第12章 X・Y編(ポケットモンスターSPECIAL)

登録日:2018/08/06 Mon 22:51:06
更新日:2024/03/15 Fri 07:45:47
所要時間:約 6 分で読めます





漫画ポケットモンスターSPECIALの第12章。ゲームのX・Y版の世界をベースにしている。
単行本は通巻版が55~62巻、先行版が全6巻。連載期間は2013年10月~2016年11月。


あらすじ

美しき地方、カロス
そのアサメタウンに暮らす少年エックスは、幼いころはそのポケモンバトルの才能を周囲にほめそやされたが、月日がたち自信を喪失し、家の中に引きこもっていた。
家の外に出そうとする幼馴染の少女、ワイの呼びかけにも耳を貸していなかったエックスだったが、突如として現れた二大伝説ポケモンにより街は破壊される。
そして現れた謎の組織フレア団により、家を焼け出されたエックスは、幼馴染たちと共に過酷な逃避行に身を投じた。
略奪・裏切り…。
互いが互いから奪い合う凄絶な泥沼の戦いの果てに与えられたものとは。
そして、エックス達の『真の敵』の正体とは……!!


主な登場人物

その他脇役は「ポケットモンスターSPECIALの脇役」の項目を参照。

◆図鑑所有者

エックス
本章の主人公。原作の男主人公(黒髪)と容姿はほぼ同じ。
幼少期はカロスの同年代を圧倒するバトルの実力があったが、マスコミの好奇の目に疲弊していく。
そして本章開始時は激しい自己嫌悪と人間不信から、ポケモントレーナーであることを放棄し5年間引きこもりを続けていた。
性格はひねくれていて無気力。長年の付き合いである幼馴染たちにすら、素直に気持ちに応えずトラブルを巻き起こすのは日常茶飯事。
彼の腕にあるメガリングは、フレア団につけ狙われる原因だが、同時にエックスにとっては非常に大切なものである。
強制的に外に出された挙句、常に敵の襲撃を受け続ける最悪な旅の中で、エックスはトレーナーとしての在り方を取り戻していく。

ワイ
本章のもう一人の主人公。原作の女主人公(金髪)とほぼ同じ姿をしている。フルネームはワイ・ナ・ガーベナ。
スカイトレーナー訓練生であり、よくウイングスーツを着て空を飛んでいる。その飛行能力は随所で役立ってきた。バトルはエックスほどではないが強い。
性格は直情的。そして世話焼きで、エックスのことも最後まで見捨てずに呼びかけを続けていた。ただし、当初は感情的に行動してしまうことが多かった。
五人の幼馴染のリーダー格として、生き残るために様々な行動を積極的にとっていく。その前向きなリーダーシップがなければ、他の四人はまとまることができない。
しかし、彼女自身も喧嘩別れした母が行方不明、という状況になっており、表面には出さないが内心では相当に傷ついていた。
それでも絶望的な逃避行を必死に生き抜こうとするワイの行動が、不変に思われた状況を徐々に打開する鍵へと変わっていく。


◆味方勢力

●幼馴染たち

エックス・ワイと共に逃避行をゆく。二人に比べて戦闘能力では劣るが、時に言い争いつつも互いの深い絆でフレア団に立ち向かう。

トロバ
本章の語り部。二人の図鑑所有者の代わりに、彼の視点で本章の出来事は語られていく。
引きこもっていたエックスを外に出すべく、三体のポケモンと三つのポケモン図鑑をプラターヌ博士から取り寄せてもらったが、
それが届くと同時にアサメタウンは破壊され、もらったポケモンの一体であるフォッコと図鑑が行方不明となってしまう。
また学者気質が原作に比べて強められており、戦いの鍵を握るメガシンカについて襲撃の中から考察していく。しかし、考えすぎるあまりプレッシャーに弱い一面も。

