エム/阿僧祇豪志

登録日:2018/05/29 22:07:30
更新日:2023/03/05 Sun 20:55:32
所要時間:約 20 分で読めます




「初めまして。俺は、エムと言います。よろしく」

エムとは、時雨沢 恵一のライトノベル『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』の登場人物にして同作のキーパーソン”ピトフーイ”のパートナーである。
CV:興津 和幸





【SECT.1 概要】


◉容姿

チーム戦バトルロイヤル《スクワッド・ジャム (以下SJ) 》への参加を決めた同作の主人公・レン にピトフーイが紹介した凄腕の男性GGOプレイヤー。
キャラクターネームの由来は……。まあ、深くは語るまい。少なくとも”マップ”や”マッパー”の頭文字ではないと思われる。
ついでにゲーマーで”M”ではあるが、某小児科医とも関係ない。

アバターの外見は身長190cm以上ある壮年の男性という、大変威圧感のあるもの。がっしりした幅の広い肩に分厚い胸板、レンのウエストより太いであろう両腕とボディ・ビルダーを思わせる魁偉の持ち主である。
ウェーブのかかった髪は濃い茶色をしていて、肩まで伸びて頭を覆っている。
巨岩のような髭のない顔をしている。意外にも目はクリッとしているが愛嬌はまるで感じられない。

上下に毒々しい緑色の迷彩服を着ており、頭には服と同様迷彩柄のブッシュハットを被っている。
戦闘時にはブッシュハットに短冊状の迷彩布を幾重にもぶら下げ、目立つ頭のシルエットを曖昧にしている。
また、上半身には防弾プレート入りの装備ベストを身につけ、M14・EBR用のマガジンポーチを8本以上付けている。
背中には大型のバックパックを背負っていて、中には自慢の楯をはじめ戦場で役立つツールが入っている。
脇腹には大型のプラズマ・グレネード、通称”デカネード”を装備している。
右腿にはサイドアームのHK45を入れたホルスター、左腿にはM14・EBRとHK45の予備マガジン入りのポーチをそれぞれ装着。
ただでさえ大柄なエムがフル装備をすると尚更迫力がある威容となる。


◉性格

アバターの外見に似つかわしい、寡黙で冷静沈着な男性プレイヤーである。
ただし、戦闘中を除いてピトフーイには頭が上がらず、彼女のわがままに振り回されることも多い。
ゲーム内ではぶっきらぼうな物言いをするが、姿形とは裏腹に物腰はとても丁寧。
初対面のレンと二人きり担った時にはとても緊張した様子だった。

作戦立案に長けており、SJ2以降は所属チームのリーダーを勤めている。
唯一エムがリーダーではなかったSJ1でも、大会に不慣れかつピンクの服装が目立つレンを敢えてリーダーにすることで、敵チームをおびき出すための囮の役割を果たさせている。事実SJ1ではSHINCとの戦いを除いた全ての作戦行動をエムが指示している。
そのマネジメント能力はあのピトフーイさえも高く評価しており、作戦指揮を命令することはあってもエムの決断そのものに反発することはない。そもそもSJ2以降に彼をチームリーダーに推しているのがピトフーイで、口ではとやかく言いながらも信頼のほどが窺える。

レンに初めて会った時には演習場で彼女の能力を確認し、その後銃声の距離と方角を覚えさせる訓練を施した。
エム自身もGGOの研究に余念がなく、鉄道車両のようなフィールド上のオブジェクトに銃撃を加えて強度を確かめ、敵をオブジェクト越しに撃ったり自分が身を隠したりできるか調べていたようだ。

大変地理感覚に優れており、一度見た地図を頭の中で完璧に覚えることができる。
当初レンはいたく感心していたが……。



【SECT.2 使用銃器、そして”楯”】



「チキンな俺用の、チキン過ぎる防具さ」


エムの使う主な武器はM14・EBR》という、古いバトル・ライフルの強化版にあたる銃である。
威力が強い7.62mm口径のため有効射程は800mほどあり、セミオートでの中距離射撃を得意とする。
基本的には開けた場所で相手との距離を保って戦うが、近距離における戦闘でもEBRを使っている。
遠近両用に対応できる汎用性の高さと、エムの卓越した射撃技術が合わさり強力な相乗効果を発揮する。
また、待機時にはスリングでこの銃を背負っている。

