地球なめんなファンタジー

登録日:2018/03/24 Sat 20:35:10
更新日:2024/04/13 Sat 18:02:17
所要時間:約 3 分で読めます




地球なめんなファンタジーとは、超常の存在に立ち向かう地球の意地の発露である。


【概要】

ファンタジー作品とは、元々ドラゴンクエストやファンナルファンタジーなどに代表されるように、中世ヨーロッパかそれ以前の時代がモチーフとされた世界観で展開されるのが一般的であった。
というのも、ファンタジー作品はおおむね『神話』や『民話』をモチーフとして作られているし、
『魔法』や『モンスター』といった非現実的な存在が常識とされるために、神や妖怪が当たり前に信じられていた時代を背景にすることが自然にマッチしたからである。
そこには当然機械などの類は存在せず、あっても木製の歯車で動く原始的なものか、魔法を動力とする非現実的なものに限定される。
これが主に平成初期までのファンタジー作品の常識であった。

しかし、ファンタジー世界もしだいに幅が広がっていき、FF6やBOF3などのようにファンタジー世界と機械文明が共存する作品、SFの皮を被ったファンタジー系も生まれ始めた。

それでも、前提として「ファンタジーは科学を超越したテクノロジーの産物であり、ファンタジー性の組み込まれていない現代科学は下位互換か、持ち出すだけ野暮」という暗黙の了解があった。

しかし、「剣士がサバイバルナイフに興味持ったり、普段は弓のキャラがマグナムやロケランもぶっ放せる銃使いならどうなるだろう」…と、誰しも一度位はその手の妄想をしたことがあるはず。

【語源】

そんな「魔法と張り合う現代技術」を広める転機となったのがライトノベル『ゼロの使い魔』である。

これは、ツンデレブームの火付け役となったことが有名であるが、
それ以外にもファンタジー世界に現代日本の少年が召喚されるという、それまでなくはなかったが目立って取り上げられはしなかった設定を前面に押し出した作品で、
『ファンタジー世界で地球人が地球の知識や道具を活かして活躍する』
という展開が大いにウケて大ヒットした。

《怪獣ほどもある巨大ゴーレムを一撃で倒すロケットランチャー》
《空を飛び回る竜騎士を空戦で圧倒するゼロ戦》

などの活躍は当時の少年たちの胸を熱くした。


そして原作14巻でのことである。
主人公平賀才人と仲間たちがいるロマリア皇国へ、突如隣国ガリア王国のジョゼフ王が戦争を仕掛けてくる。
当然、ロマリア側も応戦するが、ガリア軍は全長25メイル(作中単位・メートルとほぼ同一)にも及ぶ巨大ゴーレム『ヨルムンガント』を繰り出してロマリア軍を蹴散らしてしまう。
(比較対象として、ガンダムがおおよそ17m。シリーズ屈指の大きさを誇るνガンダムも24メートル超)

才人の仲間たちも死を覚悟し、伝説の虚無の系統を使うルイズのエクスプロージョンの魔法さえもまったく通用しない。
この絶望的な状況の中、ついにヨルムンガントの攻撃がルイズに迫る。

だが、その瞬間。どこからか飛来した砲弾が無敵の巨大ゴーレムに風穴を空け、一撃のもとに葬り去った。

そして、戦場に姿を現す鋼鉄の巨獣。その三角形の照準器を覗き込むのはロマリアから駆けつけてきた才人。
この世界のいかなる武器も魔法もまったく効果のない『ヨルムンガント』に対して才人が持ち出したものこそ、かつて地球からこの世界に迷い込み、ロマリアに保管されていた「ガンダールヴの槍」。

すなわち、『タイガー戦車』であった。

言うまでもなくWW2の戦車戦最強と名高く、ミリオタでなくとも名前を聞いたことくらいはあるくらい有名な戦車がファンタジー世界に登場する。
このアンバランスながらも少年たちの純粋な夢を現実にした光景の下で、タイガー戦車は魔法技術の粋を集めた巨大ゴーレムを、その88ミリ砲で次々に撃破していく。
このシーンは当時のゼロ魔ブームの絶頂を作ったと言ってもよく、そこで才人がつぶやいたのが、

「地球ナメんな。ファンタジー」

である。
この台詞は当然地球人である読者たちのハートをわしづかみにし、後のライトノベル界において地球出身者の異世界無双が流行する一因になったと言っても過言ではないだろう。

