登録日:2017/09/14 (木) 19:37:00
更新日:2024/03/21 Thu 13:38:10
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ねえ 俵屋クン 「料理は半歩先」なんだよ わかってる?
半歩先を行ってれば誰の料理でも見破れる! 半歩先の料理ならば誰もが驚く!!
食べる人の予想の半歩先を行く料理を作る事こそが 21世紀の料理人なんだ!!
黄蘭青とは『
鉄鍋のジャン!』の登場人物の名称である。
【概要】
笑顔を絶やさず寒いダジャレを連発する、穏やかな物腰の細目の中国人青年。
普段は他人をおちょくるような言動と飄々とした態度で周囲を煙に巻いているが、その正体はアジアの
中華料理界は愚か食に関わる経済全てを牛耳る
「百蘭王」の孫であり、彼の後継者に指名されている青年。
そして(事実上の)無印での
ラスボス。
彼の生まれである
陸一族については個別項目を参照。
【性格】
恵まれた将来が約束された黄だが、しかし黄本人は百蘭王の称号を継ぐ気など全く無く自分の名前である『黄蘭青』を新たな称号として世界の食を牛耳るつもりでいる野心家。
普段の穏やかで飄々とした態度も実際は「自分が最も優れている」「食感を使い熟せない奴等に負ける筈が無い」という不遜な自信家の本性を隠す仮面に過ぎない。
本気になったり普段のお調子者の仮面が剥がれると野心的な鋭い眼光が顔を出す。
幼少の頃から階一郎による厳しい英才教育を受けてきた
ジャンと同様に、祖父の百蘭王から徹底的に料理の修行をさせられてきた。
その修行の内容は、
暴れる巨大真鯛を素手で掴まされたり、大雨の降る中青龍刀の上で小石の入った鍋を振るわせられるなどと言った、お前はどこの世紀末だと言わんばかりの
別漫画の
裏料理界ばりの人権無視の荒行ばかり。
その為ジャンの背中と同じくほぼ全身に傷痕が残っている。
だが、不器用ながらも確かな絆のあった階一郎とジャンとは違い、過去に自分のことを
「お前の代わりなどいくらでもいる」と言い放った百蘭王のことを毛嫌いしており、
「暴君のあなたが死んでも誰も悲しまないでしょう」と笑顔で電話越しに皮肉っているなど、祖父と孫としての感情など1ミリも持ち合わせていない。
まぁ残念でもないし当然。
それでも、「百蘭王」の称号と陸一族に関しては彼なりに誇りを持っており、後にジャンが
「いらねぇんなら百蘭王の称号オレにくれよ(要約)」と言った時は、心の中で
「百蘭王の称号はいらないけど、陸一族以外に継がせるわけにはいかないよ!!」とマジギレしていた。
……続編の『2nd』では結局、「百蘭王」の称号を引き継いだ。
なお料理のセンスは抜きん出てるが、ダジャレのセンスは
正直おっさんである。
……流石に天は二物を与えなかった、という事か……。
【料理人として】
「料理は半歩先」を信念として掲げており、幼少からの拷問じみた修練と豊富な料理への知識から相手がどんな料理を作るのかを盛り付けも含め簡単に見抜く観察眼を持ち、その上で相手よりも美味い料理を簡単に作る事が出来る。
要するに、
後のジャンプ漫画に出てくるストーキング野郎の綺麗Ver。
ただしあまりに常識外の発想の料理に対しては自身の観察眼も上手く働かない欠点を持つ。
なお自身の信条も睦十によると
「ヤツ独特の謙遜」「食感を極め、他の料理人よりも一段高いレベルにいるという自信が言わせた言葉」と見ている。
しかし普段の笑顔や大らかで飄々とした態度から誤魔化されがちだが、内心の傲慢さが滲み出ているのか本性はかなり腹黒く素行も意外とよろしくない。
一見笑顔と優しい言葉で人のいいことを嘯くが、内心は他者を露骨に舐め腐っている上に強か。度々出る慇懃無礼さはジャンもキレるほど。
試合相手の調理に度々アドバイスするかのように口や手を出して、自分の思ったような料理に改竄することで相手の料理人としてのプライドをズタズタにして心をへし折ったり、楊との対決では対戦相手であった楊の存在を無視してジャンと調味料対決を持ちかけることさえあった。
またこうした言動は料理を勝負と捉える思想の表れであり、キリコからもジャンの同類として嫌悪されている。
まあボクもキミの料理が読めなかったけどさ
でもね───料理の先を読むとか相手の裏をかくとか実はそんなのはボクの料理にはあんまり関係ないんだ
本当の強者はそんな小さな事とは関係なく勝ち進むんだからね!!
