顔良/文醜

登録日:2018/04/01 Sun 10:36:03
更新日:2024/01/16 Tue 17:03:35
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▽目次

概要

顔良(がん りょう)文醜(ぶん しゅう)とは、それぞれ後漢末期に活躍した武将。
河北の雄と渾名された袁紹に仕えた人物で、何かとセットで扱われることが多い。
共に字は不明であり、本人の伝も立てられていない。

袁紹軍の二枚看板とまで称される猛将だが、一方で清々しいまでの脳筋という共通項がある。
演義では義兄弟の契りを結んだ、という設定まで登場する。

正史では、「官渡の戦い」に出兵する曹操に対する幕僚たちからの提言の中で名が上がり、
孔融からは「袁紹軍の勇将の代表。油断されるな」と言われるも、荀攸からは「所詮は匹夫の勇、恐れることはありません」と鼻で笑われている。
事実、正史でその通りの結末を辿ることになるのだから、なかなか面白い。


演義では名前の登場はもう少し早く、反董卓連合軍の戦いの中で、
袁術配下の兪渉、韓馥配下の潘鳳が立て続けに華雄に斬られた報を聞いた袁紹が、「顔良と文醜を連れてきていれば・・・」と嘆くシーンが初出。

顔良はその名前から「イケメン武将」としてネタにされており、一方の文醜はこれまたその名前と顔良との比較から「ブサメン」と呼ばれネタにされている。
言うまでもないが、人間で「名は体を表す」なんて言うことはまずないので、実際にどんな顔だったかは不明。
文醜に関しては、演義で「身の丈8尺、顔は獬豸(かいち)」と容貌に関する記述がある。
ちなみに獬豸とは中国ので正義や公正の象徴とされる伝説の獣で麒麟(アフリカのアレじゃなくてビールのマークの方)に似ているとも。

言うまでもないが「この姿のままだった」という意味ではなく、勇猛さを表すために猛獣や霊獣で例えるというのは古来からある中国人流の表現である。
始皇帝は「鼻は蜂のようで目は切れ長、胸は鷲、声は山犬」などと表現されたが、当たり前だが彼は人間であり、「人相の例え」に過ぎない。


顔良(イケメン)


◆正史の活躍
官渡の戦いの第一陣として、曹操軍に攻勢をかける武将の一人として登場する。
この時は「出ると負け軍師」こと郭図と、名将・淳于瓊*1と共に出陣していたが、
これは出陣の際に沮授が「アイツ(顔良)バカだから、監視役付けとかないと勝手に特攻かけてやられちゃいますよ」と進言したため。

顔良らは曹操軍の劉延を攻撃しこれを壊走させるが、曹操は袁紹軍の背後を突くように見せ、顔良を孤立させる策を用いる。
果たして支援部隊である郭図と淳于瓊は陽動にハマって慌てて撤退するが、猪突していた顔良だけは僅かな手勢と共に戦場に取り残される
そこを張遼と、当時客将として曹操陣営に居た関羽に攻撃させ、関羽はただ一騎で敵軍に突入し、顔良を斬殺した


◆演義の活躍
こちらでは上述の通り、反董卓連合の華雄戦で名前が挙がったのが初出。
その後到着したらしく、玉璽をめぐって袁紹が孫堅と争う場面で文醜とともに初登場。

袁紹が冀州を韓馥から奪い取った場面では、袁紹暗殺に飛び出した韓馥の部下、耿武を瞬殺している

そして続く公孫瓚との激闘では、趙雲・公孫瓚に苦戦する文醜を助けるべく進撃
文醜を追い詰めていた趙雲・公孫瓚も顔良まで加わっては突破できず、そこに袁紹までもが兵を率いて突撃してきたため一気に顔良側が優位に立つ。
しかしその後劉備関羽張飛が公孫瓚側に加勢したため、不利と見た袁紹とともに撤退している。


官渡の戦いではその武勇と関羽のかませ役としての存在を引き立てるため、彼に討ち取られる役目を持つ魏続宋憲の2人が登場する。
この2人は元呂布の部下で、呂布を裏切り捕えて曹操に降伏した。正史でその後の活躍がないため、
「かませに丁度いい」と言わんばかりに羅貫中に見出された哀れな武将たちである。

さらにこの2人を斬り捨てただけでは足りず、徐晃をも一騎打ちで打ち負かすという快挙を上げる。
徐晃といえば曹操軍きっての猛将であり、魏の建国後もその勇名を轟かせた優れた人物だが、彼さえも顔良の前には為すすべなく敗走している。

