スラスト(マイクロン伝説)

登録日:2017/10/07(土) 23:41:00
更新日:2023/08/14 Mon 08:06:31
所要時間:約 8 分で読めます






傲慢さと野心こそが勝利への近道だ!




スラストとは、『超ロボット生命体 トランスフォーマー マイクロン伝説』に登場するデストロン兵士である。日本名は当初、スカイワープになる予定だった。

CV:遊佐浩二(英語版:コリン・マードック)

◆概要

ジェット戦闘機(垂直離着陸機)に変形する航空兵士。機体の意匠は大まかには「双発になったF-35」といった所。
玩具の肩書は“軍師”。劇中では“冷徹軍師”と称されており、その知略で数々の戦功を立ててきたという。


微妙に甲高くネットリした喋り方をするため、ファンからは「公家っぽい」とも「カマっぽい」とも称される。
ちなみに音響監督からの注文は「雅なオカマ」だったそうな。遊佐さん完璧に応えてやがる…!


また、彼を語るにあたって外せないのは、何と言っても特徴的な頭部のフォルム。
とんがり頭というか烏帽子というか、一度見たら忘れられない形をしている。
モチーフになったのはG1のスラストなので、尖り頭はその名残であろう。


その特徴的な頭の形と、いやらしく飛び回りながら攻め立てる鬱陶しさから、付いたあだ名がイカトンボ
元は「カトンボ!」というセリフに対して声優から飛び出たアドリブだったのだが、そのあまりにも座りの良い語感と絶妙な表現センスから、以降は台本段階からネタにされるようになった。
TFファンの間でも「『マイ伝』のスラスト」と言うより「イカトンボ」と言った方が通じやすいくらいに定着した。

※ちなみに本人はこの呼び方を嫌っている。


こう書くと単なるネタキャラのようだが、“軍師”の肩書は伊達ではなく、その知略は本物。
偽発信機でサイバトロンを狭隘な地形におびき寄せつつ、自身とエアミリタリーマイクロン(戦闘機や爆撃機に変形する航空部隊)による空中からの襲撃で分断する、サイバトロンが援軍を派遣することを予想して更に対策を講じておく等、実戦的な作戦を次々立案した。
それまでのデストロン軍が主にマイクロンをエボリューションのための装置として使用していた中で、いち早く航空部隊を編成し戦力として投入した点は特筆すべきであろう。


“剛腕提督”ことショックウェーブを地球に呼び寄せたのもこいつ。
その高い戦闘力をかねてより評価していたスラストの目論見は当たり、劣勢気味だった戦況を逆転させる結果となった。


スラスト自身の戦闘力も決して低くはなく、周囲の景色に体表を溶け込ませる透明化能力を巧みに活用して戦況を攪乱する。
ロボットモード時の背面シールドを高速回転させることで突風を巻き起こすことも可能。ジェットモードでは機動力に加え、機体側面のミサイルポッドからはビームを発射できる。
「ミサイルではないのか」、と突っ込みたくなるが、『マイクロン伝説』では、アメリカ側の事情で「ミサイルを飛ばさず、光線に処理して痛みを感じさせない」と制作転換があったことを念頭に置いておきたい。
サイバトロンは航空戦力に乏しいため、サンドストームやスタースクリームに続く新たな航空兵士というだけでも厄介な上に、力押しに留まらず巧みに策を講じてくるスラストの存在は、中盤の戦況に大きな影響を与えた。


……なのだが、サイバトロン副司令官ジェットファイヤーの参戦や、第三の武器アストロブラスターの覚醒といった不確定因子のために、今一つ作戦通りにいかないことも多い。
登場当初はよく星占いで吉兆をはかったりしていたが、このとき彼が太鼓判を押した作戦はことごとく失敗している。


また、忘れてはならないのが“冷徹軍師”と呼ばれる所以でもある、その非情さ。
目的のためならば手段は選ばず、手段の為ならば犠牲は厭わない性分で、アストロブラスター奪取のためにスタースクリームを捨て石にした作戦は良くも悪くもその後の趨勢において大きな転機となった。
弁舌巧みにスタースクリームの葛藤や憎悪に付け込む等、他者を自分の目的のために利用できる道具としか見ていない節がある。
他のデストロンに対しても上から目線だったり嫌味っぽい言い方をするため、同僚内での評判は芳しくない。


無論、情に流されずシビアに戦況を見通す能力は軍司にとって必要な資質であるし、その冷静かつ他人を容易に信じない性格が幸いしてダブルフェイスの暗躍を一度は阻止した功績もある。

しかしながら、生来のプライドの高さ故か非を認めたがらない気質なのも事実であり、その性格が結果的に彼の行動と運命を決定づけたとも言える。


◆劇中での活躍


第25話で初登場。
初戦から上述の偽発信機作戦を立案し、サイバトロンを大いに苦しめた。

その後もサイバトロン唯一の航空戦力であるジェットファイヤーを危険視し早々に潰そうとしたり、ショックウェーブを招集して自軍の戦力増強を図る等、デストロン軍の作戦司令として辣腕を振るった。