室内戦闘では《HK45》という独・ヘッケラー&コッホ社製の45口径自動式拳銃を使用する。
マガジンキャパシティは10発で、右側の小さなレバーを上げると安全装置がかかり水平で射撃する。
ちなみにゲーム世界のGGOでは暴発のリスクより咄嗟に反撃できるメリットを優先するため、プレイヤーはあまり銃に安全装置をかけないという。エムは転ばぬ先の杖としてSJ1前の訓練でレンに懇切丁寧にHK45の使い方をレクチャーしているが、後にレンもエムも想定していなかったであろう局面でこの教えは活かされることとなった。
……伏線と言ってしまえばそれまでだが。

彼自身はあまり使わないが、SJ1でレンに貸し与えた黒いつや消しのコンバットナイフを所持している。
SJ1直前にレンに話した生々しいナイフ格闘術から、エムもまた相当な腕前だと思われる。
だがエムがナイフを使ったのはSJ1でレンが隠れたスーツケースに細工をした時くらいで、対人戦におけるナイフ裁きのほどは不明。

武器ではないもののエムを象徴するアイテムとして、比類なき強度を有する最強の”楯”がある。
普段は一枚につき高さ50cm、幅30cmほどに折り畳んでバックパックに収納していて、展開には筋力値の高いエムですら気合いを入れて両手で左右に広げる必要がある。
8枚全てを展開した状態では高さ50cm、弧の長さ240cmほどの扇状になり、弧の中央にはM14・EBRを差し込むための溝がある。
その強度は突出しており、7.62mmクラスの銃弾までは目の前で撃たれても弾くという。

なおライフル弾の貫通力は想像以上に高く、5.56mmクラスでも一、二発でブロック塀を崩してしまう。
木造建築の家壁や乗用車のドアをも容易く撃ち抜くため、かつてピトフーイはレン「車で安全なのはエンジンブロックの裏とホイールの裏だけ」とのアドバイスをしている。

この楯の材質は”リアルにはない、宇宙戦艦の装甲板”とのこと。
GGO最強の材質で、エムはアングラな素材屋から猛烈に高い値段で購入したらしい。
非常時を想定して楯の背面には小さなハンドルが溶接されている。

ネタバレ注意‼︎

SJ2でも楯は活躍するが、この大会からはエムの楯をもってしても防ぎきれない最強の”矛”が現れた。
それが女子高生アマゾネスチーム《SHINC》が手に入れた、14.5mm弾を使う第二次世界大戦中の対戦車ライフル《PTRD1941 (デグチャレフ対戦車ライフル) 》である。
堅固な楯そのものは14.5mm弾をも防ぎきったが、莫大な圧力は楯を上下で連結している金属のジョイント部分を破壊した。さらに運の悪いことに、吹き飛んだ楯の一枚は反応が遅れた仲間の太っちょスナイパーの顔面に直撃してしまう。
この一撃で首の骨が折れたとゲーム上認定された太っちょ男は即死し、このチーム初の退場者となった。

エムとピトフーイが所属する《PM4》にも対物ライフルの《M107A1》があったが、SHINCスナイパー・トーマとの凄絶な”砲撃戦”の末に再び吹き飛ばされた楯の一枚がM107A1の銃身にぶつかって故障させられた。
残りの覆面男達が沈黙しピトフーイが興奮に狂喜する中、大口径ライフル同士の戦いはエムにとって苦い結果に終わった。

この後追い打ちをかけるようにKKHC残党シャーリーの狙撃によりピトフーイが瀕死のダメージを受けてしまう。
自らの死が間近に迫っていることさえも愉しむピトフーイが熱狂のあまり失神すると、エムはバラバラになった楯のうち被弾しなかった二枚を彼女の腹に置いて防御とした。
また、ログハウスでの強豪チーム《MMTM》との戦闘では復活したピトフーイが楯の一枚を左手に握り、MMTMリーダー・デヴィッドの銃撃を防いでいる。SJ2で破損した楯のジョイントは後に修復し、この戦いでの反省点を生かし以下のような工夫が行われた。


