スカルマン(アニメ)

登録日:2018/06/10 Sun 06:46:51
更新日:2023/03/21 Tue 00:03:21
所要時間:約 20 分で読めます




全ては黒き幻影のために……



THE SKULL MAN
スカルマン


『スカルマン(THE SKULL MAN)』は07年にフジテレビ系列の土曜深夜枠で製作、放映されたアニメ作品。
製作会社はボンズ。
4月28日~7月21日まで放送。
全13話。

石ノ森章太郎のマンガ作品怪奇ロマネスク劇画 スカルマン THE SKULL MANのアニメ化作品だが、原作コミック、及び原作コミックの正式な続編として描かれた島本和彦によるマンガ作品『スカルマン THE SKULL MAN』とも違う、シリーズ構成の出渕裕らの独自のイメージで設定されたオリジナル要素の強い作品となっている。

原作の『スカルマン』は所謂仮面ライダーのイメージ原案となったキャラクターであり、上記の島本和彦による続編作品に仮面ライダーを彷彿とさせるキャラクターが登場していた他、反対に『仮面ライダー』シリーズにスカルマンをモチーフとするキャラクターが登場したりしている。

本作のスカルマンもバイクに乗るなど、仮面ライダーを意識したデザインや設定は込められているものの、物語自体のイメージでは仮面ライダーよりもサイボーグ009を意識した展開が多くなっている。

……というより、明確に009のキャラクターをモチーフとした登場人物が登場し、これまでに描かれてきた009の設定には繋がらないものの、009に繋がる物語として構成されているのが特徴。

また、石ノ森原作の児童向けアニメながら、本格的なSF描写により後の多くのクリエイターに影響を与えた空飛ぶゆうれい船のキャラクターをモチーフにした登場人物も多く、同作に出渕やメインスタッフの誰かに思い入れがあったことを想像させる。

このため、仮面ライダーよりも009や空飛ぶゆうれい船を好きなファンの方が琴線に触れる作品と言える。

本放送開始前の4月1日に本作の設定で描かれた特撮ドラマ『スカルマン~闇の序章~』が放映されている。
本作の前夜祭的特番と位置付けられており、実写とCGアニメが混ざった構成となっている。
単独でソフト化されているが、本TVシリーズの第0話的にセットで扱っている場合も多く見かけられる。

【物語】

かつての世界大戦の後の混乱により、二つに分断されてしまった日本。

東京でスクープ専門のトップ屋をやっている御子神隼人は、父の死を契機に影の首都とも呼ばれる大伴市から出てきた過去を持っていた。

その大伴市で政治家や官僚、女優といった有力者の怪死事件が相次いでいることと、その怪死事件に髑髏の仮面を被った怪人=“骸骨男”の影があることを知った隼人は、7年ぶりに大伴市へと帰郷して特大スクープを物にしてやろうと目論む。

大伴市へ向かう列車。
軍が不法侵入者を探す混乱の中で無理矢理に同行を申し出てきたカメラマンを名乗る少女、間宮霧子と共に大伴市への帰還を果たす。

そして、隼人が深夜の町で目撃したのは人間から変貌する怪物=“ガ號”と、それを始末する骸骨男=スカルマンの姿であった。


【用語解説】


■大伴市
本作の舞台。
日本の某所にあると設定される架空の地方都市。
かつては“神楽”と呼ばれる小さな山村だったが、ある時を境に巨大企業大伴グループが開発に乗り出し、現在の様な巨大都市と化した。
尚、神楽村自体は既にダムの底に沈められている。
分断後の日本経済を復興させた立役者ながら、現在では大伴市のみの独自の法律やシステムが働く治外法権、別の国とも言える様相を呈しており、国民証を持たない市民以外は立ち入りが制限されている。
市民も深夜0時以降の外出を禁じられる等、徹底した管理体制が敷かれている。

