悪斬の天使/Baneslayer Angel(MtG)

登録日:2010/06/11 (金) 01:16:33
更新日:2024/03/18 Mon 15:59:45
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悪斬の天使はマジック:ザ・ギャザリングに登場するのクリーチャーである。レアリティは神話レア。
初出は基本セット2010(M10)

悪斬の天使/Baneslayer Angel
(3)(白)(白)
クリーチャー:天使(Angel)
飛行、先制攻撃、絆魂、プロテクション(デーモン(Demon))、プロテクション(ドラゴン(Dragon))
5/5

とりあえず一言。


セラ天にあやまれテメェ


MtG史上最高のコストパフォーマンスを更新したクリーチャー。同じく5マナの《セラの天使》と比較すればその異常っぷりがよくわかる。ちなみに《天罰の天使》は7マナ(シングルシンボル)5/5飛行・先制攻撃。《大天使》に至っては7マナ(ダブルシンボル)で5/5飛行・警戒。それまでの天使と比べても間違いなく最強クラス。


能力については言わずもがな。

サイズも破格で先制攻撃があるのでブロックによる破壊は難しい。セラの天使と違い警戒こそないものの、絆魂のおかげで攻撃の度にどんどんライフアドバンテージを稼ぐ。そのため並のウィニーやビートダウンではこのクリーチャー一体に制圧されかねない。
プロテクションは天使のイメージからか(デーモン、ドラゴン)と部族指定。一見《怒りの天使アクローマ》のように色指定の方が除去をかいくぐりやすいので良さげに思えるが、悪斬の天使を上回るサイズの飛行クリーチャーにはドラゴンとデーモンが多いので充分機能していると言える。当然、ドラゴンやデーモンとしても扱う多相持ちにも有効。
昨今のアグロ偏重&パワーインフレの先駆けとも言えるクリーチャーではないだろうか。《マスティコア》を発掘したセファリッドみたいに「これって、壊れてる。」と言いたくなる。

……が、それでも出た当時の評判はそんなに良くなかった。
プロテクション(黒)を持ってる訳ではなかったので、当時メタ上位に居た青黒コントロールが持つ万能除去《破滅の刃》や《喉首狙い》で簡単に処られるからである。
だが、「悪斬が処られた?なら次の悪斬だ」という思考にたどり着き、5マナと手札で腐る可能性が高いのにもかかわらず、平気で4枚積みされるようになった。
2:5交換とテンポロスしてでも、それを上回るポテンシャルは「ある」と評価されたのである。

その優れた能力とマナコストの軽さから、当時は環境を問わずいろんなデッキで採用されていた。 
また、入手しづらい神話レアなくせに3~4枚入るカードということもあり、シングル販売価格が高騰。某専門店で1枚5000円という信じられない値が付いた事もあった。
当時、基本セットの理念が大きく変わったことも理由のひとつに挙げられる。第10版までは「かつてのセットに収録されていたカードの再録」しかなかったが、基本セット2010以降は通常のセットと同じように新録カードが出るようになったのだ。
その分かりやすい制圧力とその物珍しさなどもあいまって、全盛期は「悪斬ゲー」と呼ばれる一時代を築いた。
現在は「ミッドレンジ」と呼ばれる戦術があるが、当時はそんな言葉はまだ存在しておらず、その先駆けとなるカードだったと言えるだろう。

このカードのせいで、様々なカードが涙を飲んだ。
たとえばゼンディカーには《光輪狩り》という、ETB(CIPのM10からの呼称)で天使を対象にとって破壊する黒のデーモンがいたのだが、
うっかりクリーチャータイプがデーモンだったせいで、当時使われていた天使の代表例である《悪斬の天使》に通じないというとんでもないカードだった。
また【ジャンドコントロール】では当初フィニッシャーに《若き群れのドラゴン》などのドラゴンが用いられていたが、
悪斬登場後はカードプールの変化もあって【続唱ジャンド】という形に変化し、ドラゴンの採用枚数が抑えられたり、除去を悪斬のために温存するようになった。
白のフィニッシャーとしては頭一つ抜きんでた性能だったため、他のカードを使う余地を与えてもらえなかった。
アラーラ時代の白絡みの天使はそれ単品ではそこそこ優秀だったが、「悪斬より優先する理由はある?」と尋ねられると答えを出せなかった。
こんなもんだから2010年代では高額カードの代名詞は《タルモゴイフ》だったが、それが《悪斬の天使》だった時期もあるほどだった。