SJ3では楯を簡単に分割できるように細工が施されている。
終盤にはピトフーイとフカ次郎が分割した楯を片手に闊歩しているが、彼女達やエム並みの高いステータスがなければ重い楯を持つことさえままならないのが欠点。実際に《LPFM》の4人で敏捷性重視のレンだけはこの楯を持つことが不可能だという。


「俺には分かる!楯兵士!これは流行る!」


「二人とも体力値が高いからできるんだ!おいそれと真似できるかっつーの!」


楯以外にも距離計付きの単眼鏡や地形ごとに対応した迷彩ポンチョをバックパックに入れて運んでいる。

ネタバレ注意‼︎

8月のテストプレイではピトさんが仕入れた”ドローン”の運搬と操縦を任されている。原作1巻の頃すでにレンが話題にしているが、実際に実装されたのは原作6巻直前のようだ。
ちなみに撃墜されるとロスト扱いになる。おお、イレブンユキチ……。
完全自立作動にするとゲームバランスが著しく損なわれることを懸念したのか、静止以外はマニュアル操縦が必要なロートル。一回の飛行可能時間はわずか数分で、バッテリーの交換が必要らしい。
”敵NPCチーム”の様子を偵察するためLPFMが使用、バッテリー交換をしようと着陸したところを対物ライフル使いロックに撃たれてしまう。
幸いロストだけは免れたものの4つあるプロペラのうち右側の2つが破壊され、レンにより回収されたドローンはその役目を終えた。
なお、予備プロペラをつければ再度飛べるようだが、この時点ではまだ流通していなかったという。



【SECT.3 ラインなし狙撃】



「じゃあーー?どうやって狙ったの?」


「直接」


高いステータスと優秀な判断力、豊富なアイテムを持つエムを特徴づけるプレイヤースキルといえばやはり”ラインなし狙撃”だろう。
”ライン”とは銃口を向けられたプレイヤーが見る赤い弾道予測線《バレット・ライン》のこと。
逆に攻撃側にとってのアシスト機能《バレット・サークル (弾道予測円) 》は銃の引き金に指を触れることでプレイヤーの目の前にライトグリーンの円が現れ、心臓の鼓動に合わせて収縮する。
円の大きさ自体は目標までの距離や銃の性能、プレイヤーの能力によって変動する。

つまりラインなし狙撃とは”バレット・サークルを使わないことで相手にもバレット・ラインを見せない”という高等テクニックである。
言葉にすると簡単だが、実際にはスコープを覗いて自力で狙う場所を計算し、撃つ寸前まで指を引き金にかけないことが求められる。
その性質上、現実でも実銃射撃の経験がある人間でなければラインなし狙撃を行うことは実質不可能といえる。
初見殺しともいえるこの攻撃に、BoB3本戦出場者のデヴィッドをリーダーとするMMTMもSJ1ではなす術もなく6人中5人を瞬殺された。

ただラインなし狙撃はエムの専売特許というわけでもなく、SJ2ではピトフーイがエムには及ばないものの高度な射撃テクを見せて対象を狙撃している。その他に緑髪の女性プレイヤー・シャーリーを含めた《KKHC》のメンバーはリアルの職業が関係して5人全員がラインなし狙撃を行うことができる。
テストプレイでレン達と戦った、ジェイコブ率いる”NPCチーム”もまたラインなし狙撃の達人ばかりである。

エムのラインなし狙撃はSJ2以降多くの参加・観戦プレイヤーに周知されていて、SHINCやMMTMなどの強豪はエム対策を念頭において戦術を組み立てている。

予測線ありきで異常なテクを見せた誰かさん対策にもなる…かもしれない

【SECT.4 人間関係】


エムの交友関係はやはりピトフーイを中心に広がっているようだ。

◉ピトフーイ

エムのパートナーであり、彼の最愛の女性。エムは彼女を”ピト”と呼ぶ。
リアルでも関係が深いピトフーイの横暴を恐れる面もあるが、人命に関わらない限りは甘んじて受け入れている。
たとえ顔面や股間を殴られてもとやかく言わないのは彼がエムだからである。
一方で射撃能力はエムの方が高いからか、GGO内の作戦指示に限ってはピトフーイも背くことはない。

