで理論などといったエンターテイメント性こそが強く要求される。
対立企業との力関係を決着する実力行使と興行(ショー)としての儲けを天秤にかけ、収支決算でプラスを出す事が求められるようになったのだ*1

こうした需要に答えて生まれたのが人型兵器VRであり、この「ショービジネスの商用ツールである」という点で他作品のロボットとは大きく異なる。


【構造】


モビルスーツの様なはっきりとした性能諸元は初代(OMG)を除き公開されていないが、おおむね10m~20mぐらいの大きさ。リアルロボットとしては標準サイズといったところだろうか。
遠隔操縦も可能だが、様々な理由から有人機として運用されることが多く、殆どは単座(1人乗り)。

機体の中枢となるのはコクピットブロック及びその背後に存在する「Vコンバータ」と呼ばれる箱型の装置。OMGでは灰サターン、オラタン5.2では白サターン。オラタン5.4-5.56ではドリキャス、フォース以降は謎の箱になっている四角いアレのことである。
このVコンバータは月面の先史文明遺跡「ムーン・ゲート」から発掘されたオーバーテクノロジーを転用したユニットで、
  • VRの機体そのものを構築する(後述)
  • 中核であるVディスクを介してパイロットの精神とVRをリンクさせ、操縦を補助する
  • ゲート・フィールドという不可視の異空間を形成し、その斥力で推進する
  • ゲート・フィールドによってVRの動作に伴う機体・パイロットへの慣性を緩和したり、慣性を制御して普通の物体ではありえないような運動をさせる
  • 慣性制御機構の援用で、外部からの攻撃をはじき返す「Vアーマー」を形成する(第二世代VRのみ)
  • 「電脳虚数空間(CIS)」と呼ばれる異空間を使った長距離ワープ「定位リバース・コンバート」を制御する(第三世代VRのみ)
などといった様々な機能を司る。
VRが人のようになめらかで自然な動きをしたり、かと思えば音速を超える速度で地上をジグザグに走り回ったりできるのは全てこのVコンバータのおかげであり、まさしくVRのコアと呼べるユニットである。

武装面ではビーム兵器ミサイルマシンガンレーザーにボムなど割と普通にロボット兵器しているが、キャラクター性強調の為に
  • 魔法のステッキ
  • 火炎放射器
  • ボム(爆弾)
  • ナパーム(火柱を連鎖生成するボム)
  • 浮遊機雷
  • ドリル
などの珍兵器を持つ機体も多く、果ては
などといった訳の分からないものを主武装とする機体まで存在する。

またVR戦において最も人気が高いのは、何といっても人型であることを活かした近距離白兵戦である為、殆どのVRは近距離戦用の武装を搭載している。
こちらも実体剣やビーム剣、トンファー大鎌にドリルと個性豊かなラインナップを誇る。


【製造方法】


VRのユニークな点は、その製造方法にもある。
戦車や航空機のような通常兵器と異なり、VRはVコンバータを介して電子データを物質化する、「リバース・コンバート*2によって建造されている。


この流れを具体的に並べると、

1.まずはVコンバータ用のVディスクを、人間の精神を介してフォーマット(マインド・フォーマット)する

2.フォーマットされたVディスクに、製造する機体の構造情報をデータとして書き込む

3.そのVディスクを収めるVコンバータと、それに繋がったコクピットを普通に建造する

4.Vコンバータを作動状態に置き、高い負荷をかけることでディスク内のデータが物質化され、VRが出現する(リバース・コンバート)

という感じになる。3Dプリンタみたい

こう書くと「え?じゃあコクピットとVコンバータ以外は実質タダで作れるってこと?」と思われるかもしれないが、リバース・コンバート時にはVコンバータを高負荷状態に置くために相当なエネルギーコスト、平たく言えば莫大な電気代が必要になる。

加えてマインド・フォーマットとリバース・コンバートに関しては、一定確率で「失敗」してしまうことがあり、これが製品としての歩留まりを下げてお値段をさらに上げている。
さらにリバースコンバート時においては、書き込まれたデータの質と量が上がるほどに「失敗」の可能性が上がる。
この為技術が未熟だった第一世代機(OMGの時代のVR)では、武装を含めた機体全てをコンバートさせるのは難しく、機体の基礎構造のみをコンバートして、武装などの外装パーツは普通に製造したものをあとから取り付けていたらしい。

そしてこれらの理由から、「VRをディスクに戻して再コンバートすることで修理費ゼロ!」とか「再コンバートすることで弾薬を補充!」等と言ったセコイことは難しい(不可能ではないが、リスク・コスト的に見合わない)。

ちなみにドリームキャスト版オラトリオ・タングラムのOPがこのリバース・コンバートによる機体を製造しているシーンとなっている。どういう物か一目でわかるだろう。

【強さ】


前述したとおりVRは本来客ウケを狙って作られた兵器ではあるが、しかしだからといって実戦兵器として弱いということはない

というか
  • マッハを超える速度で地上を走り回る
  • 同サイズの生物を圧倒的に上回る俊敏さを持つ
  • 数十メートルの跳躍を行い、短時間の飛翔も行う
  • 戦車砲サイズのや艦対艦級ミサイルのランチャーを自在に振り回す
  • それらの攻撃にある程度に耐える防御力を持っている
という殆ど反則的な兵器であり、歩兵や戦車といった従来戦力を圧倒的に上回る強さを持っている。

