機動戦士ガンダム(小説版)

登録日:2017/11/09 Thu 22:55:00
更新日:2024/01/01 Mon 01:59:55
所要時間:約 45 分で読めます


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本項目では、ファーストガンダムの小説版を解説する。
舞台は当然一年戦争


+ 目次


概要

放送当時の1979年にソノラマ文庫から刊行されたのが初出で、後に角川スニーカー文庫から再販された。どちらも上中下の3巻構成。
後者は2023年時点でも新品の購入が可能であり、現在最も入手しやすいと思われる。
著者はTVシリーズ監督も務めた富野由悠季氏。


ガンダムシリーズの小説版は、登場人物や勢力が映像作品では描かれなかった別の顔を描く事が少なくない*1
作品によってはキャラの名前さえ違う*2事もザラである。
すごい時には08小隊などのように、大元の展開そのものが変わっていたりもする。
FGの小説版である本作品もその例に漏れず、映像作品とは相違点が多い。

で、そのアニメ版・劇場版との相違点についてだが……





全部である。



全 部 で あ る 。



全 部 で あ る 。





けっこう大事な事なので3回言いました。全部だ……全部だ!

そう、この「小説版ガンダム」はテレビ版劇場版とは全部違うのだ。共通項を探す方が難しいぐらいである。
誇張抜きで名前ぐらいしか一致しないと言っていい。ある意味で冒険王版といい勝負である(ベクトルは違うが)。
ちなみにZガンダムも小説版があるが、もちろんそれにも続かない。


もう「どこそこが違う」と比較するほうがややこしいので一から解説してみよう。

というわけで、ネタバレ注意!!


【ストーリー】

宇宙世紀0079、地球から最も遠い宇宙都市サイド3は、ジオン公国を名乗り地球連邦政府に独立戦争を挑んできた。
ジオン公国軍は新型兵器「モビルスーツ」を用いて連邦艦隊を撃破。
開戦初頭の大虐殺により、地球人口の半数が死に絶えた……。

しかしこの大敗を受けた連邦軍もまたモビルスーツの研究と実用化に乗り出した。
そして9月ごろの現在、サイド7近郊でMS運用母艦・ホワイトベース級ペガサスがコアファイター搭乗員の訓練をしていた(これが映像作品のホワイトベースに相当する)。

一方、そのサイド7にはジオン公国軍の軽巡洋艦ムサイが迫っていた。
ムサイから発した2機のMS・ザクは、その指揮官であるシャア・アズナブル少佐の命で密かにサイド7に侵入する……。


【ガンダム大地に立つ!!】

……というところから始まるが、ここで早くも最初の大きな差異が発生。
アムロ、カイ、ハヤト、リュウは最初から連邦軍の士官候補生として登場するのである。
当然、軍人なのでシゴキも食らっており、直属の上官であるラルフ中尉から怒鳴られビンタされる。
アムロも腹を括って軍人になった立場であり、甘ったれた事も言わず、年齢も19歳*3で仲間意識も強い。
あとシアン・クランクという同期もいるが、すぐに腸をブチ撒けて死ぬ。

さて、侵入したザク2機は、シャアを「若造の上司」と嫌うデニムの独断*4によりペガサスに納入中の連邦軍MSを攻撃。ジーンも続く。
民間人をも巻き添えにする攻撃に対して、正規パイロット達はコアファイターで迎撃する。
(この時点でガンキャノンの上半身しか納入されておらず、起動できるMSはゼロ)
だがコロニーの中で航空機を飛ばすのは自殺行為にほかならず、端から撃墜されていく。
シアンも、この時にコアファイターの破片を食らって死んだ。
さらに悪い事に、逆上した連邦軍の防衛隊の攻撃も避難する住民や一部の軍人を巻き添えにしてしまう。
防衛隊の戦力は有線誘導ミサイル搭載のエレカ(電気自動車)と携帯火器程度で練度も低く、ザクの敵ではなかった。

そんな中、リュウ達と共に避難しようとしていたアムロが逆上して、デニム達が鹵獲用に残していたガンダム(2番機)に飛び乗り起動、ジーンのザクをうっかり爆発させてしまう。
デニムのザクは爆発の余波でコロニーのガラス面を突き破って宇宙に放り出され、ガンダムを放置してそのまま離脱した*5


【ガルマ(宇宙に)散る】

ジオンの襲撃で正規クルーの大半が死傷し、またアムロの幼馴染であるフラウ・ボウや軍の通信班にいたセイラ・マスらを収容したペガサス。
ドジっ子のセイラさんにアムロが一目惚れしたりしながらサイド7を脱出し、ルナツーを目指す。
しかしシャアのムサイの妨害を受け、ジオン軍の宇宙拠点キャリフォルニア・ベース(巨大な人工衛星のようなもの)のガウ部隊に待ち伏せされる。
その指揮官は、ガルマ・ザビ大佐であった。


はいここで違和感を覚えた人。
そう、ガルマは宇宙にいるのである。さらにガウは宇宙空母、ドップは宇宙攻撃機。
さらに連邦軍のフライ・マンタも宇宙戦闘機なのだ。セイバーフィッシュとかじゃ駄目だったのか?
しかもこの時点でペガサスはルナツーにすら入っていない、だがこんなのは序の口。

正面からは3隻のガウ、背後からはシャアのムサイ。
挟まれたペガサス隊だったが、猛烈な反撃でガウ2隻をあっさり沈める。
逆上したガルマは自らのガウをフルバーストで前進させるが……

「ガルマ! よせ!」

シャアはガルマを謀殺しない。謀らない。
て言うか出撃前は、ガウからの砲撃に巻き込まれる危険も承知の上でペガサスに肉薄してガンダムと戦い、しかも、

「友情に報いるためには、そんな危険がなんだというのだね? ドレン中尉。
わたしは、一発でも多く木馬にバズーカを撃ち込み、ガルマを助けたい。彼を飾り物にしないためにもな」


上記の「よせ!」という絶叫も本心。
ただし、同時にシャアの心の中では
(あいつだってザビ家の一員だ……むしろ木馬が仇討ちをしてくれるのを、目撃できるだけでも僥倖だ……!)
という思いも同時に沸いてはいたようだが、さすがにそれをもって悪意があったと言うのは酷であろう。

そしてこの時点で、もっぱら地の文でだがシャアとセイラの正体が全部明かされている。

つまり2人が兄と妹で、ジオン・ダイクンの遺児で、ザビ家は仇で、エドワウ・マスとセイラ・マスに名を変えて、ジンバ・ラルに育てられて、シャアは仇を討つべくジオンに入隊して、セイラは復讐させようとするジンバと決裂して、サイド7に流れた事が、上巻の半分いかないところで全部明かされてしまうのである。

そして、宇宙でガルマ部隊を殲滅してムサイも退却させたペガサスは、一路ルナツーに入るのだった。
ここまでが、映像版に最も近かった時期である。


【テキサスの攻防】

ルナツーに入ったペガサスは、ルナツー基地司令官であるワッケイン大佐と、宇宙軍総司令官であるレビル大将に引き合わされ、賞賛される。
そして、ペガサス隊はワッケイン大佐が指揮する第13独立戦隊に組み込まれ、レビル大将が指揮する主力艦隊の陽動として、テキサスコロニー方面への進行を命じられる。

そう、いきなりテキサスコロニーである。
レビル大将までルナツーにいるのはともかく、ペガサスは一度だって地球に行かないのだ。
すなわちテレビ版6話から30話までの地上編がまるまるカット大気圏突入もしない。
そして一気に37話相当のテキサスまで飛んでしまう。

ついでに途中ギレンの国葬とかデギンとドズルキシリアの確執だとかザビ家側の革命史だとかさりげなくサスロの言及だとかダルシア・バハロ首相の立ち位置だとかが濃密に描かれる。
あとシャアはガルマを守りきれなくて左遷されたが、国葬時点ですでにキシリアに引き抜かれていて、中佐の位とザンジバル級機動巡洋艦を貰う。
しかもサイド6にてニュータイプ部隊とエルメスとサイコミュとフラナガン機関まで任される。ララァ・スンまで登場する。
早い……早いよ!ソードマスターヤマト並に詰め込みまくりである。
ちなみにララァはサイド5「ルウム」出身で、インド出身のアースノイドではない。

他方ペガサスはルナツーを出た後、ワッケインの旗艦「ハル」を中心としてテキサスを攻撃。
これはグラナダ艦隊への陽動であり、レビル大将の率いる本隊はグラナダもしくはソロモンを攻撃する作戦。
一方グラナダ艦隊は偵察と迎撃のため艦隊を広く分散させており、その内の一つであるマ・クベ大佐の攻撃中隊はテキサスに派遣されていた。
テキサスコロニーの中にはシャアとララァのいるザンジバル、そしてエルメスも停泊している。
もちろん、第13独立戦隊もマ・クベ隊も戦況を俯瞰で見れば一部の動きに過ぎない。

