台湾高速鉄道/台湾新幹線

登録日:2018/06/07 Thu 19:39:07
更新日:2024/02/08 Thu 20:24:06
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台湾高速鉄道とは台湾の台北と高雄を結ぶ台湾の高速鉄道。通称台湾高鐵・高鐵。
日本の新幹線技術が輸出された関係で「台湾新幹線」と呼ぶこともある。

運営会社の高鐵は公営企業ではなく民間企業である。しかし開業から一定年数が経過したら民営から公営に移管される予定。

【路線データ】

管轄:台湾高速鉄路公司
路線距離:348.5km
最高運転速度:300km/h
軌間:1435mm
電化方式:交流25,000V/60Hz

【開業に至るまで】

台湾に高速鉄道を作ろうという計画は1989年頃に浮上。台湾には高速鉄道を自前で開発できるノウハウがなく、高速鉄道の技術を外国から輸入することにした。
この呼びかけに新幹線を持つ日本とTGV・ICEを持つフランス・ドイツの欧州連合が呼応し、両者で競争が行われた。
日本式は高価だけれど地震に強い上、安全性に高い評価あり。
欧州連合は安価ですぐ導入できることをそれぞれアピール。
結果、安価な欧州連合が一旦は落札した。
地上設備・機関車はドイツ、客車はフランスが担当することとなった。ちなみに欧州連合に決まったのは決して値段が安いだけが理由ではなく、外交問題も関わっている。

しかし一度は欧州連合に決まった高速鉄道の規格は日本式に切り替わることになる。1998年6月に高速鉄道ICEの列車が脱線する事故が発生し、翌年9月には台湾で大地震も発生したのである。
欧州連合は確かに安価ではあるが、そもそも地震の少ないヨーロッパを走るため地震に対する備えは無いに等しい。台湾も地震大国であり、もし高速運転中に大地震が発生し、安全に止まれなかったら大問題である。
ここで日本が盛り返し始め、地震に対する備えが十二分にある日本が受注を勝ち取った。しかし日本が食い込めたのは車両だけで、電気や制御はヨーロッパがそのまま受注継続、線路や高架橋、トンネルなどの土木工事は国際入札で世界中の企業に幅広く呼びかけることにした。

途中土木設備への手抜き工事など問題は多々あったものの、一応設備・車両が完成。試運転列車の運転士にJR西日本の元新幹線運転士が選抜された。営業運転での技術指導はJR東海が担当する予定だったものの、日欧が混在する状態では責任ある指導ができないと通告。妥協案としてフランスとドイツから高速列車の元運転士を連れてきて、台湾人の運転手への指導も行うようにした。
こうして開業を迎えたが、台湾人運転手の育成が間に合わず開業当初は運転手が全員フランス人だった。

2016年に南港~台北間が延伸開業を果たし、今後は左営駅から屏東までの延伸が計画され、早ければ2029年に開業予定。


【使用車両】

  • 700T形
700系をベースに開発された専用車両。川崎重工・日立製作所・日本車輌の3社で製造され、日本から台湾まで船で運ばれた。
12両編成で最高速度は300km/h。日本に比べてトンネルの断面が大きく、騒音の基準値も違うため先頭部の形状はそこまで複雑ではない。また運転手用のドアがなく、乗客用のドアから運転手・車掌が乗り降りする。更にドアの開閉スイッチが車掌室ではなく、客席用のドアの横に設置されている。
設備は標準車(普通車)と商務車(グリーン車)に分かれている。座席は日本とほぼ一緒の回転リクライニングシート。
1次車は全て日本製だが、2次車については内装設備のみ台湾製としている。
運転席のマスコンは500系と同じ横軸ツインレバー式となっている。
老朽化に伴い、今後はN700S型をベースとした新型車両に置き換え予定。

  • DD16形/DD14形
形式からもお判りのように日本からやってきたディーゼル機関車で、前者はJR東日本、後者はJR西日本からの譲渡車。
整備工場での入換作業や建築限界測定車の牽引に使われる。

ご存じ0系新幹線で、史上唯一となる日本国外を走った0系である。
こちらもJR西日本からの譲渡車で、建築限界測定車として使用。
上述のディーゼル機関車にけん引され、レーザー光で測定を行っていた。
2021年に運用を終了し、現在は台南駅前に展示されている。

