コウモリ

登録日:2018/06/16 Sat 14:44:52
更新日:2023/10/19 Thu 20:48:32
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コウモリ(蝙蝠)とは、哺乳類の一種であり、「翼手目」に該当する生物の総称。
英語ではbat(バット)、フランス語ではChauve souris(ショーヴ スーリ、直訳すると「禿げネズミ」だが、元の意味合いは「フクロウネズミ」)という。

なお以下、固有名詞以外はカタカナ表記で統一する。


生物としての特徴

最大の特徴は、哺乳類でありながら飛行能力を持つこと。
ムササビやモモンガのように「空を飛べる哺乳類」自体は他にもいるが、ムササビなどはあくまで「滑空」止まりであって、自ら羽ばたくことによって空を飛べるわけではない。
このためやはり「飛行能力を持つ哺乳類」というくくりは翼手目が唯一となる。
前足から後ろ足にかけて「飛膜(ひまく)」という膜が張っており、これで風を捕まえて飛行できる。
一方地上を移動する能力は退化しており、特に後ろ足は自身の体重さえ支えることができなくなっているため、休む際はおなじみの天井からぶら下がるポーズをとる。

その見た目は一見鳥によく似ている……が、実は鳥とはかなり異なった方向に進化している。
鳥と生態ニッチを争わないために、コウモリの仲間は長距離の移動能力や移動速度を切り捨てた代わりに、小回りが利く方向に特化しているのだ。
さらに目や超音波器官を進化させることで、多くの鳥類が活動を行わない夜間に活動することを可能にし、上手くニッチに適合している。
そのため、なんとその種数は1000種を越え、哺乳類全体の1/4を占めるネズミ類に次いで発展した哺乳類の仲間と言えるのだ。
ただ、小型哺乳類の宿命で化石があまり残っていないので、実はどのように進化したのかはハッキリしていない点が未だ多いが。
一応遺伝子解析の結果から、ネズミによく似た顔立ちに反しネコやウマの近縁種であることは判っている。


主なコウモリの仲間

虫食タイプ

主に小型で、群れを作って活動するタイプ。
日本で最も身近に目にするコウモリと言えばこれである。

超音波による「エコーロケーション」を駆使した狩りを得意としている。
目が小さく顔が扁平で、全体にパラボラ状をしている典型的なコウモリのイメージ。

果物食タイプ

主に大型のコウモリ。最大で2メートルに達する個体も存在する。
「フルーツコウモリ」の名前でペットショップで売られていることも。
基本的には熱帯域に多く生息しており、日本では沖縄県や小笠原諸島にしか生息していない天然記念物。

狩りは行わないため、前述の「エコーロケーション」の機能は発達しておらず、その代わり視覚が進化している。
目が大きくて鼻が尖り、コウモリのイメージからは遠い顔立ちをしている。

吸血タイプ

中南米に生息する「ナミチスイコウモリ」一種のみが該当する。
コウモリのイメージ全体に強い影響を与える存在だが、実際のところは獲物の肌に小さな傷を付け、そこから滲み出る血を舐めとるだけで、決して牙を突き立てて血を吸い取るわけではない
とはいえ、狂犬病を媒介することもあり、現地では害獣として扱われている。
また獲物の血を吸い取るために四足歩行できる。


ペットとしてのコウモリ

最もペットに適しており、ペットショップでも入手できるのは前述のようにフルーツコウモリの仲間。
ただし、マイナーペットの通例としてかなり値が張り一匹数万円は覚悟しておいた方がいい。

「じゃ、その辺飛んでるコウモリ捕まえればいいじゃん」と思うかもしれない……が、実は日本に棲息するコウモリは「鳥獣保護法」の対象で全て保護動物扱い。勝手に捕まえて飼育すると違法なので注意。
一応「保護」の名目ならば飼えないこともないが、その場合は必ず保健所や役場の自然保護課に届け出る必要があり、期間も一か月程度になる。
また、前述のようにあの致死率ほぼ100パーセントの狂犬病のキャリアーでもあるため、もし飼ったり保護したりする際の扱いには細心の注意を払ってください。