と語るように、普段の笑顔の仮面を取り払った素顔は自身を絶対強者と考え他料理人全てを見下す傲岸不遜な若き帝王である。
また、調理の途中までの段階を見れば料理の完成系までわかる、という驚異的な能力を持っていながらそれは単に自分の才覚の一端にすぎず、「読まれない料理を作ること自体は可能だがそれができたとしても自分のレベルに届くわけではない」という意味でもある。
要するに「料理は半歩先」という理念は「自分は誰にも負けない」という最強宣言の言い換えなのである。
間違いなくジャンが戦ってきた相手の中では最強クラスの実力者だが、自らの十八番である食感に頼りすぎたり、自分の流儀を食べる者に押しつける無意識の傲慢さが黄の最大の欠点。
実際、それらが災いし最終決戦では二回連続で不覚を取ってしまった。
先ほど比較した美作が
- 徹底したストーキングとイメージトレーニングという下準備込みで相手の料理を完璧にコピーし、その上でアレンジを加えて半歩先を行く(割とガチ)
黄の場合は
- 卓越した洞察力と見識から初見で相手の料理をほぼ完璧に見破り、その上で(或いはお構いなしに)メタ料理を作ることで半歩先を行く(割と舐めプ)
というスタイル。どっちが綺麗で汚いかよくわからない。
この二人が料理対決することになったらどうなるのか気になるところではある。間違っても手を組んじゃいけない。
そんな彼だが、睦十に対しては(決勝後に自分の料理を味を改良された上で完コピさせられたせいか)普通に実力を認め本心から敬意を表しており、墓参りにも訪れている。
【制作料理】
主に
- 料理の食感
- 見た目のインパクトで圧倒し中身で度肝を抜かせる
ことを重視しており、「まず視覚で圧倒する」と語るように彼の作る料理はどれもかな食感に溢れ、ビジュアル的にもダイナミックな作品ばかりである。
そして自分が得意とする「食感」を(料理人にとっての)第四の武器と考えており、食感を使い熟せない他の料理人の事は内心露骨に格下と見下している。
曰く「所詮三つの武器しか持たない料理人が四つ目の武器「食感」を持つボクに勝てるわけがないんだよ!!」
あらゆる食材で自分の思い描く理想の食感を100%引き出せる点から劇中では「食感の魔術師」とも審査員に賞賛された。
大会予選「指定された種類の米を使った日本人好みの炒飯」という課題で作成。
作中で黄が最初に作った料理で、炒飯を蓮の葉でくるんで蒸すことで中華風ちまきみたいな食感に仕上げた一皿。
古々米のパサつきを打ち消しつつ食欲を高める清々しい香りを炒飯に与えている。
- 黄金脆鱗樟茶鴨(燻製アヒルと豆腐の包み揚げ)
第一回戦「豆腐料理」という課題で製作した料理。
アヒルの燻製を開いて蒸した後骨を取り、アヒルの中に粗微塵切りにした皮蛋・鹹蛋の黄身、香菜を入れた豆腐を塗りつけ、更に豆腐の上に
酥炸の衣を付け揚げた料理。
味はあっさりした
塩味。サクサクした衣に柔らかい豆腐部分、柔らかくもパリッとしたアヒル肉の食感がハーモニーを奏でる。
また肉の油分も燻製にしてから蒸すことで程よく落ちているため栄養面でも高評価を得た。
加えて付けダレにレモン汁やリーペリンソースを採用することで色んな味を出している。
- 桂林三層塔炸餃子(バクダンの三重包み蜂の巣揚げギョーザ)
第二回戦「制限時間60分以内+審査員合計55人分の餃子」という課題で製作した料理。
内部が三重構造になったラグビーボールサイズの巨大揚げ餃子で、敷いたラップの上に蜂巣芋角を敷いて皮とし、上から具となる食材を重ねて層のようにしてから丸めたものを大量の油の入った鍋で揚げた料理。