一方で、件のイカトンボ呼ばわりに始まり、子どもたちとマイクロンに一矢報いられてマジギレしたり、ランページに撃墜されて三角巾を巻いたりと随所で小ネタを披露してくれていた。


だが第37話でダブルフェイスと接触し、その甘言に乗せられたことから、内密にメガトロンを見限り、星帝ユニクロンに仕えるべく暗躍を始める。
「大いなる力のもとで、己の智謀を存分に奮いたい」という、軍師としては真っ当とも言える夢のために……

スタースクリームを口車に乗せて三種の武器をすべて揃えさせ、ダブルフェイスから与えられた知識と技術を基に惑星破壊兵器ヒュドラキャノンを造成、サイバトロン抹殺をメガトロンに提案した。


セイバートロン星に帰還してからは小型ヒュドラキャノンの造成を口実にメガトロンから三種の武器を奪取しようと企むも、ホットロッドの決死の進言により、薄々スラストに不信感を抱いていたメガトロンが遂に疑念を表明。
二種までは入手に成功したもののスターセイバーを奪えないまま撤退し、ダブルフェイスから叱責される事態となった。


ユニクロン覚醒後はその巨体に成す術もない連合軍を嘲笑っていたが、実は三種の武器が手に入った時点で(それらがユニクロン復活のトリガーだったため)既にスラストは用無しと見做されており、スラスト自身も内心ではそのことに気付いていたようである。
それを認められない彼は身を守る物もないユニクロン体表に取り残され、連合軍の攻撃に晒された上、変形して撤退することもままならない有様だった。
(詳しくは触れられていないが、恐らくユニクロン自身の発する引力か磁場の関係で飛行できなかったと思われる*1)


ちなみにこの時も

ランページ「ホットロッド、見ろ、イカトンボだ! 奴だけでも!」
ホットロッド「優先順位変更だ! 全機一点集中、狙いは――イカトンボ!!」

と散々弄られていた。

結構哀れなシーンなのに腹筋を攻撃してくるスタッフたちである。


その後、故郷であるセイバートロン星がユニクロンに捕食され始めたのを見て錯乱し立ち竦んでいたところへ、バーニングメガトロンが着陸。
「スタースクリームの無念と儂の怒りの代償を支払ってもらう」と言うメガトロンに侮蔑の言葉を吐き、遂にその心情をぶつけた。


「何がトランスフォーマーの頂点に立つだ、何が宇宙征服だ!」

「何も出来ぬまま、ただただ永き間戦い続け……愚かな!」

「私はね、もう、飽き飽きしたのですよ――あなたのもとで見果てぬ夢を見ることに


そして先ほどまで詰っていたユニクロンを再び賛辞し始め、「言いたいことはそれだけか?」と静かに返すメガトロンへ更なる罵声を浴びせた所で、銃口を避けるべく飛び上がるも変形途中だったユニクロンの外装にぶつかり落下。
剥き出しのワイヤーケーブルに脚を取られた所を、シャッターの如く迫る接合部によって挟み込まれてしまう。


痛みと迫り来る死を前に絶叫しながら掌を返して命乞いをするスラスト。
それに対しメガトロンは「儂に撃たれるか」「それが嫌なら自力で脱出し儂の後を追ってくるがいい」と宣告して背を向ける。


スラストは悲鳴を上げながら嘆願し続けた。

逃げようともがく度に下半身は沈み、接合部は胴を締め上げていく。

それを背中に聴きながら、メガトロンは呟いた。


「スラスト……お前の夢は……」


上半身が膨れ、それさえも圧し潰されて、風船のように限界まで膨れ上がるスラストの頭部――




「……砕け散ったな」


その言葉と同時にメガトロンの背を紫の光が照らす。
次にユニクロンの接合部が映った時、残っていたのは消え行く紫の光だけであった………



◆玩具

劇中通りジェット戦闘機から変形する。
機体上面の迷彩模様やエンジン付近の汚し塗装等、細かな彩色が多く、再現度が高い。
勿論あのイカ頭も再現されている。
マイ伝商品としては珍しく脚の付け根にボールジョイントが使われており、ポージングの自由度も備えている。

機体側面のミサイル2基は手押し式発射なのであまり遠くへは飛ばせないが角度を変えられる。
後部にはパートナーマイクロン「サンダー」(戦車)を装着して第3のミサイルを搭載可能。こちらはスライドさせることでスイッチ式に発射可能。
手はジェットノズルになっているので直接武器を持たせることはできないが、側面にジョイントがあるのでマイクロン装着は可能。

エボリューションギミックは背面シールドの回転で、頭部と脚部を反転させて背中側を前にするという大胆な形態となる。
武器の発射や音声と言った派手さには欠けるが、目に見えて高速回転するシールドはなかなか迫力がある。
劇中ではエボリューションせずに背中でそのまま回してたのは内緒。