食用としてのコウモリ

アジア・アフリカ・オセアニアにはコウモリを食用とする文化がある。食用にされるのは主にフルーツコウモリ。パラオ共和国など貴重なタンパク源として食している地域もある。
高級レストランから、屋台、家庭と様々な場所で食される。

捌いてカレーライス等に入れることもあれば、丸ごとコウモリそのままの姿(毛もむしっていない!)で串焼きやスープに入っているメニューも。後者は見た目がグロテスク過ぎて日本人からすればゲテモノ食い、食わず嫌いの対象にされても致し方ない。
珍味としては四川料理の「蚊の目玉のスープ(夜明砂のスープ)」があり、これはコウモリの排泄物から集めた蚊の目玉を使っている。

だが食用・薬用目的でコウモリが捕獲されすぎた結果、絶滅や絶滅寸前に追い込まれた種もある。


キャラクター・文化としてのコウモリ

「夜にだけ活動する」「鳥とも獣ともつかない中途半端な外見」「血を吸う」……そんなあまりにも特異な生態故に、 様々な地域で嫌われ者・悪役の象徴と言える存在
悪魔の背中にはコウモリの羽が生えているし、ドラゴンもコウモリの翼を備えた存在として描かれている。

ただし、現代の多くの人々が描いているであろうコウモリの、どちらかと言えば否定的なイメージは、ヨーロッパの価値観に依るもの。中国のように「富の象徴」として肯定的に扱う文化も存在する*1
スペインのバレンシアでは国土回復運動(レコンキスタ)の時代、アラゴン王ハイメ一世の肩にコウモリが止まり勝利をもたらしたという伝説から市の紋章に描かれているし、
サッカークラブではバレンシアCFやレバンテのエンブレムにもその意匠が取り入れられている。
実は日本でも中国から縁起が良い動物として伝わっており、その姿を象った和柄なんかもある。マイナーだけど……。

嫌われ役を背負わされた例の代表格はイソップ童話卑怯なコウモリ』だろう。
この話の中では、コウモリは互いに対立している獣と鳥双方に調子のいいことを言ってすり寄った結果、どちらからも相手にされなくなり、夕方からしか生きられなくなってしまう。
そのため、「コウモリのような奴」「コウモリ野郎」と言えば、どっちつかずな卑怯者として現在でも慣用句的に使われる。
ちなみにオーストラリアにも似たような話が伝わっているが、こちらでは獣と鳥の戦争に嫌気がさした太陽が昇らなくなるという大事件が起きてしまい、それをコウモリがブーメランを三度投げることで呼び戻した、というエピソードが付け加えられている。
そのため、オーストラリアバージョンではコウモリは単なる卑怯者ではなくなっている。

また卑怯者から転じてか「小物」のイメージで「鳥なき島(里)のコウモリ」という慣用句もある。
これは鳥がいない所ならコウモリは威張れる=優秀な者がいない所ならつまらない者でも威張れる、という意味で「お山の大将」に近い。
なお織田信長が長宗我部元親をかく評した、という話が伝わっているが、江戸時代(徳川綱吉の治世)の本が出典ゆえ信憑性は低い。

更に、「血を吸う」という特性を過大にキャラクター化したものが吸血鬼の伝承に影響を与えており、コウモリを何羽も従えて闇夜から姿を現す吸血鬼……という、彼らのオトモとしても広く記号化されて扱われている。
概して「闇の象徴」「夜の象徴」「悪の象徴」として数多くのキャラクターに影響を与えてきた動物界のトリックスターと言える存在である。

