金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿

登録日:2017/11/19 Sun 16:15:40
更新日:2024/03/06 Wed 23:19:40
所要時間:約 22 分で読めます





これは―――偶然居合わせた名探偵の孫に謎を暴かれてしまった犯人たちの綿密な計画と実行の記録である(シーズン1)

これは―――…ジッチャンの名にかけて謎を全て解く男…金田一 一少年と戦った犯人たちの物語である!!(シーズン2)

最強で最凶な名探偵‥‥金田一一‥‥‥!!
これは‥‥そんな少年に不幸にも出会いそれでも犯罪(ゆめ)を追い続けた‥犯人たちの物語である!!(シーズン3)



『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』とは、人気推理漫画『金田一少年の事件簿』のスピンオフ漫画の1つである。
原作は天樹征丸・金成陽三郎・さとうふみやで、漫画は船津紳平。
本作のストーリー構成自体も船津氏が担当している。

スマホアプリ「マガポケ」にて連載。2017年7月頃から連載が始まり、当初は単行本1冊分の予定だったが人気が出たため連載が続行することが決定。
2020年3月のシーズン10まで連載された。全11巻。
シーズン3第1話はマガジン本誌にて短期集中連載もされていた。その後もちょくちょくマガジン本誌で読み切りが掲載されている。
シーズン2終了時点で累計40万部というヒットを飛ばしており、その人気の高さから、2巻発売と共にシーズン3以降で主役になる犯人を決める「犯人総選挙」が開催された。

連載終了後、『金田一少年シリーズ』連載30周年を記念して、2022年3月から『犯人たちの事件簿R』のタイトルで復活。単行本1冊分を連載。第11巻として発売された。


●目次


【概要】

金田一少年の1泊2日小旅行』以来のギャグスピンオフ。

特筆すべきは「犯人が主人公」であること。
別に黒い人が主人公というわけではなく、金田一 一が解決した事件を犯人視点で紐解いており、この形式のため、事件ごとに主人公が変わる。
更に既存のストーリーを元にしてギャグ展開を構成するという関係上、船津氏の絵柄ではなく『金田一少年の事件簿』当該エピソードの絵柄を再現して描かれている。

犯人主人公というと、完全犯罪をもくろむ犯人の視点で描かれているゲーム『星見島 悲しみの復讐鬼』などがあるが、
こちらは犯人の心理描写に重点を置いていることが特徴。
特にトリック部分については探偵側の視点からはさらっと語られる事もあるトリックでさえ、いかに大変なのかを犯人側の視点から教えてくれる。
ある種「このトリックって実際にやったらどうなるの?」というファンの疑問を解決している漫画といえるかもしれない。
ちなみに犯人がトリックの難易度の高さに悩む場面は作者も同じ状態になっているとか。

最終話で一にトリックを暴露されると「謎はすべて解かれた」の一言で暗転、
場面が犯人へのインタビューに切り替わる。
基本的にインタビュアーに聞かれて犯人自らが一への敗因を分析、その点をカバーできる犯人が登場する事を願いつつ去っていくと、次のエピソードではその条件に当てはまる犯人が主人公となる。
ちなみに作中で死亡した犯人の頭上には天使の輪っかが浮いている君ら天国行けたのか…

また、コミックス2巻以降は各話終了後のページに未来の犯人たちが振り返っての一言を言っている。

ここまで読んで未見でも理解していただいたかと思うが、
要するに本編の犯人達の暗く重いバックボーンは基本的に「そこまで茶化しちゃあかん」という作者の意向から動機の簡単な説明以外は省いていき、
叙情的且つ湿った雰囲気は徹底的にブレイクしていく方針である。
なので本編のシリアスな背景を大事にしたいというファンは読まない方がいいかもしれない。
というか、さすがに本編でもこの心理描写が犯人の中で繰り広げられていたわけではない…と思いたい。当時放送してない番組名とか普通に出るし……


当然ながら原作を読了済みの人に向けたネタバレ全開の内容になっているので注意。
コンセプト上も予め本編を触れていた方がより楽しめるので、まずは本編の一読を推奨する。
……その作品タイトルとカバーに犯人の姿が堂々と載ってる時点で既に未読者への盛大なネタバレも同然だったりするのだが。
そしてラストファイル最終話では自虐ネタとしてその事に触れていた。


【レギュラー陣】

犯人の心理描写メインなので基本的に全員出番は少なめ。

本編の主人公にして、本作のラスボス
曰く「偶然居合わせた名探偵の孫」「ジッチャンの名にかけて謎をすべて解く男」「最強で最凶な名探偵」「堂本剛と松本潤と亀梨和也と山田涼介と道枝駿佑に激似」
どんなトリックも片っ端から解き明かし、時にはそのトリックの再現までやって犯人の心をへし折りにかかるその姿は、犯人側からすればまごうことなき死神
真相解明の時に逆に罠を仕掛けられ、自白同然の状態に追い込んでくるなど犯人たちにとってはこの上なくタチが悪い。
実際に本作の一は、犯人の視点から描かれるためかめちゃめちゃ怖い顔で犯人を追い詰める描写が多い。
更に、殺そうとしても生還してくる脅威の生命力と運の強さまで持つ
本編では運動音痴と描写されているが、今作ではフィジカル命な犯人たちを抑えるフィジカルも持っている。
逆説的に全くくじけないどころかドヤ顔で「自分は負けてない」と言い張って一に挑み続ける高遠はある意味凄いのかもしれない。
なお原作にはない要素として、不動高校の関係者やその周辺の教育関係者の間では学園七不思議殺人事件を解決した生徒として知られた存在になっている。