逆にこの『プロテクションが色ではない』ことが順風になったクリーチャーもいる。5マナで飛行とプロテクション(白)を持つ《マラキールの血魔女》は、
デーモンではないので《悪斬の天使》を止めることができるカードとして黒系のコントロールで採用された。

そのスタンダードでの制圧性能に目をつけられ、レガシーでもいけるのではないかという試みがなされたこともある。
当時のレガシーは【ストンピィ】ブームで、3~5マナのカードを素早く出して相手を速やかに殴り殺すデッキが研究されていた。
《悪斬の天使》は他のカードに比べると、コストこそ5マナ一括で払わなければならないとはいえ、
ダメージレースでの勝負であれば1度殴れば1ターンは稼げたり、《賛美されし天使》が合計7マナ必要なことと比較すると一定のメリットがあると判断されたのだ。
ただ実際に【ストンピィ】を使うと分かるが、4マナと5マナの壁は本当に大きく、デッキ自体が主流になることはなかった。


一応、警戒を持っていないので、《セラの天使》の上位互換というわけではない。 一応
もちろんこんなこと本気で言ったら鼻で笑われる。

ここまで規格外の天使だが、実はイラストはセラの天使の没イラスト。9版で使用する予定だったがセラの天使のイメージと合わないのを理由にお蔵入りになっていたものを流用した、との事。
そのおかげで《セラの天使》を過去の存在にする名カードが出てきてしまったのだから、それはそれである。




追記・修正は悪斬の天使で無双してからお願いします。

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続投と凋落(基本セット2011)


基本セット2011に何故か再録されたため、あと1年間はこいつによる環境支配は続くと思われた……と最初のうちは思われていた。
しかし《神ジェイス》やら、6マナ6/6で強力な効果を持つ5体のタイタン(特に《原始のタイタン》)やらという、悪斬以上のぶっ壊れカードがトップメタに入って来ているので影が薄くなってきていた。
当時は本当に除去が全体的に狂っていたことや、《マナ漏出》がスタンダードに戻ってきていたこと、環境が高速化してきたことなどから、
コストが重く除去されるとテンポ損の《悪斬の天使》をあえて使うよりも、たとえば【白ウィニー】のような軽い方に寄せた方が単体除去にも強くなって都合がよかったのだ。
重いフィニッシャーがほしいなら、戦場に出しただけで仕事をする6マナのタイタン・サイクルなどの新顔を使えばいい。

そして環境が変化したことにより当時「ドラゴンやデーモンをフィニッシャーに据えるデッキ」がなかったことなどもあり、プロテクションは形骸化。
このカードは「重くて除去耐性がない」「ライフの回復以外大した仕事をしてくれない」「第二第三の悪斬を出せばいいというけれど、それを許してもらえない」と、環境の逆風を受けることになる。
再録で大騒ぎをする連中と相変わらず3000円近い値段をつけるショップ*1を尻目に、プロ志向の強いプレイヤーはすでに悪斬を捨てることを考え始めていた。
その後「ミラディンの傷跡」「ミラディン包囲戦」では、《ワームとぐろエンジン》《刃砦の英雄》などのライバル枠や《聖別されたスフィンクス》のように悪斬で抜けられないフィニッシャーがどんどん増えていった。
「ミラディンの傷跡」発売からしばらく経って環境が次第に固定化されてくると、すでに彼女は時代の流れに乗り切れなかったカードと化していたのだった。
すでにこの時期にもなると、《悪斬の天使》の採用率は全盛期に比して大きく落ち込んでいたのである。

その彼女の脱落を決定づけたのは、「新たなるファイレクシア」で収録された《四肢切断》。
このカードは「ライフ4点+1マナでタフネス5以下のクリーチャーを除去できる」という性能を持っている。本来黒の役割であるはずのカードがなぜか他の色からも飛んでくるという魔境を作り上げた。
どんなデッキからでも、たった不特定マナ1点(とライフ4点)で達磨にされるような5マナのカードに果たして居場所があるだろうか?

