新幹線大爆破

登録日:2017/09/18 Mon 10:44:31
更新日:2024/04/03 Wed 10:50:26
所要時間:約 3 分で読めます







爆弾と恐怖を乗せて死の旅へ一直線!




『新幹線大爆破』は1975年に東映が製作したパニック映画で、上映時間は152分。
監督は佐藤純彌。


【概要】

時速80km以下に速度が落ちると爆発する爆弾を取り付けられ、止まることの出来ない新幹線と犯人逮捕に奔走する警察、政府、国鉄、パニックに陥る乗客と乗務員等を上手く描いた作品。
公開当初の興行成績はさっぱりであったが、海外では評価が高く、それを受けてか後年国内でも評価が上がりDVD化もされている。



【以下ネタバレ注意!】



【あらすじ】

ある朝、国鉄に「新幹線ひかり109号に爆弾を仕掛けた」という電話があり、程なくして北海道で走行中の貨物列車が爆発したという情報が入る。
犯人は倒産した町工場の社長と過激派崩れ、沖縄から集団就職で都会に来た青年の3人で、今で言う負け組であった。
彼らは500万ドルという大金を得る為に新幹線に爆弾を仕掛けて新幹線と乗客・乗務員を人質にし、自分達が死ぬ事なく、また人質を殺す事もない完全犯罪を計画したのであった。
ひかり109号は無事救出されるのか!?犯人は捕まるのか!?手に汗握る戦いが始まる!


【主要登場人物】

[爆弾犯とその関係者]

  • 沖田哲男
演:高倉健
犯人グループのリーダー格で、小さな町工場を経営していたが倒産してしまい、大金を手に入れるべく新幹線に爆弾を仕掛け、身代金を手に入れる計画を立てる。
妻と子供が居たが、今は離婚して一人暮らしであり、身代金奪取が成功した暁にはブラジルに行きたいと語っていた。
身代金の受け渡し場所等に釣り人や通行人等のふりをして姿を見せている。
余談だが主要キャスト3人の内唯一、生涯を通して「ヒーローや超常現象、怪獣が出てくる」特撮作品に参加する事は無かった俳優でもある。

  • 古賀勝
演:山本圭
犯人グループの一人で、過激派崩れで北海道の貨物列車に爆弾を仕掛けた。
身代金奪取が成功した暁には革命が上手く行った国へ行き、人間への信頼を取り戻してみたいと語っていた。
実家は北海道の農場だが、3年ほど音信不通だという。

  • 大城浩
演:織田あきら
犯人グループの一人で、沖縄から集団就職で上京してきた19歳の青年。
最初の就職先が潰れ、パチンコ、ボーイ、清掃会社等、職を転々とするもどれも長続きせず、売血で金を得ていたところを沖田に拾われて彼の工場で働いていたが、半年で倒産。
その後沖田の新幹線爆破計画の仲間に入る事となり、新幹線の清掃会社に就職して爆弾を仕掛け、護送される藤尾を東京駅で目撃する。
身代金奪取が成功した暁にはハーレー1200を購入して世界中をオートバイで旅すると語っていた。

  • 藤尾信次
演:郷鍈治(郷えい治)
沖田一味にダイナマイトと偽造パスポート取得に必要な別人の戸籍を売った男。
別件で逮捕され、ひかり109号で博多へと護送される。
乗客の学生が錯乱したのを抑える為に刑事が目を離した隙を見て逃走し、ビュッフェ車に立てこもった。


[ひかり109号乗務員・乗客と新幹線関係者]