蜂巣芋角は適切な高温で揚げなければ綺麗に完成しないため調理難度は高い。
蜂の巣のように口の中で脆く砕けていく衣のサクサク感、衣の内面を覆うタロイモのネットリ感、春巻のように片栗粉で止めた
タケノコと干しエビの餡のトロミ、固めに茹でられたチリメンキャベツのシャッキリ感。
これらの多彩な4種の食感を一度に味わえる、まさに
大食感と呼ぶべき料理。
そしてチリメンキャベツで覆われた餃子の中心部には海苔を巻かれて封された紅酢のつけタレがたっぷりと仕込まれており、大量に油を吸ったはずの皮のクドさを大きく抑えている。
切り分けた瞬間中のタレが弾けるように流れ出すのでビジュアルのインパクトも強く高評価を得た。
なおこの餃子を作る際、材料からどんな餃子を作るかを読み、対戦相手に対し的確なアドバイスを送り盛り付けまで指摘して自分の良い様に変えてしまい、その上で僅差でこの餃子が勝った。
自分以外の料理人を舐め腐った黄の本性が見え隠れした試合である。
- 透明の極辛ラー油/特辣玻璃龍蝦(伊勢エビの透明ラー油炒めマジックドラゴン盛り)
第三回戦「21世紀の新しいオリジナル調味料」という課題の元、黄が楊との対決で作った調味料及び料理。
ラー油の方は、青唐辛子の色が出ないよう慎重に同じ油を使い回して何度も三種類の青唐辛子の成分を抽出・濃縮したもの。
作る際には
- 生の青唐辛子が入った大きなガラス瓶のような容器に熱した油を注いで漬け込み、香り付けとしてレモングラス、エゴマの葉、クミンを一緒に容器の中に加える。
- (1)で使った油を青唐辛子の辣粉と微塵切りにした生の青唐辛子がたっぷり入った寸胴鍋の中に注いで通常のラー油作りの要領で熱する。
- 大量の塩漬け青唐辛子と(2)で使った油を中華鍋で一緒に炒める。
という工程を踏んでおり、黄すら苦労するレベルで非常に手間暇がかかっている。
この調味料は、「ラー油(や辛い調味料)は赤いモノ」という料理の常識・固定観念を完全にひっくり返した点が最大のポイント。
透明なので食材本来の色も最大限活かせるのもポイントの一つ。
他にも生・乾燥させたもの・塩漬けにした物の各三種類の青唐辛子を使って青唐辛子の味を最大まで引き出した為、ジャンとの間で勝手に行っていたラー油対決においては調味料の純粋な旨味という面でも勝っている。
『特辣玻璃龍蝦』の方は、上記のラー油でクワイと伊勢海老を炒めた非常にシンプルなもの。
大谷が
「まるで透明なエビチリ」と例えた程の喉が焼けてしまうほどの凄まじい辛さを誇るが、その分伊勢海老の甘さが強調されてより甘みを感じられる事が出来、プリプリした伊勢海老と合わせたクワイのシャキシャキ食感により極上の美味さを感じる事が出来る。
また料理の異常なまでの辛さは、付け合わせの無塩バターを食べることで和らげることが可能。
伊勢海老の殻で作った龍のディスプレイを透明な支柱で支え、更に土台にドライアイスを仕込む事で空飛ぶ龍を彷彿とさせるなど、ビジュアル面でもド迫力のインパクトを与えている料理。
対戦相手の楊も料理の予測をさせず、素晴らしい出来の料理だったが、そんなことお構い無しとばかりに上記の
「本当の強者はそんな小さな事とは関係なく勝ち進むんだからね」と言わしめ、ほとんど舐めプ状態で100点満点で圧勝してみせた。
なお、楊の公式戦はこれで最後。可哀想なんてもんじゃ……。
ジャンが製作した『飲めるラー油』と比較して「
『調味料として』全てにおいて勝っているか」と言われると、実際のところは正直言って
一長一短。
黄のラー油の欠点はとにかく
辛過ぎる事。これだけ辛過ぎると
