SCP-343

登録日:2017/10/25 Wed 14:02:32
更新日:2024/03/03 Sun 15:58:12
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汝、"神"を試すなかれ。


SCP-343は、シェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクト (SCiP) のひとつである。
オブジェクトクラスは「Safe」。
項目名は「“God”(“神”)」。


概要

先に言っておくがこの記事、ツッコミどころの塊である。
なので、本文を引用しつつツッコミを入れながら進行していくことにしよう。
まず、コイツがなんなのか。
これは非常に簡潔で、

SCP-343は見た所人種不明の全知全能のように見える男性です。SCP-343はプラハの街道を歩いているところを発見され、街道から消えて屋上に現れた所を目撃された後に引き留められました。SCP-343は収容することが不可能ですが、彼の部屋に喜んで留まってくれています。

というもの。
全知全能ってどっから出た情報だ。加えて、オブジェクトクラスがSafeにも関わらず「収容することは不可能」と断言してしまっている。それってKeterって言わないかな?
まあ、アノマリーの中には収容不能だがSafeという例もちょいちょいあるので、これは珍しくない。

が、意志ある人型実体ならば「本質的に何をするか予測不能」という意味で、基本的にEuclidから下げられることはない。
そもそもこの内容からして、SCP-343が自らの意志で収容状態にある、というだけの話であり、財団が手を打って収容しているわけではない。それならKeterが妥当である。

ところでこの説明セクション、一つおかしな部分がある。というか、ない。
他のオブジェクトについては必ずある(例外もいるが)、「このオブジェクトはどのように異常な特性を持っているのか」という説明がないのだ。
このセクションでSCP-343について言及しているのは外見のみで、しかも「全知全能のように見える」とおよそ財団らしからぬ表現が挟まれている。そのあとに続くのは収容までの経緯と現在の経過のみだが、

  • 財団は単に引き留めただけ
  • 収容不可能と判明しているのに手を打った様子がない

と、SCP財団にはあり得ないガバガバっぷりである。
何しろ特別収容プロトコルからして、

SCP-343はサイト17の最小限の警備がつけられた6.1m平方(20ft平方)の部屋に住んでいます。要求されたものはどんなものでも支給せねばならず、毎日最低1人の職員が訪問しなければなりません。更なるセキュリティーや安全予防措置を追加する試みは、SCP-343の性質のため不可能であり不必要です。

この有様。
というか、他のオブジェクトにも収容不可能(Ain・Apollyon相当)のものはあるが、それにしたところで情報の隠蔽や打開策の検討など、手遅れになるまで手を打ち続けるのが財団である。
ところがコイツの場合、

  • 要求されたらただちに支給せよ
  • 対策の追加は出来ないから、するな

と投げっぱなし。全知全能と言いつつ他者に頼るって明らかにおかs
……アニヲタ諸兄はコイツがどのようにヤバいのか勘付いたと思うが、結論はもう少し後にしよう。


補遺

この報告書は、大半が補遺で成り立っている。
まずはその一つ目、担当研究員と思しきベック博士の覚書。

スタッフから口語的に'神'とあだ名されたSCP-343は、観測する者によって顔の造形に違いがあるものの、年上の男性であるように見える。彼と私の最初の会話で、彼は率直に自分が世界の創造者であると主張した。私が彼にそれを証明するよう頼むと、彼は笑いながら部屋の壁を歩いて通り抜けて、数秒後にハンバーガー片手に帰って来た。

さらっと壁抜け+時間短縮、あるいは物質創造を行っている。
この部屋、どうやら財団の持つオーバーテクノロジーを用いた防御が何一つ存在しない、本当に普通の部屋らしい。
これは収容とは言わない、野放しである。

私が2度目に訪問した時、以前は裸同然だった部屋は、轟々と燃え盛る暖炉まで完備した、古式英国風の高級家具で飾られていた。部屋は外部から見るより何倍も大きいように見えた。SCP-343は人々と話すことを大いに楽しみ、全ての話題に対しての知識を有しているようだった。