レン/小比類巻 香蓮

このお話の主人公で、知る人ぞ知るピンクの悪魔
SJ1で共闘し、SJ2で敵対し、SJ3以降は再び同じチームで戦地に赴いている。
レンの現在のプレイスタイルはエムの影響によるところが大きい。
とはいえ彼の残念な面をよく知るのもレンだったりする。

◉フカ次郎/篠原 美優

レンのリアル親友にして妖精の国から来た廃人ゲーマー。
コンバートしたてのフカ次郎に巨額の資金 (アニメ7話では10,000,000クレジット=リアルマネー換算で10万円) を出資する。
参考にフカの愛銃MGL-140は一丁3,000,000クレジット (アニメ7話より、リアルマネー換算で3万円) でその金額の途方もなさがわかる。
SJ2の後は直接交流するも、堅物のエムはフカのジョークに乗り切れない節がある。

◉SHINC

リアルではかわいい女子高生、GGOにおける姿は血に飢えたアマゾネスな皆様。
SJ1の最後の最後にスナイパーのトーマとは”一騎撃ち”を演じ、その因縁はSJ2に持ち越される。
SHINCはエムを”恐ろしいほどの名スナイパー”と評しており、SJ2では彼の鉄壁の防御壁を打破するために秘密兵器を用意する。

◉MMTM

古参GGOプレイヤーのデヴィッド率いるGGOガチ勢。
SJ1でエムのラインなし狙撃の前に敗れ去ったが、チーム一のガンマニアらしいラックスは撃たれながらもそのタネに気付いていた。
それ以降のMMTMはリーダーの意向かピトさんと戦うことが多いが、作中の台詞からエム対策の戦術は構築済みのようだ。

◉ZEMAL

説明不要の全日本マシンガンラバーズ。
テストプレイでは、彼らに好きなマシンガンを聞かれたエムはドイツの傑作《MG42》の名を挙げている。
激レアアイテムのMG42に心を奪われたZEMALの5人はあろうことかエムを勧誘し始めた。……OB!

◉小説家

説明不要のこのお話の作者。
大半のキャラクターとは異なり、エムはこの人について明確な非難の言葉を口にしていない。
そのおかげかアニメ5.5話の予告ではナレーションを担当している。クレジット積んだのか⁉︎



追記・修正は15時ちょうどに手紙を読んでからお願いします。



















以下、ネタバレ注意‼︎










『やほうエム。奮戦中かね?ちょうど1時間がたったら読むように言いつけておいたけど、破ってないだろうね?破っていたら殺すよ?今すぐしまえ』


『私の代わりに参加してるんだから、代わりに存分に楽しみなさいよ!これはゲームであって、遊びなんだからね!1時間以内でふがいない死に方をしたらブチ殺すからね。でも、たった二人で1時間以上生き残ったのなら、本当にすごいよ。頭ナデナデして褒めてやるよ』


『そのあとに死んだら、やっぱり殺すからね。自殺もダメね。なんとしても生き残りなさいな。バトルは緊張感がないと、やっぱり楽しめないよね!さあさあ、存分に楽しめっ!生を感じなさい!いじょー』






















SJ1終盤、上記の手紙を読んだエムはあろうことかチームメイトのレンにHK45の銃口を向ける。
レンは発砲より速くバレット・ラインを回避、エムの二発目でニットキャップを落とされながらも三発目が撃たれる前にエムに飛びかかる。
三発目の銃弾が飛んでいくすぐ横でレンはHK45に安全装置をかけ、逆にP90でエムの右手を撃つ。
喉元に銃口を突きつけられ、レンが撃つそぶりを見せたその時だった。


「いやだあああああああああああああああ!死にたくないっ!ーーどどどどどうか……、ままま待ってください!どうか……、お願いしますっ!撃たない、でください……。嫌だあ!止めてください!」