下手に扱うと素材の味を全てぶち壊しにしかねない。
それに上記の「素材の色も活かせる」メリットも、逆を言うと
この極辛ラー油を使った料理は一見すると辛い料理だと分からないというデメリットにもなる事になり、辛味の苦手な人が間違えて食べてしまい、大惨事になる可能性も否定はできない。
正直、「辛い料理が見た目で辛いと分からない」というのはかなり問題ある気がする……。
実際、「ただの伊勢海老の油炒め」と勘違いして油断していた特別審査員達は、あまりの辛さに
一時期大パニックになってしまい、ミケロッティはオネエキャラを完全に崩壊させて水をねだり、大谷に至っては
ゴジラの如く火を吹いてぶっ倒れてしまった。
崔会長よくショック死しなかったな……。
コンセプト的にはジャンが以前作った激熱ゼラチンスープ入り春巻と似ており、
使うには料理人の腕が大きく左右される、かなりのキワモノ調味料である。
それに極辛調味料故に「普通の人にも親しまれるか」という点に関しても非常に際どいラインである。
上記の通り調味料としてはかなりシビアな部類であり、腕のある料理人でないと扱いが難しい(=一般の家庭レベルではとても扱えない)代物。
劇中で100点満点を出せたのは、ぶっちゃけ言えば
「食感」という武器を持ち、素材と調味料の相性を完璧に使いこなせる
黄蘭青だからである。
もしも両方を出されたら、恐らく一般の人は大多数がジャンのラー油を支持する可能性が高いだろう。
もちろん、霧子のようにプロの人は黄のラー油を推す人も多いと思われる為、
二人のラー油の総合的な出来は(事実上)全くの互角と思われる。
睦十は
「二人のラー油は実質的には100点同士の引き分けじゃが、1000点満点ではどうかのう」と評価したが、実に的を得ていると言えるだろう。
準決勝「サメ料理」の課題で作った料理。黄曰く「皇帝の料理」。
ただでさえ時間制約のある中で3品も作ったばかりか余った時間でジャンの料理の秘密を探りに行く余裕まで見せたのは、黄の類稀なる早業の賜物である。
サメ肉は新鮮なものをワインビネガーに漬け込む事で、臭み抜きを完璧に行っている。
前菜は
『サメ肉の煮こごり』。
形は四層のケーキのようで美しく、味は薄い
醤油味で前菜にぴったり。
クコの実で彩られたゼラチンはプルプルとしながらも口の中でスッと溶ける絶妙の柔らかさ。
そしてゼラチンが溶けた後に中の、味のよく染みた牛肉の繊維の質感、しっかりした弾力の百頁、コリコリしたサメ皮の千切りを混ぜたそぼろ状のサメ肉の食感が渾然一体となりながらも存在感を主張して来る一品。
主菜は『サメ肉のシャブシャブ』。
その名の通り、新鮮なサメ肉と心臓の刺身、そして生のフカヒレと魚肚、野菜を、中国の鍋「火鍋子」を使用する寄せ鍋形式で食する。
サメの刺身はきっかり『2秒』上湯スープの湯に通すことで、ジューシーかつ雲の様な軽い食感を楽しむことが出来る。
メインディッシュ中のメインディッシュとなる貴重なサメの心臓は箸で掴んだ途端箸に巻きついてくる程に力強いが、上湯スープにくぐらせると口の中で踊る様な繊細な食感と心臓が箸に巻き付いてきてパニックになる大谷の可愛らしさを楽しむことが出来る。
当然新鮮な内臓を捌いたため血生臭さは欠片も無い。
鍋つゆである上湯スープの出来もさることながら、付けダレはピリ辛ソースとクルミのソースの2種類で、サメ肉の水っぽさを消し美味しく食べられる。
更に一緒に並べられた生フカヒレのコリコリシャキシャキした歯応えや、魚肚のプルプルとした蕩けるような食感まで味わえるため、審査員には「サメのいろんな部位の食感をストレートに味あわせてくれた傑作」と絶賛された。
