ゼウスの妻・愛人たち(ギリシャ神話)

登録日:2018/05/02 Wed 12:40:22
更新日:2023/10/19 Thu 20:14:09
所要時間:約 17分で読めます




ギリシャ神話の主神ゼウスは人も神も従え宇宙に君臨する偉大な統治者であるが、
それ以上に愛多き神としてもよく知られている。
彼は自分に妻がいようと相手が人妻であろうと、一度これと見定めた相手なら
神の力を存分に操り手段を問わずものにしてしまい子を孕ませてしまうのである。
さらにあくまで自分を拒む相手には残酷な仕打ちを行ったりなど、その奔放さはとどまることを知らない。

この項目ではゼウスと性愛関係を結んだ、もしくはその標的として選ばれた人物たちを取り上げる。
個別項目が存在する人物もいるため、以下の項目とあわせて参考にしてほしい。






【妻たち】

ゼウスと正式な婚姻関係で結ばれた女性たち。
当然ながら全員が女神、それもティターン神族直系の高貴な血筋を持つ大女神たちである。
彼女らはゼウスとの間にこれも高名な神・妖精らの子をつくり、自らもその知恵や手腕でもって主神たるゼウスを支える役目をまっとうした。

しかし彼女らも、必ずしも恵まれた生涯を送ったとは言い難い。
彼女らはオリュンポス12神の長であるゼウスにとって、自らの地位を脅かしうる政敵にもなりえたからだ。
彼女ら自身ももとから力ある女神であり、さらに産まれてくる子次第では父をもしのぐ勢力を身につけてしまいかねない。
事実ヘラはゼウスに対して、他のオリュンポスの神々と示し合わせて造反したことさえあるのだ(ヘカトンケイルの項目参照)。
そのためゼウスからの処遇も酷薄なものになることが多く、メティスのように事実上粛清されてしまった神もいる。

メティス

ゼウスの最初の妻となった智慧の女神でオケアニデス*1のひとり。
アテナの母とて知られる。

ゼウスに助力してクロノスの腹から兄弟たちを吐き戻させ、ティタノマキアの勝利に貢献。
その後ゼウスに妻として迎えられる。
ゼウスから逃げまわったあげく孕まされたという伝承もある
しかしウラノスとガイアのメティスの子が男児であればゼウスの地位を脅かすだろう
という予言を恐れたゼウスによって丸呑みにされてしまった。

しかしすでに胎内に宿していた娘アテナが父ゼウスの額を打ち割って誕生。
メティス自身もゼウスと一つになって彼の体内から助言を行うようになり、
夫と娘が彼女の叡智と力を引き継いでいくことになる。

テミス

ゼウスの二番目の妻でティターン十二神のひとりである法と掟の女神。
メティスなき後のゼウスは妻として叔母であるテミスを選び、彼女との間に
時間の三女神ホーライ三姉妹運命の三女神モイライ三姉妹をもうけた。
テミスは彼女らを産みだすことで自然界に秩序をもたらしたのである。

ゼウスが正妻としてヘラを選んだ後も、ゼウスの側近として傍らに立ち、
神の法に背くものらの名をゼウスに伝えていたとされる。

ヘラ

ゼウスの三番目の妻で、彼の正妻として広く知られている。
しかしそのなれそめは、すでに妻帯していたゼウスが彼女のあまりの美しさに心奪われ
なりふり構わず手を出そうとした
のであって、あまりきれいなものとは言えない。

ヘラはそのゼウスのアプローチに際して正式に妻として迎えていただけるのならと返答。
ゼウスは泣く泣くテミスと別れ、ヘラを妻とした。泣きたいのはテミスだと思うんですが
このエピソードが示す通りヘラは婚姻という契約を守護する女神である。
ゼウスの愛人たちへの処罰が手厳しいのはこのためであろう。
詳しくは個別項目を参照されたし。

ディオネ

ウラヌスガイアの娘でティターン神族のひとりである天空の女神。*2
ティターン十二神は彼女を加えて十三神とされることもある。
その名はゼウスの女性形とも言われており「女ゼウス」という異名を持つ。
地方によっては彼女はゼウスの妻とされ、ふたりがともに同じ祭壇で祀られていた。
一説によるとアフロディテはゼウスと彼女の娘だという。


