キノ(キノの旅)

登録日: 2018/01/21 Sun 12:41:48
更新日:2024/03/15 Fri 09:59:51
所要時間:約 8 分で読めます




キノとは、『キノの旅』の主人公。
作中「キノ」と呼ばれる人物は二人いるが、主に登場するのは二代目のキノとなるため、この記事ではそちらを紹介する。

CV:前田愛(2003年版アニメ、電撃学園RPG)/久川綾(ラジオドラマ・電撃文庫 FIGHTING CLIMAX)/悠木碧(多数決ドラマ、2017年版アニメ、三国志大戦


●目次

概要

10代中頃~後半の少女。エルメスに乗って世界中を旅して回っている。
短髪、一人称が「ボク」であることもあり、作中では頻繁に男扱いされるが、見る人が見れば普通に女だとわかるらしい。
なお、少女であることが明かされるのは1巻ラストであり、それまでは地の文でも極力性別に関する描写は避けられている。
当人は別に自分の性別にこだわりはないのか、それとも男と見られた方が安全だと思っているのか、男扱いされても訂正を求めることはない。
逆に自ら男だと名乗るようなことはないので、「男装」というと少し違うイメージである。

「大人の国」と呼ばれていたとある国の出身。幼少期は髪を長く伸ばしいかにも少女らしい恰好をしていた。
その国では成人を迎える子供に脳改造を施して無理矢理大人の考えに仕立て上げる手術が慣例としてあったが、
数奇な運命によりその手術を受ける直前に喋るモトラド(注:空を飛ばないものを指す)のエルメスに乗って国外に出奔する。
その原因となったのが旅人の「キノ」であり、後にキノの出身国を訪れた後に自らも「キノ」を名乗るようになる。
元々の名前は、誕生日ごろに咲く花の名前から取られており、作中では「×××××」としか表記されていない*1
「秋になると咲く赤い花」で「地平線をいっぱいまで埋め尽くす」らしく、「読み方を少し変えると悪口になる」とのこと。
架空の花という説もあれば、実在の花*2とする推察もある。
だが、一部巻のイラストに描かれていた花は現実に似たものがあまりない絶妙な感じのイラストになっている。

生国を出た後は自らを「師匠」と呼ばせる森に住む謎の老婆の下に身を寄せ、彼女に旅の心得とパースエイダー(銃器)の扱いを叩き込まれる。
最初の頃はまだ故郷にいたころの様に「私」の一人称で長髪だったが、「キノの出身国」である切っ掛けから命の危機に晒された時「ボクは…キノだ…」と宣言し、危機を脱した後血で汚れた髪を切られ現在の様な短髪ボクっ娘となった。
そして修行を積んだ後、師匠愛用の「カノン」と呼ばれるパースエイダーを拝借して強引に旅に出る。
旅の目的は特になし。強いて言うなら「見たことのないものを見て見たい」といったところか。
要は観光である(実際入国審査の際も頻繁に「休養と観光で~」と滞在目的を語る)。

実は作中で明かされている経歴はこれでほぼ全てである。キノの旅は「キノ」を描く物語ではなく『キノの旅』を描く物語だからだ。
物語の中心人物ではあるものの、キノ自身の心情が明らかにされることはほとんどなく、キノは基本的にはあくまで「傍観者」「第三者」という立場に徹している。


能力・性格

本人のスペックはかなり高い。
基本的に運動神経は良いようであり、大型バイクであるエルメスも乗りこなしている。

旅の中では危険にさらされることも少なくないため、パースエイダーの携行が禁止されているような国でなければ常にパースエイダーは身に着けている。
その腕前は一流中の一流。作中でパースエイダーの撃ち合いで負けたことはほぼ皆無。近接格闘射撃から遠距離での狙撃に至るまでオールマイティーにこなす*3
また、ナイフ術にも長けており、近接戦闘もこなせる。
頭も回る方で、咄嗟の機転で危機を脱したことも少なくない。

洞察力・観察力も非常に高く、容姿がほとんど変わらないクローン人間の多人数兄弟を、微妙なクセを読み取る事で完璧に見分けた事もある。


弱点……と言えるほどではないかもしれないが、料理は壊滅的に下手。食べた師匠は死にかけたという。
ただし、道中では基本的に携帯食料か野生動物の丸焼き程度しか食べず、国の中では外食で済ませるので滅多にその腕前が披露されることはない。
また動物の解体はテキパキとこなせる。技術面はむしろ高いので、正確に言えば味音痴。*4