  • 青木運転士
演:千葉真一
ひかり109号の運転士で、自身が運転する列車に爆弾が仕掛けられるという極限状況にいきなり放り込まれてしまう。

  • 森本運転助士
演:小林稔侍
ひかり109号の運転助士で、青木運転士が爆弾のコード切断の為に運転席を離れている間、運転を担当した。

  • 菊池
演:竜雷太
ひかり109号に添乗している鉄道公安官で、乗客へ列車に爆弾が仕掛けられている事を伝えた。

  • 平尾和子
演:田坂都
ひかり109号の乗客で、夫が仕事を口実に他の女と遊んでいた事を知り、臨月の身を圧してひかりに乗り、名古屋の実家に帰ろうとする。
車内で産気づくも死産となり、彼女自身も大量出血で命の危機に陥る。

  • 倉持運転指令室長
演:宇津井健
新幹線総合司令室長で、ひかり109号に降りかかる様々な危機を司令室から指示を出して回避させようとする。


【制作】

ヤクザ映画に代わる新しい映画の題材を考えていた東映社長の岡田茂は、「アメリカでヒットしているパニック映画がそのうち日本でもヒットする。世間をアッと驚かせる日本でしか作れないパニック映画を作れ!」と東京撮影所に命令を出し、プロデューサーの1人が当時日本にしか無かった時速200km以上で高速運転を行う新幹線を舞台にしたパニック映画として立案した。

国鉄の全面協力を得て本作は作られる予定だったが、新幹線に対するイメージダウンを恐れた当然ながら協力を拒否し、東映があれこれ方便を使って何とか協力を得ようとしたものの交渉は決裂。
結局新幹線のシーンをミニチュアと特撮、セット、隠し撮り、ダミーの企画の撮影等で乗り切る事とした。

本作の舞台となる新幹線は本物を使って撮影できない以上、ミニチュアやセットを組み、特撮も活用した。
0系のミニチュアは24両分を製作し、微妙に傾斜をつけた線路を撮影所に設営し、その線路上を走らせて撮影した。
新幹線の模型は本作の撮影終了後もウルトラマン80等で使用されている他、一部は「爆弾を仕掛けられたひかり109号が、浜松駅を通過と同時に平均時速を84キロに落とした。残り919.4キロの博多駅まで何時間かかるか?」という懸賞クイズに正解した人の中から抽選で選ばれた東京のとある小学生にプレゼントされた。
客室や運転席のセットは国鉄に実際に部品を納入している各社から本物と同じ部品を買い集めて組み上げた。異様にマスコンハンドルがデカいのはご愛嬌
ちなみに東映に部品を売った各社は後で国鉄からこっぴどく怒られたらしい。

新幹線司令室もセットを組んで撮影したが、国鉄から資料写真は提供されなかった為、報道写真や日本で無名な外国人俳優をドイツの鉄道関係者にでっち上げ、写真を盗み撮りする事で資料とした。
列車位置表示盤も本物そっくりに作られているが、本来は正面向かって左側に東京駅、右側に博多駅・博多総合車両所となるところを、映画進行上のイマジナリーラインの関係でわざと逆向きにしている。
またひかり109号より先に東京を出発したひかり157号が故障して立ち往生した時に、表示盤の当該列車所在位置のランプが赤く点滅したが、そのような機能は実物にはない。

鉄橋の下等、線路に近い距離から走行中の新幹線を撮影する際はダミーの企画台本を用意し、そちらの撮影をしたいという名目で国鉄の許可をもらった。

冒頭で古賀が貨物列車に爆弾を仕掛けた夕張の貨物駅のシーンは秩父鉄道の広瀬川車両基地。
爆破される貨物列車は北海道炭礦汽船真谷地炭鉱専用鉄道の所有していた蒸気機関車を東映が買い取り、夕張市内の専用線で本物の蒸気機関車と貨車に爆薬を仕掛けて爆破し、その様子を撮影した。

主犯の沖田が国外逃亡の為、飛行機に乗り込もうとした羽田空港のシーンは、深夜の羽田空港を貸し切って実施された。
細かいやり取りが行われる搭乗ゲート周りのシーンは流石にセットを組んで撮影しているが、それ以外の空港周辺のシーンは全て本物の羽田空港である。