主なコウモリモチーフのキャラクター

バットマン

御存知アメコミの代表的な人気キャラクター。
コウモリのコスプレをした、コウモリらしくダーティーでシビアなダークヒーローである。

仮面ライダーシリーズ

ほぼ毎作品必ずと言っていいほどコウモリモチーフの敵怪人が登場する。
本シリーズではクモ怪人と並ぶド定番で、「クモ怪人→コウモリ怪人」の並びは初代『仮面ライダー第1話第2話の登場順でもある。
これは初代『仮面ライダー』の制作当時に海外のヒーローであるスパイダーマンと前述のバットマンを意識した結果だとか。
特に有名なコウモリ怪人は、『仮面ライダークウガ』のズ・ゴオマ・グだろうか。
また味方としてはほとんど登場しないが、『仮面ライダー龍騎』に登場する仮面ライダーナイトはコウモリの意匠が取り入れられている他、
仮面ライダーキバ』が初となるヴァンパイアモチーフの主人公ライダーとして登場した。

一方、同じ特撮番組でも『スーパー戦隊シリーズ』ではコウモリモチーフの怪人は少ない。それでもぽつぽつ登場はしているが。

ポケモン

初代から「ズバット→ゴルバット」の系列が登場していた他、後のシリーズでもその進化形である「クロバット」や、「ココロモリ」「オンバーン」など、地味にコウモリモチーフのポケモンは数を増やしていった。
そして第七世代では、遂に伝説のポケモンルナアーラ」として登場。コウモリも出世したものである。

黄金バット

見た目にコウモリ要素は薄いが、アニメ版では化身と思われる黄金のコウモリ(通称「コウモリさん」)が、ヒロインであるマリーたちの前に現れる。対等に戦った数少ない敵 暗闇バット も同様の姿。
また、敵にもコウモリ使いの魔術師やコウモリ型ロボットを駆る怪獣飼育員など、コウモリキャラは強敵であることが多い。

グーン

ディズニー映画『眠れる森の美女』に登場するヴィラン・「茨の魔女」ことマレフィセントの家臣たち。
コウモリの他にも、ワニ(アリゲーター)と鷹、ヤギハゲワシ、イノシシの個体が存在する。ただしディズニーのテーマパークで会えるのは、だいたいイノシシの個体。
屈強そうな見た目の一方、マヌケであまり賢くないらしい。ぶっちゃけ、マレフィセントがペットとして飼っているカラスの方が賢い。
スマホゲーム『ディズニー ツイステッドワンダーランド』の登場人物であるリリア・ヴァンルージュはコウモリのグーンをモデルにしている。

こうもり猫

ゲゲゲの鬼太郎』や『悪魔くん』に登場する、黒猫にコウモリの羽を生やしたような西洋妖怪。
キャラ設定は異なり、『ゲゲゲの鬼太郎』では敵として鬼太郎の前に立ちはだかり、『悪魔くん』では第十二使徒として悪魔くん(埋れ木真吾)に仕えている。

飛べ飛べコウモリ

NHK教育テレビ(現:Eテレ)のクイズバラエティー『あにまるQ』内で流れたオリジナル楽曲。子供向け番組のため、番組内では『とべとべコウモリ』表記。歌唱は『救急戦隊ゴーゴーファイブ』や『仮面ライダーアギト』のOPも担当した石原慎一。
怪人やアニメのイメージでコウモリ=悪役・化け物イメージを抱いてたチビッ子達に「コウモリは動物」という当たり前のことを教えてくれた。「コウモリは鳥じゃない 悪魔でもない」は名言。
またコウモリ=吸血だけじゃなく魚や花を食べる種がいる(放送されなかった2番ではフルーツコウモリ等にも触れている)という歌詞は、チビッ子のみならず一緒に見ていた親御さん達にも衝撃の事実であった(と思う)。

その他、コウモリが関わるものごと

オペレッタ『こうもり』

シュトラウスⅡ世作曲の歌劇。ドイツ語圏では大晦日恒例の演目。

こうもり傘

広げた形がコウモリのように見えるのでこういう名前。


追記・修正は、コウモリ野郎と言われないようにお願いします。

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最終更新:2023年10月19日 20:48

*1 漢字表記「蝙蝠」は「遍福」に通じるため。カステイラのマークに使われてるのもここから。