スキルという意味以外でのキノの最大の弱点は注射。そう注射である。
銃も刀も物ともしないキノの一番の苦手は注射なのである。何とも可愛らしい。
ある国で入国者には注射が義務付けられていると聞いた時には顔をしかめ、
施術が終わった時にはげんなりしながら「やっぱり注射は苦手だ……」と語るなど、相当嫌な様子。



性格はとことんドライ。
基本的には丁寧語で会話し、滅多なことでは大きく表情を崩す事も声を荒げる事もないため、喜怒哀楽が中々表層に出ない。これは幼少期でも同様である。

立ち寄った国で起きたトラブルに関しては極力第三者的立場でいることを好み、自ら積極的に首を突っ込むことはまずない。
頼まれもしないのに困っている人を助けようとする善人のシズとは対照的である。
とはいえ、相応の報酬と共に頼まれれば理由なく断るようなこともまたしない性格であり、作中では主にこの便利屋のような仕事で路銀を稼いでいる。
また、「助けられない命を見捨てる」ことは躊躇わないが、同時に「助けられる命を助ける」ことも躊躇わない性分である。
「歌姫のいる国」では自らの利益をふいにしてまで(正確にいうと依頼人に嘘の説明をした後貰った報酬をこっそり捨てて)、
とある不幸な子供たちを救ったことがある*5

師匠の薫陶故か、自衛のために敵の命を奪うことに迷いはなく、また自衛のために人を殺した事に葛藤する事もない。
また生き残る為であれば死体を損壊させたり、敵の情に付け込んだ罠を仕掛ける事もある。
旅の資金の為に盗みを働く事もままある。といっても積極的に強盗をしかける様な事はなく、出国時に待合室の備品をがめたり、死人の持ち物を漁る程度。
こと戦闘、そして自身の生存の為とあれば極めて冷酷非情な性格となる。

もっとも、別に殺人行為を積極的に楽しむ性格というわけではなく、基本的に殺さずに済む状況なら殺さない配慮はする。
「コロシアム」では殺人が許されていたにもかかわらず対戦者をなるべく怪我無く降伏させており、結局殺人を行ったのは決勝のシズ戦だけであった。
「必要な国」では見返りとして莫大な報酬が与えれらているが、それでも死刑囚4人を殺害させられた事に「ボクは人殺しが好きではありません。そして、ボクが人を殺すのを期待し、それを見て楽しんでいる人がいるのは、より好きではありません」とキノにしては珍しい明確な怒りの意を相手に伝えており、二度とこの国には来ないとまで宣言している。

旅の道中では味気ない携帯食料ばかり食べているためか、美味しい食べ物には目がない。
食事目当てに仕事を引き受けることもしばしば。また、食べ放題となると腹が破裂するほど食べる。
ある国の出国時にその国の住人に引き留められた際、何を言われても出国の意思は変わらなかったのに豪華な食事を条件に出された時だけちょっと揺らいだ程。
贅沢言っていられないためか、好き嫌いは基本的にないが、甘いものは特に好物である模様。一方ゲテモノ食材に対してはさすがに若干引く(それでも食うが)。
また、「温かいシャワーと綺麗なベッド」への執着心は強い。
その一方で、他人を信用しない性格であるため、食べ物等による罠に引っかかるといったことはない。

作中立ち寄った国は、何かしらの理由がなければ「3日」しか滞在しないように決めている。
これは、その国に愛着が湧きすぎることなく見て回るのにちょうどいい期間である、という先代キノのルールを踏襲したもの。
とはいえ、別に厳密なルールではないので時と場合によっては破っている。