軍師として確かな実力を持ちつつも、ダブルフェイスの甘言に誑かされてデストロンを裏切り、無惨な最期を遂げることとなったスラスト。
ヒロイックなポジションでもなく、決してカッコいいタイプの裏切りキャラでもない、結果からみれば哀れな小悪党と言われても仕方のない男であった。
そしてそれは、今まで裏切りの常連で情けないというイメージを打ち砕いた今作のスタースクリームとは真逆であった。


しかしながら、その小賢しさや口八丁な弁舌にはある種の人間臭さもあり、またホットロッドやスタースクリームとは違った形で内面の弱い部分を描き出されたキャラとも言える。

特に最終盤でのメガトロンとのやり取りや、そこで吐露した心情からは「延々と繰り返されるトランスフォーマーたちの戦いの運命に嫌気が差した」という意も汲み取れることから、憎たらしい奴でありながら惹きつけられるというファンも少なくはない。


◆余談

◇玩具はカラーリング違いの限定商品が3種類も出ており、妙に優遇されている。


◇狂乱のシーンや最期のシーンは遊佐氏の熱演もあり、「滑稽だけど物悲しい」「ざまぁwwとも思うし気の毒にも思える」といった相反する感情を視聴者に想起させる。
 特に潰される流れについては地味にトラウマになったという声が多い。


◇遊佐氏は本作で、軍人風の喋り方で声も荒々しいアイアンハイドも演じた他、続編である『スーパーリンク』ではくぐもった声でウホウホ言ってるアホキャラ・アイアントレッド、正統派の忠臣ウイングセイバーも演じており、幅広い演技力を披露してくれた。

◇彼の場合はデストロンの破壊大帝の座を狙ったわけではないが、「航空機に変形するデストロンのNo.2」「腕は確かだが人望は皆無」「私利私欲のためにメガトロンを裏切り、悲惨な最期を迎える」といったようにG1版(初代)スタースクリームに通じる点もある。次作『スーパーリンク』でも、彼と同様に(G1とは一線を画する性格のスタスク*2とは別に)私利私欲のために破壊大帝を裏切るデストロン兵たちが登場しているが、彼らもまた悲惨な最期を迎えている。


◇日本国内の玩具シリーズ『ユナイトウォリアーズ』では、別次元のユニクロンと主君ガルバトロンの復活を目論むタクティシアンサイクロナスによって召喚され、スクランブル合体能力を備えた姿カースアルマダスラストとして復活を果たす。

プロフィールでは 「別次元の存在とはいえ一度自分を滅ぼしたユニクロンに再生された事実に対して複雑な感情を抱いており、自らの新しいスクランブルボディを用いて復活させたグランドガルバトロンを利用し、密かにユニクロンへの復讐を計画している」 と書かれている。しかしその企みをトリックダイヤに看破され、彼女に屈服してユニクロンと取引することに。最終的にユニクロンがトリプルZポイントに再び封印されたことで復讐は果たせなくなり、目的を失ったスラストは行方をくらます。

その後、『レジェンズ』の「LG42 ゴッドボンバー」封入コミックにて再び姿を現し、ナイトビートやトリックダイヤと共謀してゴッドボンバーのパーツを強奪する。その後もダイナザウラー復活に関与したり、ブロードサイドの超巨大トランステクターを乗っ取るなどの悪事を働く。ブロードサイドに敗れたスラストは、非力な自分の頭脳の可能性を証明したかったことを明かし、ブロードサイドと和解後は彼の計らいでエアーボット部隊へ(半ば強引に)入隊する。
『ユナイトウォリアーズ』版のエアーボットとは合体システムが共通規格なので合体可能。実際に『レジェンズ』終了後の『ジェネレーションセレクトスペシャルコミック』にて、1コマだけだがスペリオンの左腕として合体している姿が確認できる。尚、余ったスリングは別行動で地球人を助けに行った。

◇実写映画『バンブルビー』では、G1ジェットロンを強く意識したデザインのディセプティコン・プレーンズのモブの一人の「スラスト」が、なぜか赤一色の方ではなくこっちのカラーリングだった。

「フン…何を言うのかと思えば、追記だとか、修正だとか、あなたらしくありませんねwiki籠り」


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最終更新:2023年08月14日 08:06

*1 実際、直前の49話でユニクロン体表を偵察していたサンドストームもクレバスに落ちかけた際に飛べず、アイアンハイドに手を引っ張られていた。

*2 『スーパーリンク』に登場したナイトスクリーム(海外版ではマイクロン伝説のスタースクリームと同一人物という設定)は終始ガルバトロンに忠実な戦士(『2010』のサイクロナスに近い立ち位置)であり、マイ伝スタスクとは違った意味でG1とは一線を画するキャラクターだった。