アナーヒター(神名)

登録日:2017/10/31 Tue 01:23:35
更新日:2017/11/07 Tue 19:48:16
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■アナーヒター


『アナーヒター』
は、古代ペルシャで信仰された水源の女神。
日本では単に『アナヒタ』と表記される場合もある。
名は『清浄』を意味すると伝えられる。
よく知られた異名はナーキッド。

乾いた土地や砂漠の多かった古代オリエントに共通する母なる水の女神であり、隣国インドで信仰され、後に仏教にも取り入れられた河川の女神サラスヴァティ=弁才天とは同一の起源の女神と見なされている。

また、アナーヒターは古代オリエントの最高位の女神の系譜として他地域にも名前が伝わり、バビロニアのイシュタル、古代ローマで興ったヘレニズムではギリシャのアフロディーテとも習合して同一視された。

ギリシャ神話に迎え入れられる以前のキュベレアルテミス信仰のあったリュディアでは、それら大地母神とも同一視されている。

【概要】

世界の中心に聳え立つと云う、アルブルズ山より流れ出でる神秘の川の化身にして守護者。
この川は生命の源たる凡る水源の源泉であると考えられ、世界の凡ての川、水路、入江、泉はこの川に通じ、
アナーヒターはその守護者である、として信仰された。

水は生き物の生命活動に於いて最も欠かさざる要素であることから、アナーヒターは健康、富、豊穣、子宝、安産をも司る女神となった。

……特に、水源の限られる砂漠の地域では、その重要さは恵まれた水源を持つ日本辺りには想像もつかないものであったと考えられる。
生命の源たる、この大女神はハラフワティー・アルドウィー・スーラー(水を持つ者。湿潤にして力強き者)と呼ばれた。
ハラフワティーはインド神話のサラスヴァティと同じ語であると考えられる。

これらの事柄からも解るようにアナーヒターの神格は極めて高く、古代ペルシャでは民に勝利を約束する契約の神ミトラ、天空の理を支配する太陽神アフラ・マズダと並び、数ある神々の内でも最高位にあった。

後に、古代ペルシャ地域に存在していた大小様々な信仰は、同地に誕生した宗教改革者ザラスシュトラ(ゾロアスター)の掲げたゾロアスター教の法の下に集約され、
万物の生みの親である至高神アフラ・マズダを頂点とした神系譜へと再編されることになる。
こうして、アナーヒターは“最高位の女神”としての地位を失い、下級神群(ヤザタ)と呼ばれる“その他大勢”の神々の一柱として組み込まれることになってしまった。

……しかし、霊的な感応により真理を得た開祖ザラスシュトラの峻厳なる信仰体系は凡人の計れる様な代物ではなくザラスシュトラの教えは彼が死ぬと共に崩れてしまい、
信徒達が継いだゾロアスター教もまた、ザラスシュトラの信仰体系を基本としつつも、旧来からの古代ペルシャの信仰と融合し、より解りやすい形で妥協されるようになった。
隣国インドで誕生した仏教が先鋭的な思想によりバラモンを駆逐しながらも、ストイック過ぎるが故に、
後には民の求める所に妥協した部分を持ち、仏教の教えも取り入れてアレンジされたバラモンであるヒンドゥーに逆に駆逐されたのと似たような理由である。

そうして、神々の内でも特に人気の高かったミトラとアナーヒターは最高位の神として復権を果たし、アケメネス朝ペルシャでは、アフラ・マズダ、ミトラ、アナーヒターが旧来の古代ペルシャでの信仰の威勢と同様に三大主神として祀られた。

アナーヒターをゾロアスター教の女神と呼ぶ場合には、この頃の姿を語られることが多い。


【姿】

高貴で美しい、凛とした婦人として伝えられる。
色白の力強い腕を持ち、身には百の星を散りばめた黄金の冠、黄金のマント、黄金の首飾りで身を飾っている。

後に、イシュタルと習合した影響で性格、容貌、装束、祭儀がバビロニア的になったと伝えられる(イケイケ(死語)になったのだろうか……?)。

ヘレニズムでは、同じくイシュタル系に組み込まれる美の女神アフロディーテと習合している(ビッチになったのだろうか……?)。

恐らくは古代シュメールに起源を持ち、小アジアからギリシャまでの古代オリエントの各地域や、ユダヤ系の一神教にも伝わった七曜神(七曜天使)のペルシャ版では金星の女神となっている。
金星の女神は、習合相手であるイシュタル、アフロディーテ(ビーナス)と同様である。
七曜の神は古代中国を経由して『宿曜経』として日本にも伝わっている。

ペルシャ版の七曜神は日曜=太陽がミトラ、月曜=月がマーフ、火曜=火星がウルスラグナ、水曜=水星がティル、木曜=木星がアフラ・マズダ、金曜=金星がアナーヒター、土曜=土星がケーワンである。





追記修正は『水脈』を噴き出させてからお願い致します。

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