そしてこのテキサスでの一連の戦闘により、
  • リュウ、ワッケイン、マ・クベが戦死
  • ペガサス、ザンジバル共に撃沈。クルーは脱出成功
  • エルメス撃墜、ララァ戦死
  • シャアザク大破、シャアは脱出
  • ガンダム大破、アムロはコアファイターで脱出し宇宙漂流
  • テキサスコロニー完全崩壊
  • ついでにフラナガン博士も死亡
と一気に起きる。

一気に起きる。


冗談でなく、上巻ラストまでにペガサスとザンジバルとガンダムとシャアザクとエルメスが沈んで、ララァが死ぬのである。
当然、ララァとアムロの交流は戦場のほんの一瞬のみ。
ホワイトベースもといペガサスにさっき乗艦したと思ったら、次の戦闘で轟沈。思い出も糞もないので感慨もない。
ちなみに民間人はルナツーに着いた時点で降ろされ、カツレツキッカもさようなら。ガンダムもさようなら。

一方、セイラはテレビ版と同じくシャアと再会。
その後、ニュータイプとしての強烈な覚醒で、沈むペガサスや崩壊するテキサスコロニーから仲間達を脱出させる事に成功する。
セイラさん覚醒の瞬間であった。テレビ版ではロクに覚醒しなかったのに

……この時点で、宇宙世紀0080年1月1日。テレビ版では降伏調印がなされた日だが、「戦争は終わってはいない」……。
途中全部すっ飛ばした件に目を瞑れば、もうテレビ版の最終回の様相である。アムロ覚醒してないけど


【グラナダ陥落、そしてクスコ・アル】

さて、その間に連邦主力艦隊はグラナダに進行。
対するキシリア・ザビは、ワッケインらの陽動にまんまと引っかかり戦力を分散させすぎていた。
おかげでレビル主力艦隊が攻め込んでからわずか30分強でグラナダ艦隊壊滅。
一方、ソロモン及びア・バオア・クーはレビル主力艦隊の動きを揺動だと見なし援軍を送らず、グラナダは映像版のソロモンとは逆に孤立無援に陥ってしまった。
最終的にキシリアは撤退を決意。
しかしその理由は援軍を出さなかったギレンやドズルへの感情的なヒステリーというのが本当のところらしかった。

かくして連邦主力艦隊はグラナダを占領し「ファーストステップ」と改名。
またファーストステップは月のうちア・バオア・クーに面した位置にあるため危険・無防備であるとして、新たに基地を建設。
反対側(フォン・ブラウンあたり)に「フロントバック」という基地を設立し、そこに主力艦隊を再編する。

キシリアはア・バオア・クーを目指していたところ、パトロール中のムサイに辛うじて救助されたシャアと再会。
そしてシャアはララァ亡き後のニュータイプ部隊のまとめ役を任される。

テキサスコロニーで離散しかけたペガサス隊は13独立艦隊の僚艦「サフラン」「シスコ」に救助され、フロントバックへ届けられた。
アムロとコアファイターは宇宙を漂流していたが、偶然サイド6の民間船に救助される。

……だが、この民間船は実はジオンの徴用船だった。
そこでアムロはジオンのニュータイプ、クスコ・アルと接触を持つ。
実はこれ以前にニュータイプという発言は連邦側からも出ていた。アムロはこのイベントで初めて本格的に知ったと言うべきか。

ただ、アムロ側の事情もあってクスコ・アルとの接触は短時間で終わり、その後は連邦領事館からフロントバックに届けられて仲間達と再会。
彼らは新しい母船「ペガサスジュニア」と、撃破されたガンダム(2番機)に代わるガンダム3番機「G3」を与えられる。
ついでに補充された1機を含むガンキャノン2機ジム2機、護衛艦としてサラミス2隻+ボール4機を含めた「第127独立戦隊」として再編成された。
近年のゲームでも時折「G-3は小説版FGで活躍したMSでもある」と解説されているのはこれが由来である。
ちなみに『トライエイジ』とかで触れられた忍者がどうのこうのは『Gの影忍』のネタ。全く別の作品である

一方、シャアも「第300独立戦隊」の指揮官として、ザンジバル級「マダガスカル」を受領。
新型MS「リック・ドムやそのパイロットであるシャリア・ブル達、そしてエルメス2番機を揃えて厳しい訓練に勤しんでいた。
そのエルメスのパイロットは、漂流していたアムロと接触したクスコ・アルだった……。

そしてシャアも満を持してゲルググに搭乗……しない。
赤く塗装したリック・ドムに乗る。
そもそもゲルググどころかジオングも登場しないので、シャアが最後まで乗るのはこの赤いドムである。

とまあこんな具合で、サイド6以降のエピソードは映像作品と何一つ共通しなくなった。
さらにキシリアの拠点・グラナダは映像作品では一度も戦場にならなかったのに、こっちではソロモンとは逆になる形で突破される。
ついでにキシリア単独の采配も披露されたのだが……ドズルに比べると指揮官としては能力が低かったといわざるを得ない。

そしてアムロ達だが、テキサスで死線を潜り抜けた結果精神的には大成長しており、映像版以上の団結力とさばけっぷりを見せている。
というより、精神的にはア・バオア・クー以降の彼らといっていいかも知れない。
そして大人っぷりが加速しすぎて……




アムロがセイラを口説き、ガチのベッドシーンを演じた。
さすがに直接的なシーンはないが、かなり大胆に描かれる。
そのちょっと前にはセイラ自ら自分がシャアの実妹で、ジオン・ダイクンの遺児である事をアムロに明かしている。

しかしやはり一連の行動は、特にセイラにとってはストレスでもあったらしく、ピロートーク交じりに「シャアを殺してくれ」とこぼし、アムロもついカッとなって「それを頼みたいから僕と寝たんですか!」と叫ぶ……!

このセイラとアムロの葛藤は恐ろしいほど濃密な描写で、なんというか「富野~!」って感じ。
そしてこの瞬間から、セイラさんのヒロイン力は急上昇していく。


【コレヒドールの死闘】

その後、シャアの部隊は実戦テストを兼ねてフロントバックを奇襲。
迎撃に出たアムロ達と戦いつつも、十数分でサラミス9隻を落とすという十分な戦果を挙げる。
しかしエルメスのクスコ・アルは初めての本格的な実戦という事もあって圧倒されてしまい、自信を失う。

あと、シャリア・ブルがものすごく強く、アムロもシャアも「シャア以上のニュータイプ」と直感するほどの腕前を披露。
テレビ版ではララァの前座だったシャリアが、ここからまさかの超重要キャラになっていく。

この後、ペガサスジュニアを中核とする127戦隊は、さらに12機の宇宙戦闘機「トマホーク」からなる戦闘機部隊を補強されるが、「これが正真正銘、最後の補強」となった。
ちなみにセイラもスレッガーもトマホークには乗らない。
また、なぜかその戦闘機部隊の指揮官はマクベリィ少佐で、ブライトよりも階級が高い。

その間にもアムロ達は全員昇進したり、ニュータイプの概念について話し合ったり、ブライトとミライにフラグが立ったり、スレッガーのフラグが折れたり、アムロとセイラがいちゃいちゃしたりしてるけど割愛。
あとフラウ・ボウはルナツーでカツ、レツ、キッカと一緒に降ろされました。

シャアもシャアで、キシリアの秘書のマリガレーテ・リング・ブレアという女性と恋人関係になる。当然ベッド行きですよ!
どうもこっちのシャアはララァをそんなに引きずってないっぽい。というか、派生含むあらゆるシャアよりも一番平和で幸せなように見えるのは気のせいだろうか。
あと鼻っ面を折られて落ち込むクスコ・アルをなだめるなど、部下のアフターケアにも余念がない。
テレビ版よりもいい上司に見える…



そんなこんなで、いよいよ連邦艦隊は月を発して総攻撃を開始した。
ソロモン方面司令ドズル(と映像作品を見た者)は、「グラナダを落としたのだから次はソロモンに来るはずだ」と予想。
だが連邦軍はソロモンを無視して直接ア・バオア・クーに向かう進路を選択。
ドズル「ソロモンは敵でないというのか! レビルめ、必ず相対してくれる!」

一方キシリアはギレンの要塞のア・バオア・クーが攻められると聞いて密かにほくそ笑んだ。
あんたらもうちょっと自分を押さえろよ。

ともあれ、アムロ達を先鋒とする連邦軍は、途上に展開していたジオン艦隊を逐一撃破しながら着実に前進していった。
だが、そのア・バオア・クーに向かう航路にある「コレヒドール」という暗礁区域にはシャアの300戦隊が待ち伏せて展開していた。

この戦いは文字通りの激戦となった。
ララァがややあっさりと戦死した反動なのか、アムロとクスコ・アルの戦いはサイコミュの能力とニュータイプの意識が全開の激戦
さらにシャアも飛び込み、艦艇やMS、戦闘機も激しく撃ち合い、とうとうアムロの意識がオーバーフロー。
クスコ・アルの人生全てを理解したり、シャアと戦場で交信したりと、テレビ版のララァ戦以上にすさまじいニュータイプ化をたどった。

そして……アムロがクスコ・アルの人生というか存在そのものを理解したのと、G3のビームライフルがクスコ・アルを撃ち貫いたのは同時だった。



“止めたら、シャア! あなたを殺す! 俺はアルテイシア・ソム・ダイクンに頼まれているんだ”
“アルテイシアにだと!”