デザートは現代風にアレンジされた
『八宝飯』。
周りを覆うドライフルーツの砂糖漬けは蒸されて程よい甘味と柔らかさ、中にはフワフワのサメ肉のミンチの層と下のねっとりして弾力のあるもち米の層、中心の緑豆あんにはザクロを混ぜてプチプラ食感と酸味であんの甘味を引き締めてあり、どれも良い食感のアクセントを産んでいる。
上から掛けられた熱いシロップも混ぜたフカヒレによって食感も味も抜群。
……と、このように素晴らしい出来の料理ではあるが、本当の目的は、
複数の品目を作ることで緻密に計算された多数の食感を生み出し、一品たりとて同じ食感が存在しない怒涛の食感の波状攻撃で人を魅了して圧倒すること。
かつての
五行道士同様に人の心を支配する事を目的とした、看板に偽りなしの
『皇帝(支配者)の料理』である。
しかもわざわざアジア料理界の皇帝たる
『百蘭王』の名を冠した辺り、
この料理こそが『皇帝(百蘭王)』であり、それ以外の料理は皇帝の下僕であるという、
日本の料理人など(ジャンや霧子達ですら)引き立て役の噛ませ犬としか思っていない、黄の傲慢で傲岸不遜な本性が現れた料理と言える。
その完成度の高さ故に黄とついでに大谷は結果前から完全に勝利宣言し、ジャンも内心敗北を感じたほどであったが、実は要となるメインのサメ肉は『2秒ジャスト』湯に通さないと身がパサパサ又はブヨブヨになってしまい、味が大幅に劣化するという致命的な弱点がある。
しかも「100点満点で勝てる」とタカをくくっていた黄はその欠点を無自覚で見落とし、更に扱いがシビアな食材を食い手の好みに任せる「シャブシャブ」という形で出してしまう痛恨のミスを犯してしまった。
このミスのせいで
「生に近い方が好きだから『2秒より早く』湯から引き上げた」
「よく火が通ってないと嫌だから『2秒より長く』湯に通した」
……という捻くれた観客(一般審査員)が少数いた為に、黄の思惑は見事に崩れ去り、あわや敗退の危機に陥った。
この欠点は舌が肥えていてかつ完璧な美味い料理を求める大谷などの特別審査員では気が付かず、基本的に
味の素人である一般審査員だからこそ陥るもの。
そして選手として最高の味を追求する立場にあるジャンも霧子も、睦十からこの欠点を指摘されるまで気が付くことはなかった。
これを看破したのは勝負に参加しない観客であり、そして飲食店オーナーであり時には自ら客に頭を下げて給仕する料理人でもある睦十ただ一人。皆が黄の100点満点を確信する中、彼だけが
「0点になってもおかしくないほどの落ち度」とまで酷評していた。
例えば
ステーキなら焼き方はミディアムレアが最高かもしれないが、レアにしようがウェルダンにしようがそこは客の自由であり、
いくら美味い食べ方であろうと料理人から強制される筋合いは無い。
そんな料理人と客の関係を頭に入れず、
1秒でもズレたら台無しになってしまう際どい料理を作っておきながら50人もいる一般審査員に
「2秒ぴったりで鍋から上げてください」と
一言言っただけで全員が守ることを期待するのは、もし日頃から大勢の一般客を相手にしている料理店で働いていれば出てこない、ひとりよがりで甘い考えである。
作中で睦十が突っ込んでいたが、
このルールならば2秒キッチリ熱を通した別の鮫肉料理を作るべきだった。
そもそも問題の5人のうち2人の一般審査員からは「2秒キッチリなんて難しい、押しつけがましい」「シャブシャブなんだから自由に食わせろ」と黄の命令には不満を露わにし、今更「2秒を守らなかったのか?」と焦る黄に「こいつ何言ってんの?」と言わんばかりの表情で「(肉の火加減の好みがあるんだから)当たり前じゃん!」と平然と言い返していた。