……と、ここまで持ち上げておきつつ、最期は正史と同様関羽にバッサリ斬り捨てられた。哀れ。

ちなみに、正史でも演義でも、顔良はそもそも関羽を見ても戦う気は無かったと言われている。
正史では一騎で近づいてきた関羽に「なんだコイツ」と油断丸出しだっただけなのだが、
演義では当時袁紹に身を寄せていた劉備から「関羽に会ったら俺に会いに来てって伝えてくれる?」と伝言を頼まれていたため、
斬りかかる気マンマンの関羽に対し「まずは話をしよう」という態度を取り続けたため、一刀のもとに斬られたという。哀れ。
一方、頼みの幹部を失った袁紹は劉備を殺そうとするが、「人相が関羽に似てるだけかもしれません。命ばかりはお助けを!」と言われて丸め込まれる。
謎の男に殺された扱い。哀れ。



文醜(ブサメン)


◆正史の活躍
上述の顔良戦死の報を受けた袁紹からの命で、撤退する曹操軍を劉備と共に追撃する。
これに対し曹操は、輜重隊(輸送を担当する兵団)を囮にして文醜軍を誘い込み、殲滅する策を用いる。
猛進する文醜は、目の前に転がる無数の兵糧にやっぱりバカなので何の疑いもなく食いついた。
(もっとも、食いついたのは文醜の指示ではなく、略奪本能が働いた兵士たちであろう。テクストだと文醜は兵たちを止めようとした場合もある)
これにより陣形が乱れ、その隙に曹操から手薄となった本陣に攻勢をかけられてしまい、何の見せ場もなく討ち取られてしまった。

この時代には珍しく騎馬隊を率いていたため、その名前とともに「異民族上がりの武将だったのではないか」といわれることも。
実際、呂布や董卓、公孫瓚や馬超のように異民族上がり、もしくは密接な混血者で、なおかつ騎馬隊を率いていた人物というのは多い。


◆演義の活躍
演義では、顔良とともに反董卓連合に遅れて参戦。孫堅たちとにらみ合いを起こしている。

その後の冀州を奪った際には、耿武とともに袁紹を暗殺しようとした関純*2を瞬殺している。

続く公孫瓚との戦いでは、戦死した麹義*3に代わって大活躍。
真っ先に単身で公孫瓚軍に突撃し、立ちはだかったザコ武将を蹴散らしつつ公孫瓚も追い込んだが、
救援に駆け付けた趙雲に妨害され、一騎打ちをしている間に公孫瓚軍が盛り返したため一時撤退。
しかし顔良が応援に駆け付けたことで意気を取り戻し、趙雲・公孫瓚と渡り合った
そこに袁紹までが突撃して優位に立つが、さらに劉備一味が飛び込んできたことで、袁紹とともに撤退している。


それから十年近い歳月を経た延津の戦いでは、猛将たる存在感を示すために寡兵虚しくも奮戦する様が描かれており、
張遼の放った矢を斬り落とし、「汚名返上」とばかりに飛び出した徐晃を撃退するなどの離れ業をやってのけた。
でも最期はやっぱり関羽に斬られる。その最期は「まだ勝てん」とばかりに馬首を返したところを赤兎馬で猛追した関羽に背後から斬られるというものだった。
一番悲惨なのは二連敗で汚名挽回した徐晃な気もする

テキストによって「馬上からの弓術に長ける」という場合もあり、矢で張遼を打ち落とす場面もある。
この場合、関羽に背を向けたのはやはり弓で撃ち落とすつもりだったとされる。ただ、この時乗っていたのが赤兎馬だったのが運の尽きとなった。

顔良に続いて関羽が犯人だったので袁紹は今度こそ劉備を殺そうとするが、
「関羽はきっと自分がこっちに居ることを知らない。呼び寄せます、味方にできます!」と言われてまたしても丸め込まれる。哀れ。
その上袁紹の評価は「関羽が来てくれるなら顔良と文醜より心強い」。哀れ。
しかも結末は劉備ごとトンズラ。哀れ。


なお、関羽が顔良・文醜を斬り殺したというのは羅貫中の創作ではない
晋の「二王尺牘集」という書物には早くも「関羽が白馬で顔良を、南坡で文醜を斬り、曹操が大いに感謝した」という記述が登場している。
宋代にも記述がみられ、羅貫中のころには相当広く流布していたようだ。

また、顔良を祀る廟があると、その付近(十五里以内)で関羽の公演を行ったら祟りが起きるとして厳禁されていたらしい。
関羽が道教の神として祀られるのはかなり早いが、顔良も同様に祀られていたようだ。


【各作品での扱い】


●横山三国志
基本は演義準拠の活躍と結末。

蒼天航路
顔良は雄渾な義侠心を持った人物として登場し、関羽の昔の名前を知っているなど、前歴が侠客であったことを示唆している。
劉備へは同じ侠客出身としてシンパシーを感じ、劉備からも関羽共々兄弟と呼ばれた。
しかし変調しつつあった関羽に打ち取られる。
その時に切断された顔良の上半身は義兄の裏切りに怒り心頭な張飛が抱えて戦場を脱出している。目を大きく見開いたまま硬直した姿がチラチラとコマに映り込む様はグロテスクながらどこかシュールさを漂わせている。