【駅一覧】

  • 南港…始発駅。地下1階にホームが設けられている。2016年にこの駅まで延長された。
  • 台北…南港駅同様地下にホームが設けられている。在来線の台湾鉄路管理局(台鉄)と同じ階にホームがある上、壁もないためお互いのホームが見える。
  • 板橋…台鉄乗り換え。地下にホームがあるが、台北行と左営行のホームが違う階にある2層構造になっている。
  • 桃園…台鉄の桃園駅とは離れた場所にある。中心部へ行くにはバスで20~30分程度かかる。桃園機場捷運開通後は桃園国際空港への乗り換え拠点としても機能する。
  • 新竹…台鉄乗り換え。通過線とホームが分かれた構造をしている。中心部へ行くには台鉄に乗り換える必要があるが、台北へ向かって高速鉄道で通勤する人が増えたため利用客はそこそこ多い。
  • 苗栗…台鉄台中線乗り換え。新竹駅同様通過線とホームが分かれている。駅の開業は2015年と高速鉄道の開通よりも後だが、スペースは高鐵建設時から確保されていた。
  • 台中…台鉄台中線乗り換え。苗栗・新竹同様通過線とホームが分かれている。中心部へは台鉄に乗り換える必要がある。
  • 彰化…単独駅。苗栗同様駅の開業は2015年。駅舎は自然光をふんだんに取り入れる設計になっている。中心部へはバス連絡となる。
  • 雲林…単独駅。中心部へは今の所バス連絡となるが、将来的には中心部から駅までの鉄道を建設する予定。
  • 嘉義…単独駅。中心部へは路線バスで連絡している。将来的には観光鉄道が乗り入れる予定。
  • 台南…台鉄沙崙線乗り換え。中心部へは台鉄で連絡している。
  • 新左営…台鉄・高雄捷運乗り換え。駅は街の中心部に設けられている。現在の終着駅で車両基地はこの駅の近くにある。

【乗車券】

日本と同様の対距離制で、標準車と商務車で運賃が異なる。当然のことだが商務車の方が高い。
主要駅同士の標準車指定席運賃
  • 南港-台中:750台湾ドル
  • 南港-新左営:1,530台湾ドル
1台湾ドルは大体日本円換算で4円程度なので、全区間乗り通しても片道7,000円かからない。

割引も充実しており、満65歳以上の高齢者に適用される敬老割引はパスポートを持っている外国人にも適用される。割引率は50%とかなり高い。

乗車券の発売場所は駅に限らず、ネットの専用サイト・アプリやコンビニでも買える。

特に列車名は振られていない。各駅に停車する列車を各站停車、通過駅がある列車を直達と呼ぶことはある。
自由席の設定もあり、多客期には商務車以外全車自由席という列車もある。

開業当初は自動改札機に切符を入れる向きが細かく指定されていた。乗車区間・座席、号車番号・列車番号などが書かれた表面ではなく、裏面を上にして、矢印の書かれた向きに入れないと弾かれるという鬼畜仕様だった。このため券面には
背面朔上 挿入票口(訳:裏面を上にして改札機に入れろ)
と書かれていた。流石に不評だったため、2015年までに改修された。余談だが、台鉄の自動改札機は日本製であり、乗車券の入れる向きは細かく指定されていない。
なお乗車駅の改札を通過してから3時間30分以内に下車駅の改札を通過しないと不正乗車とみなされる。

車内販売で弁当は売っていない。車内で買えるのはパンなどの軽食や飲料などで、弁当が欲しい場合は駅のホームで買おう。

【ライバル】

  • 飛行機
ほぼ高鐵の勝ち。開業前の2000年には台北-高雄間では4社で1日50往復も運航していたが、高鐵の開業を前に減便を繰り返し、2012年には台北-高雄間の航空路線が消滅した。
  • 台鉄
競合しつつも共存する関係。高鐵は都市間輸送、台鉄は高鐵ではアクセスしづらい場所へのアクセスを担い、高鐵の駅と街の中心部を結ぶフィーダー路線としての役割も持っている。
  • 国道客運(高速バス)
運賃が安価で一定の根強い利用客が居り、しかも運行は24時間体制、ドアツードアで運んでくれる。高鐵開業で同業同士での価格競争が熾烈になっており、高鐵にとってはそこまでライバルというわけではない。

【その他】

  • 日本映画「藁の楯」のロケが高鐵で行われた。これは新幹線が舞台となるシーンがあるためだが、JR東海は安全上の観点から映像作品のロケを原則拒否しているため、雰囲気の似ている高鐵に白羽の矢が立った。なお高鐵はロケに際して貸切列車を用意するなど全面協力している。
    座席枕カバーに出演者の大沢たかお・松嶋菜々子がサインをし、それが台北駅に展示されていたこともある。
  • 700T形の鉄道模型は関水金属(KATO)がNゲージサイズで発売している。当初は台湾でのみ販売されていたが、2018年夏には日本でも発売された。
  • プラレール化もされているが、日本では発売されていない。欲しければ台湾まで行こう。
  • 彰化駅近くに「Railway To Galaxy 銀河の鉄道」という名前のカフェレストランがある。テラス席からは高鐵の列車が眺められるとあって人気がある。なお台湾で平仮名の「の」はよく使われるらしい。



追記・修正は台鉄のプラレールを手に入れてからお願いします。


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最終更新:2024年02月08日 20:24