「料理人は皇帝ではない=(客は服従も畏敬もしてくれない)」「百蘭王の威光など異国の地では通じない」という現実をまざまざと見せつけられた瞬間である。
劇中チートクラスの料理人である黄の鼻っ柱を折ったのが、ジャン達ライバル料理人でもなく、大谷みたいなプロの食通でもなく、ただの一般人だったのだから、実に皮肉であると言えるだろう。
この点は閉鎖的な環境でしか料理をさせた事がない、百蘭王含めた陸一族のスパルタ英才教育がマイナスになってしまったと言えるだろう。
料理人でありながら時の皇帝までもが恐れ、現在も有力者が靴を舐めて媚びる支配者「百蘭王」の家系に生まれ育った黄に、この落ち度に気付けというのも無理な話ではある。
ある意味、生まれの不幸と言えるミスであった。
これにより今まで舐めプ試合ばかりしてきた黄も完全に鼻っ柱をヘシ折られ、「ボクの料理も簡単には人の心を支配できない」と悟る。そして決勝では舐めずに本気で取り組む事を誓ったのだった。
……といっても「『百蘭王』なんてもうカビ臭い、これからは初代『黄蘭青』として世界中の「食」を牛耳る」という方向にやる気を出したのだが。ほんとにジャンの同類である
また余談だが、直前に霧子は同じく食い手の好みで味を左右される(ただしこっちはトッピングを自由にできる)サメ肉の炊き込みご飯を出しており、なおかつ100点満点を取っている。
- 水芙蓉蓮藕(黄蘭青風 21世紀のレンコンの詰め物)
大会決勝の課題「21世紀に相応しいダチョウ料理」で出した料理。
すりおろした蓮根を元の蓮根の形に成型し直し、ダチョウの生卵を混ぜたダチョウの細かいミンチ肉、油で揚げて戻した鹿のアキレス腱、細かく潰した豆腐、ボラの卵、蜂蜜と梅干しを一緒に蒸し柔らかくした金華豚を、成形した蓮根の穴に詰めて蒸し上げた上で薄い餡を掛けたもの。
全ての食材の食感を全く同じ柔らかさにすることで、ソフトクリームよりもなお柔らかいクリームのようなふわふわとした歯ごたえのない食感を実現しており、食べれば一瞬で口の中で儚く溶けていく程。
当然それぞれの食材が持つ存在感は薄れさせることなく維持。メインのダチョウ肉は細かなミンチにしたことで食べ易くなり、混ぜたダチョウの卵の恩恵で旨味が加わり濃厚な味わいを楽しめる。
そして「21世紀の人類は歯と顎が退化するから、それでも食べられる美味しいもの」 というコンセプトの通り、喉越しそのものが美味しく感じられる。
中国の桂林に見立てた巨大な蓮根の山を二つも並べ、青のりと髪菜で山の緑や水苔を再現した壮大な盛り付けが成されており、ビジュアル面でのインパクトや美しさも優れている。
なお現実の2020年代には食材を柔らかくすりおろしたものを
3Dプリンタで再形成
して味・栄養素・見た目は元の食材とできるだけ同等のまま固さだけは大きく落とした介護食品が実用化されて、噛み砕いて嚥下する力が衰えた人にも美味しいものを食べてもらえるような製品が生まれている。
監修のおやまけいこ氏のアイディアだろうが「ガチで
21世紀の未来人のための料理を編み出していた
」と話題になった。
しかし一般審査員にはそのテーマの高尚さは理解されず、むしろ蓮根らしからぬ歯ごたえの無さが「カスミか雲でも食ってるみたいで楽しくない」と大不評だった。
やっぱり…………そう思う?
フフッ ボクがなぜ同じ山を二つ作ったと思う?
皆さんはまだボクの料理のテーマをよく理解してないみたいですね!!評価するのは早すぎますよ!