【愛人たち】

正式な婚姻によってでなく、ゼウスと性愛関係を持った(もしくはその対象となった)女性たち。
多くの場合はゼウスが無理矢理迫った結果である。
女神や妖精など天の住人達はもちろん、人間も数多くその毒牙にかかっており
少女に人妻、さらには美少年までもがそのえじきとなった。
彼女らもまたゼウスとの間に神、もしくは英雄となった子らをもうけている。

しかしいかに相手が最高神とはいえ道ならぬ恋であり望まぬ婚姻であったことは変わらず
多くの場合母子は自分たちの境遇を悲しみ、家族や世間からの扱いもまた冷たいものであった。
何より正妻であるヘラからの仕打ちは苛烈を極めた
ヘラは夫であるゼウスに向けるものよりもはるかに激しい嫉妬心・復讐心を愛人やその子らに向けた。
そして過剰とも思える残酷な罰を母子らに科したのである。



○女神・妖精たち

デメテル

言わずと知れたオリュンポス十二神のひとり、ゼウスの姉であり妹である大地母神
ゼウスと臥所(ふしど)をともにし(あるいは無理やり手籠めにされて)、若き乙女の神コレー・・・
つまり後のペルセポネを産んだ。

ペルセポネ

こともあろうかゼウスの娘であり、兄貴の嫁である彼女も、ゼウスと交わり子を産んだという伝承が存在する。
それはギリシャ神話の密儀の一つ「オルフェウス教」における伝承である。もうハデスは謀反起こした方がいいんじゃないかな…

ゼウスはペルセポネに蛇の姿で迫り、彼女との間に少年神ザグレウスをもうけた。
しかしザグレウスはヘラの怒りを受けて差し向けられた巨人たちにバラバラに引き裂かれ食い荒らされてしまう
だが心臓だけはかろうじてアテナの手によってゼウスに届けられ、そしてゼウスに飲みこまれた。
その後ゼウスはセメレと交わり、ザグレウスの心臓はディオニュソスのものとして再誕したのだという。
ちなみに、ゼウスが娘である彼女に手を出したのはこれが最初で最後ではない。
奴はなんとハデスに化けてペルセポネのベッドに侵入し、交わった事もあるのだ。
その結果生まれたのが、悪夢の女神・メリノエである。
彼女は残酷な事にゼウスとハデス両方の性質を受け継いで、白黒の斑の姿をしていたという。

アフロディテガイア

半人半馬の獣人ケンタウロスの起源となった伝承のひとつとして、ゼウスを父親とするものがある。
海の泡から誕生したアフロディテは流れに任されるままキプロス島へとたどりついた。
はたせるかな、その美しさに目を奪われたゼウスがその後を追って上陸。
しかしアフロディテは身をひるがえし、ゼウスの追跡を振り切ってしまう。
思いを遂げられなかったゼウスは大地(ガイア)先走り汁をほとばしらせた。
その大地から生じたのがケンタウロスであるという。

ちなみにこうして誕生したキプロス島のケンタウロスは牡牛の角を持っているのが特徴。

ムネモシュネ

ウラヌスガイアの娘でティターン十二神のひとりである記憶の女神
ゼウスと九日間のあいだ夜をともにし、文芸の女神ムーサ(ミューズ)の九姉妹を産み落としたとされている。
詳しくは個別項目を参照のこと。

なお彼女がゼウスを受け入れたのは時系列的にはデメテルを手籠めにした後であったが、
ムネモシュネも娘のムーサたちもゼウスを恨むことも、またヘラ含めた他の神々らからうとまれることもなかった。
その後もムネモシュネはエレウテールの丘にあるじとして住みつづけ。ムーサたちはオリュンポス山につつがなく迎え入れられた。

アステリア

ティターン十二神コイオスポイベの娘で、レトの姉妹。ヘカテーの母ともされる。
ゼウスに気に入られて鷹の姿で追い回されたあげく、自ら変じたともゼウスに変えられたともされるが
ウズラの姿になってみずから海に飛びこんで(ゼウスに海にほうりこまれて)しまう
その海には浮島ができ、後述のレトが身を寄せたとされるオルテギュア島となった。
珍しく未遂となった例。