 アムロは、
 罪を、
 犯したと分かった。
 が、
 すでに、クスコ・アルの身体は焼かれていた。

「……マ、マイ フェア レディ…… クスコ・アル……」


“本気なのか、アムロ!”
“嘘が、嘘が伝わるものかっ”



エルメスを失い、ジオン艦隊は退却した。
旗艦マダガスカルも中破し、6機いたリック・ドムはシャア機を除くと2機だけになった。
ガトルも3機残ったが、次の作戦には使えない。

一方の連邦艦隊も損害がひどく、マクベリィ少佐含めてトマホーク隊は壊滅。
アムロの僚機のジム1機とボール4機、サラミス級「グレーデン」も失われた。

その合間に、アムロはセイラに「伝えた」と言って平手打ちされたりしている。
……重い。あまりにも重すぎる展開である。リア充も楽じゃないとわかるだろうか。


【ギレンの思惑】

この後、レビルが指揮する連邦軍主力艦隊はいよいよコレヒドールからア・バオア・クーへ全軍突撃せよとの信号を下す。

迎え撃つア・バオア・クーはランドルフ・ワイゲルマン中将が指揮をとり、次席指揮官はグラナダから落ち延びたキシリア・ザビ少将
さらに、レビル艦隊の後ろからドズル艦隊が猛烈なスピードが追いかけてきた……。


……あれ? ギレンは?


実はこの時、ギレンはサイド3にいた。ア・バオア・クーには出てこないのである。
代わりに一番の側近であるランドルフ中将を置いたわけだが、ギレン自身はチャップマン・ジロム大将*6が管理するソーラ・レイのあるサイド3にいながら、腹心のランバ・ラル大尉より報告を聞いていた。

さりげなくこんなところでランバ・ラルのお出ましである。
この人も映像版とは全然キャラが違う。グフ自体出ないしそもそもモビルスーツに乗らない。

ギレンは密かにとある計画を練って、ランバ・ラルやチャップマンにほのめかしていた。
それはともかく、レビル艦隊はついにア・バオア・クーに攻め込んだ。

映像版ではア・バオア・クー前にソーラ・レイ照射が起こるが、小説版ではデギンは和平に動かないし、ソーラ・レイはまだ動いてないし、レビルもドズルもまだ生きているし、ギレンはキシリアと同じ場所にいないしで、もう何一つ合致しない。
「グレートデギン、どこに配備なされたのです?」「出てこんよ。話の都合でな」
共通しているのはギレンとキシリアの仲ぐらいである。


【宇宙要塞ア・バオア・クー】

そういうわけで始まったア・バオア・クーの戦いは、
  • 正面のア・バオア・クー防衛線
  • そこに攻め込むレビル艦隊
  • 追いかけるドズル艦隊
の三つ巴となり、混沌を極めていた。


背後からのドズル艦隊は出撃時のトラブルでドズルが直卒する戦艦ガンドワを旗艦とする艦隊と空母ミドロを中核とする艦隊の二手に分かれた。
このうちミドロ艦隊はレビル艦隊左翼の背後を、ガンドワ艦隊は右翼の背後を突く事になる。
もちろん正面にはア・バオア・クーの防衛線があるわけで、前後から討たれた連邦軍、特に左翼は大苦戦する羽目に陥った。
実はレビルは諜報でソーラ・レイの事を知っており、攻略を焦ったのが背後の備えを怠る結果となったのである。


が、右翼部隊にいたアムロ達は、圧倒的な力量でドズルの部隊を撃破してしまった。

アムロのG3、カイ(C108)とハヤト(C109)のガンキャノン2機がニュータイプ(ちから)で圧倒。
それに加えて、キリア・マハのジム325が完璧な連携で片っ端からドズルの艦隊を蹴散らしたのである。

ドズルは虎の子のビグ・ザムをガンドワに曳航していたが、そのビグ・ザムさえ大苦戦。
なんとジムの一撃で片足を失ってしまう。

突撃してきたガンドワとの一斉攻撃によって、キリアのジムをどうにか撃墜。
だがダブルガンキャノンの攻撃でガンドワもあっさり沈み、ビグ・ザムも信じられないほどのあっけなさで撃沈してしまった。
ドズルだけはテレビ版と同じようなオーラを放っていたが、どうなるわけでもなく爆砕
アムロ「こんな奴がいるから、戦争は終わらんのだよ!」


残ったミドロ艦隊はまだ連邦軍を圧倒し続けていた。
だがレビルが「戦力を固めて、ア・バオア・クーの一転に集中して切り込もう」と提案したのを、幕僚が「いったん後退して立て直す」と勘違いして全軍に発信してしまう。
映像版でキシリアがギレンをブチ殺したレベルの大ポカだが、レビルは指揮系統を混乱させないためにあえて「ミドロ艦隊を殲滅して立て直す」と再命令。
前後に敵を迎えて劣勢気味だった司令部に活気を呼び戻す
他方、全軍に襲われたミドロ艦隊は全滅し、ア・バオア・クー守備隊や本国のギレン達は「ドズルをたやすく殲滅するほどの連邦軍が、なぜ後退したのか」と悩んで追撃を中止。
アムロ達も一息ついた上で、あらためて攻め込む事になった。

……実はこの「一息」のミーティングで、ブライトが「いっそ直接本国に攻め込んでギレンを討つか?」ととんでもない提案をかます。
しかしこの冗談のような話は徐々に発展して、アムロは「協力者がいればできるかもしれない。例えば、シャア・アズナブルとかとさらにものすごい事を言い出した。

一方、シャアもシャリア達と同じようなミーティングをして、同じような結論を出していた。

話は少々前後するが、ギレンの最終目標は「ソーラ・レイで連邦軍に勝つ」のではなく、戦後を見据えて「連邦軍とキシリアとドズルを消してしまう」事。
つまりソーラ・レイの最終目標はキシリアでもあったのだ(ドズルが純粋に戦死したのはギレンにとって予想外だった節もある)。

しかし、その目標は実は思わぬところから漏れていた。
ギレンの腹心であるランバ・ラルの恋人(籍は入れてない)のクラウレ・ハモンである。

ハモンの正体はなんとデギン公王とバハロ首相のエージェント。
さらにこの2人は密かにギレンを排除しようと目論んでおり、ギレンがソーラ・レイで何を狙っているのかを、ハモンを通してキシリアに漏らしていた。
キシリアはそれをシャアに伝え、シャアは信頼するシャリア達と相談。
結論として、「一足飛びにギレンを倒し、革命を起こそう。そのためにアムロと協力できるならなお良し」という結論を導き出していたのである。
さらにはこの辺でキシリアがシャアの正体を見破るエピソードも加わる。

ともかく、シャアとアムロはお互い関わらない場所にいながら「独裁するザビ家を討ち、腐敗した連邦を切り捨てて、新しい『ニュータイプの時代』を作る」という同じ青写真を描いたのである。
ところが、そういう話が上手く運ぶわけがないのが富野ワールドの常であり……。


【光る宇宙】

再編成と補給を終えた連邦軍が再びSフィールドより攻め込み、ア・バオア・クーの防衛部隊も再び激しい迎撃を展開した。
攻撃はやがて連邦の特攻に近い形となる。
その激戦の中で、アムロはドズルの猛烈なオーラを見た経験から「人々の意識の核」を見つけて、その核=ギレンを討とうと、ニュータイプ力を磨ぎ澄ましていた。

一方、アムロ達と協調し、新しい世界を作るべきと考えたシャリアは、ニュータイプ用モビルアーマー「ブラウ・ブロ」を動員。
そのサイコミュを使ってアムロの脳波を探し、交信しようとしていた。
テレビ版ではララァとエルメスの前座に過ぎず、劇場版では「いらない」と言われて出番そのものをカットされたシャリア・ブルとブラウ・ブロ。
彼らがまさかの「ストーリーの肝」となった瞬間である。


だが、その乱戦の中、突如サイド3からテストを兼ねたソーラ・レイの第1射が放たれた。
映像版で、遠くにいたアムロでさえ異変を感じて「憎しみの光だ」と戦慄したソーラ・レイが、戦場で、アムロ達の目の前で炸裂したのである。
その一撃はレビル艦隊を補佐するカラル中将の支援艦隊を消し去った。

間近であっただけに、その衝撃は映像版よりもすさまじく、呑み込まれたカラル艦隊のクルー達数万人の「断末魔の意識」が戦場に炸裂。
アムロのようなニュータイプの意識に目覚め始めていた人間達に強烈なプレッシャーとなって襲いかかった。
文中では「宇宙をも震わせる憎悪」「真空をも揺るがす」「ありえない圧力、ありえない振動。強いて言えば空震」「阿鼻叫喚そのものの奔流」とまがまがしい言葉が羅列されている。
アムロ、カイ、ハヤト、セイラ、ミライ、レビル達連邦側のニュータイプだけでなく、事前に「来る」と知っていたはずのシャアやシャリア、果ては遠くルナツーにいたはずのフラウ・ボウまで意識が吹っ飛んでしまった。
シャリアに至っては「死んだほうがましだ!」「この恐怖は、死んでも魂に残る……」と内心で絶叫するほどだった。