4点のライフ支払いが辛いのでは?と思うだろうが、「悪斬に攻撃されたらライフアドバンテージは10点差が付く」という事に気づけば、4点で済むのがどれだけ安い事か。
除去耐性があるか、1マナで出てテンポ損しないか、タフネス6以上有るか、ETBかPIGを持ってなければゴミという状況で生き残るのは難しかった。*2

そして遂に基本セット2012で再録を逃し、スタン落ちが決定した。
基本セット2010では世界を熱狂させた往時の名カードは、すっかり見る影もなくなってスタンダードを脱落したのだった。



9年ぶりの再録(基本セット2021)


《悪斬の天使》は基本セット2012にて脱落した。しかしそれから9年、基本セット2021(M21)にて再録された。今回は《四肢切断》という天敵もいない。
そんな《悪斬の天使》、彼女の強さはM21期のスタンダードではどれほど戦えたのかというと、むしろ、完全にインフレに追い抜かれてしまっていた。

初出当時こそ出た次のターンから高パフォーマンスで無双できていたが、M21期はM11期に増して「出たターンに仕事をしない、もしくは除去耐性の無い4マナ以上のクリーチャーは強くない」というセオリー・風潮が強く、《悪斬の天使》もまたそのセオリーから外れることはない。
速攻を持たないためすぐには攻撃できず、ETB能力も無いため出たターンは何もしてくれないのである。もちろん呪禁や破壊不能といった汎用的な耐性は持っていない。

そのため《無情な行動》《血の長の渇き》といった黒のクリーチャー除去で何もできないまま退場してしまうケースが少なくない。
悪斬と同じ白のカードにも《払拭の光》《エルズペス、死に打ち勝つ》などの単体除去がある。
出たターンに何もしないという性質上、《乱動への突入》《厚かましい借り手》の出来事呪文など、青のバウンスによるテンポロスも痛い。
緑のクリーチャーにはサイズが大きいものが多く、《長老ガーガロス》などの大型到達持ちに対して5/5の悪斬では盤面を制圧できない。
赤に対しては一見強そうに思えるが、《アクロス戦争》によるコントロール奪取が痛い。

更にこのカードが抱える根本的な問題として、「ライフ方面でしか仕事をしない」というのがある。
除去もバウンスもコントロール奪取もされず、次のターンで攻撃が通ったとする。その結果何が起きるかというと、5点ダメージを与えて5点回復する。手札は増えないし盤面は何も変わらない。つまりハンドアドバンテージやフィールドアドバンテージに寄与しないのである。
昔のMtGであればビートダウン系ミラーになりやすく、ダメージレースを大幅に有利に引き寄せてくれる《悪斬の天使》は有用性のあるカードだったが、
今となっては手札の枚数の優位、盤面の優位、ライフの優位、この中で一番ひっくり返しやすいのがライフの優位であり、コントロールデッキやランプデッキにとって悪斬は恐れるに足りない。
緑系ミッドレンジの場合、《グレートヘンジ》や《ギャレンブリグ城》といった大型クリーチャーとシナジーを形成する優秀なパーツが揃っているため、悪斬を使った白系ミッドレンジの上位互換になりやすい。
アグロに対しては着地が間に合う、相手がこのカードを処理できる単体除去や《アクロス戦争》を握っていない、という条件付きで機能する。それでも《エンバレスの宝剣》でぶち抜かれる可能性もある。

白というカラーでビートダウンをしたいのであれば《無私の救助犬》《歴戦の神聖刃》などの軽いクリーチャーを主体とするウィニーに寄せた方がコントロールやランプに対して脅威となる。
白で中低速の戦い方をしたいのであればETB能力持ちのパーマネントと《空を放浪するもの、ヨーリオン》のシナジーを形成したデッキの方がアドバンテージを稼ぐことが出来る。