知識の豊富さがうかがえるセンテンスだが、真相を知れば「?」と首をかしげることになるだろう。
単独で模様替えまでやってのけてるし。

SCP-343のもとを訪れることはここのスタッフの日課になり、全てのスタッフが訪問の後多大なる幸福感を覚えると報告している。部屋を監視する役目の警備員が自らの職務を放棄した―理由を聞かれると肩をすくめるか'あんたも彼が来客を好んでるのを知ってるだろ'と答えた―ので、レベル3クリアランス以下の職員で封鎖する試みは失敗に終わった。

担当スタッフに精神影響が出始めているのがわかる。
SCP-343はどうやら、他人とのコミュニケーションを求めているらしい。

今のところSCP-343は無害であるので、全てのスタッフに接触の許可が与えられた。これからはどんな時でもスタッフが会いたいと思った時間に彼と会うことができる。
現在のところ、SCP-343との更なる質疑が進行中で、私はこのレポートを公開したままにしておくことにする。

ロクな実験・検証もしないまま「無害」認定。今のところという前置きがあっても、財団がオブジェクトに対して取る態度では絶対にない。
さすがにベック博士もおかしいと思ったのか、このレポートを公開状態で固定したようだ。


そして、クリアランス4が要求される補遺2。

文章343-1aについて、入手できるもしくは表面上存在する関連記録は存在せず、同様にBeck博士やSCP-343と共にこれまで働いた████████████ ███████████博士の全ての記録も消失し、現在は一切存在していないものと思われる。文章について質問された全ての職員は文章#343-1aについて知らないと答え、████████████ ███████████博士なる人物とは一度も会ったことは無いと主張した。

こいつに関わるある記録とある博士が行方知れずになっている。
この文章343-1aというのがコレ。

"[データ削除済]現在、―――や彼らの目的について、SCP-343の'訪問者'は質問されている―――他のSCPに関する質問は今後―――████████████ ███████████博士の指示―――"

穴開きだが、SCP-343は会話の中から、ある人物やその仲間の目的について聞き出そうとしていたらしい。
これらの事案に関しては仮称X博士の指示を仰ぐことになっていたが、なぜかその存在や記録が、職員の記憶から完全に消えていた。
こんな異常事態が発覚したのでは当然財団も黙ってはいない、はずなのだが、

関連する事柄で、上級幹部であるBeck博士は"やる気のないセクションの士気を高めるために"より高頻度の職員の配置転換を要求した。これは非常に奇妙な要求で、更なる調査の対象とされた。このセクションのより良い健康、より良い職務満足度と低い死亡件数という他の地域にはない特性により、要求は承諾されることになった。この対象に対する調査はO5-█の命令によって現在凍結されている。

ベック博士の提言により、SCP-343のもとへさらに訪問者を案内することが決定。
加えてこの御仁への調査はO5の命令によって凍結されている。

そして、仮称X博士が使用していたネットワーク・ドライブの定期点検の際に回収された文書がもう一つある。
文章343-1b。

―――明らかに私の指示が消滅している。B―――博士、私はもうこれ以上は容認できない。―――私の全ての記録と要求は、上層部から全く注意されなくなった。私は明日SCP-343と対面する。署名 ████████████ ███████████博士



結論

もうとっくに気づいたと思うが、SCP-343の正体は強力極まる現実改変者である。
そのヒューム値は、ずばり86。例の「ちいさな魔女」よりもはるかに上である。少なく見積もってジェームズフランクリンと同レベルのとんでもねー御仁なのだ。

仮称X博士は、どうやら「神」の現実改変によって存在を抹消されたらしい。いまや断片的な記録がかろうじて残っているだけ。(フランクリンもそうだったが、財団世界の現実改変者は電子的な記録にまでは完全に影響できないのだろうか?)。
財団らしからぬ野放しっぷりも、財団に来てからの「神」の行動を見れば何となく察しが付く。