装備


カノン

リボルバータイプの44口径。
キノの主力武器であり、多くのイラストでも手に持っている。
シリンダー自体に弾頭・火薬・雷管を別々に装填する、所謂パーカッション式。コルトM1851ネイビーがモデル*6
現実とは違い、液体火薬を使用している。
作中でも骨董品に近い扱いの銃だが、薬莢が不要なので自分で鉛を溶かせば銃弾を好きに調達できる点は大きな魅力。
更に、鉛剥き出しの所謂ソフトジャケット故にどこかに着弾すれば変形して後まで響く傷を与える点で、暴漢に対する足止め等の護身に向いた、旅に適した銃でもある。
元は師匠の愛銃。最初は「キノの故郷」に行くとき護身用に貸してもらったものだが(師匠はスペア用に複数所持しているので大丈夫)、師匠の所を出るときに(無断で)拝借した。

森の人

左利き用のオートマチックタイプ22口径。装填数15発。レーザーサイトも付いている。モデルはコルトウッズマン。スポーツ射撃用の拳銃である。
殺傷能力は低いが装填できる弾数は多く、一人旅で大型動物の肉を持て余すために小動物を主に狩るキノにとって、
丁度良い口径と命中精度のこの銃は狩猟用として特に重宝している。
森の人は弟子も使っていたものである。
優しい国」にて、パースエイダースミスから譲り受けた。

フルート

作中の正式名称:五二式国民ライフル分解型。
9連発セミオートライフルで精度もなかなか良く、キノ程の力量で扱えばミサイル数発を迎撃することも可能。前部と後部に分解できサプレッサーも装着できる。
射撃訓練が盛んな国で入手し、性能も良好なので愛銃の一つとなった。
基本的に分解されケースに入れられた状態でエルメスの荷台に積まれており、携帯する事は少ないため従って出番もそう多くはない。
作者曰く二式テラ銃がモデルとのことだが仕様は大きく異なる*7

ナイフ型パースエイダー

名前は無し。
15巻「マニアの国」で出会ったパースエイダーコレクターから贈られたもので、
キノは4つある弾倉の一つに一緒に貰ったレーザーサイトを組み込んでいる。
一見するとナイフにしか見えない外見であり、初期のとある話ではキノの窮地を救っている。
銃自体の登場は2巻ととても早いのだが、入手したのはフルートよりも後。
作中でまともに武器として使われたのはたった一回であり、よほどのピンチでなければ使わない模様。
なお「銃弾を発射する機構が組み込まれたナイフ」は実在する(NRS ナイフ型消音拳銃など)。


また全身に無数のナイフを身に着けている*8他、借り受けた銃火器を国毎に使用することもある。紀元後200年前後の中華の国には銃火器がなかったので持ち込んで使用している


人間関係

顔見知り。銃は剣よりも強し。
再会したこともあるが、シズは彼女に名前を忘れられていたことに少しショックを受けていた。
シズは移住先を求めているが、よい国に中々巡り会えない。一方のキノはよい国を見つけたり定住を勧められても断っているため、ままならないものである。

祖国を飛び出したキノに上記の戦闘術や生き抜くための知恵をスパルタ式で叩き込んだ。
なお、師匠は少しの恩とかなりの恨みを買っている人物であり、
例えキノは旅先で師匠が関わったことを知ったり誰かから師匠のことを尋ねられても、用心のために彼女のことは知らないふりをしている。

優しい国にて、年老いた彼らしき人物と会っている。





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最終更新:2024年03月15日 09:59

*1 作者は伏字は文字数に関わらずこの表現を使うため、五文字とは限らない。

*2 チューリップ説など

*3 エルメス曰く「黒帯」とのこと。作中世界に於いては銃器の扱いについて段位が定められている様で、黒帯はその中でもかなり上位である模様。

*4 味音痴に関してはキノ本人も自覚はあるが、そこまで重症とは思っていない模様

*5 頼まれもしないのに困っている人をさらに苦しめて利益をむしり取る悪人の師匠とも対照的である。但し助けた後旅の商人に「商品になるよ」的説明で託していたが。

*6 小説の記述だと44口径モデルのM1860アーミーではないかと推測されるが、黒星紅白氏の挿絵ではM1851ネイビー。M1851のコルト製の本物は36口径だが違法コピーされた44口径も存在した。また現代にイタリアで生産された44口径のレプリカ(実銃)もあり

*7 テラ銃はボルトアクション5連発、空挺用に前後二分割できる点は同様

*8 一度野盗にひん剥かれた時は「お前、ナイフ屋か?」と素で突っ込まれた