そんな混乱の折に、辛うじて正気を取り戻したシャリアがガンダムを発見しアムロと接触を図る。
ショック状態で動かないガンダムに、シャリアは早速ブラウ・ブロのサイコミュを利用しアムロと交信。
「この近辺はギレンのソーラ・レイに狙われている」「ギレンの独裁を打倒し、新しい社会を作るために協力してほしい」「一緒に脱出してほしい」と必死になって訴えた。
それはある意味でアムロ達も考えていた事なのだが、シャリアは一つ大きなミスを犯していた。

ソーラ・レイによる阿鼻叫喚の意識の渦に飲み込まれて動揺していたアムロ。
そこになまじ誰も経験した事のない「サイコミュからの精神波」で訴えたために、かえってアムロの混乱を増長させたのだ。

錯乱したアムロはバズーカを乱射して抵抗する。
シャリアもシャリアで、次のソーラ・レイ発射まであと20分もない事から焦っていた。
撃墜されないよう、精神波を送りながら有線式サイコミュ端末のビームで抵抗。
これが「動揺させて討つつもりだろうが!下衆が!」ますますアムロを本気にさせてしまう。
加えて、事情を知りえないカイやハヤトはシャリアや続くシャアを撃破しようと猛攻をかける。


訴えながらも迎撃するシャリア、冷静なようでパニックに陥っているアムロ、失敗したのかと焦るシャア、必死に迎撃するカイとハヤト。
全員が混乱に陥っている状態の中、アムロのビームライフルがブラウ・ブロのコクピットを狙撃してしまった。
「情緒不安定なパイロットが!」
断末魔の叫びをあげながらシャリアが戦死。しかしその死の瞬間、彼の意識がアムロを直撃した事で全てを察した。
つまりシャリアを殺して、やっとアムロはシャリアの言いたい事を理解したのである。
クスコに続きこのパターンは2度目である。もっとも「わかりあった時には時すでに遅し」なのは御大のガンダムではたまによく出てくるネタではある
このショックでアムロはガンダムのコクピット内で意識を失う。

一方シャアはシャリアの死に驚愕し、その隙をカイとハヤトに突かれて撃墜されかける。
冗談でなく、本当にシャアは殺されそうになった。
しかしシャアが間一髪で反撃、ハヤトのガンキャノンを撃破。ハヤトが戦死する。
ハヤトの死に際の絶叫を聞いたアムロは覚醒し、シャリアの死の波動を呑み込み、ハヤトの死の波動をこらえて、カイを制止。
さらにペガサスジュニアに飛んで「シャアと協力して、ア・バオア・クーを脱出しろ」と伝えた。


……そのために気を逸らした瞬間、シャアの部下ルロイ・ギリアムのリック・ドムが、背後からアムロを撃ってしまった。



「ルロイ!」

「ガンダムは気付いてくれたのだぞ!」



アムロが、主人公であるアムロ・レイが、まさかの戦死を遂げてしまった。
しかもそれはシャアが決して望まない形で。

「将たる器でない己をいう身が将たらんとする…これは誤ちと言ってすむものではない」

だが死によって飛び散ったアムロの意識は、ララァやクスコの意識と共に戦場に波紋のように広がっていく。
残ったペガサスクルーやシャア、ルロイ、戦場にいてそれを感じ取れたわずかな人達へ全てが伝わった。
それは戦場を離れたルナツーのフラウ・ボウの下へも、広く伝播していった。

(俺のように惨めに死んでゆく人のいない世界をめざしてくれ…ギレン・ザビを討つのは人の歴史の必然だ)



「この空域を脱出する。目的はジオン!」
「シャアとの回線を開け! 情報を確認しつつレビル本体にこの空域からの脱出を示唆しろ!」
ブライトの絶叫により、ペガサスジュニアの部隊はシャアのマダガスカルとキシリアの旗艦ズワメルに続きながら、一斉にア・バオア・クーから離れていった。

しかし、まさに部下達を抱えてア・バオア・クーに上陸しようとしていたレビル艦隊は今さら進路変換もできなかった。
また要塞守備を命じられていたランドルフ中将らの守備隊は何も知らされておらず、退避もせず、レビルにもさせなかった*7
レビルはさすがに「ギレンは味方に被害が出てもソーラ・レイを撃てる。そういう男だ」とは見抜いていた。
だが、この状態でできる事はア・バオア・クーに取り付き、その陰に隠れて盾にし撃たせなくする、という事だけだった*8

だが、「キシリアをレビルもろとも殺す」と考えていたギレンにとって、レビルの決断は最悪の悪手だった。
そうして、ついに発射されたソーラ・レイは射線をずらしつつ掃射され、ア・バオア・クーの「柄」の部分を直撃。
レビルとア・バオア・クー要塞の下半分を、自軍の将兵もろともに蒸発させた。
もちろん、直撃しなかった「傘」の部分も下半分を吹き飛ばされた事による衝撃で激しく振動。
無重力ゆえに資材が高速で右往左往したため、内外にいたほとんどの将兵が壁や物資に叩き付けられ圧死した。
映像版でギレンがいた総司令部では、総司令官ランドルフ中将が一瞬で床と天井を十数往復して死んだ。

さらに、本国ではギレンがランバ・ラルをソーラ・レイのコントロール艦に派遣。
ギレンの密命を受けてソーラ・レイの斜角をア・バオア・クーに向けるよう工作していた司令官チャップマン大将を射殺させた。
言うまでもなく口封じである。*9

地球連邦軍宇宙総軍は壊滅。
ジオン軍は半身不随に陥った。
戦争は事実上、終結したのである。

口封じもなされ、ギレンの計画はすべて完了した……と思われた。


【終戦】

だが、すでにハモンの密告とアムロの死によってキシリアとシャア、ペガサスクルーは連携してア・バオア・クーを脱出し、しかもジオン本国へと全速力で迫っていた。
当然、双方の乗組員達はギレンに殺されかけた事を理解しており、キシリアの「ギレンを討つ」というクーデター宣言にも団結して賛成した。

ペガサスクルーも、シャアと会見。双方の語り合いを経て、奇跡的な和解がなされた。
ちなみにシャアは彼らの前で簡単にマスクを外した。
「あ……これはファッションでな。プロパガンダ用の……」
「申し訳ないが癖というのは外すのを忘れさせる」←言いながら照れる
セイラとも再会し、和解と、互いとの精神的な決別を果たしている。
やっぱりどう見てもテレビ番より成熟している……


かくして団結したペガサスクルーとキシリア・シャアの艦隊は、間違いなく「味方」である事を利用してズムシティに入港。
ギレンが完全に油断しきっていた事もあって、コロニーの港を砲撃で突破。
ズワメルとペガサスジュニア、リック・ドム4機とザク3機、そしてMSパイロットで最後まで生き残ったカイのガンキャノンがコロニー内部に飛び込んだ。
ちなみにシャアのリック・ドムの予備シートにはキシリア自らも乗り込んだ。
ギレンを自らの手で討ちたいという執念である。

「よろしいのですか?」
「よい。心配はいらぬ」
(やや違うのだがな……)

そしてアムロ並みに覚醒していたカイが、いち早くギレンの「気」をつかんだ。
事態を悟ったギレンが脱出しようと乗り込んでいた車が見つかったのである。
「判るぞ! 俺にも! アムロ! 間違いないんだな?」
“見事だな。カイ”
「総帥! 出ませい!」

ついに包囲されるギレン。
キシリアはリック・ドムの左手に乗り移り、シャアに中空まで移動させて、手にしたビームライフルを放った。
ギレン・ザビはあっけなく即死した。

「では……」

そして次の瞬間、リック・ドムの手首が回転した。

「シ……シャアァ!」

キシリアはよりによってギレンの肉片の上に墜ちた。それだけだった。


ギレンとキシリアが消え、さらに統合本部もシャア達の手で制圧された。
その後は、デギン公王が退位しダルシア首相を中心として「ジオン共和国」が復活。
そのジオン共和国と、地球連邦政府が講和条約を締結する事で戦争は終わった。
ルナツーもジオン共和国の管理下に置かれ、連邦政府は完全に「地球だけの政府」となった。
ペガサスジュニアと僚艦2隻も共和国に鹵獲扱いとなり、そのクルー達も半数はジオン国籍を与えられ、さらに一部は共和国再建のため共和国軍に参加した。



こうして、小説版ガンダムのストーリーは終局する。



最後は、ジオンからもシャアからも離れ、一人で泳げるようになったセイラが地中海に飛び込むあたりで幕を閉じる。


というわけで、以上が徹頭徹尾・最初から最後まで、映像版の面影が欠片もない「小説版ガンダム」である。
ほかにも、一部キャラクターの内面の掘り下げや来歴披露などが頻繁になされる上、映像作品以上にSF小説としての科学考証が随所に炸裂している。