ハンドアドバンテージ、フィールドアドバンテージ、テンポアドバンテージといった各種アドバンテージの概念を学び、悪斬の天使が強そうに見えて意外とそうではないことが理解できるようになれば、初心者卒業と言ってもいい。

ただし、前述したようにビートダウンでもアグロ寄りになら条件付きとはいえ機能しうるので、メインデッキではなくサイドボードにそっと忍ばせておく価値はある。先制攻撃と絆魂の合わせ技により、相手は「攻撃してもライフは殆ど減らせずむしろこちらの頭数が減る。先制攻撃のせいで火力と合わせて落とすことも難しい」なんて事態に陥ることも。
決してカスレアになったわけではないので、パックから出てきたとしてもがっかりする必要は無いだろう。

月日は流れ、クリーチャーの性能もどんどんおかしくなってきている中、あの悪斬ですらインフレの波にのまれてしまった事態に、古参ファンは衝撃を受けたことだろう。
まあ結局は往時の輝きを取り戻す事はできなかったが、【白単アグロ】のサイドボードにたまに採用されることはあったようだ。あと宝物で白マナをまかなえる青赤のサイドボード。
後は上記の通りパイオニアの青白系コントロールでもたまにサイドボードにいる。

ちなみに、上記は全て構築戦の話であり、リミテッドならば単体で完結した強さを持つ悪斬は、むしろボムレアを名乗れる大当たりである。当時のように暴れさせたいならリミテをやろう。面白いから。
なお、どちらにせよプロテクションが役に立つ場面は殆ど無い。

また、モダンやパイオニアなどの下の環境ではいまだにお呼びがかかることがある。
下の環境では強力な低コストクリーチャーが主力であり、それに対応するために《致命的な一押し》などの制限付き除去が採用されることが多い。
さらに低速コントロール相手には除去を抜くことも多いため、サイド後に着地したこのカードに手も足も出ないなんてことも十分に有り得る。
「ライフの有利しか得られない」という欠点も、ライフゲインによってゲームを引き延ばせばそこはコントロールの独擅場。
そのままプレインズウォーカーなどで制圧してしまえば問題ない。
場合によってはそのまま殴り勝ってしまうこともあるだろう。彼女の力は、低速であればいまだに強力な部類に入るのだ。


もしその後も再録されていたとしたら?

さて、現実では基本セット2012で脱落した悪斬だが、仮に基本セット2012に再録されてもう1期だけ残っていたとする。
このときの環境は「ミラディンの傷跡~基本セット2012~イニストラード」。
イニストラード参戦序盤は白系デッキも幅を効かせていたものの、基本的には超前のめりのウィニー系デッキである【白緑トークン】【白茶単ウィニー】が主流な時期。
5マナ枠はそもそも採用しないか、《エルズペス・ティレル》で長期的戦にも強い構築が行われていた。
一応この時期は「仮想敵がいない」という理由で《四肢切断》は外れて《忘却の輪》《破滅の刃》辺りが多かったが、悪斬が居たとしても結局この前のめり環境では出る前に終わるのでさほど関与はなかったと思われる。
闇の隆盛以降は【Delver-Blade】全盛期という超テンポ環境を迎えた事もあり、5マナというカード自体、戦場に降臨出来るかどうかが怪しい状況であった。
デルブレ自体も白系デッキではあるが、カウンターを構えてターンを返す必要性から「4マナが限界で5マナは出ない」という状況だったので、採用は無理だったであろう。


更にローテーションが進み、ミラディンの傷跡ブロック、ひいては《四肢切断》が落ち、「イニストラード~基本セット2013~ラヴニカへの回帰」環境に移行したとき、仮にM13に再録されていたとしても活躍したかというと疑問符が残る。ライバルが強すぎたからだ。
「スタンダードのデッキを組む際もっとも難しい部分のひとつは、《瞬唱の魔道士》と《蒸気の絡みつき》による問題だ。
4マナ以上で戦場に出たときの効果を持たないクリーチャーを出し、対戦相手のハンドに《瞬唱の魔道士》と《蒸気の絡みつき》がある場合、君たちは基本的にはそのゲームを落としてしまう。」
と公式コラム「コントロールが抱える難題を解決せよ」でまで言われた環境下で生き延びることはできなかっただろう。《蒸気の絡みつき》自体はローテーションで落ちたが、ライフロスが無いだけの相互互換である《送還》はM13に再録されたのでそれを使えばいいだけ。