なお、軍事力でファンタジーを圧倒するものが主であるが、思想や文化でファンタジーに乗り込んでいく作品も最近は見受けられる。

地球なめんなファンタジーの先

そうした「科学技術は(現在~将来的に)超常技術を圧倒できる」という前提の上で、超常サイドの行く末を描く作品も見られる。

FateシリーズなどのTYPE-MOON世界は魔術などの神秘=ファンタジーが存在しつつも衰退の一途にあると言われる現代世界であり、狙撃銃など現代兵器と神秘を併用して戦うキャラクターが多くの作品ごとに何人か登場する。
進撃の巨人は航空機や水上戦力が発達していき、いずれ巨人が役立たなくなると思われている過渡期の時代で、人物の思惑同士のぶつかり合いが起こる。

【地球なめんなファンタジーをやった作品や人物】

現代科学

元祖*1。上記以外だと、アニメFにて才人が地球からF-2戦闘機を持ち出してエンシェントドラゴンとの決戦で使用した。

デビルハンターであるダンテが悪魔を狩るスタイリッシュアクションゲーム。続編が5まで制作されている。
稲妻を纏う剣、炎の具足などファンタジーっぽい武器を主に使う一方で、ダンテの初期装備の2丁拳銃「Ebony & Ivory」はコルト・ガバメントを魔改造したものであり、他にも狩猟用のソードオフ・ショットガン、グレネードランチャー、サブマシンガン、ミサイルランチャー、対戦車ライフルなど近代的な銃を多数使うことができる。*2
魔力の弾丸を撃つ魔道具なども登場しているが、そちらの方が少数派であり、DMCシリーズ=飛び道具は銃というイメージを持つ者も多いだろう。
(但し、作中で弾数無限かつリロード不要なのは弾丸が魔術で自動的に召喚されているからという設定がある)

特に初代ではキャッチコピーが「現代に蘇った魔剣士の戦闘スタイルはGUN&SWORD!」であり、オープニングでは「パパから剣の使い方を教わらなかったの?」という挑発に対して「剣?ハッハー!コイツを喰らいな!」と返して銃を連射するというシーンがあり、「銃を使って戦う」という点が強調されている。

ちなみにの1の製作者インタビューでは「何で悪魔に近代的な銃器が有効なのか、という点についてですが、 そりゃ悪魔だってショットガンやグレネードの弾を喰らったら痛いだろう と考えたんですよ。それに銃で悪魔を撃って「いてー!魔法攻撃なら知ってるけど、なんじゃこりゃ!?」ってなったら「ハッハー!人間サマの文明を舐めるなよ!」って感じで優越感に浸れるじゃないですか」とコメントしている。
作中でも基本は剣で戦うゲームだが、1のシャドウや3のガーゴイルなど「剣による攻撃は無効だが、銃弾に関しては想定外なので無効化出来ない」という設定で銃を使って倒すべき悪魔もいくつか登場している。
逆に2のアリウス、3のレディやバージル、3SEのジェスターなど、銃が殆ど効かないボス敵には「銃の存在を知っている」という共通項がある。

自衛隊による異世界無双。
但し基本的には政治・融和政策が先にあっての話で、武力行使はどうしても必要或いは文字通り自衛の為の行使である。


セイレーンに隠し持ったテープレコーダーを相手に5時間歌わせ続ける*3、また雪女に液体窒素を浴びせるという手段を使い勝ったことがある。

線路を逆走する謎の汽車にそのまま直進した機関車。その結果は……

異世界に迷い込んだ地球の偉人たちが大暴れする作品。
ファンタジー世界には存在しない戦法や道具の披露はもちろん、呼び出された人物それぞれの思考の差異による影響の及ぼし合いが魅力。
主に活躍するのは妖怪薩人マッシーンに、鉄砲にバレー部主将にバカヤロウに宗教や農業。あとウンコ。

1998年のハリウッド版では米軍の通常兵器のみでゴジラを倒す様子が描かれている。
当時はこの展開が酷評されていたが、この用語や「無人在来線爆弾」などが現れた今、これが上映されていたならばちょっとだけ話が変わっていたかもしれない。
そういう意味で早すぎた作品と言える。

  • 碧奇魂ブルーシード
3×3EYESで「なすすべなくファンタジーに蹂躙される現代文明」を描いた高田裕三が、1992年にコミックガンマで連載開始したマンガ作品。地球なめんなファンタジーの初期にあたる。
本作は「現代文明に封じ込まれつつあるファンタジー、そしてファンタジーの反攻とそれに対抗する現代文明」という逆転の状況になっている。