レト

ティターン十二神コイオスポイベの娘でアステリアの姉妹。
ウズラの姿になったゼウスに近づかれて双子をはらんでしまう。
これを知ったヘラは、さらにその双子が最も輝かしい神となるという予言を聞いて大激怒。
レトにひとすじでも日が差したことのある場所では子を産んではならないという呪いをかける。

子を産める場所を探して世界をさ迷い歩き疲れ果てたレトは、とある海岸へとたどりついた。
すると見る間に、目の前に島が浮き上がってきた。
この島こそ海に身を投げたアステリアの化身オルテギュア島*3だった。
ヘラの仕打ちに流石に同情したポセイドンが海底から島を浮上させると同時に、大嵐を起して日の光を遮ったのである。
レトはこの海底から浮かび上がってきたこれまで一度も日の差したことがない島で出産の準備を整えた。
しかし、ヘラの怒りは止む事が無く、自らの娘でお産の神エイレイテュイアに命じて出産を妨害させた為にレトは大嵐の島でボロボロになって陣痛に苦しむ羽目に落ちってしまう。
遂にゼウスとヘラ、そしてポセイドンの母神レアが娘の暴走に歯止めをかけるべく出馬してエイレイテュイアを引っ張り出して事態を収拾した。
その双子の神こそアポロンアルテミスの兄妹である。

エウリュノメ

メティスと同じくオケアニデスのひとり。
ゼウスとの間に美の三女神カリス三姉妹をもうけた。
彼女らもムーサ九姉妹らと同様罰せられはせず、アフロディテの侍女としてオリュンポス山に迎えられている。

エウリュノメはのちに、ヘラに実の子でありながらその醜さを疎まれ海に投げ捨てられたヘパイストスを、
母であるテテュスとともに保護し育てている。

マイア

ティターン神族であるアトラスの娘で、プレアデス七姉妹のひとり。
ヘラが寝こんでいる隙を見計らってこっそりと夜這いしてきたゼウスに孕まされてしまう。
そのせいで闇から闇に暗躍する盗人の神ヘルメスを産むこととなった。

マイアは後に熊にされたカリストの息子アルカスをかくまい育てている。

●エレクトラ

エレクトラというとミケーネ王女のほうが有名だが、こちらはティターン神族であるアトラスの娘でプレアデス七姉妹のひとり。
彼女もゼウスとの間の子のイアシオン・ダルダロスもこれといって罰を受けたりはしていない。
ただ息子のイアシオンはデメテルの愛人となったせいで嫉妬したゼウスに雷で撃ち殺されてしまった
他人には厳しいゼウスである。

●タユゲテ

ティターン神族であるアトラスの娘で、プレアデス七姉妹のひとり。 マイア、エレクトラの姉妹。
ゼウスの寵愛を受け、一子ラケダイモンをさずかる。
ラケダイモンはその後娘ラコ二ア王の娘スパルタをめとい、スパルタ国の建国の父となった。

●アイギナ

河のニンフで、河の神アソポスの娘。
父に溺愛されていたが、大鷲に姿を変えたゼウスに連れ去られてしまう
アソポスは道すがらシジフォスに手がかりを聞く*4などして娘が無人島にいることをつきとめた。
しかしいざのりこまんとしたところ、ゼウスの雷で追い払われてしまう

邪魔者のいなくなったゼウスは今度は炎となってアイギナを包みこみ悠々と犯してしまう
そしてアイギナは後に冥界の裁判官となるアイアコスを産んだのである。

その島は後にアイアコスが母親の名を付け、おだやかに治めていたが
憤懣やるかたないヘラによって疫病がばらまかれ島民のほとんどが死に至ってしまう
すかさずゼウスは島にいたアリを人間に変えてアイギナ島を再建したという。

●プルートー

冥府の神のほうではなく、ベレキュントス山のニンフでクロノスの娘。
神々へのもてなしに息子の煮込み肉を出したせいで永遠の飢えと渇きにさいなまれることになったタンタロスの母親。
息子はやらかしているが、彼女にはこれといった懲罰のエピソードは見当たらない。