【登場人物】

+ 地球連邦軍
アムロ・レイ
「生きるも死ぬも、早いか遅いかの違いなら! ……神様!」
最初から軍人としての道を歩んでいるのと年齢が年齢なので映像版よりもずっと大人。
しかしそれは映像版と比較しての話で、セイラさんからの扱いを見る限り「大人」としてはやっぱり不器用な方。ウブなネンネ。
映像版ではいまいち曖昧だった「ニュータイプ」についてかなり深くまで理解するようになっている。
セイラさんを口説いて、セイラさんとヤッて、セイラさんがシャアの妹である事を知ってしまう。
最後はまさかの事故死みたいな戦死。
「てめえだけ好き勝手に死にやがってよ!そんなやっかいな事が出来るとおもっているのかい!」

セイラ・マス
「みせて欲しい。人の光明を……!」
正真正銘、まごう事なきヒロイン。
何回もベッドにもつれ込んだり父ジオン・ダイクンの意志を解説したりと大活躍。
コアブースターに乗らないので「活躍」はむしろ減っているはずなのだが、とてもそうは思えない。
もともと陰のあるキャラクターだが、小説版ではその辺にも深く踏み込まれている。
アムロいわく「なぜ、そんなに怯えて生きてきたのです」。
しかし最後はシャアに対して「わたしの男を殺した男!」と意識し、兄への決別という成長を果たす。
最後は彼女の裸で締められる。
ちなみに0079時点で20歳。つまりアムロより1個上。

ブライト・ノア
「今はお互いにマシンだと思え! 考えるな! ただ前を見て操艦しろ!」
安定の艦長。映像版との違いがあんまりない貴重な人。意外に順調にミライさんとのフラグを立てる。
「ヒステリーのブライト」呼ばわりされているが、映像版に比べると「十年ぐらい年を取ったのではないかと思うほどさばけている」。

カイ・シデン
「艦長、アルコールてのはないスかね」
軟弱者ではない。それどころかニュータイプとして覚醒し、アムロ死後は代わって物語を牽引した。
アムロ達の部隊ではただ1人、最初から最後まで生き残ったが、彼の胸に去来するものは……
「なあ……アムロ……これでいいのか?」
いいわけあるか
ちなみにアムロがセイラの出征守りを貰ってないと聞いた際には
「おいおい冗談やめなよ。お守りなしで今日まで生き延びたのかよ。相変わらずドジセイラってとこだな。
 よし、俺が頼んできてやる、待ってろ」

と、作戦行動中にブライトにセイラをブリーフィングルームへ下ろすように申告した。
ブライトもブライトで「ドジが!貰ってこい」とアムロに怒鳴っている。えぇ……

ハヤト・コバヤシ
「ぼくはニュータイプって存在自体、どういうことなのか良く判りませんし……」
出番は多いはずなのだが、カイよりも印象が薄い。
しかし、テーマとして据えられているニュータイプについて「突然変異の怪物じゃないのか」と疑念を抱くなど、重要な立ち位置ではある。
そういう彼もまたニュータイプとして覚醒していくが、ア・バオア・クーの乱戦の中でまさかの戦死。

リュウ・ホセイ
「……あ、あいつ……ニュータイプかも知れねえな……」
アムロ達とは同期なので完全に対等な口調。ただし年齢は一番高いため、リーダーのような立場だった。
しかしテレビ版で見れた包容力も、みんな成熟してる小説版ではいまいち地味。
最後は「乱戦の中、気付いたら撃墜されていた」という形で、アムロ達に戦場の厳しさと現実のあっけなさを淡々と刻みつけた。

スレッガー・ロウ
「ひょっとしたら俺は、ジャブローの密偵かも知れんぜや」
ルナツーに合流してからの補充要因だが、戦闘機に乗らず砲兵の指揮官で終わる。信じられないほど空気。
戦死はしないのだが、ミライやセイラにアプローチをかけるもののことごとく相手にされなかったもんだからいいのか悪いのか。
ちなみにリュウの生前から配属されているが絡みはない。

◇キリア・マハ、サーカス・マグガバン
キリア「一週間に二つも三つも戦場を跳びまわるなんて事にはならんでしょうね」
ペガサスジュニアに補充されたジム乗り。サーカスが324、キリアが325番機を担当。
サーカスは活躍もなくコレヒドールの戦いで戦死するが、キリアはア・バオア・クーまで奮闘。
最初は心許なかった彼も急速に腕を挙げ、ドズル戦ではアムロ達と共に多数のMSを撃破。
さらにビグ・ザムにも直撃弾を当てるが、ガンドワとビグ・ザムの一斉攻撃を捌き切れず戦死する。
死後も「優秀なパイロットを失った」と全員から悼まれた。

◇マクベリィ少佐
「ラフな神経ではトマホークは勤まらんよ」
ペガサスジュニアに加えられたトマホーク宇宙戦闘機部隊の指揮官。
アムロ達がどこか生温いのに対して、軍人らしい規律とプライドを持った人物。
……というと映像版のリードのようなのを連想しがちだが、彼の「男らしい力量」「器の大きさ」はかなり心地よい好漢。
ぶっちゃけスレッガーそのもの。スレッガーの出番を喰ったのは間違いなくこの人。

レビル将軍
「私は信じたいのだ。ニュータイプの存在を。そして、それを諸君ら自らが試してもらいたい」
連邦軍の総司令官。ティアンムが出てこないしジャブローも舞台にならないしア・バオア・クーには自ら参戦する。
意外と出番が無かった映像版と違い、一線で指揮を執る。
映像版では穏やかな初老の人物だったが、本作では意外と興奮しやすい性格である事が示されている。
また「ジオンに兵なし」の演説が記載されているが、その文章はかなり過激で、アジテーターっぽい。
ちなみにセイラの正体を調べ上げてペガサスクルーに明かしたのは彼。

◇ワッケイン大佐
「待たせた。諸君」
ルナツーの基地司令官。
厳格でぶっきらぼうな性格なのは変わらないが、実は詩人で、「ルナツーニュース」という新聞で詩の評論をしているらしい。

◇ラルフ中尉
「ボッとしてるわりには、ご機嫌にかわしてくれたな。歯ぁ食いしばれ! 左右の者、アムロ曹長を固定しろ!」
7人いたペガサスの正規パイロットの1人。左手が義手になっている。
いかにも職業軍人らしいスパルタ上司で、アムロ達5人のパイロット候補生を厳しく教育していた。
6機のモビルスーツを24時間運用するにはパイロット12人でも足りないので、早く若造どもを叩き上げないと自分達も楽が出来ないのである。
残念ながらガンダムに乗る前に戦死してしまうが、彼ら正規パイロットはいずれも空母トラファルガーにて実戦を経験している猛者ばかり。
コアファイター離着艦も3回の訓練で呑み込んでいた。

マチルダ・アジャン、ウッディ
「じゃ、私を愛してくれて妻という名前をくださるということ?」
「当たり前だろ!」
ルナツー補給部隊と整備部隊のカップル。完全に後方担当なので戦死もしないし、たぶん結婚できた模様。
ちなみにマチルダさんはわざとアムロを話題に出す事でウッディの嫉妬心をあおってプロポーズに追い込んだらしい。
トラウマブレイカーと同時に思い出ブレイカーにもなった。

◇フラウ・ボウ、カツ・ハウイン、レツ・コ・ファン、キッカ・キタモト
「体を大事にしてね……でも、兵隊さんにこんなこというの変かしらね」
民間人は全員ルナツーで下船する。よって出番が激減。てか無きに等しい。フラグも何一つ立たない。
ちなみにチビ達は本作でフルネームが設定されている。それ以上語る内容がない

◇テム・レイ、カマリア・レイ
アムロの父のテムは著名なコロニー建設者であり、宇宙開拓の偉人であった。
しかし母のカマリアはそれをいい事に「特権階級として」地球の居住権を勝ち取り、しかも愛人を抱え込んでいた
仕事人間のテムはそれを知った上で放置しており、夫はもとより息子であるアムロにさえ愛情を持っておらず、むしろ邪魔だと疎んでいた。
そうした経緯でアムロは「僕は一人で大きくなったんだ!」「不潔だ!」と叫んでいる。
テムは戦前か、もしくは開戦直後に死亡しているとのこと。



+ ジオン公国軍
シャア・アズナブル
「神のみぞ知る、だな?」
ある意味アムロ以上に変わった人物であり、実質主人公。
養父ジンバ・ラルの歪んだ教育を頭から信じ、ザビ家への復讐を志していた。
しかし年を重ねるごとにその思いは薄れ、ララァとの交流を経て彼の意識は「新しい世作り」へとシフトしていく。
本当の意味で大人で、ヘタレじゃない。ララァやセイラを意識しすぎて道を踏み外すような事もない。
むしろララァの死もあっさりと乗り越えるし、心からの恋人もできる。
その人の前ではしどろもどろになったり、子を産んでほしいと願ったりする普通の不器用な青年。
仮面はもともと正体を隠すためだったが、現在は「赤い彗星」という偶像のためのプロパガンダ、ファッションと割り切って着用している。
なお額には自分でつけた醜い傷跡がある。
ガルマは謀殺しないしアムロの死を悔しがるしマザコン・ロリコン・シスコン一切無いしでもう完全な別人
だが、どの作品のシャアよりも生き生きとしていて幸せそうなのがどこか切ない。