この頃だとコントロール気味のミッドレンジである【トリコトラフト】に居場所があったかもしれないが、
「5/5飛行速攻+相手の飛行クリーチャーに1点ダメージ&タップ」という、通った瞬間5点+トラフトが生み出したパワー4の天使分ダメージが確定する《雷光のヘルカイト》と5マナ枠を競う必要がある。
破壊力で言ったら明らかにヘルカイトが上なので悪斬は不利だし、リアニで釣るのであれば《静穏の天使》という盤面から3体追放可能と、やはり出た瞬間ダイレクトに影響を及ぼす天使が居た。
他にも【白緑系ビート】もメタ上には居たが、こちらの5マナ枠は一粒で二度美味しい《スラーグ牙》が定番。
後は【赤黒ビート】だったので、結局ヘルカイトとスラ牙のスロットをこちらにするというのは難しかったのである。


さらに言ってしまえば、このカードを評価する際はよく「《四肢切断》のせいで環境から追い出された」と言われやすい。
しかし実際には《四肢切断》が登場する半年以上前、《マナ漏出》が戻ってきた「基本セット2011」あたりですでにかなり評価を落としており、「『これって、壊れてる。』とか言われてるけど実際はそうでもなくね?」と気づいた人から勝率を上げていくという環境だった。
《四肢切断》は確かに彼女が二度と這い上がれないほどの凋落を決定づけたカードだが、実際には今にも死にそうな彼女に目に見える形で死刑を宣告したに過ぎなかったのである。どちらかというとこの《ファイレクシアの抹消者》ってやつの方が死んでる
よしんば《四肢切断》の存在をどうにかできたとしても、切断のせいで環境に増えたタフネス6以上のクリーチャーを倒すことができない。
つまり結局、ダルマにされなかったとしても採用する意味がそもそもないという評価に落ち着いてしまう。結局環境の波にまったく乗れないままひっそりと忘れ去られていくだけだっただろう。


関連カード

さて、悪斬の天使であるが、シンプルな流し台デザイン(能力を雑に詰め込んだカードのこと)の代表例として類似カードがいくつか作られている。
白の(実質)5マナ5/5、飛行・先制攻撃・絆魂を持つクリーチャーを以下に紹介する。(これらは通称、〇〇の悪斬と呼ばれたりする。)

黎明をもたらす者ライラ/Lyra Dawnbringer
(3)(白)(白)
伝説のクリーチャー:天使(Angel)
飛行、先制攻撃、絆魂
あなたがコントロールしている他の天使(Angel)は、+1/+1の修整を受けるとともに絆魂を持つ。
5/5

伝説の悪斬。
伝説になってプロテクションを失ったかわりに、自軍の天使を強化する所謂「ロード能力」を持つ。
デーモンやドラゴンがその当時のスタンダードでもそれほど暴れたわけではなかったので、プロテクションを失ったことは痛手ではないが、伝説のデメリットは無視できず2枚程度の採用が目立った。
ロード能力は伝説と重さから頼り切りには出来なかったものの、当時は軽い天使もあったので、天使デッキのフィニッシャーとして十分な活躍を見せた。

加護をもたらす戦乙女/Boon-Bringer Valkyrie
(3)(白)(白)
クリーチャー:天使(Angel) 戦士(Warrior)
賛助1(このクリーチャーが戦場に出たとき、クリーチャー1体を対象とする。それの上に+1/+1カウンター1個を置く。それがこれでないクリーチャーなら、ターン終了時まで、それは以下の能力を得る。)
飛行、先制攻撃、絆魂
4/4