○人間たち

●ニオベ

人間たちの最初の王とも、最初の人間であったとも言われるポロネウスの娘。
ゼウスが手をつけた最初の人間の娘だとされる。
ゼウスとの間に都市アルゴスの開祖となったアルゴスをもうける。
(百眼巨人の方とは別人)

カリスト

アルカディア王リュカオンの娘で、処女神アルテミスの侍女。
アルテミスに化けたゼウスに純潔を散らされ孕まされたあげく、それがアルテミスに露見して熊に変えられてしまう。
このあたりの経緯はアルテミスの項目を参照。

その後、彼女とゼウスの息子アルカスマイアにかくまわれ、立派な若者に成長した。
ある日アルカスは森の中で熊に出会い、これを仕留めようと弓を引く。
しかしその熊こそかつて別れた母親のカリストであった。
ゼウスはとっさにアルカスを子熊に変え、ふたりを天上に星座として掲げたのである。

しかしヘラはこのふたりが天上に来ることをよしとしなかった。
ヘラは自分の養父母である大海の神オケアノステテュスに、この親子が海に降りて休むことの無いようにと願った
海神の夫妻はこの願いを聞きとどけ、それ以来カリストとアルカスは沈むことのないおおぐま座・こぐま座として北天をめぐっているのだという。

エウロペ

フェニキアの王女でセメレの叔母に当たる。
大変美しい姫君で、ひと目でゼウスの心を奪ってしまった。
ゼウスはヘラに知られず思いを遂げるため、白い牡牛に化けてエウロペに近づく。
ゆっくり時間をかけて警戒心を解き、エウロペが自ら自身の背中に腰かけたところで
ついに牡牛となったゼウスは海へ天へと駆けだした

ゼウスはヘラの目を欺くため四方八方を飛び回ったすえ*5、風光明媚の島クレタ島に降り立って正体を明かしエウロペに迫った。
エウロペもついにはこれを受け入れ、ゼウスとの間に三人の息子たちをつくった。
ゼウスはエウロペと息子らをクレタ島の王アステリオス*6に託し、さらに青銅巨人タロスを贈り島を守らせた。
この三人の息子らが後のクレタ国王ミノス、優れた手腕で兄を支えたクレタの立法家ラダマンテュス、リュキア王サルペドンである。

後にこれらの行いはヘラも知るところになるが、精強をもって知られるクレタ国の軍勢と
タロスによって守られたエウロペとその息子たちにはどうしても手を出せなかった。
そしてその怒りは親族であるセメレのもとに向かっていくことになるのである。

セメレ

エウロペの兄弟であるテーバイ国王カドモスの娘で、エウロペの姪。

エウロペを見つけるまで帰ってくるなと事実上王国を追放されたカドモスは、
各地を放浪したのちにアポロンの守護を受けてテーバイ国を打ち立てた。
そして、建国時にアレスの飼い竜を殺した事で一時期不興を受けていたアレスとも和解し、
アレスは娘のハルモニアを降嫁させ、カドモスは義父のアレスを国の守護神として尊崇する契約を結んだ。
カドモスの娘である王女セメレは叔母であるエウロパ、母であるハルモニア、祖母であるアフロディーテ、そして曾祖母であるヘラと同じく大変美しい女性で、
その美しさを目に止めたゼウスは人間の若者に化けて王宮に忍びこむ。

首尾よくセメレのもとにたどりついたゼウスが正体を明かし思いを告げると、セメレはこれを歓喜して受け入れる
そして逢瀬をつづけていくうち、セメレはゼウスとの子をその身に宿した。

またしても同じ血筋のものに夫の心を奪われたヘラの怒りはおさまらない。
彼女はこの上なく残酷な復讐を思い立ち、セメレの乳母に化けて彼女にそっと耳打ちをする。

ほどなくして訪ねてきたゼウスに、身重のセメレはこう切り出す。






あなたさまとの愛のあかしをいただきたく願います



どのようなものでも授けよう、冥府の河(ステュクス)に誓って



わたくしと愛の契りを交わしてくださいませ。

― ヘラさまをお迎えになるのと同じ姿で






ゼウスは己とセメレがヘラの罠に陥れられたことをさとった。
しかし冥府の河(ステュクス)への誓いはゼウスであってもひるがえすことはできない。
ゼウスはたとえようもなく苦々しい面持ちで寝室へと入っていき、真の姿を現し・・・