◇ドレン、デニム、ジーン、ハマン・トラッム(ムサイ艦長)
ジーン「デニム中尉。蜘蛛の巣です」「降りて触ってみたいものであります」
初期のシャアの部下達。ちなみにドレンは艦長ではなくシャアの補佐官。
忠実だった映像版とは逆にシャアは彼らから露骨に嫌われており、デニムが飛び出したのもその対抗心からだった。
ハマン艦長はなぜか「赤鼻野郎」と言われてるがアッガイの赤鼻との関係は不明。

ララァ・スン
「あの少年、ア、ム、ロ、が遅すぎたのではない。私が、早すぎたのだ」
上巻で退場してしまうというのはすでに書いた通り。
彼女との関わりがシャアに復讐以上の志を抱かせるのだが、なにせ出番が短すぎる。
おまけにシャアもアムロもあんまり引きずらずに自らの成長の糧としているので、ちょっと…というか異常なまでに影が薄い。
別に死後「永遠の女」としてソロモンの亡霊になんてならないし登場もしない。

◇クスコ・アル
「性分は直せない……いえ、直したくはないわね。私は自分が好きだから……」
サイド6船籍の貨物船「カセッタIII」の乗組員だが、実はジオンのニュータイプ研究所の訓練兵。
後にエルメスのパイロットとして編入される。
かなりの自信家で、ぐいぐい押し込んでいくタイプ。中巻の実質ヒロイン。
ララァよりもパイロットとして優秀でニュータイプ能力も高い。模擬戦でリック・ドム6機を一瞬のうちに殲滅、初戦闘でサラミス9隻撃沈*10、G3に乗ったアムロと戦ってもかすり傷だけでサラミス2隻を撃沈した。
コレヒドールでの戦いでアムロが自分とおせっせしたかったのをニュータイプの力で見抜いて、キレたアムロに撃ち殺される。
死の間際、アムロは彼女の歩んできた人生そのものを理解してしまう。これが「ニュータイプの交流」「人を理解すること」だった。
ちなみにGジェネにレンタルキャラで出てきた事もあるが、なぜかそっちだとピンク色の髪だった。小説版では栗色って書いてあるのに。
連邦軍の兵士に父を撲殺された挙句、自分もレイプされたという過去を持つ。キキかよ。

シャリア・ブル
「我々が屈折しすぎているのです。中佐……いえ、キャスバル・ダイクン」
シャアの部隊のNTパイロット。テレビ版ではララァの前座扱い、劇場版では「いらない」なんて理由でカットされた悲劇のナイスミドル。
だが本作ではなんとシャアの右腕としてアムロとシャアを和解させようとする超重要人物。
ニュータイプの素質、パイロットの力量もシャアを上回る。
天涯孤独の身の上らしく、それだけにいっそうシャアの理想実現のために意欲を燃やす。
ちなみに年齢は驚愕の28歳。ありえん。(アニメでの彼の見た目はヒゲも眉も総白髪というロマンスグレーのナイスミドル風)
ビームライフルの直撃で灼熱した粒子により蒸発するように死んだ。

◇ルロイ・ギリアム
「第三のルネッサンスを人類は迎えつつあると考えて良いわけですね」
シャアの部隊のNTパイロット。若いがすでに軍艦2隻を沈めた腕利き。
ア・バオア・クーの死闘でペガサスを牽制していたところ、アムロがペガサスにシャアの意志を説明しようと飛び出したため、間違えて撃ってしまう。
Gジェネでは、なぜかGジェネオリジナルキャラクターの名前に使われていた事がある*11
シャア専用リック・ドムが最初期から出てきたゲームとはいえ、なぜオリキャラの名に……?
能力がやや低めだがニュータイプLv/覚醒値は高い事が多く、ニュータイプLv/覚醒値が高いと能力が低くてもフォローが利くこのシリーズでは作品にもよるが普通に使っていける。
1作目ではあの閣下と同じ台詞パターンの軽すぎるノリのキャラだったが、以後の作品では真面目な性格に。
さすがに細かすぎて伝わらなかったか、『SPIRITS』以降は何故か名前が「ルーク・ルザート」に変わった。
『君も俺と同じだ、急ぐなよ。俺の犯した誤ちを繰り返しちゃならない』
「俺は……とりかえしのつかぬことをしてしまった……」

◇マルガレーテ・リング・ブレア
「決して偽名ではありませんよ」
キシリアの秘書官。出番は少ないがシャアの恋人となり、彼に「平凡で人間らしい幸せ」を教える。

ギレン・ザビ
「それが終われば私は隠居しよう」「私は権勢欲だけで動いているのではない」
ヒトラーの尻尾。しかし本作では彼は彼なりに清廉かつまじめな政治家であると描写されている。
銀河の流れを眺め、宇宙の不気味さと美しさを感じるのが好きという彼の様子は哲学者のようでさえある。
ジオン・ダイクンの革命からジオン公国建国に至るまでの20年の過去や、そこで感じた思いなども点描されている。
彼の思想は根本的に古く、その結果が史上類を見ない計画的虐殺であった。
小説版では結婚しているが、妻を「家政婦のような存在」「能力のない女」と見下し、秘書のセシリアやハモンを愛人として囲う。

◇サスロ・ザビ
ギレンのすぐ下の弟。故人。
文官としての資質を持ち、ギレンも彼に行政府の要職を任せるつもりだった。
だがダイクン派との抗争のさなかに暗殺されてしまったという。オリジンではキシリアによるものと匂わされていた。
過去の解説で軽く触れられるのみではあるが、何気に彼の存在が語られるのは本作が初である。

キシリア・ザビ
「参ったな……妙な士官とは思っていたのだが、キャスバル坊やか……」
なんとソロモンではなくグラナダが狙われる関係で、大会戦の司令官として采配を振るう。
……が、結果は見事な惨敗。映像版でもギレンの指揮を引き継いでから一気に戦況を悪化させたぐらいなのでむしろ普通か。
ただ、ニュータイプに関する理解は映像版よりもある感じだった。
それでも結局はシャアから見限られていたらしく、隙を見せたために「掌を返される」結果に。
ギレンはキシリアとシャアがクーデターを起こしたと知って「体制の変革そのものが起きている」と理解すると同時に「キシリアも埒外ではないな」と直感していたが、的中する形となった。
ちなみに「幼い頃のキャスバル坊やと遊んであげた」仲なのは変わらないが、その頃はあまりにかわいい金髪の子供達を見て「自分も金髪の男性と巡り会って、こんな子供を生みたい」とか考えていたらしい。ドン引きである。

ドズル・ザビ
「ニュータイプが存在するなどという戯言はきけん! パイロットなぞパイロット・スーツに小便を垂らすのが仕事よ!」
ソロモンの司令官というのは変わらないが、そのソロモンが戦場にならない。
また映像版ではグラナダからもア・バオア・クーからも援軍を回してもらえず*12孤立無援のまま戦っていた。
だがこっちでは逆にキシリアからの援軍要請を「グラナダ方面は囮」と見なして黙殺してしまう。
しかもレビルに「無視」されたという理由で意地になって追撃をかけるなど、戦略性や協調性は薄い。
幸運にも攻撃のタイミングとしてはほぼベストに近く、連邦軍の背後を突いて大きなダメージを与える事に成功している。
彼に唯一誤算があったとすれば、ドズルとぶつかったアムロ達が映像版よりさらに出来るようになっていた事だろう。
ちなみに本作のビグ・ザムによる撃墜スコアはジム1機。オーラを出したがどうってことなかったぜ!
なおルウム戦役ではザクに乗って自ら最前線に飛び出したという。この時ギレンはたしなめながらも、珍しく苦笑したとか。
一応、彼が出したオーラがきっかけでアムロが人の情念(気)を意識し捉えられるようになる。

ガルマ・ザビ
「さすが、首席でいた男だ。私に華をもたせてくれるというのか?」
シャアの親友。シャアが若くして少佐にまでなれたのは彼の引き立てがあったかららしい。
シャアからは「坊ちゃん」「ガルマがあんなのだからジオンは戦争に勝てない」などと散々に言われているが、友情は本物で、シャアも彼を謀殺しない。
ちなみにシャアにソーラ・レイの事を話していたらしい。

デギン・ソド・ザビ、ダルシア・バハロ
「あやつは、儂の汚点だ。好きにやってよい」
映像版とは逆にギレンとキシリアを死に追い込んだ老人達。しかもデギンはザビ家一党で唯一生き残った
デギンは理論家だったダイクンの理想を具現化させる役割を果たしてきたという。
ダルシアは「若手の秀才」「ニュータイプというなら彼のような人間」とされる。

マ・クベ
「ザクは、ロアム大尉とゼリュロス大尉だったな?」「二人の働きを有り難いと思うのだ、私は!」
キシリアに拾われたシャアを快く思っておらず、「男妾」「尻で成り上がった」などと陰湿な陰口を流したらしい。
もっとも、シャアもシャアで「キシリアの尻を追いかけているのがお似合いだ」などと言ってるのでお互い様。
テキサスの激戦ではテレビ版と逆にシャアに対して出撃を要請するが、なんと無視されてしまう。
かろうじてワッケインのマゼランを撃沈させるものの、自らのチベも大破。直後にハヤトのガンキャノンに沈められた。
壺だけでなく観音菩薩の像もコレクションしているらしい。
ギャン?何の事ですかね。

