リヒャルト・フォン・グリンメルスハウゼン

登録日:2018/05/02 (水) 01:42:33
更新日:2024/03/21 Thu 21:12:23
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リヒャルト・フォン・グリンメルスハウゼンは『銀河英雄伝説』の登場人物。
ゴールデンバウム王朝に仕えた軍人で、若い頃はフリードリヒ四世の侍従武官を務めていた。
CV.槐柳二

■[来歴]■

銀河帝国の貴族であるグリンメルスハウゼン子爵家の三男に生まれる。
士官学校でも凡庸な成績であり、そのままならありきたりの下級貴族の子弟として飼い殺しになるはずの人物であったが、二人の兄が戦死した事によって子爵家を嗣ぐことになった。

若い頃はフリードリヒ四世の侍従武官を務めており、父帝との仲を取りなしたり、女性の世話をしたり、金銭をめぐるトラブルを処理したりしてフリードリヒ四世からの信認を得ていた。
その為、フリードリヒ四世の即位後は順調に出世し、中将に昇進。

ヴァンフリート星域会戦において12200隻の艦艇からなる一個艦隊を指揮する司令官として参加した。
だが、半分耄碌しているため、総司令官ミュッケンベルガーから軽んじられ、大艦隊を率いているにもかかわらず後方の惑星ヴァンフリート4=2で待機するよう命令された。

ラインハルトがたびたび意見を具申するも取り上げようとせず、ラインハルトを幾度となく逆上させたが、年齢差の壁とつかみ所のない性格でごまかされてしまう。
リューネブルクの進言により、惑星上の同盟軍の基地に攻め込むことになったが、途中でミュッケンベルガーから、艦隊を率いて戦闘に参加するよう命令されたため、引き上げる。

ヴァンフリート星域会戦の後、この功績により大将に昇進。軍務省高等参事官となる。
ただこの出世は名誉や実力を評価してのものではなく、「もはや前線には出まいから昇進させてやれ」という勅命による宮廷と軍部の妥協的産物であり、実際にこれ以降、彼が宇宙に出ることはなかった。

同じ年に起きた第6次イゼルローン要塞攻防戦には風邪を拗らせてしまい、肺炎を発症したため不参加。
明確な時期は不明だが、戦闘中にケスラーがラインハルトにその死を伝えに来たため、まもなく病死したものと思われる。

■[人物]■

掴みどころのない飄々とした人物。
ラインハルトも当初はグリンメルスハウゼンを無能と忌み嫌っていたが、
彼を嫌うでもなく重んじるでもないグリンメルスハウゼンの飄々とした態度を前にその怒気も空回りをしっぱなしとなってしまう。ここだけ見ると我儘な孫をのらりくらりかわすお爺さんに見える不思議
その後、無駄だと諦観したのか、嫌悪感も削がれたのか、徐々に愚痴りつつも極端な批判をすることは無くなった。
その上グリンメルスハウゼンは昇進が留め置かれていたジークフリード・キルヒアイスの昇進を支援したため、ラインハルトとしては半ば不愉快なことに謝意を示さざるを得ないほどであった。

凡庸な自分と比較して若くして才能溢れるラインハルトに多大な羨望と一種の期待感のようなものをもっていたのか、
ヴァンフリート星域会戦が終わった後は、武勲を立てながら昇進を果たせなかったキルヒアイスの昇進を推薦したり、
いずれ貴族たちと対立するラインハルトのために自分が生涯をかけて記録した貴族たちの秘密をつづった文書を贈呈したりした。

■[能力]■

自他ともに認める無能な人物で、軍部や宮廷では「居眠り子爵」「ひなたぼっこ提督」などと呼ばれている。
有能な軍人とはとてもいえず、周囲から重く用いられるようなことはなく、現在の地位も皇帝であるフリードリヒ4世との長年の交友関係故。
実際ラインハルトも当初は「あんな老人が生存しているのは、酸素の浪費だ」と陰口を叩くほど嫌っていた。

その評価も決して間違ってはいないのだが、全くの凡人かというと、そうは言い切れない所もある。

まず第一に彼は作中の登場人物の中で最も早くラインハルトの野心と能力を見抜いていたという点(この時点で見抜いていたのは、他には皇帝のみと思われ、門閥貴族でも高い見識と政治力を持つリヒテンラーデですら本編開始後を待たなければならない)。
これは恐らく侍従武官として長年宮廷の内部を見てきた経験と76歳という年功による「炯眼」であった。
グリンメルスハウゼンは自分が無能だと知っていたが故に、他の門閥貴族のような先入観なくラインハルト・フォン・ミューゼルという若き天才を見つめることもできたのだろう。

「若さというものは、すばらしゅうございますな。陛下、あの若者を見ておりますと、心からそう思います。この世に不可能などないように見えますな」

という彼のラインハルトに対する評価が、グリンメルスハウゼンの門閥貴族らしからぬ人物鑑定眼を示している。

第二に彼は「自他ともに認める無能者」として他人に侮られていたため、結果として宮廷内の様々な秘密が手に入るという不思議な能力を持っていた。
つまり、宮廷の陰謀家たちも、野心も能力もなくただ口が堅いだけの無能者の前で、あえて秘密を隠す必要性を認めなかったのである。その結果、彼が老境に達する頃には、貴族社会や宮廷、それに軍部のありとあらゆる秘密の詳細が彼の手元に集まっていたのだ。

第三に彼はゴールデンバウム王朝が遠からず滅びることを予め知っていたか、あるいは確信を込めて予測していた点である。
恐らくグリンメルスハウゼンは長年フリードリヒ四世の側近として仕えていた中で、皇帝がゴールデンバウム王朝の終焉を望んでいた事を、口頭か、あるいは長年にわたる知己から理解していたのだろう。

死後『グリンメルスハウゼン文書*1』をラインハルトに託したのも、皇帝の真意が奈辺にあるか知り抜いていたからこそだと思われる。

追記・修正は将来、覇王になる人物からの悪口をのらりくらりかわす人がお願いします。


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最終更新:2024年03月21日 21:12

*1 貴族社会や官僚界、軍部の様々な裏面の事情を記録した文書