あわれセメレは愛する男の身から放たれたに打たれて焼け死んだのである。セメレーも常人より強靭な半神の肉体の持ち主だったが、流石に至近距離からゼウスの雷を受けては即死を免れなかった。



しかしその胎内の子はかろうじてヘルメスによって救い出され、ゼウスの太ももに縫いこまれて育てられた。
それから三か月を経て誕生したのが、酩酊と狂乱の神ディオニュソスである。
相手が神とは言え、道ならぬ恋を嬉々として受け入れた数少ない女性。
そして、曾祖母の怒りを買って曾祖父の電撃で焼き殺されると言う数奇な最期を遂げた。
しかし、神の女王でもある曾祖母の面子を傷つけて不倫した罪は性質が悪いと判断されたのか、ハデスとペルセポネによってタルタロス(無間地獄)送りの判決が下され、息子がハデスとペルセポネを渾身の力作・ギンバイカを献上して宥めるまで壮絶な責め苦を受け続ける事になった

イオ

城塞都市アルゴスにてヘラに仕えていた女神官。領内を流れていた河の神イナコスの娘。
彼女に目をつけたゼウスは、父であるイナコス河のほとりを歩いていたところを暗闇で覆い隠して手籠めにしてしまった。

すぐさまヘラに見つかりその場を押さえられそうになってしまうが、ゼウスはとっさにイオを牝牛の姿にしてごまかす





どうしたヘラ、ここにはわたしとただの牛しかおらんぞ


・・・ただの牛ですか。 それならわたしがいただいてしまってよろしいですね?





こうしてゼウスのごまかしを逆手に取ってまんまとイオをさらっていったヘラは、
ゼウスであっても取り返せぬよう百眼巨人アルゴスを見張りにつけた。
アルゴスは全身にある百の目を順番に眠らせることで、本人はけして眠ることななく寝ずの番を続けることができた

ゼウスはイオを解放させるため息子のヘルメスを遣わせる。
ヘルメスはおしゃべりと葦笛の音色でどうにかアルゴスを眠らせ、その首を討ち取った
しかしすかさずヘラがアブを放ってイオを刺させる

牛の姿のイオはほうぼうを逃げまどい、ナイル川のほとりでようやく人の姿に戻った。
ゼウスの嘆願をうけたヘラが怒りをおさめ、ようやくイオから手を引いたのである。
イオはここでゼウスとの息子エパポスを産み落とし、このエジプトの地の女神となったのだという。

レダ

スパルタ王テュンダレオスの妻で、スパルタ王妃。
地上におけるゼウスの最後の愛人である可能性が高い。
ある日レダは鷲に追われ飛びこんできた白鳥をかくまう
しかしその白鳥こそがレダを見初めたゼウスであった
気づけばレダは白い羽の下に組み伏せられ・・・

レダはその晩、夫のテュンダレオスとも愛を交わした。
その結果彼女は二個の卵を産み落とす。
その中からはのちに双子座となるカストルとポルックス兄弟
そして美しいヘレネとクリュタイムネストラの姉妹が誕生したのである。

この婚姻については直接的な懲罰はレダにもその子らにも下されていない。
寧ろ、ヘラの要請に応じて若年のカストルとポルックスがイアソンの仲間に加わった逸話もあり、ヘラの権威を尊重していて協力的だったので少なくとも男子二人に対してはヘラも悪意を抱いていなかった可能性が高い。
しかしこのとき卵から生まれた子ら・・・
(ゼウス)の血を引くポルックスとヘレネ、人間(テュンダレオス)の血を引いたカストルとクリュタイムネストラは
大きな戦乱をときに巻き起こしときに巻きこまれ哀しくも壮絶な人生を送ることになるのである

ラミア

ポセイドンの息子ベーロスが自らの母リビュエとの間につくった娘で、リビアの女王。
ゼウスと恋に落ち子宝に恵まれたが、ヘラの怒りを受けて子供らをすべて殺された上に怪物へと変えられてしまう
個別項目を参照。

