ハナレ/戸賀崎幸

登録日:2018/02/16 (金) 20:44:20
更新日:2022/03/03 Thu 19:01:03
所要時間:約 12 分で読めます






どこにも、行かないよ。もう……



『ハナレ』とはトレーディングカードゲーム『WIXOSS』およびそのメディアミックスの映画『selector destructed WIXOSS』に登場するルリグである。


【概要】

第13弾『アンフェインドセレクター』から参戦したルリグで、色は黒。
命名ルールは『●●の冥者 ハナレ』で●●の部分には漢字2文字の単語が入り(例『救済の冥者 ハナレ』)、彼女と関係の深いルリグである『ウリス』の命名ルール『●●の閻魔 ウリス』と似たものになっている。
外見は黒のショートヘアにスリングショット風の露出度の高い衣装を着ており、アイシャドーを濃く塗っている。


【カードとしてのハナレ】

ハナレ自身の特徴としてレベル3までの性能は他のルリグとほぼ共通だが、レベル4の救済ハナレはグロウに何と黒4も要求される。*1
その代わりとして、リミットが12と多めなのでレベル4のシグニを3体場に出すことができ、同レベル帯でのバトルではハナレが若干有利となる。
さらにレベル5に上がるとリミット13+効果4個持ちにパワーアップするので、より他のルリグと差を開けることができる。
ただし、効果に関しては下記で記載する『毒牙』に関わる物がやや多いため、デッキ構築もほぼ毒牙軸一択となる。

ハナレが使うシグニに関しては、毒物をモチーフとしたクラス『毒牙』を配下としている。
毒牙は元々『イオナ』の配下クラスであったが、次第にイオナのメインクラスが『迷宮』『古代兵器』へとシフトしていったこともあり、現在ではハナレ配下になっている。
毒牙のモチーフは毒性を持った薬品や動植物、それを運用する道具となっており、ハナレ限定の物は歴史上の毒物に関連する人物を元にしている。
これらのシグニは、毒をモチーフとしているらしく、相手シグニのパワーをマイナスする効果を多く持っており、これらのシグニをハナレ自身や黒のカードの得意戦術といえる墓地回収を駆使して使いまわしながら相手シグニを除去、自身や関連シグニのパワーマイナスをトリガーとする能力を発動していくという戦術をとる。
登場した13弾以降はあまり強化には恵まれなかったが、第22弾『アンロックドセレクター』においてハナレのレベル5実装と共に相性のいい毒牙が追加されることとなった。







「あなたのなまえ」

「えっ?どれ?」

「あの一文字だけ、青くなっているやつ。幸せ、って書いて。さちって読むの」

「あれ、さちのかんじ?すごい!」

「知ってる?…さちって漢字は、一つ棒を抜くと、辛いになるんだよ」

「えっ?」

「一人になると辛くなるよ…」


「辛くなっちゃえ」


「フフフ…フフフフ…フハハハ…ハハハハ…!」

「まって!まって!つらくなっちゃうのいや!」



「いやああああああああああああああ!!!」




【selector destructed WIXOSS】



※以下の内容はネタバレを含みます※


ハナレの本当の名前は項目名にもある通り『戸賀崎 幸(とがさき さち)』。下町の街工場の経営者夫婦の一人娘であった。

彼女が幼少の頃(設定では5~6歳ごろ)、戸賀崎家に母親を亡くしたいとこの少女『五十嵐 留未』が引き取られてきた。
留未に懐く幸であったが、留未からはその純真無垢な清廉さをうっとおしく思われており、幸の母親も幼いながらもその心に闇を抱える留未のことを疫病神扱いして非常に疎ましく思っていた。
ある時、留未に誘われて一緒に遊びに出た幸であったが、留未は幸を一人放置してどこかへいなくなってしまう。(上記のやり取りはその時の様子)
留未に置いて行かれ、一人ぼっちで公園のブランコに乗っていた幸の隣に一人の少女が座った。その少女と一緒に遊ぶ幸であったがその少女は自分の名前を言いたくないという。
留未とのことで同じように自分の名前を言いたくないと少女に言っていた幸は彼女に、