◇ランドルフ・ワイゲルマン中将
「両雄、という言い方はあいませんが、キシリア様は鋭利すぎます」
ギレンの腹心の将校。ア・バオア・クー攻防戦にて要塞に赴任し、全指揮を執った。
裏表のない若い将校だが、秀才。
ギレンは自分の増長を諫める意味も兼ねて彼を重用しており、曰く「諌言を得る友として信頼し、置いてある」とのこと。
ギレンがキシリアを殺すと決意したのも、上記の通り彼の発言がきっかけ*13
しかしそれによってランドルフもまた殺される事になってしまった。

ランバ・ラル
「総帥から直命を受けております」
ギレン直属突撃隊の指揮官。主に内地の統率と情報収集、監察業務を行う政治的な将校で、シャアの素性も調べ上げてギレンに密告していた。
「ギレンがシャアを殺せと命じるなら従うしかあるまい」と考えるなど、ギレンに絶対の忠誠心を抱く一方、恋人であるハモンについて内心で劣等感も抱いており、忠誠と嫌悪の狭間で葛藤する。
そのためハモンのある行動を見逃しており、それが巡り巡ってギレンとキシリアの死を招いた。
……とまあこんな感じで映像版からは180度違うキャラ付けがなされている。
アムロとの接触は本当にゼロ。戦闘シーンはギレンに唆されてフレンドリーファイアをかましたソーラ・レイ主任を銃殺した時のみ。
グフ?何の事ですかね。

◇クラウレ・ハモン
「とにかくこれをキシリア閣下に渡すようにと命じられたのです」
映像版ではラルの内縁の妻だったが、こっちでは元ジオン・ダイクンの愛人
後にギレンの愛人に移され、あげくランバ・ラルに「与えられた」というものすっごい経歴となっている。
しかしてその正体はダルシア首相のスパイ。
そんなこんなでギレンに憎悪があったらしく、ランバから漏れた話(ギレンはラルの前で口を滑らせてしまった)をダルシア首相に伝えた。
さらにその後、デギンとダルシアの画策によってキシリアのもとに派遣され、キシリアがア・バオア・クーから脱出してギレンを殺す直接的な原因となる。
ある意味、小説版終盤の展開を作り上げたキーパーソンと言える。ラルとは戦後結婚できたのだろうか。

◇セシリア・アイリーン
「いつもより……雄弁でいらっしゃいます。好きではありません」
ギレンの秘書で愛人。ギレンに対して破滅願望スレスレの競争心と忠誠心を抱いており、磨き抜いた才能と技量でギレンからも寵愛を受けるにいたっている。
ギレンからは「キシリアのいうニュータイプかも知れん」といわれていたが、最終盤に本当にニュータイプ的な覚醒を果たし、キシリアの襲来を察知してしまう。
彼女は「ギレンが破滅するときは自分が生きる目標を失うときだ」と思っていたが……。

ジオン・ズム・ダイクン、ジンバ・ラル
「宇宙の民よ。今こそ、己の眠れる力を宇宙という環境の中で目覚めさせよ。その時に、人は革新する!」
ジオン共和国建設の功労者達。
ダイクンについてギレンは「スターであった。二枚目であって情熱家。若い女性に一目惚れさせる」と晩年のシャアに似た評価を下している。
ダイクンのかつての演説も一部載せられており、宇宙移民者への希望、ダイクンの言う「新しい社会の人類」としてのニュータイプ論の一端もうかがい知れる。
この演説やテーゼを聞いた若き日のギレンは感激し、ダイクンの理想を資金面・政治面で実現しようとする父デギンを心から尊敬し、その運動に全身全霊を尽くした。
しかし、ギレンとデギンはやがて「ダイクンはアジテーターでしかなかった」と気づいてしまい、幻滅してしまう。ダイクンの死もその辺が遠因らしい。

ダイクン死後、残された遺児2人を預かったのがランバ・ラルの父ジンバだが、その人格はかなり偏執的だった。
幼い2人に復讐を説き続けたためセイラから嫌われており、シャアも復讐に虚しさを感じている。
この辺りは後にオリジンに吸収される。ちなみにジンバはア・バオア・クー戦の時期になっても地球で生きているらしい。



【メカニック】

人物もストーリーも違うと、当然メカも違ってくる。
ほとんどのモビルスーツに共通する変更点として、本作で登場するものは頭頂高16メートルくらい。
映像作品のものよりもひと回り小さい事になる。

+ 地球連邦軍
◇ガンダム
2番機3番機が登場。
アムロが最初に乗った2番機はテキサスコロニー内部でのエルメス&シャアザクとの戦いで失われ、以後はマグネットコーティングを施された3番機、コード「G3」に乗る。G3の色は深いグレー。
最終的に、ア・バオア・クーの乱戦の中で撃墜されてしまう。
ちなみにプロトタイプガンダム(1番機)は出ません。
当初はガンダムタイプとキャノンタイプを3機ずつペガサスに納入するはずだったので、サイド7襲撃の際に破壊されたのかも。
核爆発が直撃し、山を吹き飛ばすほどの爆風を至近距離で受け、2メートル吹っ飛んで家を押し潰しても無傷
こんな機体を破壊できるMSの戦闘とは一体……。

ガンキャノン
全部で3機登場。
小説版ではガンタンクが出てこないため、カイもハヤトも最初からガンキャノンに乗る。
アニメと違いガンダムと同じシールドを持っているのが特徴。
装甲も厚く生存性が高そうに見えるので、アムロもこちらに乗りたがった。
当初は残った2機のキャノンにリュウ、カイ、ハヤトがローテーションで乗っていたが、テキサスコロニーでリュウもろとも撃墜され1機喪失。
その後もう1機補充され、「C108」「C109」コードを与えられる。
ハヤトの109は撃墜されたが、カイの108は戦後まで生き延びた。

ペガサス/ペガサスジュニア
最初の母艦だったペガサスはテキサスコロニーでザンジバルと相討ち、代わりに2番艦「ペガサスジュニア」が配属される。
ちなみに「ホワイトベース・タイプ」といわれているのだが、ネームシップのはずのホワイトベースは登場しない。
地上には一度も降りる事なく終わる。アースノイドとの確執なんてなかった。

ジム
連邦の主力量産機。
ペガサスジュニアにもサーカス・マグガバンの324とキリア・マハの325が配備され、アムロ達とチームを組んだ。
どうもガンダムとは平行して開発されていたらしく、サイド7を出たペガサスがルナツーに来た時にはすでに実戦配備されていた。
よく「小説版のジムはガンダムよりも強い正当な量産機!」という情報が出ているが、実際はそうでもない。
「カメラが単眼だから、近接戦ではジムのほうが照準をつけやすい」「ビームライフルを運用できるので攻撃力はガンダムと互角」程度。
それ以上に特にメリットはなく、推進力はガンダムが上。
それ以外の基本性能もガンダムやガンキャノンに及ばず、むしろブライトから「ひどい出来」呼ばわりされている。
しかしやはり腕次第で、キリアのジムはアムロ達とともに多数のMSを撃破し「天敵」のビグ・ザムにも痛撃を与えた。

ミスター・ボール
上の主砲はハイパーバズーカで、マニピュレーターは完全なモビルスーツ向きなのでビームライフルを運用できる。
その上やろうと思えば殴りつける事もできる、とんだ魔改造ボール。
でもやっぱりボールはボール。活躍は本当にない。ちなみに名前は「ミスター」付きで公式

◇コスモファイター「トマホーク」
オリジナルの宇宙戦闘機。トマホークは斧だが「槍のような形」らしい。
「ミノフスキー粒子の時代にいまさら戦闘機か」とか言われるシーンもあるが、艦隊支援には戦闘機の方がMSよりも有力。
特に直進スピードに関してはMSよりずっと上で、機動力に関するMSのアドバンテージは小回りが利く事だけらしい。

◇ミデア、フライ・マンタ
映像版では地上用だが、こっちだと宇宙用。
でもマチルダさんは途中からコロンブスに乗ってくるので影は薄い。そもそもマチルダさんの影自体も薄い



+ ジオン公国軍
ザク
ジオンの量産MS。白褐色という以外はあまり変わらない。
小説版に出てくるジオンのモビルスーツはザクとリック・ドムしかいないので、かなり活躍する。
アムロも油断した隙に苦戦する事が多く、例え名無しパイロットであっても「角付き」は割と手強い。
シャアのザクはテキサスコロニーまで続投してガンダムと戦ったが、機体性能に格差がありすぎて防戦一方になってしまった。
ちなみにシャア曰く「ビームサーベルに対してヒートホークはオモチャ同然」らしい*14
ザクに限った話ではないが、指の先には低出力ながらレーザー・バーナーが仕込まれている。
劇中では溶接されたシャッターを焼き切ったり、格闘戦でガンダムの顔面を焼いたりした。

