マジンガーZ ミケーネ恐怖の遺産

登録日:2018/02/24 Sat 09:53:15
更新日:2023/11/01 Wed 00:43:34
所要時間:約 10 分で読めます




マジンガーZ ミケーネ恐怖の遺産』は、石川賢による『マジンガーZ』の読切漫画作品。

1997年11月に双葉社より刊行されたコミックアンソロジー『スーパーロボットコミック マジンガーZ編』に収録されたのが初出で、
それ以外では石川賢の著作『ゲッターロボアーク』の単行本(文庫含む)に併録された*1

豪華50ページの中に、容赦のないメカニックや背景の書き込み具合で描かれるマジンガーZと機械獣のガチンコ対決、
「神にも悪魔にもなれる」というマジンガーZ根源の設定を取り扱ったテーマ性のあるシナリオと、石川賢の手腕ならではの見どころは多数。
永井豪以外の著者の筆による作品ではあるが、ケドラやガラダブラMK01といったキャラクターは
後のアニメ作品『マジンカイザー』や『真マジンガー 衝撃! Z編』といった作品群でも登場を果たしており、
そういう意味では「マジンガー・サーガ」を語る上で決して外すことのできない作品だといえよう。


登場人物

お馴染み主人公。石川賢の画風でやや濃ゆい顔つきになっているが、普段とあまり変わらない。
Dr.ヘルらが見抜けなかったケドラの本質を誰よりも先に暴いたりと、聡明さは健在。

  • 弓さやか
甲児と共にホバーパイルダーに同乗、ケドラよりマジンガーZを奪還すべく奮闘する。

  • ボス
ケドラに乗っ取られたマジンガーZにボスボロットで挑むが、あっさり返り討ちに。

お馴染み名悪役。ケドラの本質を理解できなかったり、その負けっぷりも二十数年ぶりに復活しても相変わらず。
単独項目にも書かれているが元々あしゅら男爵のデザイン原案は石川賢であり、ある意味凱旋。

  • Dr.ヘル
お馴染み悪の首魁。
古代エーゲ海・バードス島より発掘された巨大ロボットを、自力で操作できるよう改造を施し「機械獣」としたが、
当の古代ミケーネ人が、一体どのようにしてロボットを動かしていたのか……その答えとなる存在にして
同じく発掘された「ケドラ」を、その本質を探るべくマジンガーZへと差し向ける。

ケドラに操られたマジンガーZを迎え撃つべく応援するが、なまじ「やったか?」なんてフラグ満載の台詞を言ってしまったがために……


登場メカ

ご存知、鉄の城。
今回、ケドラに寄生されて暴れまわるという、「神にも悪魔にもなれる力」の“悪魔”の側面が描写されることに。

暴走したマジンガーZにあっさりいなされる。

  • ガルダC3、バルガM3
Dr.ヘル配下の機械獣。甲児は「マジンガーZ対策用に作られた機体」と看破している。
最終的には撃破されたが、その実態はケドラをZに寄生させるための「囮」だった。

  • ケドラ
本エピソードのキーパーソン。
古代ミケーネ人が巨大ロボット……後の機械獣を操るために用いていた戦闘頭脳にして、「生きた機械体」。
内部には古代ミケーネ人の脳髄を搭載し、その行動原理は一貫して「ミケーネ以外の文明を滅ぼす」に終始している。
単なる機械ではなく、メカを捕食して自己進化するといういかにもドワォめいた存在であり、
機械獣を操るのみならず、ケドラ単体でも人間を襲撃して甚大な人的被害をもたらすほどの戦闘能力を有している。
Dr.ヘルによって複数体が発掘されており、今回作戦に動員された個体の名前は「エバ」。

  • ガラダブラMK01
現在ではすっかり『マジンカイザー』や『真マジンガー』でもお馴染みだが、初出は本作。
かつてマジンガーZに敗れたガラダK7とダブラスM2を合体させたかのような外観を持った「合体機械獣」で、
ケドラに乗っ取られたマジンガーZと共に街を破壊しようと目論んだが……


ストーリー解説

今日もまた、街を襲撃した機械獣と交戦するマジンガーZ。
対マジンガー対策用に調整された機械獣2体がかりというセットだったが、甲児は少してこずりながらも必殺のロケットパンチを振るい、余裕綽々で敵を粉砕。
勝利の余韻に浸る間もなく、次なるDr.ヘルの魔の手に戦意を奮う。