- 荷華蓮藕蓬(黄蘭青風 現代人のためのレンコンの詰め物)
黄が「水芙蓉蓮藕」と一緒に出した料理。
見た目や材料・蓮根以外の食材を蓮根の穴に詰めるという手法は全く同じだが、調理法を変えることによって全く同じ材料から全く違う食感を出した恐るべき一品。
「歯が退化していない20世紀の人類には水芙蓉蓮藕は早すぎる」という欠点を予見し、なおかつ頭の悪い審査員が柔らかい蓮根に文句を付けると踏んでその評価を覆させるために作った「料理は半歩先」の真髄というべき一皿である。
そのために蓮根はそのまま使い、ダチョウ肉は青椒肉絲のような千切りにした上でダチョウの卵で作った皮蛋・鹹蛋を混ぜ、鹿のアキレス腱は水で戻して弾力を出し、ボラの卵は干してカラスミに、豆腐は押し豆腐に、金華豚は軽く蒸して適度に塩分を抜いてから千切りにしてある。
結果カラスミはネッチリとした弾力ある歯ざわり、金華ハムはしっかりとした肉の食感を持ち、アキレス腱はブリブリとした食感を有している。
そしてこちらの方のダチョウ肉は千切りにしたことでダチョウ肉らしい強い弾力のある肉質を愉しむことができる、
こちらは蓮根やその他食材が持つ本来の食感を極限まで活かしながらも、同時に全ての食材の食感が一体となりそれぞれ自己主張しながらも調和した、「大食感」「脳髄にまで響いてくる食感」と評されるほどの強烈ながらも心地良い歯ごたえを楽しむことができる。
厳密に言えば「21世紀の料理」ではなく「審査員のための料理」であるが、食感以外は全く同じ味の二品を食べ比べる事で感じる味わいと食感の違いを大いに楽しませ、2品を交互に食べさせることで食べる人間に「哲学」「人間の未来」をも考えさせる脅威の品であった。
どちらも凄まじい出来の料理だったが、二品共「『21世紀の料理』の課題にこだわり過ぎてテーマ食材の『ダチョウ肉』があまり活きていない=この料理ならば別にわざわざ『ダチョウ肉』を使わなくても成り立つ」という事が唯一の欠点。
具体的には蓮根の小さな穴に細々とダチョウ肉を入れてしまったせいで、ダチョウ肉の旨さが全面に強調されていない事が挙げられている。
この事を「大嫌いなジャンはもちろんだが、蘭青を優勝させて目障りな百蘭王勢力を日本に台頭させたくもない」と思っていた大谷につけこまれ、「いい料理やが、満点をくれてやるわけにはいかんな」と1点だけ減点された。
もっとも大谷曰く、「蘭青の料理に欠点があったのは事実だから、普通に(=打算無しで純粋に)審査しても9点ぐらいやった」そうだが。
ねえ Wiki篭りクン 「追記・修正は半歩先」なんだよ わかってる?
半歩先を行ってれば誰の追記でも見破れる! 半歩先の修正ならば誰もが驚く!!
読む人の予想の半歩先を行く項目を作る事こそが 21世紀のアニヲタWikiなんだ!!
- 読んだのは大分前だから覚えていないけど、コイツ強かった気?伍行の方が記憶に残っている -- 名無しさん (2017-09-14 19:48:28)
- 作成乙です、鮫シャブは食感が一瞬しかもたないとかならともかく、変に遊び見すぎなんだよ -- 名無しさん (2017-09-14 19:53:20)
- 強かったとは思うが、陸十が評するほど圧倒的には見えなかった。途中から相手の料理の先読みもできなくなったし -- 名無しさん (2017-09-14 19:57:59)
- 自分の料理を客観的に見られないのが弱点という印象 -- 名無しさん (2017-09-14 21:20:33)
- まぁそこまで圧倒的ではないにせよ、真正面から戦うって事に関しては敵対した奴の中では最高峰だろうな、技量はジャン相手にも最後まで引けを取らなかったし。自己本位で考えがちな欠点をどうにかしたら完璧だったろうに。 -- 名無しさん (2017-09-14 21:38:24)
- 実際決勝もダチョウというより蓮根料理っぽい印象ではあったな -- 名無しさん (2017-09-20 19:20:51)
- 続編ではこいつの後継者とか弟子が出てくるのかな? -- 名無しさん (2018-01-23 17:59:02)
- 黄とジャンの一騎打ち見たかった -- 名無しさん (2019-08-26 13:23:18)
- 優れた調理技術の持ち主しかいない環境でもっとも優れた調理人だけを求められ育てられたから「調理過程の最後を振る舞う相手自身に任せる必要のあるしゃぶしゃぶは調理過程をきっちり守ってもらえないと成立しない」欠点を示されるとはなんとも因果な…… -- 名無しさん (2022-03-09 13:39:01)
- Rとか2ndではあまり触れられないのは強すぎて迂闊に出せないためかな -- 名無しさん (2022-03-09 13:42:29)
最終更新:2024年03月21日 13:38