華雄

登録日:2018/04/02 Mon 00:05:19
更新日:2024/01/26 Fri 12:28:09
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()(ゆう)とは、後漢末に董卓に仕えた人物。
正史と「三国志演義」で、立場やキャラクター像が大きく違うのだが、
いずれにおいても「かませ犬」というポジションが共通している

出生、字は不明であり、その記述があるのは敵軍である『孫堅伝』にのみという無名っぷり。
現代においてはその名の字面に相応しい豪傑として広く知られているが、
それらは全て『三国志演義』により創られた偶像である。


正史においては都督(都尉という説も)という地位にあり、反董卓連合軍との戦いでは、
大督護に任じられた胡軫の配下として登場する。
そんな華雄の活躍はいかほどのものかというと・・・

上司の胡軫と仲の悪い呂布とのいざこざに巻き込まれて敗死する、という悲惨極まりないもの。

胡軫はもともと粗暴で人格に問題があり、横柄な態度をとることがしばしばあった。
そんな彼を疎ましく思う呂布は、嘘情報を流して胡軫と孫堅を戦わせ殺そうとしたのである。
しかし肝心の胡軫は逃げたものの、華雄は逃げ遅れて捕えられ、見せしめのために処刑された。

・・・・・・という記述が、よりにもよって敵国である呉の文献にしか残っていなかった。


「華々しく」「雄々しい」という如何にも強そうな字面が揃った人物なのに、なんという地味な扱い・・・

どうせかませ犬にするなら、もっと強キャラにしてかませにした方が面白いだろう

もしかすると、『演義』を編纂した羅貫中もこう思ったかもしれない。

そんなクリエイターの熱意を一身に受けた華雄は、設定のパクリと捏造により、
後世に色んな意味で名を轟かせる有名な武将へとランクアップを果たしたのである。


まずキャラクター像からして、「身の丈2m10cmを超える董卓軍きっての猛将」とある。
さらに正史では上官だった胡軫を副官に降格させ、さらに先陣を切って孫堅軍の程普に討たれるというかませのかませポジションに据えた。

胡軫が討たれた後に戦場に出てきた華雄は、まず済北の相・鮑信の弟、鮑忠を討ち取り、都督に昇進する。
ちなみに「鮑忠」は演義のみの人物だが、鮑信には史実でも「鮑韜」という弟がおり、モデル元の「徐栄が鮑信・曹操の軍を破った際の戦い」にて戦死している。
モデルがあり、あながち架空でもないということだ。
さらに勢いに乗る華雄は、韓馥配下の潘鳳、袁術配下の兪渉を斬り伏せ、
正史で自身を殺した孫堅を追い詰め、主君の囮役を買った孫堅軍の祖茂を討ち取った。

兪渉・潘鳳は架空の武将だが、鮑忠はモデルあり、祖茂は実在である。
また、鮑忠・祖茂の原型は徐栄に敗れており、演義の華雄の活躍は正史における徐栄の記述をスライドさせたものである。

何はともあれ、華雄の名は反董卓連合軍の中に「猛将」というイメージを与え、震え上がらせた。
総大将の袁紹に「顔良と文醜を連れてきていれば・・・」と嘆かせる程である。

しかしここまでお膳立てをしてもらった「猛将」は次の瞬間、関羽へのかませ犬としてその人生を終える。
その演出も「演義」ならではであり、関羽は出陣前に景気づけの酒を一杯差し出されるが、その酒がまだ温かい内に華雄を討ち、首を持ち帰っている。

何よりも賞賛されるべきは、史実ではただのモ武将であった華雄を、関羽と戦って斬られた猛将という地位にまでぶち上げた羅貫中の手腕であるといえよう。






【各作品での扱い】


横山三国志

基本は「演義」と同じ展開だが、関羽は酒を飲んでから出陣し、華雄を斬って戻ってきたところで酔いが回るという描写に変更されている。

蒼天航路

本作ではなぜか孫堅に貸し出された惇兄に討ち取られる。
孫堅とは旧知の間柄という設定が追加されている。これは董卓が孫堅と元同僚だったことからか。

無双シリーズ

6猛将伝まではただのモブだったが、Empiresで行われたエディット武将命名キャンペーンにて一応専用の見た目を得る。
同キャンペーンでは当時モブだった荀彧と馬騰、登場すらしていなかった張春華にもエディットとはいえ専用の見た目が与えられた。

7にて荀彧と張春華が無双武将化された脇で*1モブに戻ったが、一人だけ呂布並にでかくなったので、他のモブとは一瞬で見分けがつく。
この呂布並というのはどちらも武器を構えた状態の話で、ほぼ直立の呂布に対し華雄は中腰&やや猫背の状態である。2m10cmは過小評価だったのだろうか・・・。
猛将伝のイベントシーンでは、呂布を相手に自分を「様」付けで呼ぶ台詞が用意されており*2、ifルートを通る上で彼の生存が攻略のカギとなる重要ポジションにある。

8では晴れてモブからNPC専用武将にランクアップし専用の見た目とCVもつき、後にDLCでプレイアブル化も果たしている。馬騰は泣いて良い。
Empiresでは初めから使用可能。名声相性*3は武勇と悪徳で、シナリオによっては開始時に同勢力となる董卓・呂布・呂玲姫*4・貂蝉との相性は悪くないが、同期でプレイアブル化した董白とは相性が悪い*5

光栄三国志シリーズ

初期から皆勤賞。
呂布を除けば、董卓軍の中では実質最強の武将である(たまに張遼より弱いことがあるが)。
基本的に脳筋設定だが、シリーズを追うごとに知力が向上しており、戦場では結構活躍してくれる。

三国志大戦

人間離れした鬼人のような風貌を持つ猛将で、カタコトで喋る。
脳筋だが、とりあえず殴れば勝てるステータスとスキルの噛み合いが強烈である。
董卓配下のはずなのに、基本的に董卓とは計略の相性がかなり悪い。

SDガンダム三国伝

演者はザンネック
「首斬り華雄」の異名を持つ快楽殺人鬼。

一騎当千

モブ。

恋姫†無双

かませ犬、というか残念キャラ
初代では文字通り関羽に斬られるだけの存在だったが、次作以降も続投が発表されたものの、
真名が追加されない等何かと恵まれない境遇にいることが多い。

名探偵呂布

モブ同然。頭に李儒が隠し持っていた宝石が当たり討死。






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最終更新:2024年01月26日 12:28

*1 張春華は無印、荀彧はEmpiresで追加された。

*2 この時点では専用のCVはついておらず、モブを担当している声優が声をあてている。

*3 8Empiresにおける強化要素の一つで、武勇・知略・将器・弁舌・仁徳・悪徳があり、左記中2つが割り当てられる。なお、仁徳と悪徳は同居しない。無双武将とDLC武将では、専用称号を獲得する場合に強化が必要な要素であり、プレイ中に他の武将との好感度の上げやすさにも影響する。

*4 DLCシナリオ限定。

*5 実は貂蝉も武勇を上げると好感度が上がりにくくなるのだが、悪徳を上げることでカバー可能。対して董白は武勇については貂蝉と同様なうえ、悪徳は好感度に影響しないためカバーが効かない。