リック・ドム
ザクの後継機。「スカートつき」と呼ばれる。
大出力バーニアによるスピードはザクの2倍を誇り、保有するビームバズーカの威力はムサイの主砲並み
さらにビームサーベルも実用化している上、ビーム攻撃には無意味とはいえ装甲の厚さも優秀。
しかし完成して間もないため数は少なく、ニュータイプ部隊に優先的に回された。
映像版のやられっぷりからは考えられないほどの高性能機で、アムロも初見では驚愕するほどだった。
不本意とはいえ、アムロを討ち取ったMS。

エルメス
2機登場。3番機以降も作ろうとはしていたようだが間に合わなかった。
中巻までに全滅してしまうが、サイコミュの干渉はアムロやシャアを成長させていった。

ビグ・ザム
映像版とは逆にドズル主導のもとソロモンで研究されていた。
しかし映像版と違ってメガ粒子砲の数が少なく(26門→16門)、Iフィールドもないのでビームライフルで簡単に穴が空く。
特攻ですらないジムの攻撃で足を失うなど、本当にいいとこなしのまま簡単に撃墜されて終わった。

ブラウ・ブロ
シャリア最後の搭乗機で『ゼロ・サイコミュ』を搭載したモビルアーマー。
開発はエルメスと同時期ながらテストもろくにされておらず、搭載されたサイコミュもプロトタイプであるらしい。
脳波を有線式サイコミュ端末で直接伝える事ができ、ワイヤーの長さは1キロとも2キロとも書いてある。
旧式でありながら、もうエルメスとジオングの役割を足して2倍したような活躍を見せるも、あえなく撃墜。
だがその後もシャリアとブラウ・ブロの遺志はストーリーそのものを終局に導いた。
テレビ版同様の脱出機能もあったのだが、コクピットを狙撃してくるアムロの前では意味をなさなかった。

ザンジバル
ネームシップのザンジバルはテキサスで撃沈されるが、2番艦マダガスカルは生き残ったらしい。
ちなみにキシリアの母船のズワメルは最初「ザンジバル級」として出てくるが、なぜか途中からグワジン級に変わってしまった。

ムサイ
防御能力には問題はあるが、エンジンが離れているためフットワークは軽いと評判らしい。

◇ガウ宇宙空母、ドップ宇宙戦闘機
なんと宇宙用機。
ドップのあのすさまじいデザインは映像版では半ばネタ扱いされたが、宇宙ではむしろ小回りの利く優秀な戦闘機扱い。

◇ソーラ・レイ
ギレンの陰謀に利用されて、すさまじく盛大なフレンドリーファイアをかました、戦勝の功労者にして最大の戦犯兵器。
レーザーすなわち光なのでサイド3本国からア・バオア・クーまで一瞬で届き、直径6キロの口径を掃射する事で広い範囲を薙ぎ払える。
2射目でア・バオア・クーの下半分を消し飛ばしてしまった。



【余談】

ストーリーも設定も全然違うはずなのだが、なぜか角川スニーカー文庫版における各巻冒頭の挿絵はテレビ版の設定をアレンジしたのが描いてあり、完全な挿絵詐偽となっている。
巻頭挿絵に出てくるガンタンクグフドムゴッグズゴッグビグロギャンゲルググジオング登場しません。
登場人物紹介もかなりいい加減で、映像版の設定と小説本文の設定が混ざってる(ペガサス呼びとホワイトベース呼びが混ざっている)。
登場人物のほとんども映像版より大人びているのに、挿絵もことごとくテレビ版の少年風な姿なので違和感が半端ない。

一部誤字があり、アムロ達が「チベ二隻、サラミス四隻、ザク三機を撃破した」などと書いてあるシーンもある。「C108」なども表記の仕方がけっこう揺れている。

ジオン・ダイクンやデギン・ギレン親子の革命期のエピソードやルウム戦役の詳細(コロニー落とし作業を兼ねた決戦がザクの運用に不利であった)、レビルの「ジオンに兵なし」の演説など、映像作品では長らく描かれなかった設定も多い。
また「アジテーターに過ぎない」というジオン・ダイクンや「偏執狂」ジンバ・ラルの設定など、THE ORIGINに与えた影響も少なくない。

アニメが打ち切りにならず4クールのままだった場合の構想を書いた「トミノメモ」においてもクスコ・アルの名があるが、デギン公王の秘書であり連邦に投降するデギンに付き従ってホワイトベースに乗り込み、そこでブライトとちょっとしたロマンスがあるものの、連邦による木星船団への攻撃を知ってジオンに帰還しようとしたところでブライトに射殺される……という小説版とは全く異なる役回りとなっている。

シャアの設定も、いくつかはフル・フロンタルにオマージュされた部分がある*15。「ファッションに過ぎない」として仮面を外すくだりなどは本作にも同様のセリフがあるのは(発言の意味合いはともかく)上述の通りである。
また、UCの原作者である福井晴敏氏の『ガンダム』とのファーストコンタクトは本作であったと語っており、フロンタルの他、アンジェロ・ザウパーマリーダ・クルスにも本作の要素*16が取り入れられたのはこれも大きいのだろう。

アムロの母であるカマリア・レイの名前や、ギレンのもう一人の弟サスロ・ザビ、セシリア・アイリーンの存在などが設定されたのも本作から。カマリアのヤバすぎる設定はさすがに本作のみだが……
もちろん劇場版におけるガンキャノンのコードナンバーも本作由来のものである。

SF考証も随所でなされており、特にビーム兵器はかすめただけでも目に見えない粒子ビームが突き刺さり、装甲やシールドを融解せしめる強力な兵器となっている。
しかし強烈な光を発するので常に移動しながら撃たないと相手の反撃は必至な上、エンジンに直撃させないと爆発しない=手足や頭を撃っても決定打にはなりにくいなどのデメリットもある。

連邦政府はテレビ版以上に腐敗と堕落の塊とされており、ギレンの次に叩くべき、あるいは宇宙世紀という流れの中で切り捨てるべき組織とされている。とはいえ、作中では地上の様子がほとんど描かれないためピンと来ない。
一方、連邦軍は人員のほとんどが、コロニー潰しで殺された人々の遺族や生き残りで構成されているため、ジオンに対する猛烈な戦意に満ちているとされる。

どうも科学技術は映像版よりも進歩しているらしく、「産毛まである義手(ただし硬さは金属そのまま)」や「マリリン・モンローそっくりのロボット」なんてのもいる。
その一方でルナツーには「インベーダー・ゲーム」が置いてあったり。タイトーすげえ

『ギレンの野望』のネオ・ジオン軍シナリオ、『GジェネDS』のifルート、『スパロボA』の「あちらの世界」におけるアムロの末路などゲーム作品のシナリオにも影響を与えている。
中には逆シャアのアムロに対して「パツキンさんとよろしくやった」とおちょくって困惑させるというのものもあるけど(アムロ曰く「一年戦争の時の俺に関するトンデモ本」とのこと)

ギャグ漫画『トニーたけざきのガンダム漫画』においても、オチで本作のネタが使われた事がある。

実は小説版『機動戦士ガンダム』は2種類存在する。もう片方は朝日ソノラマから発売され、著者は中根真明氏。
こちらも全3巻だが、内容はテレビ版とほぼ同じである。





「目の前の項目なんて飾りなんだ。鍵盤(キーボード)がなけりゃあ、追記も修正もできねえからついてんだ。
 頼りになるのは、眼だ! 眼え! わかるか? 眼ェ!
 手前ら、どいつもこいつも節穴だけの穴ぼこつけやがって、よくもWiki籠もりになろうってもんだ」


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最終更新:2024年01月01日 01:59

*1 ジャミトフ・ハイマンの真意など。

*2 例えばCCAならギュネイ・ガスじゃなくてグラーブ・ガスだったり、キャラ名が異なるのとは違うがチェーン・アギの代わりに『Ζ』のベルトーチカがアムロの彼女として登場したり…など。

*3 テレビ版ではサイド6で15歳と発言。

*4 実はドレン中尉やムサイ艦長の赤鼻(ジャブロー潜入部隊の隊長ではない)も、同じ理由でシャアを嫌っている。シャアも察していて、「俺は信頼されていない」とぼやく。

*5 ちなみにスレンダーは最初から影も形もない。

*6 アサクラ大佐は登場しない。

*7 キシリアがランドルフ達には教えていなかったというのもある。もし相談していたならランドルフなり幕僚の誰かなりがギレンに確認するはずだし、そうなったらそれこそ問答無用で撃たれただろう。

*8 オリジンでのア・バオア・クー攻防戦に似た選択。

*9 ちなみに何の因果なのかチャップマンは「額」を「一発の銃弾で」撃ち抜かれている。

*10 ララアでさえ1日で4隻の撃沈で、それが「空前の壮挙」と扱われた。

*11 同じ小説版由来のクスコ・アルはちゃんと原作ありのレンタルキャラクター扱いだった。

*12 本人も突っぱねていたから半分自業自得。

*13 それ以前は「妹」以上の感覚はなかったらしい。

*14 実際、サーベルを受け止めるもヒートホークごと叩き斬られたザクもいる。

*15 中身は正反対だが。

*16 「過去に性的暴行を受けた事があり、それを主人公のニュータイプ能力によって見抜かれる」という部分がクスコ・アルを思わせる。