ただこうしたVRの飛びぬけた性能は前述の通り月由来のオーバーテクノロジーによるものであり、原理的にはその技術を転用してVRを上回る通常兵器を作るのは不可能ではない。

とはいえVクリスタルから始まるオーバーテクノロジーの研究は、本来人型兵器の制御ソフトとして作られたM.S.B.Sを用いて進められてきたものであり、他の分野へ応用することが難しい。
膨大な研究費をつぎ込めば可能かもしれないが、しかしそこまでして開発にこぎつけたところで視聴者からの人気がVRを越えることはまず考えられない。
コスパがすべてに優先される電脳暦において、それが実現する可能性は低いと言わざるを得ない。

またコスパ最優先と言う電脳暦の原則は、VR自身の性能にも反映されている。
旧来の戦争では、「同じ重さの金塊より高い」B-2などにみられるように、「性能>コスパ」とされることも珍しくないのだが、VRにおいては常に「性能<コスパ」が徹底されている。

よって一般に流通している商用VRの性能は、実は技術的な限界よりかなり下の方に位置している。
例えていうならV2アサルトバスターを作る技術がありながら、コスパがいいという理由でジェガンを作り続けている」ような状態なのである。

なので「商用」という枠を外れてコスパという制限から解き放たれた時、その性能は凄まじい上がりっぷりを見せる。
特にVRのコアであるVコンバータ、及びVクリスタル質はコスト増大に伴う性能向上がダイレクトに反映される部位であり、ここに金をかける(=高品質のVクリスタル質を使う)ことで性能は爆発的に向上する。
これは高品質なVクリスタル質を使うことで、VRの「実存強度*3が大きく上昇するため。
実存強度とは、物質化されたデータであるVRの「物質としての存在精度」を表すパラメータで、これが高いVRほどスペックをフルに発揮することができ、それが低いVRに比べて全ての面で優位に立てる。

商用ではないVR、例えば「白虹騎士団」の対シャドウVRや「特捜機動部隊MARZ」の捜査官用VRなどに使われているVコンバータなどは商用機に比べ数十倍~数百倍のコストがかけられており、その分性能も桁違いになっている。


【パイロット】


殆どのVRは、Mind Sift Battle System、略して「M.S.B.S」と称されるOSによって制御される。
これは人間の精神によって機械をコントロールするためのデバイスで、パイロットはM.S.B.Sを介してVコンバータとリンクすることでVRを動かす。

ヒトには全身に200を超える数の関節があり、複数の関節が無意識で連動することで複雑な動きを成し遂げているが、これと同じ巨大ロボットの制御を手動でやろうというのはあまりに無謀
しかしVRはパイロットがM.S.B.Sによって機体の基礎動作を感覚的に制御することが可能となっているため、意識的に行わねばならない操縦動作は最小限に抑えられている。
具体的にいうとアーケードのバーチャロン同様、2本のスティックと複数のトリガー、補助的なスイッチをいくつか程度で戦闘動作の殆どをこなせるようになっているらしい。M.S.B.Sパねぇ。

ただし非人類起原のオーバーテクノロジーを流用しているVRにはブラックボックス的な欠陥がいくつかあり、その内の一つである「バーチャロン現象」はパイロットにとって非常に危険なものとなっている。

前述の通りVRの機能の源はコンバータ内のVクリスタル質であり、パイロットはM.S.B.Sを介してこれとリンクすることでVRを動かしている。
これは「周囲の人間の精神と交感し、結晶内でこれをエミュレート(模倣)する」というVクリスタルの性質を利用したものだが、これが行き過ぎると、その人間の精神がクリスタルへ「持っていかれて」しまうのである。

これは軽度なら数分の間(持っていかれている間)の記憶喪失程度で済むが、重度の場合は精神がクリスタルに閉じ込められたまま二度と戻ってこれなくなり、精神を失った肉体が廃人と化してしまう。
これはVRパイロットにとって極めて物騒な職業病で、M.S.B.Sには一応この現象へのセーフティ機構があるが、完全に防止できるようなものではない。

この現象に対する耐性は個人差が非常に大きく、「バーチャロン・ポジティブ値」として数値化されており、基本的にVRパイロットはこの数値が高い人間でなければなることができない。

またバーチャロン・ポジティブ値が高いパイロットは、単にバーチャロン現象に強いだけではなく、Vコンバータと深くリンクすることでVRの実存強度をより高め、VR自体の性能を引き上げることもできる。
ただし深くリンクするとその分バーチャロン現象に囚われるリスクも高まるため、その高さは必ずしも利点ばかりではない。
またポジティブ値が高い人間がバーチャロン現象を起こしてしまった場合、VRに危険な変異をもたらし、周辺に被害を及ぼすこともある(「シャドウ現象」)。


【歴史】



実用化以前(OMGより前)




第一世代VR(OMG時代)




第二世代VR(オラタン時代)




第三世代VR(フォース/マーズ)




オリジナルバーチャロイド(???)





※ バーチャロン・ポジティブ値が高い方以外の追記:修正はバーチャロン現象に取り込まれる可能性があるので注意しましょう

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最終更新:2024年04月08日 10:51

*1 言い換えれば、戦闘の結果相手企業に多少の譲歩を許すことになってもショービジネスで大儲けできればおkなのである。

*2 正式名称は「Vコンバータの自己再構成に伴うリバース・コンバート現象」。長い。

*3 実存性、実存力とも呼ばれる

*4 残骸だけが残っており、BBBユニットと呼称されていた