「じゃあ、あなたタマね。たまたま、ここであったから、たまたまの、タマ!」

と名前を付ける。少女も「ねこみたい」とその名前を気に入り、意気投合した二人は一緒に暗くなるまで遊ぶのだった。

だがこの件で幸の母親の堪忍袋の緒が切れてしまい、留未は戸賀崎家から追い出される形で施設に預けられてしまう。
施設の職員に連れられ、戸賀崎家を去って行く留未を追いかけていこうとして母親に止められる幸。いなくなってしまう留未の背中を、幸は涙ながらに見送ることしかできないのだった。


それから時間が経ち、成長してもなお留未の事が心に残り続けている幸の元に喋るルリグカードがやってくる。
そのルリグカードが少女たちの間で噂になっている願いを叶えてくれるウィクロスカードだと知った幸は、そのルリグに願いを託してセレクターバトルに参加する。
「幸ともう一度会いたい。留未に謝りたい」という願いを。
しかしバトルを勝ち抜き、夢限少女となった幸が知ったのは、「夢限少女となったセレクターはルリグと入れ替わりに自分自身がルリグになってカードの中に閉じ込められてしまう。そしてルリグはセレクターの体を得て現実の世界に戻りセレクターの願いを代わりに叶える」という夢限少女の真実であった。
留未と『離れて』辛くなってしまった自分に『ハナレ』と名付けた彼女は今度はルリグとしてセレクターバトルに参加することになってしまった。


ルリグとして戦い続けていたハナレにセレクターバトルの支配者『』から更に理不尽な運命が告げられる。
ハナレが幸だった頃にパートナーだったルリグ、今は『戸賀崎幸』となっていたルリグがセレクターバトルを苦にして自殺を図ったのだ。
ルリグの自殺未遂によって幸の元の体は植物状態となってしまい、戻る体を失ってしまった。*2
もう元の戸賀崎幸に戻ることも出来なくなったハナレは、最後に残った留未との再会という願いに賭けて彷徨い続けることしかできなくなってしまったのだ。


何度も敗北を繰り替えし、多くのセレクターの元を渡り歩いて『寛子(ひろこ)』という少女をセレクターにしていたある時、ハナレは『浦添伊緒奈』とのバトルを行う。
その伊緒奈の中身はハナレと同じようにセレクターバトルに参加し、夢限少女となったことで彼女と入れ替わった『ウリス』、そして彼女こそがハナレが探していた今の留未であった。
だがハナレは伊緒奈の中身がウリスであることに気づかず、ウリスもまた成長し黒のルリグとなった今のハナレの姿が、かつての純真無垢な幸の姿とは結び付かずにハナレが幸であるということに気づくことはなかった。彼女たちのバトルの結末は描かれていないが恐らくはウリスの圧勝に終わったのだろう。


ウリスとの戦いからしばらくして、ゲームマスターの繭が『小湊るう子』に敗れて白窓の部屋のある空間は崩壊。再びルリグに戻り、繭と共にバトルしていたウリスは崩壊に巻き込まれ漆黒の闇が一色に染め上げる空間へと飲まれていった。
その空間の闇がウリスを包み込み、漆黒の姿へと染め上げていく。
周りの全てを闇に飲み込もうとし、そして最後には誰もいない一人ぼっちになりたいと望んでいた彼女は喜びを覚えながら静かに闇に飲まれていった。