【SECT.5 デスゲーム】


……ある意味、ここからが本記事の本題である。

こともあろうにエムはゴツい顔を醜く歪めて号泣したのだった。鼻水まで垂らして。
呻くエムの口調は弱々しい敬語になっており、本人曰く「こっちが地の僕」とのこと。
あまりの豹変ぶりに当初レン”プレイヤーが変わったのではないか”と疑ったほど。
なお、普通これだけの興奮状態になるとVRゲームハード《アミュスフィア》の安全装置が作動して強制シャットダウンされるはずだが、後述の理由からエムはゲームを続行できている。

エムは「SJ (1) で死んだらリアルの僕も死んでしまう」と泣きながら命乞いをする。
その理由は上記の手紙を読んだからである。言うまでもなく差出人はピトフーイで、半狂乱になったエムは「殺すと言えばリアルで本当に殺す」彼女の恐ろしさをレンに説明する。……あなたも大概おかしいが。

レンに銃口を向けた理由はレンを殺してリーダーになり、その後降参する”ため。
件の手紙には降参のことは書かれておらず、その抜け穴を言い訳にする算段だった。
一応納得したレンは無様な姿を晒すエムをその場に置いて最後の敵チーム・SHINCとの死闘に臨むのであった。
後に戦線に復帰した彼は巧みな狙撃でレンを助け、辛うじてアマゾネスに勝利した。

この件以来、エムとピトフーイのリアルを警戒しレンは二人から距離を置くが……。



【SECT.6 エムのリアル】


SJ2開始を前にしてレン=香蓮はストーカーに狙われることとなる。
久々にGGOにダイブして (アブない歌を歌いながら) P90を買い直して浮かれるレン線の細い少年アバターがつけまわしていた。
この少年アバターは、香蓮のプレイ開始を見計らってGGOにダイブしたドイツ製SUV内の人物がその正体。
断言はできないが、おそらくは”エムのリアル”が別アカウントを使ったものだと思われる。

その翌日、公園に散歩に行った香蓮の後ろに一人の若い男の姿があった。
20代後半の男の身長は175cmほどで、スポーツ選手のような引き締まった体つきの鋭い目をした行った美形である。
髪は黒く、やや細いウェーブで肩につくほどの長さがある。

男は帰路につく香蓮の後をひたすらついてくる。
初めは見惚れていた香蓮も警戒心を露わにして歩みを早めるが、後ろから名前を呼ばれて咄嗟に振り向いてしまう。
香蓮の後ろに声の主がいた。
そして、声の主は”エムのリアル”を名乗った。

混乱する香蓮はひとまず自称エムの男を住んでいるマンションの展望室に案内する。どのように香蓮がレンであることを突き止めたのかは口を濁したまま、自分のフルネームを答える。

男の名は、阿僧祇 豪志

彼の話では、香蓮の助けがない場合、ピトフーイのリアルと豪志自身が死ぬという。
二人は《PM4》なるチームを結成しSJ2優勝を狙うが、優勝が叶わないかゲーム内で死んだら二人は自殺するとの話だった。

ピトフーイの狂気に関しては、こちらの方が詳しいだろう。

なお豪志が警察や医師に相談しないのは、「ピトが望まないことを僕は望まない」からとのこと。
これを聞いた香蓮は豪志を実際相当おかしい」と結論づけた。
飲み干した紅茶の空き缶を自販機脇のゴミ箱に捨てた香蓮が振り向くと、目の前に豪志がいた。
そして太い右腕が彼女の頭を掠めて壁に伸びて、手が打ち付けられた。

……そう、世に言う壁ドンである。

そして豪志は叫んだ。


「今まで一度でも、本気で誰かを愛したことがあるかっ?自分の命を全て捧げてもいいと思えるほどの相手と、愛し合ったことがあるか?」


壁ドン相手ではない人への愛のメッセージを。
人生いろいろあるなあ。

気を取り直した香蓮は豪志の話を聞くことにし、二人分の飲み物を購入した。
豪志は二杯目のブラックコーヒーを頼んだが、彼はブラックコーヒーを飲むと胃が荒れるという。
当然訝しむ香蓮だが、この男はこう答えた。
「でもピトは、コーヒーが大好きなんです。特にブラックが。だから、僕も飲みます」
…………愛って怖い。