ティエルノ
ダンスが得意な少年。のほほんとした部分のある原作と比べ、面倒見の良い性格へと変わっている。引きこもっていたエックスの代わりに、彼のポケモンであるガルーラの世話を続けていた。
アサメタウンの破壊の際、通っていたダンススクールも破壊される。同じく大切なものを失った四人に対し、旅立つことを提案したのは彼。
体型は太めにもかかわらず、身のこなしは軽やかでローラースケートを用いた立ち回りが得意。

サナ
トリミアントリマーを目指す少女。天真爛漫な性格の原作とは逆に醒めた物言いをする性格をしており、思ったことをはっきり言う。
手持ちのトリミアン「トリP」でトリミングの練習をしていたが、二大伝説ポケモンの巻き起こした爆風に吹き飛ばされトリPは行方不明になってしまう。
サナにとってはそれを探すための旅でもあるのだが、敵に自分の趣向が伝わっていたことで罠にかけられたことも…。

●メガシンカ継承者たち

コルニ
シャラシティジムリーダーにして、メガシンカ継承者。コンコンブルの孫でもある。相棒のルカリオはメガシンカでき、その圧倒的パワーでフレア団に立ち向かう。
メガシンカ継承者であることは彼女自身誇りに思っており、正当な継承を経ていないエックスへの評価が当初は低かった。
だがメガシンカ継承の象徴であるマスタータワーがフレア団に襲撃され、逃亡する中でコンコンブルに諭されたことでエックスを認め、共に戦おうとする。
しかし、フレア団にとってはキーストーンを持っているコルニは標的の一つでもあり…。

○コンコンブル
コルニを始め、複数のトレーナーたちにメガシンカを継承してきた「師匠」。自分もヘラクロスを手持ちとし、メガシンカ可能。
幼少期のエックスにメガリングを授けたのは彼なのだが、正当な継承なしでメガシンカを使わせることに迷いがあったゆえ、詳しい説明をしていなかった。
自分自身もフレア団の襲撃で負傷。治療もできず満足に戦えない状況に陥ったが、ワイに対してメガシンカを継承できると見込む。
そして、彼の弟子の一人が事件の解決のためにカロスを訪れた…。

カルネ
カロスのリーグチャンピオン。人気女優でもあり、出演した映画は多数。
ミアレシティでワイたちと出会い、フラダリの得体のしれない恐怖感に圧倒されていた彼女たちを救った。
またフレア団によるマスタータワー襲撃時にはコンコンブルを助け、以降同行してエックスたちの助太刀に参上する。
しかし、フレア団の周到な罠と執念の前に、カルネは追い詰められていき…。

●カロスのジムリーダーたち

逃避行を続けるエックスたちに様々な形で協力する。
特にビオラは、姉のパンジーと共にジャーナリストとしてもフレア団と対峙する。
だが、本来は「カロスのため」に動くべきジムリーダーの行動としては…。


◆敵勢力

フレア団

本章の敵組織。その目的ゆえ、一切の情けを用意せずエックスたちをつけ狙う。
組織構成の規模と暴力性は、現状ポケスペ最凶最悪とまで言われる。

フラダリ
首魁にして本章のラスボス。「美しい世界」を実現するべく、大量殺戮を実行しようとする。
優秀な科学者でもあり、彼が発明した立体映像通信装置、「ホロキャスター」はカロスの人々の通信手段として一般的に使われている。
迷いを見せることもあった原作と比べ、終始その残酷な目的に忠実である。

○???
組織のナンバー2。
だが実際はフレア団最強のトレーナーにしてフラダリと同等の「もう1人のボス」。
性格は原作以上にサディストかつ極悪非道と化している。
表向きに握る権力を最大限に活用していて、フレア団の悪事を報道せずに裏でその指示を送る陰険さもみせる。
また、ある人物に対しては激しい嫉妬と狂気じみた執着を抱いており、目的とは別に屈辱的に敗北させることに執念を注ぐ。