(びゃく)(れい)(かい)
大伴市で隆盛を誇る宗教団体。
大伴グループとは密接な関係にある。
市の前身である神楽で発見された古代遺跡に関わる信仰を持ち、大伴市の誕生にも関わる当該遺跡は會の聖地となっている。
信者は翼を象ったペンダントを身に付けている。
元々は遺跡を調査する研究プロジェクトが発端だったらしい。
創始者は優秀な研究者転じて宗教家となった神楽辰之。
教団設立後の辰之は番場壮吉を名乗っていたとの情報も。
辰之は息子の辰男ともども、何者かの襲撃により殺害されている。
現在は辰之の妻で、死別後は黒潮豪蔵の正妻となった黒潮(神楽)沙羅が代表を務めている。
基本的な活動は市の清掃活動など、社会福祉への貢献といった慈善事業であるが……。
信者も知らない団体自体の最終目標は聖地である遺跡の力により“新人類”に生まれ変わることである。

■津軽紛争
大戦後の混乱の中で日本人民共和国大日本共和国に分裂した日本で、二国間の国境(・・)である津軽海峡を挟んで起きている紛争のこと。
過去に二度勃発しており、劇中では三度目の開戦の気配が濃くなりキナ臭くなっている。
北と南に分断された日本は、それぞれに西側諸国とUU*1からの介入を受けている模様。

■南亜戦争
数年前まで東南アジア地域で起きていた大規模な戦争。
神崎芳生が従軍していた戦場でもある。
現実世界のベトナム戦争がモチーフと思われ、このことから物語の時代設定も昭和40年代頃の雰囲気に纏められている。
数々の軍事的な秘密実験の舞台でもあったらしく、これらの話題は劇中にも暗い陰を落としている。

■BG(ブレイン・ギア)
謎の多国籍企業。
その影響力は巨大で各国と繋がりを持ち、日本では大伴グループと協力関係にある。
その高圧的な態度には黒潮豪蔵も忸怩たる思いも抱いているようだが……。


【登場人物紹介】


■御子神隼人(声:保村真)
スクープ記事専門のトップ屋。
生まれ故郷の大伴市で奇怪な事件が起きていることを知り、軽い気持ちで帰郷する中で自らの出生にも関わる因縁に巻き込まれていく。
大伴市を経済で牛耳る大伴コンツェルンの会長、黒潮豪蔵の部下であり、家族ぐるみの付き合いをしていた御子神駿の息子であり、豪蔵のことを「小父さん」と呼んで慕い、現在でも豪蔵からの配慮を受けている等、怪しい立場や職業にありながらも身柄を保障されていた様な部分もある。
自他共に認める平凡な男のようだが、過去の記憶にはっきりしない部分もあり……?
事件に深入りしていく中で豪蔵の心配をよそに、多くの人間から邪魔者として追われていくようになる。
名前は『空飛ぶゆうれい船』の主人公“滝隼人”からとされる。

■間宮霧子(声:川澄綾子)
本作のヒロインで、カメラマンを名乗る少女。
偽造パスポートを利用して大伴市へと潜入しようとしていたが、不法侵入者を探す混乱の中で本物のパスポートを持つ隼人に無理矢理に同行する形で大伴市へ入る。
正体は反体制運動家の組織に育てられた孤児で、自らも活動の経験があった。
大伴市に来たのも兄と慕っていた神晃一が潜伏しているとの噂を聞いたためであった。
見た目は華奢で小柄だが、カメラと共に晃一に教えられた格闘技の使い手でもある。

■神崎芳生(声:加藤正之)
隼人の幼なじみの若い神父で、南亜戦争で従軍神父として兵士の心のケアに当たっていた事もある。
教会兼孤児院の出身で、現在は自分が代表として孤児達の面倒を見ている。
隼人との再会を喜んではいるが……。
孤児院を手伝いに来る黒潮真耶とは深い交流がある模様。