文醜は異民族上がりの騎馬隊を率いて登場。
脳筋ではなく軍略に優れた将として描かれており、軍師のような合理的な計算力と、それが崩れても真理を見定めることのできる武将の器を併せ持った知勇兼備の豪傑。
荀攸の予測をも上回る将器で曹操を追い詰めるが、最後は曹操と許チョに敗れる。

●無双シリーズ
袁紹軍と言えば真っ先に名前の挙がる2人だがモブ。イベントで関羽に斬られるのが宿命づけられているから、下手にキャラ付けしにくいのだろうか……作品によっては二人同時に討ち取られる事も。
しかし曹操絡みで操作可能キャラになっている変態寝取られ貴婦人しか袁紹軍にいないのを見ると実際寂しいものがある。華雄が脱モブしたので、どうか頑張っていただきたいところ。

●光栄三国志シリーズ
初期から皆勤賞。
張郃と並んで袁紹軍の中では優れた武人キャラになっているが、やっぱり脳筋なのが悩みの種。
武力は常に90の大台を突破し、作品によっては武力が張郃よりも高い場合がある。他勢力の最強クラスと十分渡り合えるレベル。
統率力も高いほうなので、計略にさえかからなければ滅法強い。かかった時はお察しください。
なお顔良がイケメンになったことは無い。

●三国志大戦
やっぱり脳筋。出てくるときは大抵2人同時かつ武力と知力が同じ数値。
名前が功を奏したのかは不明だが、顔良はイケメン、文醜はバケモノのような風貌で描かれることが多い。
ちなみに顔良の一騎打ち勝利時の台詞はなかなかにカッコイイ。
やっぱりイケメンだ

顔良はどちらかというと男らしいナイスミドルな感じで描かれており、線の細い両性的なイケメンにされることは皆無。
ハンサムと宿将成分双方を両立させた良デザインとなっている。
そして文醜は前述の通り不細工ではなく化け物顔。
だが醜いというわけではなく、その顔には鬼のような厳つさが存在しており、これはこれでかっこいい。

新版ではなんと青鬼赤鬼。
しかし顔良は青鬼要素を持ちつつもイケメンに、文醜はいかにも赤鬼と言った風貌になっている。
旧作の二人もリメイクされて出た。しかしリメイク文醜は何故か勇猛なし…。
なお、3組出ているがそのどれも顔良より文醜の方が知力が1低いまあ知力4の顔良が出るだけで喜ばれる程揃って脳筋だが

●白井式三国志
どちらも北斗の拳の悪役のような物凄い悪党面だが、私生活では良い父親とボランティアおじさんのため、
たまたまそれを知ってしまった関羽が「なんて斬りにくい奴らだ」と苦悶していた。

●SDガンダム三国伝
顔良がガズアル、文醜がガズエル

●一騎当千
ただの雑魚。

●恋姫†無双
コンビで登場。主君の袁紹含め死んだりしないので扱いはマシな方。
やっぱり脳筋か・・・と思いきや、顔良は袁紹軍きっての常識人で、
主君を含めた周囲のアホ共に振り回される苦労人の役割。
武器は顔良がハンマーで、文醜が大剣。

●十三支演義
乙女ゲーでもやっぱりコンビ。名前通り顔良はイケメンで、文醜は体育会系。

●天地を喰らう(FC版1、2)
1では敵将として登場、趙雲の妹を捕えてあるジョウザンの砦を守備している。猛将かつ兵力が多めとは言え関羽、張飛には及ばない上に知力はお察しレベルなのでそこまで苦戦はしないであろう。
2では味方武将として劉備軍に従軍してくれる。顔良は全攻撃が奮闘(クリティカル扱い)になるので並み居る曹操軍を次々と粉砕してくれる…が謎の武将に討ち取られてしまう。
その後で文醜が仲間に加わるがやはり謎の武将に討ち取られてしまう。

●Wo long
コーエーテクモのソウルライク三国志ゲーム。
物語の終盤が官渡の戦いとなっており、ボスとして登場するのだが…
丹薬による人体改造によりまるで本家ダークソウルに登場するオーンスタイン・スモウをリスペクトしたかのような巨体と細身のモンスターと化してしまっている。

【余談】

2012年、中国で友人の家に空き巣に入りベッドの下に隠れていた男が、帰宅した友人の観始めたテレビ番組の内容に笑ってしまい御用になるという珍事件が起きた。

その事件が報道された際、容疑者の仮名に何故か顔良の名前が使われた




「恥じる事はない。おまえはよく追記・修正した」

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最終更新:2024年01月16日 17:03

*1 演義ではなぜか酒飲みになっているが正史だとそんなことは無い。

*2 正史では閔純

*3 正史では袁紹vs公孫瓚戦において活躍し続けた武将だが、演義ではすぐに趙雲に討ち取られた。