○科学者たち
伝説のポケモン確保を目指す「A班(チーム・ア) 」と、メガシンカの暴力的な解明を目的とする「B班(チーム・ベ)」に分かれている。
モミジ、アケビ、バラ、コレアの四人の女性科学者はあの手この手でエックスたちを襲撃し、特にコレアのギルガルドの洗脳能力はその目的に有効活用されてきた。
クセロシキはA班に所属してはいるが、同時に自分の研究も進めている。

○エスプリ
パワードスーツに身を包んだ謎の女性。クセロシキによるスーツ開発が終わったことで中盤から登場し、その機能でエックスたちを苦しめる。
その被験者はスーツによって行われた蛮行を知らないのか、それとも…?




作風について

ポケスペ史上最大級の鬱展開・問題作と言っても過言ではない完全シリアス。※幼年誌です
ゲームのマイナーチェンジ版が出なかったために、結局ゲーム中で回収されなかった伏線や設定などがこの章で回収される事となった。
(伏線こそあれど)語られることのなかった『真の敵』の正体に度肝を抜かされた読者は多い筈。

第7章以降、全体的にダイレクトアタックが減っていたポケスペだったが、
この章ではシリアスさ、ダーティーさを強め、激しいダイレクトアタックの応酬が復活している。
暴力描写や流血など、特に第4章への回帰を思わせる要素が多い。

その結末も、バッドエンドこそは回避出来たものの、ハッピーエンドとは決して言えない複雑な気持ちにさせるものとなっている。
フラダリとパキラに至っては、事実上の「勝ち逃げ」を遂げる事となった。
作者自身も「安易な決着を書けなかった」とぶっちゃけた程である。

また増えたゲーム内容と反比例した短い世代交代スパンに対応するためか、展開はとても速い。
章を貫く逃避行という展開は、そのスピーディーさを維持するのに役立っている。
そして、全編を通じて図鑑所有者二人の内面描写が少ない。
ひたすらに追い詰められる絶望的な状況とひねくれたエックスの心を、より効果的に見せる手法といえる。

後述するが、先行版単行本3巻で作者の山本氏が読者に問いかけた言葉は、どう考えても(難し過ぎて)ちびっ子に問いかける言葉じゃない。

なお、本章では第5章以来久々に「VS○○」の単行本掲載タイトルがなくなっている。
代わりに、「○○、□□る」というタイトルが各話につけられている。
先行版単行本では既にこの形式でついていたのだが、通巻版でも同じタイトルで掲載された。


連載についての補足

当初は「コロコロイチバン!」と「ポケモンファン」の二誌で縦断連載をしていたが、
第13章がWEB連載としてスタートしたため、「ポケモンファン」への連載は途中で終了した。
現状では一つの章を縦断連載したのは、これが最後となっている。
また第11章の項目でも述べたが、連載開始当初前章の単行本化がいつになるのかの見通しは立っていなかった。
このため、この章以降は通巻版よりサイズの小さい規格で、独立したレーベルで単行本を出すことになった。
ただし、「ポケモンファン」掲載分は収録されていない。そのため、ワイがニンフィアを手持ちに加えた経緯やコンコンブル師匠が負傷した経緯等は先行版単行本だけでは把握できない。

なお、2020年5月から通巻版での12章収録がスタートし、書下ろしアフターエピソードを収録した62巻で完結した。
当然こちらでは「ポケモンファン」掲載分も収録しているため、今後購入を検討する際はこちらが望ましいと言える。
雑誌掲載時からの変更や書き下ろしも含まれている。




あなたがカロスの住民だとして、
182ページ※のような選択を迫られた時、
どちらを選びますか?



僕なら……、


僕だったなら……。



コロコロコミックス
「ポケットモンスターSPECIAL X・Y」第3巻
山本サトシ氏の前書きより






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最終更新:2024年03月15日 07:45