「……独り……闇が私の全てをそいで奪っていく……」

「……何も見えない聞こえない……残れたのは、願いだけ」



「……こんなの最高じゃない」



「私に手を差し伸べてくる善人たち……その、見せかけの優しさを。絶望で根こそぎ奪ったなら」

「私は、本当の一人になれる」

「私は、一人に……」






「一人にはさせない」






そんな闇に染まっていくウリスの手を握りしめたのはハナレ……幸だった。
セレクターバトルが終わっても、もう幸は元の体に戻れない。そんな中でも幸は今でも変わらない「留未にもう一度会いたい。謝りたい。留未を救いたい」という自分の願いを叶えるために漆黒の闇の中までウリスを迎えに来たのだ。
理不尽なゲームに巻き込まれて全てを失い、これからずっと暗くて寒い闇の中に閉じ込められることになったとしても、それでも自分に寄り添ってくれる幸に、体に入ってきた闇が消え去ったウリス……留未は子供のように泣きじゃくる。
そんな留未を優しく抱きしめながら、幸は彼女とともに静かに闇の中へと沈んでいくのだった。




「留未ちゃん、辛いって字はね、一を足したら幸せになるんだよ…」




少女たちが解放され、日常に戻っていく中でたった二人で闇の中に閉じ込められることになる二人の少女。
それでもつないだ手がもうハナレないように、二人は今でも静かに闇の中で寄り添い続けている。
物語の〆と言うこともあり非常に感動的なシーンなのだが、この時二人は全裸である。カード『セレクター』では煙で色々隠しているが、Blu-ray&DVD初回特典にある解説書では…



人間関係


「……また、だ」
「また……正しい人、綺麗な人が、私を助ける……そして、助けたくせにどこかへ行ってしまう……」

「どこにも行かないよ」
「ずっとここにいる。ここは暗いけれど、寒いけれど……」
「でも二人なら……きっと……」

幸の思い人にして、劇場版『selector destructed wixoss』の真の主人公である少女。
メタ的に言えば、幸は彼女の掘り下げのために作られたキャラクターである。

幸の思いは本編でも描かれていたが、留未もまた離れた後も幸によって心の中に一筋の「光」を落とされ続けていた。心に闇を抱え、孤独を求め続ける留未にとって幸の存在は『もっとも清くて、もっとも美しいもの』の象徴のようになっていたのだ。
劇場版におけるるう子への行動の真意は、彼女の中に幸と同じ綺麗なものしか見たことのないような目の輝きを感じていたが故のものであり、離れてもなお自分の心をかき乱し続ける幸は留未にとって最も乗り越えなければならない『敵』だったとも言える。
(留未の心象を書いたと思われる劇場版主題歌『love your enemies』(日本語で『汝が敵を愛せよ』)のタイトルの『敵』の中には幸も含まれているのだろう)
そのため、病院で眠り続ける幸(正確には彼女と入れ替わったルリグだが、この時のウリスはそのことを知らない)を見つけ*3、彼女がそうなったのは自殺未遂を起こしたからだと知り、もっとも清くて美しいものが壊れたことでもう自分の心をかき乱すものがなくなったと喜びを覚えるはずが、その時のウリスの表情はどこか空しさを感じているような無表情であった。

ラストで闇に侵食されていったウリスは、彼女のTCGにおけるレベル5の一つである『虚幸の閻魔』そのものの姿へと変わっていった。
その名前が表すとおりに幸がウリスの元に行かなければ、もしかしたらこのままこの空間を拠点に新たな呪いのゲームのゲームマスターとなっていたのかもしれない。
TV版でもウリスがあの末路を迎えた後、結果的には劇場版でそうなったように白窓の部屋に渦巻いていた闇に飲みこまれて侵食された可能性が高く、もし本当にそうなっていれば『lostorage』のゲームの黒幕候補筆頭は彼女になっていたことだろう。
ただし、一応劇場版とはパラレル世界とされるTV版でも幸の存在を入り込ませる余地はあり、劇場版で描かれたことも含めてファンの間では幸が一緒にいるのなら留未がそうなることはないだろうという考えが主流となっている。



「すごいよね、タマは…もう幸に戻れなくなった、私の願いまで叶えてくれた」

幸が幼少期に出会った、セレクターバトルを終わらせた少女。
幸と会ったのはるう子が母親に捨てられる直前の頃だった。(詳細は彼女自身の項目を参照)

