きだつよし

登録日:2018/02/08 (木曜日) 21:33:01
更新日:2024/04/05 Fri 18:34:26
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きだつよし(1969年8月3日生まれ 大阪府出身)とは、日本の劇作家・演出家・脚本家・俳優・絵本作家である。2020年までオフィスPSCに所属していたが、同年に退所している。


経歴・概要

日本大学芸術学部*1演劇学科を卒業した直後の1992年、学生仲間たちと共に劇団『TEAM 発砲・B・ZIN』を結成。劇団主宰として劇団の全脚本・演出を手掛けるようになる。
劇団での第1作目は普通の芝居だったが、自身の特撮好きな部分を投影してか第2作『ダッシュマン(カメイ)』から「ヒーロー」がテーマの一つとなり、
第6作目から「大の大人が笑って泣けるヒーローもの」を劇団のコンセプトとし、様々な「ヒーロー」の形を笑いあり涙ありで綴っていく活劇スタイルを芝居の売りとする様になる。
7作目の『ジャスキス』からはきだ自身も本格的に俳優として劇団の舞台に立つようになり、順調に知名度を上げていく。
その一方で1997年にはアニメ『HARELUYA II BØY』13・21話で外部作品の脚本も初担当。同年には演劇集団キャラメルボックスとコラボした舞台『ブラック・フラッグ・ブルーズ』で演出協力となり、他劇団員共々出演者にもなった。
1998年には『星獣戦隊ギンガマン』39・47話で特撮脚本家としてもデビューし、その縁で『仮面ライダークウガ』17話や『仮面ライダー響鬼』前半のメインライターも担当。
00年代にはジャニーズ系の舞台なども手掛けるようになった。
2007年には『TEAM 発砲・B・ZIN』を解散するも、その後も各種舞台の演出家や脚本家として活躍。
2012年には『仮面ライダーウィザード』のメインライターとして、かつて『響鬼』で出来なかった「最終回を書くこと」をやり遂げた。
また劇団のメンバーとは今でも仲が良く、2013年5月には1度だけの復活公演を行い、2017年には劇団メンバーで短編映画(OV)を制作している。

顔写真だけ見てると分かりづらいが、実は割と小柄だったり。


作風・特撮作品との関係性

仕事の多くが舞台演出なため純粋に脚本のみで関わった作品は少ないが、劇団主宰時代のコンセプトが「大の大人が笑って泣けるヒーローもの」なことが示すように、全体的には主役の成長や苦闘を描く王道路線。
例えるなら「等身大のヒーロー」ないし「ヒーローたろうとする人々」、「日常と非日常の交差」を描くというべきか。
キャラの悩み苦しみの先には必ず「答」があり、例えその先が分かりやすい「ハッピーエンド」でなくとも、諦めない限り何もかも無駄に終わる事はない。そうしたテーゼが脚本全体を貫いている。
また公式ブログにて、(自分自身の意志のみで描いたヒーローの姿は)「強くてかっこいいヤツじゃない」「普通のヒーローとは少し違っている」とも綴っていた。
なお劇団時代の芝居から見るに、「受動的に主人公の支えになるヒロイン」より「共に戦うヒロイン」・「能動的に支えるヒロイン」・「行動的なヒロイン」・「3枚目なヒロイン」の方を書きやすいタイプだと思われる。

…だが、そうした「王道」を信じる思いと劇団主宰として舞台を仕切って来た自負は、『仮面ライダー響鬼』においてプロデューサー高寺成紀の「とにかく自分が良いと思ったことをやる」性格との間に苦痛にも近いズレを生じさせた。
高寺Pの凝り性はきだの脚本にとことん手を入れるという形で現れ(響鬼の台本は非常に特異でセリフの横にこの時登場人物がどう思ったか高寺Pによるト書きがあるレベルである)、結果自分が書いてない部分なのに「あいつのノリだからこうなったんだよ」というあらぬ批判をも呼び込む始末。
ライダーのが皆「職業脚本家」なのに対し、彼のみ「演出家・劇作家」(ドラマに例えると監督兼脚本家)なのがそれに拍車をかけたのかもしれない(本人も「番組は共同作業」だと理解してはいるが、クウガ時にも自分の「昭和ライダー的」案を次々ボツにされたという)。
それでもヒーロー好きとして脚本を書き続けたが、別舞台の演出を手掛けるため少し番組から離れた間に高寺Pが番組降板、結局そのままきだも降板となる羽目に…。なお、その件がなくてもきだは降板していたようであるが。
ちなみに本人としては「響鬼の仕事はプロデューサーの清書係だった」「後半の話の方が好み」・「ヒーローもののハネを引き算していくやり方を楽しみ切れなかった」等と発言している。
響鬼関連では微妙に運が無いらしく、後に『仮面ライダーディケイド』でリ・イマジ『響鬼』編のオファーが来るも、仕事が他にあったため泣く泣く断念している。
その後東映特撮には大型ステージショー*2の演出担当として関わり続けているが、それらが縁で宇都宮孝明プロデューサーに目を掛けられ、『ウィザード』で再びメインライターに。
他仕事との兼ね合い(TEAM 発砲・B・ZIN復活公演の制作・出演等)から香村純子*3とのダブルメインとなったが、無事ライダーをやり終え、そして本編最終話である51話で『仮面ライダーに出演する』という夢を叶えることに成功した。



