スクリーントーン

登録日:2018/07/02 Mon 06:07:07
更新日:2023/06/29 Thu 01:32:21
所要時間:約 4 分で読めます







概要

『スクリーントーン』とは主にイラスト・漫画で使われている画材。以下トーンと呼称。
現在色々な会社が売っているが、レトラセット社の『スクリーントーン』が元祖だと言われている。
1枚およそ500円。昔はもう少し高かった。

ノリが付いた透明なフィルムの表側に用途に合わせた模様が印刷されている。
漫画家やイラストレーターはこれを使いたい部分に合わせて切り貼りして使っている。
よく漫画を読んでいて灰色に見る箇所があるが、それがトーン(正確には網トーン)である。


日本で最初に作ったのはデザイナーの関三郎という方で、アメリカの『Zip-A-Tone』をヒントにして網トーンを作ったという。
そしてそれらは地図みたいな製図に使われていたそうだが、漫画家の永田竹丸が日本で最初に漫画にトーンを使ったとされている。
それに影響を受けた漫画家が数多くおりトーンはまたたくまに普及された。


漫画におけるトーンの役割は主に物体の影や服の模様と言ったパターン化されたものに使われる。
黒ベタが画面を引き締めるとしたらトーンは画面の立体感を出すためである。
ただし、服にトーンを使うにしても、その模様のトーンにサイズが大・小ちゃんとあればいいが、
ない場合キャラが小さく描かれたシーンで服の模様が大きかったり、逆にアップのシーンで模様が小さかったりといった現象が起きる。


漫画家はよく使うであろうトーンは自作していることもある。
例えば『いちご100%』の河下水希は連載開始にあたっていちご柄のトーンを自作している。


トーンを使う人と使わない人はハッキリと分かれがち。
使わない人はホント使わないし、多く使う人は「これでもかっ!」ってくらい画面がトーンだらけになっている。
近年デジタル化が進みトーンが無限に使えるようになった影響で、画面が灰色(トーンだらけ)の漫画が増えつつある。

使わない理由としてはプロは画風に合わない、面倒といったものだが、アマチュアの場合金銭的な事情がある。
トーンは漫画道具の中でも高めであり、仮にキャラの髪にトーンを使えばその漫画内でずっとトーンを使わないといけないため、トーンの消費量が凄くなる。
金銭的余裕がない中高生はどうしてもトーンが使えないのだ。
さらに言えばトーンは文房具店じゃなく画材屋じゃないと置いてない事も多く、通販がない頃は入手できる機会も限られていたからである。
一説には同人誌がA5判が主流なのは、できるだけトーンを使わないようにするためだという。

近年デジタル化が進み漫画制作ソフト『ComicStudio』の登場で無制限にトーンを使う事が出来るようになり、アマチュアでもトーンを多用出来るようになった。
現在は後継の『CLIP STUDIO PAINT』に移っているが、完全な互換がない為『ComicStudio』愛用者もいまだ多い。

なお 手塚治虫・石ノ森章太郎・赤塚不二夫といった有名な漫画家は皆「トーンは多用するな」と自著で書いている。
特に手塚は『マンガの描き方』にてトーンを一定以上貼ると漫画からイラストに変わり「冷たくなる」し、手抜きと感じてしまうので「描き込む努力を惜しむな」と言及している。

石ノ森は『まんが研究会』にて「トーンを貼ると貼っただけの効果がある」としたうえで、
トーンはプロの漫画家が手抜きのためにやっている面があるので、勉強中のアマチュアは「誤魔化しの術を覚えるな」と言っている。



使い方

トーンは薄い台紙の上に貼られているので、これを原稿用紙の上に乗せる。すると貼りたい箇所が透けて見える。
カッター(デザインナイフが推奨)で貼りたい箇所より大き目に切り取る
この切り取ったトーンを貼りたい場所に貼る。なお貼る前に羽箒などで原稿を綺麗にする事。
そして大きめのサイズから適当なサイズに切り取る。
この時力を入れすぎると裏側の原稿まで切り取ってしまうし、入れなさ過ぎてもトーンが切れないので絶妙な力加減が必要。
貼り付け終わったらトーンを固定するために前述の貼り取った台紙をトーンの上に重ねて、トーンヘラなどでゴシゴシして固定させる。
カッターの持ち手の部分などで代用してもいいが、形状によってはトーンや原稿を傷つけてしまうこともあるため、専用の画材を使うのが望ましい。
これでトーンの貼り付けは終わる。

場合によってはこの後、カッターで削ったり砂消しゴムでトーンをぼかしたり用途に合わせ加工する。
必然的にトーンカスが出来るので練り消しで回収する。

トーンが使われ始めた頃は模様の印刷がノリと同じ裏側にされていたと言われ、
さらにフィルムも現在より分厚かったため、『削る』『重ねる』といった技法が使えなかったという。


ちなみに、かつては裏からこすって紙に直接転写するタイプのものも存在していた。
しかし、上手くやらないと欠けてしまう部分が出たりと扱いが難しく、現在ではほぼ絶滅危惧種。


種類

  • 網トーン

トーンと言えばコレをさすくらいメジャーなやつ。
点が密集している模様が印刷されており、印刷すると灰色になっている。濃度があり10~50パーセントくらいまである。
点と点の間隔の事を『線数』といい、これの数字が大きくなると密集する。なお項目の画像は60線10%である。
重ねると重ねた部分が濃くなるが、上手い事重ねないと『モアレ』と呼ばれる模様が出る。基本は避けるべき現象だが、なかには意図的に使う場合もあるそうだ。
重ねる場合は線数が同じもの同士を使う、向きを揃える等するとモアレが起きにくいとされる。
ちなみに手塚先生を始めとする昔の漫画家は網トーンを使う場合、
原稿に「ここは網30パーセントで」といった指示を書いておくことで、印刷会社に指定個所を灰色にさせていたという。

  • 線トーン

均一な線が一定に並んでいるトーン。こちらも網トーン同様に線数や濃度がある。
トーンを使わない作家がトーンの代用で線を描いているように、役割はほぼ網トーンと一緒。
どちらを使うかは作家の感性による。

  • 砂トーン

砂目とも呼ばれる。
網トーンに似ているが、点の形や大きさ、並びが不規則になっている。
用途も網トーンとほぼ同じだが、布地などやや限定的な使われ方が多いか。

  • グラデトーン

正式にはグラデーショントーン。
網トーンと同じく点が密集したトーンだが、濃度がグラデになっている。

  • 効果トーン
心情表現を表すトーン。点描やカケアミ・流線などなど……。
デジタルではカケアミなんかはブラシとして登録してあることも。

  • 柄トーン
動植物とか幾何学的な模様、ファンシーな絵柄などが印刷されたトーン。主に服やカーテンといった布の模様に使われる。
ギャグシーンなどで背景に使われることも。
たまに「どこで使うんだこんなの…」と言いたくなるような奇抜な柄もあったりする。

  • 背景トーン
ビルとか木々といった背景がトーンになっている。正直使いどころが難しい。
デジタルの場合3D素材、そもそも写真取り込みなどで代用される。

  • ホワイトトーン
白いインクで印刷されたトーン。
ベタの上から模様を出したり、画面をぼかすような用途で使われる。
アナログだと網や線くらいで種類も少ないが、デジタルだと白黒反転などでサクッと作れたりも。



出典:画像は全てクリスタで制作


追記・修正はトーンを貼ってからお願いします。

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最終更新:2023年06月29日 01:32