本編のヒロインだが、本作では基本的にはほぼモブレベルの出番。
しかし彼女の言動や行動は時々犯人の心を打ち抜く。特に東大卒。

出てくるとだいたい犯人からポンコツ扱いされる。*1
犯人たちは最初に剣持を警戒し、彼のポンコツぶりを見て油断したところに一が台頭してくる、というのが一種のパターンになりつつある。

剣持のオッサン共々日本の治安をノーフューチャーへと導くポンコツ刑事の方々。
あまりにポンコツなため犯人たちからはむしろお助けキャラのように見られている。

おそらく金田一少年関連作品史上、最もコケにされた明智。
計画犯罪の過程で犯人から罪を着せられそうになったり、
あるはずの原作の活躍を端折られ続けたりとロクな目にあってない。
決まって最後は一の推理により、鼻を明かされながらも事なきを得ている。
ただし、たまに犯人に逆襲を仕掛けることもある。
そして本格的にギャグ描写抜きで犯人を追い詰めるのがラストファイル最終話になってからというオチをつけた。

本シリーズでは犯人たちがトリックの準備に右往左往するシーンが散見されるが、彼に限っては労せずさらっと終わらせるハイエンド犯人
キャラ付け的にトリック関連で焦ることは考えられないため、ある意味作者の天敵。時間の制約上どう考えても人間では不可能なこともしれっと済ませている。
また退屈すると肌が荒れ、テンションが上がると肌が潤ってつやつやするなんか変な体質の持ち主らしく、
『魔術列車』を経た結果、以後の事件では宿敵たる一をわざわざ呼び込んで(全周囲に対して傍迷惑すぎる)スキンケアを始めるという設定になっている。
そのせいで彼に恨みを持つ人間も少なくないことが明らかになっている。
スキンケア趣味やら忘れんぼう疑惑やら、ある意味明智以上にコケにされているような気がしないでもない。

  • インタビュアー
本作オリジナルキャラ(?)。作中では姿を見せず、台詞しか描かれていない。
各ファイル最終話にて一に敗北した犯人に対し、敗因と一に勝つために必要なものについてインタビューを行っている。
前述のようにインタビューの対象が死者だったり、そもそも未来から振り返るのではなく犯行当時に犯人以外の時を止めてインタビューを行うなど神にも等しい形而上の存在であることがうかがえる。


【余談】

作画は各エピソードごとにそれぞれの原作のタッチに似せて描かれており、単行本も旧KC版風のレイアウトになっている
(オマケマンガも「六根煩悩シアター」ならぬ「外伝煩悩シアター」が描きおろされている。)。
また一時期マガジンで多用されていた「!?」も本作で復活している。
ちなみにカバー裏も旧KC風(KCの文字でギッチギチのヤツ)になっており、そこにも犯人が出没していたりする。

更に、オリジナル要素として、中年女性犯人のヌードなど誰得なサービスサービスがチラホラ見受けられる。
若い女性キャラのヌードもなくはないが、チラッと出て来る程度で比重は軽め。

作者当人は、この企画の依頼に対し面白そうと思ったこともあって即座に了承(原作があるから少しは楽だろうという魂胆もあったとのこと)だが、
集めた原作を読みながらトリックの手順などの確認に苦労する、色々確認しながら描いているうちに「この漫画人が死にすぎじゃない…?笑ってもらえるのかな…」など思ったという。
ちなみに、原作者二人に見せたところ、きちんと笑ってもらえたという。

なお、ノベルスシリーズの犯人たちは、作者がトレースしづらい事もあり、登場する事はないと思われる。*2
また、Fileシリーズの犯人たちの中では、異人館村殺人事件の七人目のミイラの登場はなかった*3


【最後に】

なお、この作品を読んで、原作の方を読み直す際に真面目に読めなくなったり、『37歳』で悪だくみをする黒い人の様子が絶望へのフラグにしか見えなくなっても責任はとれませんのであしからず。




「どうも犯人です。「アニヲタwiki殺人事件」…いかがだったでしょうか?」

――――――――今回はこの項にちなんでインタビュー形式ですか?

「はい、そうです」

――――――――敗因は何だと考えていますか?

「…敗因ですか。やはり…wiki篭りを侮ったことですかね…」

――――――――成程、同業者だったから手の内を読まれていたと?

「最大のミスはやはり追記が不十分だったことでしょうか」

――――――――どうすればwiki篭りに勝てると思いますか?

「追記と修正を完璧にこなす人物…そんな奴ならwiki篭りに勝つこともできるんじゃないかな…」

「そんな奴どこにいるのかって? 意外と身近にいるかもしれませんよ?」

あなたとかね……」



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最終更新:2024年03月06日 23:19

*1 剣持に関してはシーズン1時点では自業自得だが、シーズン2では第一印象だけでポンコツ扱いされ、シーズン3では遂に本人が直接出ていない段階でポンコツ扱いされたりとだんだん扱いが悪くなっている。

*2 ただし、「オペラ座館・新たなる殺人」については「オーナーの事件簿」において軽く存在が触れられている。

*3 例のトリックについては犯人が実行した物ではないため島田荘司先生に使用許諾を得る必要はないが、犯人が高遠以上に犯行で一喜一憂しないタイプ&メイントリックを実行したのが犯人ではなく被害者&犯人と被害者が悲恋の関係&最期が実質的に勝ち逃げに近いという四重の意味でネタにしづらい代物なので、どちらにせよ登場は難しかったと思われる。