で、ここで終われば普通の話なのだが、彼がかつてホームグラウンドとしていた『TEAM 発砲・B・ZIN』にて紡いでいた芝居の主な特徴は…


絵面がギャグ。


「王道」・「笑って泣ける」・「ヒーローもの」なのは嘘じゃないが、「笑って」の部分に無駄に力を入れており、基礎設定やキャラクターの姿に必ずネタ要素ないし3枚目な部分を必ず入れており、もちろん(?)きだ自身もネタのため体を張っていた。
2004年の『カケルエックスデラックス』ではその果てに、クライマックスで登場するヒーローの最強形態*4と言うおいしい役を演じながら、なぜか坊主頭に銀色の全身タイツな姿で現れたそうな。
またヒーロー好き高じてヒーローものの「お約束」もネタにしており、「変身等特撮が必要な演出」をあえて人力で再現して結果的にギャグになっていたり、
劇ではいつもカーテンコールでの「次回予告」という名のコントが定番となっていた。
無論ボケばかりではなく話の筋立て自体は割とまともであり(本人曰く人間ドラマとヒーロー的なものをクロスさせていた)、嵐の大野智主演でリメイクされた『センゴクプー』や復活公演の『ヒノダン』は真面目な作品だったが、それでも部分に笑いを挟んでいた。
…ぶっちゃけ、ライダーより戦隊向きの人じゃないだろうか。宇都宮Pと接点が出来た直接のきっかけはゴーカイレッド/伊キャプ狩テン・マーベ鎧ラスを思いついた(DVDの脚本を担当)事だし、
劇団でも戦隊もの芝居『ゴメンバー』をやって自分で赤役してたし、戦隊のヒーローショー演出も手掛けているし。
さすがに外部作品では極端なギャグを入れるのは控えるようにしているため(もっとコメディをと願うファンもいるそうな)、現在では普通の脚本家として知られているが、
関智一率いる『劇団ヘロヘロQカムパニー』に提供した『ウマいよ!地球防衛ランチ~残さず食べてね~』(2009年)では「特撮好き」という関との共通点からかギャグネタを多めに入れていた。
なので「仮面ライダーになりたい」・「~を撮りたい」という夢をも抱いていたり、『仮面ライダー電王』や『ディケイド』を見た時は「これに参加したかった…」と思い、その後電王のショー『きだ版ライダー絵巻』(宇都宮Pがきだに気づいたのもこれが切っ掛け)を演出している。
平成ライダーでは漫画原作者劇作家がいずれも「ライダーと自分の作風を折り合わせる」ことで個性を出していたのでその意味じゃ地味だったが、
3次元ではっちゃけてた過去を持ち、ライダー書きながら舞台でアクション披露していたライダー脚本家というのは唯一無二だろう*5

交友関係

やはり『TEAM 発砲・B・ZIN』時代のメンバーと一番関係が深く、演出担当の舞台に呼んでみたり、たまに飲み会などをやっている。ちなみに妻(2006年結婚)も劇団のスタッフだった。
なお劇団時代の仲間で本ウィキの項目と関連するのは『メトロイドOther M』版サムスクレしん映画2ヒロイン役で有名な小林愛や、解散後ナックル星人グレイやナクリになった創立時からのメンバー兼大学時代の同級生な平野勲人。
小林は名実ともに劇団の看板女優として活躍し、彼女主演の宇宙刑事もの『ジャスキス』シリーズ3部作等があった。
この『ジャスキス』シリーズ。1995年に別キャスト・シナリオでVシネマが作られ、2000年にはシリーズを一気に全部再演する「ジャスキストリロジー」企画が実行されるくらい人気だったが、
3部作共通の中身は「キスで能力を発動させる犯罪者(男)を、小林演じる宇宙刑事「ジャスティ」が追跡する」というアレなもので、劇中では異性・同性問わずキスシーンが連発された。