●アンティオペ

テーバイ王ニュクテウスの娘。サテュロス*7 の姿をしたゼウスと交わり、ゼトスとアムピオンの双子を産んだ。

父王ニュクテウスはこの道ならぬ交わりに激怒。
アンティオペは幼い子を逃し国を逃れるが、捕らえられ奴隷とされてしまう
ゼトスとアムピオンは母を救い出し王を倒し、テーバイの王となったのである。

ダナエ

アルゴス王アクリシオスの娘でアルゴス王女。前述のタユゲテは曾祖母に当たる。
アクリシオス王は孫に殺されるだろうという予言を恐れダナエを地下室に閉じこめた。
そのダナエのもとに黄金の雨となったゼウスが忍び入り、彼女の上に降りそそいで子をなした
その子が後にメデューサ退治などで名を知られることになるペルセウスである。
彼女も直接の罰は受けていないが、最終的にペルセウスに救われるまで苦難の人生を送ることになる
そしてアクリシオスはペルセウスが競技会で投げた円盤に当たって死んだ。

●ラオダメイア

天馬(ペガサス)に乗って空を駆けた英雄ペレロフォンの娘。
前述したエウロペの息子サルペドンは、彼女とゼウスの子であるという伝承もある。
彼女は後にアルテミスに射殺されたと言われている。

●プロトゲネイア

プロメテウスの息子であるデウカリオンの娘。 
ゼウスとの間に、のちにエリス地方の王となったアエトリオスをもうける。


アルクメネ

ミケーネ王女でペルセウスの孫娘に当たる。叔父であるアンピトリュオンを夫とした。
しかし夫が出征した隙に夫の姿で帰ってきたゼウスに体を任せてしまう
ゼウスはその日の夜の長さを三倍にしてしっぽりと楽しんだ。
翌日、予言者テイレシアスの言葉によりそれを知ったアンピトリュオンは
それでもアルクメネを妻として選び、その晩に彼女をかき抱く。
そして彼女はゼウスの子と夫の子を同時に身ごもった。

ゼウスは我が子が英雄ペルセウスの血統から生まれることを喜び、

これからペルセウスの血筋より最も早く産まれてくる子をミケーネの王とする

と神々の前で誓言する。
それを聞いたヘラは嫉妬にかられ、アルクメネの出産を遅らせようと画策。
娘であり腹心である出産の女神エイレイテュイアアルクメネの子を(はら)の中に押しとどめさせるよう命じた
さらには運命の三女神モイライたちにまで自分の企てに力を貸すよう強要する。
ゼウスでさえ侵せない権能を持つ彼女らもヘラのあまりの剣幕に押されて承諾。
ヘラ自身含めた出産に関わる女神らが一致団結してアルクメネのもとへ押し寄せ、彼女の出産を妨害しにかかった。

しかしアルクメネの侍女ガランティスがここで機転を利かせ「奥様の子が産まれました!」と大声をあげる。
エイレイテュイアが驚き様子を見ようとしたときに力がゆるみ、その隙に無事アルクメネは出産することができた。*8

そうして産まれてきたのがゼウスの子、大英雄ヘラクレス
そして一日違いの弟であるアンピトリュオンの子イピクレスである。

しかしその後も母子ともにヘラの怒りをまともに受け、筆舌に尽くしがたい苦難の道を歩んでいくことになる
ヘラはヘラクレスに狂気を吹きこみ、自身の子と弟の子を惨殺させる
そしてヘラクレスは彼と入れ違いに誕生しミケーネ王となったエウリュスティスのもとで
贖罪のために過酷な勤めを果たすことになるのである。

ヘラクレスが苦しみに満ちた生涯を終えた後、彼の子らはエウリュスティスとの間に戦争を起こす。
エウリュスティスはあえなく討ち取られ、その首はアルクメネのもとへ送られた。
アルクメネは息子をさげすみ苦しめつづけた男の首に手をかけ、両の目をえぐりとったという。

なお、彼女が人間としてはゼウス最後の愛人となった。*9
詳細はヘラクレスヘラの項目を参照。



○番外

直接性愛関係があったわけではない、もしくはあったかどうかさだかでないが、
性愛に関連したことがらでの、ゼウス夫妻の被害者たち。

ガニュメデス

トロイアの王子で絶世の美少年。
鷹の姿のゼウスにさらわれて神々の、あるいははゼウスただ一人の杯に神酒(ネクタル)をそそぐ給仕役になった。
あくまでヘラクレスの妻となったヘベの代役としてらしいが、ゼウスと♥♥♥な関係であったとの説も根強い。青春の神になった。