SJ1とは異なりSJ2で自分が死ぬかもしれないことを恐れないのは、”ピトが死んだ後に死ぬのはとりたてて怖くないから”とのこと。
そんな豪志だが、二人の死を防ぐために香蓮にSJ2でレンがピトフーイを倒すことを提案する。
それにはかつてレンとピトフーイが交わしたある”約束”が関係していた……。

この時豪志=エムはPM4のメンバーとして本気で戦うことを宣言する。



















以下、物語の核心に繋がるネタバレです‼︎










「もっとか?もっと下を殴ればいいのか?」


「もっとです!もっと下を!」









「ああ、そこ……」










【SECT.7 エムがMである理由】


SJ2の後、香蓮と美優を自慢のSUVに乗せた豪志は、ピトフーイの厳命で二人の馴れ初めを語る。
豪志がスマホで示した写真には一人の太った青年が映し出されていた。
この太った青年こそが、ピトフーイと知り合った頃の豪志である。

物心ついた頃から太っていた豪志は、大学時代に就職活動が難航しストレスで過食に走る日々を過ごしていた。
そんな彼はある日、あまりにお腹が空いて最寄りのオシャレな喫茶店に入る。
そして水を運んできてくれた一人のウェイトレス=ピトフーイのリアルに一目惚れした。

彼女の美しさに囚われた豪志は彼女の後をつけた。
……おまわりさん、コイツだ。

ストーカー行為にバレないように細心の注意を払ううちに、いつしか並外れた地理感覚が身についていたという。

豪志はストーキングを繰り返すうちに、スーツ姿のイケメンサラリーマンが彼女の後をつけていることに気付いた。
カフェに数度客として訪れていた彼は……いや、”彼も”ストーカーだったのだ。
もうやだこの国。

サラリーマンは彼女を羽交い締めにして人気のない公園に連れ込み、一瞬呆然としたものの猛烈な殺意を滾らせた豪志は彼女が消えた方へと突進していった。
ボコボコにされながらもサラリーマンを追い払った豪志は、彼女の介抱を受けて自宅に招かれた。

そして悪夢が始まった。

気がつくと四肢を縛られていた豪志は、一晩中彼女の罵詈雑言と暴力を浴びせられたのだった。

そう、彼女はあのピトフーイのリアルである。魔王である。
暴行の件を警察に言ったら逆にストーキングをバラすと脅迫され、”恥ずかしい写真”まで撮られたという。

それから彼女の”恋人”とされた彼は、呼び出されたらどんなに忙しくても必ず行かなければならなくなった。
もちろん就職活動はおろか大学もマトモに通えなくなった。
……そして豪志はそんな日々を素晴らしいと思うようになっていた。調教済みである。
ちなみに当時デブだった豪志だが、呼び出されたら走ったり朝まで食事抜きでつきあわされたり (意味深) しているうちに自然とダイエットに成功。ある程度痩せてからはピトさんに恥をかかせないように身だしなみにも気を使うようになったという。

今では彼はピトフーイのリアルが社長を務める会社事務所の役員にして、専属運転手にして、たぶん恋人にして、しもべ兼下僕兼奴隷である。……最後の三つが一緒だって?気にスンナ!
GGOを始めてからは休みを取って海外に実銃を撃ちに行っている。……そりゃ上達もするよなあ。
現在の豪志は基本的にイケメンだが、時たまピトさんに股間を殴られている。他の場所も殴られているが。
原作6巻ではピトさんのトレーニングにつきあいながら股間におねだりしている始末。
……幸せそうで何よりである。これがあれか、割れ鍋に綴じ蓋か。

また、ピトフーイ同様彼もまた初代家庭用VRゲームハード《ナーヴギア》と自分用の《アイソレーション・タンク》を持っている。SJ2では豪志のタンクの蓋には後付けの南京錠が取り付けられていた。
SJ1でひっどい泣き顔を晒すほど興奮しても強制ログアウトさせられなかったのは、安全装置を任意でオフにできるナーヴギアを使っていたからこそ。



【あとがき】

原作5巻”あとがき”の主役はエムさんが務めている。
その名も”エム射撃ゲーム”。……要はエムを的に見立てた射的らしき何かである。
ピトフーイになった気分で撃ちましょう。ハイになれます。



追記・修正は愛する人に股間を殴られながらお願いします。

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最終更新:2023年03月05日 20:55