【興行成績】

制作費5億3千万円をかけた本作は、邦画で珍しいパニック系アクション映画の製作という事もあって業界からも注目を集めたが、セットへのこだわり等からスケジュールに遅れが生じ、完成は封切り2日前だった。
当然これでは大々的に試写会を開く事も出来ない為に宣伝が行き届かず、上映においても本作単独上映ではなく、ずうとるび主演の映画との併映になり、興行成績はあまり良くなかった。
その結果、企画倒れになった作品の穴埋めとして、急遽製作・上映された『トラック野郎・御意見無用』に興行成績で負ける事となった。
ただ実際に映画を見た人からの評価はとても高く、興行成績が悪かった理由が映画雑誌等で考察された事もある。

一方海外で本作の評価は高く、映画祭や見本市に出品すると各国のバイヤーから「是非買いたい!」という要望が相次ぎ、様々な国へと輸出された。
特にフランスではそれまで日本映画がマイナー扱いされて小劇場でしか上映されなかった前例を打ち破り、大きな劇場で8週間に渡るロングラン上映となったという。
後に日本でもフランス版が逆輸入されて再上映されたが、日本で不入りの作品が逆輸入盤とは言え、再上映されたのは非常に珍しい。
なおフランス以外にもアメリカやヨーロッパ、ソ連、中東諸国等でも公開されており、いずれも主演は海外での人気度が高い千葉真一に変更している他、海外版では日本人にしか理解できない描写、犯人側の背景をカットしており、犯人グループを単なるテロリストとして扱っており、その影響で上映時間も1時間40分から2時間程度とオリジナルに比べて短くなっている。


【余談】

  • 当時のひかり109号は東京9時48分発の博多行の列車で、東京を出ると名古屋京都新大阪、新神戸、姫路、岡山の順に停車し、岡山から終点の博多駅までは各駅停車する列車だった。現在はのぞみ号の拡張により、東京発着のひかり号は原則岡山止まりとなっているため存在しない。

  • 日本でもノベライズ版が出版されているが、イギリスでもノベライズ版が出版されており、イギリスのノベライズ版も和訳されて日本で出版されている。

  • 脚本の時点では列車に長嶋茂雄率いる読売ジャイアンツの面々や、名古屋場所へ出場する北の湖、人気歌手の西城秀樹が乗り合わせているというなかなかに豪華な面々が登場する予定だったが、いずれも幻に終わった。

  • 上では省略されたが、千葉真一の弟の千葉治郎等、様々な特撮関係のキャストが登場しており(千葉・宇津井両名も元ヒーロー)、アナウンサー役としてベテラン声優の阪脩氏が顔出しで出演し、特別出演として丹波哲郎や北大路欣也、川地民夫、田中邦衛も出演している。


  • 烈車戦隊トッキュウジャー』第8駅が本作をモチーフとした回で、車掌役で出演していた関根勤が千葉のモノマネをするシーンがある。


  • 新幹線の模型だけでなく、ひかり109号が爆発するイメージカットは後の東映特撮にも流用されている他、客室のセットも別のドラマや映画等の撮影に使われ、そのレンタル料で制作費を回収したとか。

  • 止まれなくなった乗り物の中で乗客がパニックに陥るという描写は多くの作品に見られ、本作をオマージュしたシーンを取り入れた作品も多く、その有名なものでは1994年に公開されたキアヌ・リーブス主演の映画『スピード』が知られているが、この作品も本作を元にしたジョン・ヴォイト主演の映画『暴走機関車』(1985年)が元の為、間接的ながらも影響を受けている事は間違いない。

  • 20世紀末の東北新幹線が舞台で、事件の背後に在日アメリカ軍、CIAまでもが絡む長編推理小説『謀略軌道 新幹線最終指令』が出版されており、後書きには本作を参考にしたという旨が記載されている。



追記・修正は爆弾の位置を特定してからお願いします。

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最終更新:2024年04月03日 10:50