2人が出会ったのはその時の一回だけだが、幸はセレクターバトルを終わらせ、自分に留未を救いに行くことが出来る機会をくれたのがあの時出会った『タマ』であることに気づいたようで、るう子も劇中で何度か幸のことを思い出すシーンがあった。(劇場版では自分のルリグに名前を付ける時に、この時のことをノイズ交じりの記憶から思い出して『タマ』と名付けている)


●寛子

「ハナレ、ごめんね。私、サーバント持ってたのに……」 
「……大丈夫。寛子、自分のペースを乱さないで。今度はこっちのターンだよ!」

ハナレのセレクターの一人。
彼女の願いは「好きな人がいて、次のクラス替えでその人と同じクラスになりたい」というもの。それを聞いたウリスはカスみたいな願いと一蹴していたが、負けが続いていたこの時のハナレは寛子もまた勝つことが出来ずに失格する。そうなればこのゲームから降りられるからそれでもいいと諦念まじりに思っていた。
寛子の願いが「好きな人と付き合いたい」という直接的なものでなくこのようなちいさなものであったのは、自分のセレクターが勝てないと思ってしまっていたハナレが寛子に「願いが叶って好きになってもらってもそれで嬉しいの?」などと言って、せめて反転してもまだ大丈夫な願いになるように誘導したからなのかもしれない。


余談と考察



●第14弾『サクシードセレクター』に収録されているタロットルリグカードにおけるハナレの大アルカナは第15番『THE DEVIL(悪魔)』
正位置における意味は裏切り、拘束、堕落、束縛、誘惑、悪循環、嗜虐的、破天荒、憎悪、嫉妬心、憎しみ、恨み、根に持つ、 憤怒、破滅。
逆位置の意味は回復、覚醒、新たな出会い、リセット、生真面目。
先に発売された第10弾において収録されたウリスのタロットルリグカードもまた『THE DEVIL』であり、タロットルリグカードの中では唯一同じ大アルカナが被るものとなっている。
上記の通り、ハナレはウリスと関係が深いものであり、ハナレの大アルカナがウリスと同じというのもまた違和感なく受け入れられるものといえるだろう。


●アニメ本編では不明であった、元の体に戻れなくなったルリグがどうなるのかについての回答がハナレの結末で明かされることになったが、回想シーンでの会話で繭は幸の体を使っている元ルリグが自殺を図ったということしか言っていない。
あれがその時の会話の全部なのかで成立しなくなる考察なのだが、あれだけではハナレが実際は戻れるのに元の体がもう死んでいるから自分は戻れないと思ってもおかしくない。
(そう思っても勘違いする方が悪いとかあのクソ運営なら言いそうだし。また、もし元の体に問題なく戻れていたとしても、幸は留未と一緒に居るという選択をしただろう)
なので劇場版の最後で人間になれたタマの体がどこから出てきたのか。タマが新しく作られた体で人間になれたのなら他の元の体に戻れなくなったルリグたちも同じではないのかなど、この点についてはまだ考察の余地があったりする。
元の体がすでに死んでいるためにセレクターバトルが終わった後も戻れなくなっている可能性が高く、その後どうなったのかが分からないルリグがスピンオフに一人いるのでそのあたりの設定が詳しく書かれるのを待ちたい。





追記修正は留未ちゃんを救ってあげてからお願いします。

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最終更新:2022年03月03日 19:01

*1 数多いルリグの中でグロウに必要な単色での指定が厳しいのは救済ハナレのみ。なお、グロウに必要なエナの量では『紡ぐ者』の無色5が一番多い。

*2 後の『lostorage』では高架橋から飛び降りて本当に自殺したルリグがいる。理由は『(強制的に得た)人間の身体で生活するのは退屈だったから』とやはり身勝手なものだった。

*3 『spread』後半でウリスが晶にボールペンで刺されて運ばれた先が偶然幸が入院していた病院であった。