■黒潮真耶(声:折笠富美子)
黒潮豪蔵の娘。
黒潮コンツェルンの令嬢でありながら、頻繁に孤児院を訪れては子供達と交流している。
神崎芳生とは互いに想いを寄せあう仲のようだが……。
母親の沙羅が主導する宗教組織“白鈴會”の巫女でもある。

■真行寺麗奈(声:根谷美智子)
ライダー姿の謎の美女。
大型バイクを駆って現れることが多い。
犬の怪物に変身する。

■真行寺徹郎(声:田坂秀樹)
謎の美青年。
麗奈の弟。
姉と同じく犬の怪物に変身する。

■新條剛(声:関智一)
大伴警察の若い刑事。
帰郷した隼人の監視を申し付けられる中で噂話と思っていた“骸骨男”の起こす事件に触れて自分の信じていた世界が揺らいでいくことになる。
隼人とは如月奈美の件などを通じて喧嘩友達のようになっていくが……。
名前は『ロボット刑事』の新條強から。

■立木恭一郎(声:堀勝之佑)
私立探偵。
飄々とした人の好い雰囲気をまとった五十絡みの紳士だが、大伴市へは何らかの目的を持ってやって来たらしく、当事者である隼人達自身も気づいていない事情を知っているような素振りも。
名前は『スカルマン』の立木探偵から。

■黒潮豪蔵(声:阪脩)
大伴グループのトップで、同コンツェルンの会長。
名前は『空飛ぶゆうれい船』の黒潮会長から。

■黒潮沙羅(声:小宮和枝)
豪蔵の妻。
百鈴會の指導者。
娘の真耶を新たな時代を拓く存在としようとしている。

■神代正樹(声:森川智之)
豪蔵の秘書。

■船越英明(声:秋元洋介)
大伴グループ専務。
豪蔵の古くからの腹心。

■埴輪儀助(声:辻親八)
大伴警察署長。
周囲からの評判は最悪。
大伴市の治安を統制する見返りに、可能な限りの権力を誇示しており、人気女優の鬼塚結衣を愛人にしたりもしていた。
名前は『空飛ぶゆうれい船』の埴輪国防長官から。

■石動寛治(声:大塚芳忠)
青年将校。
日本軍少佐。

■鬼塚結衣(声:大原さやか)
人気女優。
不本意ながら埴輪に囲われており、自分を卑下していた。
“偽の骸骨男”に殺害される。

■烏丸小夜子(声:かかずゆみ)
結衣の付き人で、純粋な目で彼女に憧れており、結衣も自分の境遇と比して汚れていない彼女を大事に思っていた。
芳生と同じ教会の出で、隼人とも顔見知りだった。百鈴會の信者。
結衣を守るために鳥の怪物へと変身して暴走するが、本物の骸骨男に殺される。

■宇佐神明(声:吉野裕行)
大伴製薬の研究員。
何かを掴んでいるようで、自ら隼人に接触した他、入手した「神の声」の解析を進め、それを利用して自らの立身を図ろうとしていた。
偽の骸骨男に殺害される。

■如月奈美(声:井上喜久子)
隼人の行き付けの食堂のおばちゃんの姪で、おばちゃんからは娘のように可愛がられている。
結婚して大伴市を出ていたが離婚して出戻り、食堂で働きはじめたところで隼人と再会を果たした。
隼人にとっては憧れの年上のお姉さんであり、かつては青臭い夢として将来の約束を語っていたが、再会によって本気の告白をされることとなる。
また、隼人と関わりを持つようになっていた新條にも一目惚れされており、新條もプロポーズを考えていた。
実は離婚の理由は七五三を前に子供を亡くしたことであり、夫にとって彼女は子供を生む道具でしかなかったからであった。
その傷心を埋める為に百鈴會に入信していたが、狐の怪物へと変身。
隼人に救いを求める手紙を託していたが、その手紙はおばちゃんから間違って新條に手渡され、隼人は彼女の想いを知らぬままに彼女が怪物と化すところを目撃することになってしまった。
最後は本物の骸骨男に始末される。