だが、マジンガーZに撃破された機械獣の残骸……
その中から出現した不気味に蠢く影が、マジンガーに近付いていったことに気付いた者は誰一人としていなかった。


場面は変わり、Dr.ヘルの本拠地・バードス島。
Dr.ヘルの待つラボに戻ったあしゅら男爵は、機械獣ガルダC3、並びにバルガM3がマジンガーZによって倒された事……
そして、それらの機体に潜ませていた「ケドラ」なる存在が、恐らくはマジンガーZに寄生したであろう事を報告する。

Dr.ヘルはあしゅら男爵に語り始めた。
かつて、Dr.ヘルがバードス島の伝説……古代エーゲ海に伝わる巨人伝説を信じ、遺跡を発見した時の事を。
数千年もの長きにわたり眠っていた遺跡に埋もれていた、現代技術をも凌駕した兵器、「機械獣」。
果たして誰が作ったのか……本当に古代ミケーネ人がこれほどの科学力を有していたのか……
天才・Dr.ヘルでさえ、未だ解明できない物がバードス島の遺物には多数あるのが現状であった。

そして、培養カプセルに浸された「生きた機械体」……ケドラもその一つ。
機械でありながら、同じメカを貪って成長する機械生命体……古代ミケーネ人が何故にこのような存在を作ったのか。
その答えを求めるために、Dr.ヘルはマジンガーZにケドラを差し向けたのであった。
Dr.ヘルは、あしゅら男爵に即座日本に急行し、マジンガーの行動を全て報告するよう命令する。


一方、深夜真っ只中の光子力研究所、マジンガーZの眠る格納庫にて、異変が起きていた。
マジンガーZに寄生していたケドラが、活動を開始……警備員を殺害し、機械類を貪り食ったそれは、
翼を広げてマジンガーZのもとへ飛翔すると、ホバーパイルダーの収まっていない空の操縦席……そこに収まってしまった。
それと同時に眼を不気味に光らせてマジンガーZが起動、手始めに研究所の施設を破壊し始める……

深夜の振動に目が覚めた甲児達が見たものは、ケドラに操られて破壊活動を繰り広げるマジンガーZの姿であった。
弓教授もケドラの正体は一向に掴めないものの、一先ずZの進撃を許すわけにはいかず、自衛隊に研究所の周囲一帯を封鎖するよう通達。
研究所の外に姿を現したマジンガーZは、食い止めようとしたボスボロットを一蹴し、
光子力研究所の迎撃施設すらものともせず、市街地へ向かって進撃する。

その様子を、海底要塞サルードから伺っていたあしゅら男爵は、マジンガーZに憑依したケドラが研究所をパニックに陥れた事をDr.ヘルに連絡。
それを聞いたDr.ヘルは、一つの確信を得たかのような表情を浮かべる。
曰く、Dr.ヘルが発見した時の機械獣は、ただの人型をした鉄の塊にすぎず、とても起動させる手段などなかったのだという。
Dr.ヘルはそれに改造を施して自由に操れるようにした訳だが……
裏を返せば、古代ミケーネ人は一体どのような手段で機械獣を動かしていたのかという謎が残るままになっていた。
その答えこそが「ケドラ」。古代ミケーネ人は、戦闘用の頭脳を別に作り、それを機械獣に搭載することで文字通り「意思を持つロボット」を作ろうとしていたのだ。
Dr.ヘルは、今こそ機械獣を出動させ、ケドラが奪ったマジンガーZを我が物とし、日本を殲滅するようあしゅら男爵に命令する―――


富士裾野のF市、ケドラに操られ進軍するマジンガーZを迎え撃つべく自衛隊がスタンバイ、応戦する。
……が、やったか?」なんて言ってしまったせいで超合金Zに覆われた鉄の城には傷一つ付かず、
マジンガーZは戦車を踏み潰し、容赦なくブレストファイヤーで自衛隊員たちを消し炭にする。

空路よりホバーパイルダーで駆けつけた甲児とさやかは、マジンガーZによって瓦礫の山となったF市に到着。
マジンガーの通った後は空襲のごとく惨状となっており、ケドラに操られたZのまさに「悪魔」のような威容に、
甲児はかつて祖父・十蔵の言い残した言葉……「マジンガーは操る者によって神にも悪魔にもなる」という遺言を思い出す。
何にせよ、甲児はマジンガーZを取り戻すべく……それと同時に、敵の正体も確かめるため、
ホバーパイルダーの操縦をさやかに委ね、自身はケドラが居座るマジンガーZの頭部へと飛び降りる―――