劇団の公演に客演した俳優で名のある人物を挙げると
  • 山崎樹範(2001年『ゴメンバー・デ・ショウ』、アニメ『交響詩篇エウレカセブン』のドミニク・ソレル)
  • 小山剛志(2001年『センゴクプー』)
  • 木内秀信(1992年『ウルトラファミリータイズ‘92』)
  • 岸哲生(1995『ゴージャスキス』・96『ジャスキスデス』、後にナックル星人ナグス・バンテロに)
  • 前田剛(1995・2000年『ゴージャスキス』、日大の後輩で声優としては『遊☆戯☆王デュエルモンスターズGX』の丸藤亮役や『ギャグマンガ日和』で有名)
  • 草野徹(現:とおる、1996年『トランスホーム』等、『OVERMAN キングゲイナー』のヒューズ・ガウリ等)
  • 小手伸也(2005年『ツカエナイト』、『劇団innerchild』主宰できだと同じ事務所。『遊☆戯☆王5D's』のレクス・ゴドウィン役や『仮面ライダーエグゼイド』での天ヶ崎恋役等)、
  • 渋江譲二・神戸みゆき(2006年『マジヨ』、『仮面ライダー響鬼』キャストだったことから)

小手とは事務所が同じでもあり、きだの結婚式時流された「新郎新婦の馴れ初め再現映像」では小手がきだ役を演じ、解散時のライブイベントにもゲスト出演していた。
また前田剛が所属する『劇団BQMAP』(これも日大生による劇団で竹内順子等がいる)の佐藤太には『TEAM 発砲・B・ZIN』公園のテーマ曲等を依頼していた。
この他にもアマ時代には演劇学科の先輩東地宏樹のいる劇団『クレイジーパワーロマンチスト』にゲスト出演したこともあったといい、最初期の公演では後に「テツandトモ」になるテツこと中本哲也(彼も相方共々演劇学科卒で、BQMAPの一員だった)がテーマ曲を歌ったことがあった。



主な作品

●TEAM 発砲・B・ZINの全作品(作・演出、一部作品を除いて出演)

仮面ライダー響鬼(前半脚本、但し大石真司との共作回が多い)
仮面ライダーウィザード(メインライター、51話にカメオ出演)

●大野智主演舞台(作・演出、一部資料では「風(ブー)シリーズ」とも称されている)
  • センゴクプー(2003年、TEAM 発砲・B・ZINできだが主演した同名作品のリメイク)
  • バクマツバンプー 〜幕末蛮風〜(2005年、TEAM 発砲・B・ZINの1993年公演「ダンダラ、ダンダンダン!2」のリメイク)
  • テンセイクンプー 〜転生薫風〜(2006年)
  • アマツカゼ 〜天つ風〜(2008年、『センゴクプー』の前日譚で、きだも役者として出演)

BLEACH(アニメオリジナルシリーズ「斬魄刀異聞編」構成・「護廷十三隊侵軍篇」原案、『ロックミュージカルBLEACH』(2011年版)脚本・演出)
●忍者イリュージョン NARUTO‐ナルト‐(2006年、脚本・演出)*6
クラシカロイド(脚本)
●舞台『体内活劇 はたらく細胞』(2018年 演出)

●舞台版『SAMURAI7』(2008年版 ヘイハチ役で出演)

●テレビマガジンオリジナルDVD『海賊戦隊ゴーカイジャー キンキンにド派手にいくぜ!36段ゴーカイチェンジ』(2011年)
●プレミアムドラマ『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー~究極の変合体!~』『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー~もう一人のパトレン2号』(2018年)

●サンリオピューロランドのショー型アトラクション『ちっちゃな英雄』(2015~2018年 脚色・演出)

●舞台『俺たち賞金稼ぎ団』(2015年 演出 同名映画の続編)
●舞台『さらば俺たち賞金稼ぎ団』(2017年 演出)

書籍

●のびろ!レーゴム(2008年、絵本)
小説 仮面ライダー響鬼(2013年、講談社キャラクター文庫
●小説 仮面ライダーウィザード(2014年、講談社キャラクター文庫)



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最終更新:2024年04月05日 18:34

*1 平成ライダー関連では『仮面ライダーゴースト』の脚本家福田卓郎が芸術学部映画学科出身の先輩にあたり、福田が主宰の『劇団疾風DO党』(現:Dotoo!)の桜岡あつこが2000年版『ジャスキス』にゲスト出演したことがあった。

*2 東映太秦映画村やシアターGロッソで行われるもの。

*3 後に彼女がメインを務めた『動物戦隊ジュウオウジャー』・『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』ショーの演出も担当している。

*4 ちなみにその形態が冠していた形容詞が「∞(むげんだい)」、つまりインフィニティとも見て取れる単語…まさかウィザードインフィニティ―スタイルの語源はこれじゃないだろうな(変身アイテムの入手経路はビーストドライバー似だが)

*5 過去に役者経験があるメインライター自体は後の『仮面ライダーエグゼイド』の高橋悠也も当てはまるが、彼は『エグゼイド』時には脚本業に専念していた

*6 なおこの舞台には後に『ウィザード』ナレーターとなる平田広明がアニメと同じ不知火ゲンマ役で出演しており、『ウィザード』開始時にはきだの所に平田からメールが来たという。