  • アーサー王宮廷のコネチカット・ヤンキー
西暦528年のイングランドに、現代(執筆当時である1800年代末)のアメリカ人技師がタイムスリップし、中世イングランドで現代科学を使って無双、魔術師マーリンと対決したり中世で産業革命を起こそうとする小説。
著者は「トム・ソーヤーの冒険」のアメリカ人小説家マーク・トゥエイン。中世イングランド社会とアメリカ南部社会を風刺した歴史改変作品であるが、作品の発表は1889年と130年以上昔であり、「地球なめんなファンタジー」として定義するのであれば最古の部類に入る作品である。

空想科学

科学文明の普及によって居場所を無くしていく魔法使いの魔物たちによる科学者への宣戦布告から始まる、科学VS魔法の決戦を描いた作品。恐らく地球なめんなファンタジーの最初期作品。
幻術・毒ガス・天変地異と猛威を振るう魔法に対し、魔物の成分を解析して作った溶解液や科学による防御装備による科学側の猛攻は、いつしか一部魔物たちをも科学がもたらす希望で魅了していく。

  • ドラえもん のび太の魔界大冒険
魔法と科学が逆転した世界で、唯一科学力を扱えるドラえもんの秘密道具が悪魔を相手に大活躍した。

2016年以降は少々事情が変わってしまったが、
基本的には「宇宙軍人が一人で現代銃器+プラズマ系未来銃(あとチェーンソーまたは己の拳など)を駆使して悪魔の群れを血祭りにあげる」というゲーム。

一方で、悪魔側にも一部サイバネ改造に手を染めた奴らが存在し、この連中は軒並み強敵として立ちはだかってくる。

ニンジャという不条理の塊に対して通常武器と人体改造のみで戦う狂人。

マジンガーやヘルの科学力が目立ちデビルマンやデーモン族の活躍が少なめ。

オカルトを否定し続け、ついには科学の力で千年アイテムの超常の力をねじ伏せ、さらには生きたまま冥界を行き来する偉業を成し遂げた。
加えて「非実在な存在に実在する物だけで勝つ」ということを、『アニメオリジナルカードを使う相手にほぼ実在カードのデッキで勝利する』と言う形で再現している。

念力遮断回路によってザダムの超能力を破った。

ギシン星の超能力者たちに対して、地球人たちが『生身』で挑んでフルボッコにした。別名「スーパー生身大戦」
相手は宇宙人なのでちょっと違うかもだが、超能力を手品扱いしたあげくに、地球人恐るべしと相手に言わせている。
「マシンを使わなくとも俺達は戦えるのさ!」という大迷言が飛び出したりもした。
ちなみにこの作品、ガンダムファイター変身ヒーロー巨大ロボットと生身で戦う宇宙人SDガンダム着ぐるみもいません。
サイボーグはいたけど

当初はただのマッドサイエンティスト集団かと思われたが、終盤はキルリアン振動機が勝利に貢献した。
うしおととらは「現代科学は出来る事と出来ない事がはっきりしており、出来る事の範囲に持ち込めればパワーと物量でファンタジーをも圧倒するがそこに至るまではやられるがまま」というルール付けが初期からはっきりしており、例えばみんなのトラウマことは最終的に自衛隊の戦闘機が発射したミサイルで撃破された。

常識も科学も通用しない不条理の塊たるSCPオブジェクトに謎の超科学で立ち向かう財団やGOC。謎すぎてむしろあんたらの"科学技術"もとっくにオカルトに片足突っ込んでるだろと言っちゃダメ。



追記と修正はドラゴンをミサイルで撃ち落として頼むぜ。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • ファンタジー
  • 科学
  • チート
  • ゼロの使い魔
  • 地球
  • モンスター
  • 超兵器
  • 自衛隊
  • 創作
  • 地球なめんなファンタジー
  • この星を、なめるなよ!
  • 地球を、嘗めんなよ!

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年04月13日 18:02

*1 下記のブルーシードのように、現代文明がファンタジーを圧倒するという創作描写は本作以前から存在した。だが、多数の読者を得た人気作品で明確に描写した事で転換点になったのは間違いない。

*2 MP5、ラハティ L-39、FIM-92 Stingerなど実在の銃器だが固有名称は出てこない。おそらく商標の問題と思われ、ベースとなった『バイオハザード』シリーズでも初期は「ベレッタ」「コルトパイソン」といった銃が、リメイク時には「ハンドガン」「マグナムリボルバー」と名前が差し替えられている。

*3 その間歌ったフリをし続ける事で傍目には歌唱勝負の体裁を取って騙していた