かくして、マジンガーZの頭頂部にしがみ付き、ケドラと対面した甲児。
ケドラの触手や爪の攻撃を必死にかわしつつ、光子力のビームガンによってケドラの頭部を吹き飛ばすが、
果たして、その内部に鎮座していたのは、カプセルの中の培養液に浸された巨大な脳髄であった。
脳髄……ケドラは突如、テレパシーのような形で言葉を発する。

ケドラ
「ジジ…」
「われの名は…エバ!!ミケーネの兵士なり!わが文明以外はすべて排除する!!」
「われわれは異文明を滅ぼす為だけの…教育を受けた戦闘頭脳なり!!」
「きさまらを滅ぼし、ここにミケーネ帝国をきずく!!すべてを滅ぼす!!」
「滅ぼす、ミケーネ以外の文明をすべて排除する!ジャマ者はすべて消滅させる」

そう言いながら、ケドラはマジンガーZを操り街を破壊し尽くす。
甲児は理解した。このケドラは、ミケーネ以外の文明を滅ぼすことしか考えていない殺人頭脳だと。

次の瞬間、向かいのビルを切り裂き、その影から現れた巨大な影があった。
そのシルエットは、かつて甲児が初陣で倒したはずの機械獣、ガラダK7にダブラスM2……否。
それら2つの機械獣を融合させたかのような外観を持つ怨念の合体機械獣、ガラダブラMK01であった。
あしゅら男爵は勝ち誇ったかのように、ガラダブラにマジンガー共々日本を殲滅するよう指令を出す。絶体絶命……

―――が、その直後、予期せぬ事態が起きた。
ケドラの操るマジンガーZが、突如として町の破壊を中止し、一心不乱にガラダブラに攻撃を仕掛けてきたのだ。
突然の事態に狼狽するあしゅら男爵であったが、甲児はケドラに翻弄されながらも、その真相をすぐさま看破できた。
そう。Dr.ヘルの改造を受けた機械獣は、もはやミケーネの存在ではなく、ケドラにとって排除すべき「異文化」以外の何物でもないのだと

ケドラに苦戦する甲児を助けに、ホバーパイルダーで強引にマジンガーZの頭部にパイルダーオンしようと試みるさやか。
逆にケドラに絡めとられて窮地に陥ってしまうが、そのスキを好機と見た甲児は、携行していた火器でケドラの本体である脳髄を攻撃。
ホバーパイルダーに飛び乗った甲児は、大ダメージを受けたケドラを完全に排除すべく、再度強引にパイルダーオンを敢行。
……と、ケドラはマジンガーZを捨てると、眼前のガラダブラMK01に宿主を乗り換える。
おかげで、甲児達は無事にマジンガーZへとパイルダーオンする事に成功。そのコントロールを奪取する。

ガラダブラMK01に憑依したケドラは、甲児のマジンガーZと激突―――
ガラダK7の腕と、ダブラスM2の首でマジンガーを絡めとるも、その頭部からガラダの鎌を武器譲渡剥ぎ取られ、
一度とはいえマジンガーZを悪魔にされて怒り心頭の甲児に、ダブラスの首を滅多切りにされてしまう。
それでもなお眼底のバルカンを掃射しつつ進撃するも、甲児は「消えるのはテメーだ古代のバケモノ!!」と
怒りのルストハリケーンを浴びせ、ガラダブラMK01は酸化、塵と化した。
ケドラは巻き込まれる前にガラダブラMK01から離脱、逃げようとするも、甲児がそんなことを許すはずもない。
マジンガーZの放った渾身のブレストファイヤーに焼かれ、ケドラは完全に滅ぼされるのであった―――

ケドラ、ガラダブラMK01をあっさり失い、20年ぶりに復活したのにまたしても敗北した事に悔し涙を流すあしゅら男爵。
一方、Dr.ヘルは、先の戦いを経てケドラの危険性を認識、エバ以外の発掘されたケドラを全て始末するよう部下に命令する―――


かくして、ケドラは滅び、“正義の味方”マジンガーZが戻ってきた。
マジンガーZを取り戻した甲児は、出迎えてくれた大切な仲間たち、人類の平和のため、マジンガーZを二度と悪魔になどさせない、
未来への希望にすると、今は亡き十蔵に改めて誓うのだった……



追記・修正は、ケドラに「異文明」と看做されない程に古代ミケーネに帰化してからお願いします。

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最終更新:2023年11月01日 00:43

*1 2016年刊行の新装版では未収録。