ワルサーP-38

登録日: 2010/07/02(金) 17:24:00
更新日:2024/04/15 Mon 12:48:23
所要時間:約 4 分で読めます




ドイツの銃器メーカーであるカール・ワルサー社が開発した軍用自動式拳銃。
第二次世界大戦中にはナチス・ドイツ陸軍に制式採用されている。
アニヲタ的にはルパン三世の銃と言えば分かるだろう。また初代破壊大帝がトランスフォームする銃でもある。
後に改良型のP-1がドイツ連邦軍に採用されている。


口径:9mm(内地用:7.65mm)
銃身長:125mm
全長:216mm
重量:945g
使用弾薬:9mmパラベラム弾
装弾数:8発
作動方式:ダブルアクション
プロップアップ式:ショートリコイル
銃口初速:350m/s
有効射程:50m


○経歴

第二次大戦直前までドイツ陸軍はルガーP08を制式拳銃として使用していたが、作りが精密なため生産コストが高く、戦場の様な過酷な環境では使うには耐久に難があった。そこでワルサー社に安価で耐久性に優れた新型拳銃の開発を依頼。
そして完成したHP (Heeres Pistolen) はルガーP08の半分以下のコストで製造でき、どんな戦場でも正常に作動する事からP.38として制式採用した。
良く当たり、扱い易いP.38は猛威を奮い、敵対する連合軍から『グレイゴースト(灰色の幽霊)』の異名で恐怖と、ある種の羨望を得ていた。

大戦中はワルサー社以外の会社も製造し、1,144,000挺も戦場に送り出された傑作だが、大戦末期には粗悪品が数多く作られるようになった。
これは軍用拳銃としては部品が多く、生産力の低下による工程の簡略化が原因で、スライド部の破損や暴発の危険性もあった。
それまでの栄光から一転、「大戦末期のP.38は持っているだけで死ぬ」『自殺用拳銃』とまで言われる程忌み嫌われるものとなった、と伝えられる。
また戦後の50年代に改設計モデル「P1」が西ドイツ軍や警察に納入されたり、P1の設計をブラッシュアップしたP5など、派生型も多く生まれている。


○構造

当時の大型軍用オートマチックピストルとしては「構造が複雑になる」と採用することが少なかったダブルアクション機構*1を搭載。
更にデコッキング*2機構を組み込んだマニュアルセフティやAFPB(オートマチック ファイアリングビン ブロック*3)などを組み込み、安全性と即応性を飛躍的に高めている。
その他にも先進的な機能を多数搭載し、戦後には数多くの模倣銃が生まれ、拳銃の技術を大きく進歩させた。
またオートマチックピストルとしては珍しく発射後の薬莢が銃の左側から排出される。


○欠点

P.38はスライドが作動する衝撃で部品が外れ射手が怪我をしてしまう事もある。
過剰な連射をしなければそこまで危険ではなかったが、上記の粗悪品はその通りではない。この欠陥は大戦後に生産されたP1や後続のP88では解消されている。
ちなみにP.38を参考にしたべレッタM92Fの最初期バージョンもスライドがすっ飛ぶ欠陥を持っていた。

また、マガジンが自然に落ちるタイプではなく、自分で引き抜くタイプであることも欠点に挙げられるが、
「拳銃はあくまでも補助武装」という当時の欧州の常識から考えれば仕方がないことではある。


○現在

ワルサーP.38typeBという銃が開発されているがP.38とは全くの別物。
引き金に指紋認証を搭載し持ち主以外発砲できないようになっているなど、近未来的な構造になっている。


○国内で手に入るP.38

ルパン三世が流行った影響で様々な会社からP.38のトイガンが販売されている。

  • マルシン工業製モデルガン
ミリタリーモデルのシリアルナンバー:ac43 1002b
最も本物に近いとされモデルガンファンからも評判が高い。2024年現在では生産されていないため、新品の入手は困難。
2014年の実写版ルパン三世で使用されたプロップガンは、このマルシン製のモデルガンをブルーイング加工したもの。

  • マルゼン製ガスブローバック
シリアルナンバー:ac40 4483b(シルバー及びブラックメタル)、ac41 2807k(マットブラック)
ガスブロなのにモデルガンに迫るクオリティのやべーやつ。ワルサー社と契約を結び実銃の図面を提供され製造した代物で、ワルサー社の刻印入りで発売している。しばしば再販されるため、新品を定価で欲しければ虎視眈々と待つべし。

  • 東京マルイ製エアコキ
シリアルナンバー:ac42 3968e
今日一番手軽に入手できるP.38のトイガンと思われるが、エアコキとしての性能を優先している都合上全体のフォルムが実銃とは少しだけ異なっているほか、マガジンはいわゆる『割り箸』。
つくるモデルガンだぁ?今どこにも売ってねぇだろ!

  • トイスター製18禁エアコキ
シリアルナンバー:ac43 1002b(マルシンと全く同じ)
エアコキは韓国のトイスターからも発売されており、こちらはマガジンがフルサイズだったり撃鉄が独立パーツとして作られていたりと物としては良いのだが、新品中古問わず入手がかなり難しく、ネットオークションなどに限られる。

トイガン以外ではワルサー社公認のP.38型ライター、公認ではないがP.38型ゴム鉄砲まである。


○ルパン三世の愛銃

ルパン三世の愛用モデルは1997年のTVSP作品『ワルサーP38』内でシリアルナンバーまではっきり映るカットが存在し、ac41・1325c(=1941年製造の31321挺目)のミリタリーモデルであることが確定している。
ただ、アニメ最初期の『PART1』においてはac40・1325cのミリタリーモデルと設定されており、このシリアルナンバーは設定資料と第13話『タイムマシンに気をつけろ!』内で確認できる。しかし、ac40のP.38は4482bまでしか存在しないため、末尾のアルファベットがcのac40は実在しない。このシリアルナンバーについては、LSというメーカーが1971年当時発売していたプラモデルが全く同じナンバーのため、これを参考にして設定資料を制作したのだと思われる。

作中では手の塞がったルパンが歯で噛んでスライドを引く場面があり、これに憧れた少年たちがトイガンで真似をしてスライドに無駄な傷をつけるか歯を痛めるのが定番。当然、噛む程度では固くて引けたものではない。

今日ではルパンの愛銃として浸透しているワルサーであるが、これを設定したのは漫画原作者のモンキー・パンチ氏ではなく、「小道具実証主義」にこだわった前述の『PART1』における演出・大隅正秋氏と作画監督・大塚康生氏である。


余談

第二次世界大戦当時、あまりのデザインの格好良さから、倒したドイツ兵からP.38を奪うのが米軍の間で流行していた。
この銃を持っていることが一種のステータスだったと思われる。



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最終更新:2024年04月15日 12:48

*1 撃鉄が倒れた状態でも、引き金を引くのと連動して撃鉄を起こす機構

*2 起こした撃鉄を安全に倒すこと

*3 引き金を引かない限り、撃芯の前進を防ぎ弾の発射を防ぐ機能の事。あやまって落としたりしても安全