■神晃一(声:松田賢二)
霧子の探し人で、かつては反体制運動の闘士であった。
テロの失敗により大伴市に逃げ込んだ後に利用価値を認められて匿われたのか、百鈴會の信者となっていた。
偽のスカルマンの正体であり、骸骨男出現の混乱の陰で依頼主の指定した邪魔者を始末していた。
最後はガ號と戦う羽目になった所を本物の骸骨男に救われるも、利用価値が無くなったとして百鈴會のエージェントに始末される。

■アルカード・ヴァン・ヴォグート(声:石塚運昇)
ブレイン・ギア極東支配人の肩書きを持つ大柄な白人男性。
ビジネスパートナーである大伴グループとの交渉に当たっていた。
本部からの指令の声(声:家弓家正)の下、大伴市で起ころうとしている“何か”を予測して動いており、ある“者”を捕獲しようとしている。
名前とモデルは『サイボーグ009』のバン・ボグート。

■ヘレン(声:雪乃五月)
ヴォグートの秘書。
名前とモデルは『サイボーグ009』のプワ・ワーク人(地底人類)のヘレン。

■スカルマン(声:土田大)
大伴市に出現するようになった髑髏を思わせる仮面に黒いロングコート姿の怪人物。
劇中では基本的に“骸骨男”とのみ呼称される。
“ガ號”と呼ばれる人間が変身する獣の特性を持つ怪物を殺害している。
また、人間を殺したように見える場合でも如月奈美の例のように、対象は実は“ガ號”である人物のようである。
変身した“ガ號”を相手にしても引けを取らない程に高い身体能力を誇る正に怪人であるが、再生能力等は持っておらず、負傷した場合の回復力は常人程度であるのが弱点と言えば弱点。
上着の袖が変形して拳を覆う“ブラスナックル”
袖の内側に両端に刃が付いた伸縮性の槍“スカルスピア”
襟の部分に“スカルナイフ”といった装備を隠し持つ。
スカルスピアの刃は“スカルニードル”としても使用可能。
移動時は大型バイク“スカルマシン”を駈る等、装備が充実している。
多彩な技を使いこなすのは“技の1号”だからか?

■偽のスカルマン
第3夜より登場して隼人達と視聴者を混乱させた偽の骸骨男。
骸骨男出現の混乱に乗じて、黒幕達が邪魔者を始末するために送り込んだ殺し屋で、鬼塚結衣や宇佐神明を殺害した。
本物と違うのはマフラーを着用していないことと、銃を使うこと。
また、あくまでも姿を似せただけなのでプロではあるが超人的な身体能力までは持っていない。
本物と同様に大型バイクを使用するが形状も違っている。

■GRO/ガ號
ブレイン・ギアと大伴グループが軍事兵器として研究を進めている生物兵器。
南亜戦争の頃には既に実戦投入されている。
正式名はGROだが、日本側はガ號と呼んでいる。
原作版のガロがモチーフだが、ただの怪物扱いである。

■サークス(SIRKS)
作戦遂行の為にヴォグートがブレイン・ギア本部から呼び出した現代最強のサイボーグ部隊。
名称からサーカスに掛けており、メンバーは道化師の様な意匠を施されている。



【主要スタッフ】


  • 原作 石ノ森章太郎
  • 監督 もりたけし
  • シリーズ構成・スカルマン&GROデザイン 出渕裕
  • キャラクターデザイン・総作画監督 柴田淳
  • メカニックデザイン 佐山善則
  • コンセプチュアルアート 草剪琢人
  • 音楽 鷺巣詩郎

  • OP「ひかりのまち」歌 TOKIO / 作詞・作曲 甲斐よしひろ / 編曲 西村智彦
  • ED「明日は明日の君が生まれる」歌 Chocolove from AKB48 / 作詞 秋元康 / 作曲 藤末樹 / 編曲 齋藤真也



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最終更新:2023年03月21日 00:03

*1 ユーラシア・ユニオン=ソ連邦がモデルか?