テイレシアス

竜牙兵(スパルトイ)ウダイオスの子であるエウレエスと、アテナに仕えた妖精(ニンフ)カリクロの間に産まれた息子。
山のなかで見かけた互いの身をからめあう蛇を杖で打ったところ女性となってしまった。
のちにもう一度同じ蛇たちを打って男性に戻る。

ゼウスとヘラが「男と女、どちらのほうが♡♡♡で得られる快感が大きいか」で口論となった時に意見を求められ
女の方が10倍ようございますと答えてしまった。
そのせいでヘラの怒りをかって盲目にされてしまう

神が一度くだした罰はたとえゼウスでも無かったことにはできないため、
ゼウスは失った視力のかわりにとテイレシアスに予言の力を授けた
この力によりテイレシアスは、のちにナルシスの末路などを予言して名声を得たのである。*10


  • おまけ
●アンケート調査
この項目で取り上げられた人物のなかで、最も悲惨だと思った人物に投票をお願いします。
投票の理由ほか感想などありましたら、よろしければコメント欄まで。

順位 選択肢 得票数 得票率 投票
1 アルクメネ 9 (31%)
2 ヘラ 5 (17%)
3 ラミア 5 (17%)
4 カリスト 4 (14%)
5 レダ 2 (7%)
6 アイギナ 1 (3%)
7 イオ 1 (3%)
8 セメレ 1 (3%)
9 テイレシアス 1 (3%)
10 アステリア 0 (0%)
11 アンティオペ 0 (0%)
12 エウリュノメ 0 (0%)
13 エウロペ 0 (0%)
14 エレクトラ 0 (0%)
15 ガニュメデス 0 (0%)
16 タユゲテ 0 (0%)
17 ダナエ 0 (0%)
18 テミス 0 (0%)
19 ディオネ 0 (0%)
20 デメテル 0 (0%)
21 ニオベ 0 (0%)
22 プルートー 0 (0%)
23 プロトゲネイア 0 (0%)
24 ペルセポネ 0 (0%)
25 マイア 0 (0%)
26 ムネモシュネ 0 (0%)
27 メティス 0 (0%)
28 ラオダメイア 0 (0%)
29 レト 0 (0%)
その他
投票総数 29



追記・編集は責任あるお付き合いをしてからお願いします。

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最終更新:2023年10月19日 20:14

*1 オケアノスとテテュスの娘たちの総称。地上の水の女神、あるいは精霊(ニンフ)

*2 エピメテウスの娘という説もある

*3 オルテギュア:「ウズラ」という意味。

*4 この一件をゼウスに根にもたれたシジフォスは冥界に落とされ、大きな岩を延々と転がりあげては転がり落とされする刑罰に服することとなった。賽の河原と同様の寓意を持つ故事「シジフォスの岩」はここからきている。

*5 このとき飛びまわった地域が後に「ヨーロッパ(Europe)」と呼ばれるようになったという。

*6 後にミノス王とパシバエの息子にその名が引き継がれた。だがその子は実際にはポセイドンの牡牛とパシバエの不義の子であり、牛頭人身の怪物であった。(ミノタウロスの項目参照。)

*7 半人半山羊の姿をした森の精霊。怠惰で貪欲とされる。

*8 なおガランティスはこのことでエイレイテュイアをあざけり笑ったため、ヘラにイタチの姿に変えられてしまった。イタチとなったガランティスはその後もアルクメネのもとを訪れ、一説にはヘカテーのもとに迎えられたという。ヘラクレスは後年ガランティスに感謝し、彼女のために碑を立てた。

*9 ただし、テセウスの年齢を基準に考えるとヘラクレスがテセウスより年長、ヘレネーとポルックスが年少なので、レダが最後の愛人となる。

*10 アテナの沐浴を覗き見たために盲目にされたという伝承もある。アテナはテイレシアスの母で自身の侍女であるカリクロの願いを聞き入れ、失われた視力の代わりに予言の力をさずけたとされる。