つまり、「神」は何かしらの目的のために情報を求め、それについて一番詳しいと見たSCP財団にオブジェクトとして入り込んだのだ。だが、ただ収容されているのではスタッフともろくに接触できず、会話の機会など与えられない。
そこで、収容直前から現実改変で自身を無害に思わせ、Safeクラスに位置づけさせた上で例のスッカスカなプロトコルを制定させたのだ。

要は日本支部のSafeクラスオブジェクトを人間にしたようなものである。無害だから安心、何の心配もない。
周辺にそう思わせつづけ、今でも情報を集めているのだ。恐らくは財団の知る何者かについての。
仮称X博士はその危険性に気づいたようだが、「神」によって消されてしまったのだろう。

「害意がないし騒ぎも起こしてないからSafeでもいいんじゃね?」と思うかもしれないが、オブジェクトクラスは収容の難易度を現す指標である。
コイツの場合、財団が全く制御できていない上に出るも入るも自由自在=全く収容できていないし出来る当てもない、よってKeterが適当である。
が、その判断を下すべき財団が改変に引っかかって放り投げてしまっているのだから始末に負えない。
加えて補遺2のこの部分。

同様にBeck博士やSCP-343と共にこれまで働いた████████████ ███████████博士の全ての記録も消失し、

財団の業務にまで入り込まれてんじゃねーか!?

文書や報告書すらも改竄し、財団から情報を聞き出している「神」が目的を果たしたら、その時彼はどうするのだろうか?



ブライト博士の楽観的な日々

ここからはtale、すなわち二次創作の話。
タイトル通り主人公はあのブライト博士。ここでは禁止リストからは想像も付かない超真面目な姿を見せてくれる。

このtaleでは、ある新任研究者がこの『神』を使ったある実験を提案する。
SCP-682、みなさんご存知不死身の爬虫類とのクロステスト。

ブライト博士はその研究員の無礼な態度もあって実験には乗り気でなかったが、渋々承諾。
SCP-343にその実験に参加させるため説得に当たる。

ブライト博士には、『神』が常にタバコを持ち、もう片方にマティーニを持っているアメリカのコメディアン、ジョージ・バーンズの姿に見えるらしい。
しかし博士は安心を与えるためのあまりに完璧すぎる姿も、343が起こす幸福感も満足感も拒絶。
SCP-963から解放してやろうかという神の誘惑も拒否。

彼はSCPで、ただの生き物で、化け物、そして"神"なのだと。

結局、神はある危険なSCPの終了実験に協力して欲しいというブライト博士の『お願い』を聞き入れる。


そして実験当日。
343のいる実験室のエアロックが解放され、隣の部屋からクソトカゲが突進してきた。
そして682と343がどうなったかというと……

682は343に全く触れることなく真っ直ぐ通り抜けた。
そして343は、682に全く気付かず、期待する様子で開いたエアロックのドアを見つめていた。

クソトカゲが2枚目のロックをぶち破ろうとする横で、343は部屋の中に何もいないと話した。

この"神"に"不死身の爬虫類"をどうこうする力はなかった。ブライト博士の予想どおりに。

当の"神"は実験の相手が682だと知って激怒。
「彼は私の手に負えん。自分でなんとかしたまえ」

そう言うと、大股に歩いて壁をすり抜けて行った。
なお、実験を計画した研究員はブライト博士の事前の警告を忘れて博士のことを番号(963)で呼んだ為直後に足に3発発砲された。


このTaleでは全知全能の『神』の限界、そしてこれほどの現実改変能力者ですら対応をぶん投げるクソトガゲのインチキぷりもだが、
なにより不死身のクソトカゲすら玩具にするあのブライト博士が、SCP-343に警戒心と敵意を剥き出しにする姿が見られる。


この「神」は、何を求めて財団にいるのだろうか?





追記・修正は神意がわかる人にお願いします。

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最終更新:2024年03月03日 15:58