令和の悪斬。
一見4/4で悪斬の天使ではないように見えるが、賛助能力で自身を対象にすることで5/5となる。
つまり加護をもたらす戦乙女とは、
  • 他のクリーチャーを対象としてカウンターと能力を与えつつ後詰めのミニ悪斬で追撃する
  • 自身を対象としてプロテクションがない悪斬として降臨する
の二択が選べるようになって柔軟性を得た悪斬の天使といえる。
出たターンに仕事をしないという弱点を賛助能力で補っているかなり大きな強化を受けている。実際、パイオニアや禁止改定で赤黒系デッキが弱体化した後のスタンダードの白系コントロールで活躍を見せる。
反面、除去耐性については悪斬以上に弱体化。ドラゴンやデーモンが跋扈する環境でこそないものの、出た直後に処理されればせいぜい1−2マナのソーサリー程度の仕事でしかない。
護法登場以降の除去呪文の水準の高さも相まって、壊れずにちょうどいい程度の活躍で収まっている。

そして何よりの特徴はその安さ。この性能でなんとレアなのである。しかもスターターデッキにも収録されており、他の悪斬に比べて流通枚数がやたら多い。
2023年現在、通常版であれば1枚200円もあれば買えてしまうという、強力なカードが高騰する傾向にある時代において破格の入手性を誇る。



最後に


当時のMtGをプレイしたことがないと、この項目は「褒めてるのか貶しているのか、実際にぶっ壊れてるのか弱いカードを無理やり讃えているネタなのか。何が言いたいか分からない」という項目かもしれない。
全部真実である。 「どう見えるかだ まだまだ心眼が足りぬ」というわけじゃなくて、経験した時代によって評価が大きく異なるカードなのだ。

このカードには大まかに分けて
  • 「最盛期(M10)」 やらかしカードの一種として騒がれて環境を定義し、ヘイトを集めた上に再録まで決定する。フィニッシャーがこれ一択という圧倒的な性能
  • 「凋落期(M11)」 メタの変化によって次第に数を減らしていき、あるカードにとどめを刺された上に再録を逃してスタン落ち。採用する理由を失った名前負け枠
  • 「隠遁期(M21)」 約10年の時を経て再録されたが、すでにインフレの波に飲まれて昔ほどの活躍は見られなくなった。良質なフィニッシャーの一候補
というまったく異なる3つの評価基準が存在している。まさに盛者必衰栄枯盛衰を体現したカードということ。

さらにスタンダード以外の環境での評価に加え、「実際には再録されていないが、もし再録されたとしても多分活躍できなかっただろう」という考察などもあってちょっと混沌としている。

しかしたった1枚のカードでこれほど様々な評価基準が存在し、さらに同じ記事にそれぞれの時代の評価基準が残っている。
そういう意味ではMtGのみならず、TCG全体で見ても結構貴重な記事だろう*3
コメント欄なんかも含めて見ればもっと理解が深まるはずだ。

「美麗な女性天使」「容赦のないメリット能力が雑につけられているだけ」「ルールが分かりやすいので揉めることがない」というあたりは、いかにも白らしいクリーチャーといえるだろう。
今となっては赤字で書かれているウキウキの文章やタグのやりたい放題っぷりも、現在一線級のクリーチャーと見比べるとすっかり時代を感じる。
……聞いてるか《殴打頭蓋》。見ているか《聖トラフトの霊》。お前のことだぞ《ウーロ》。それから《オムナス》。


追記・修正は出たターンに仕事をしない5マナのクリーチャーを温かく見守りながらお願いします。

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最終更新:2024年03月18日 15:59

*1 参考までに当時の《沸騰する小湖》が3000円程度、《Badlands》は4000円前後

*2 余談ながら、当時の青のフィニッシャー格とされたカードはタフネスが6以上だったり呪禁や除去耐性を持っていたりテンポ損を起こしにくい軽量カードだったりしたため、当時は『青はクリーチャーの色』と揶揄された。黒使いの間で聖典とされている「一人去るとき」は、こういった狂った環境で黒だけ狂い切れてなかった世相を反映している

*3 この手のお遊びの色が強いサイトでは「ぶっ壊れカードの全盛期」と「現在の評価」以外はゴミと断じられやすいため、凋落が始まった基本セット2011期や、過去の栄光と蔑まれていたイメージが強い基本セット2021期以降の実際の運用法などが残る記事は歴史をたどる上でも貴重と言える。