いすゞ自動車

登録日:2017/07/25 Tue 18:33:26
更新日:2023/06/19 Mon 03:11:47
所要時間:約 4 分で読めます




♪いつまでも いつまでも
♪走れ走れ いすゞのトラック

いすゞ自動車とはトラックやバスをメインに開発・製造する自動車メーカーである。

■概要

1929年に株式会社東京石川島造船所として創業。後にその自動車部門が、株式会社石川島自動車製造所として独立し、1949年にいすゞ自動車株式会社と改称して現在に至る。
日本最古の自動車製造会社であり、ディーゼルエンジン搭載自動車を日本で最初に作った会社。
作りは質実剛健だが、惜しげもなく最新技術…と言うより開発途上の技術までも投入するため、時として技術的に時代を先取りし過ぎた車を世に送り出すことも。(例:NAVi5)
80年代に人気を博した漫画「よろしくメカドック」に出てきたセラミックエンジンや、当時提携関係を結んでいた ロータスのF1マシン用のV型12気筒エンジン をガチで開発していたことでも知られる。
(ちなみに二代目のロータス・エランにもいすゞのジェミニに搭載されていた4XE1エンジンをライトチューンして搭載されている。)

かつては乗用車も製造していたが、売上不振などによって国内向けは既に無く、現在は輸出のSUVのみとなっている。
尤もその乗用車については外観をちょこちょこ変えただけで、まともな商品改良に力を入れず同じものを作り続けていた例も多く、戦略的に問題が無かったわけではない。

いすゞのトラックというCMソングが存在し、時折ラジオやテレビなどで流れることがあるほか、主力車種「エルフ」のCMにも使用されている。
ちなみにこの曲、いすゞの公式HPから無料でダウンロードできる他、モーターショーでアンケートに答えたりいすゞへCDについて問い合わせたりすると無料で貰えたりする。

バスについては日野自動車と提携し、お互いにバスを供給し合う関係を築いている。いすゞは大型ディーゼル・中型路線を開発して日野へ供給し、日野から大型・中型観光の供給を受ける。

藤沢市に「いすゞプラザ」といういすゞの博物館があり、過去いすゞが製造していた乗用車などが展示されている。

■主な製品


●トラック

・エルフ・エルフ100
いすゞの主力商品の小型トラック。国外ではNシリーズの名称で販売されている。
かつてはFFの「マイパック」やウォークスルーバンの「ハイルーフ」といった派生車種が存在し、前者はトミカで知った人も多いのでは。
エルフ100は日産・アトラスのOEM車。

・フォワード
中型トラック。国外では主にFシリーズとして展開。

・ギガ
大型トラック。国外では主にC&Dシリーズとして展開。

・73式大型トラック
自衛隊用の大型トラック。藤沢市のいすゞプラザに現車が展示されている。

●バス

・エルガ
大型路線バス。現行型はノンステップのみの設定。ヘッドライトは大型トラックのギガと部品を共有している。日野自動車へはブルーリボンとして供給されている。
初期モデルはフルフラットノンステップバスを除いて15リッターV8エンジンを積んでいたが、1回目のマイナーチェンジで7.7リッターターボ付き直6エンジンへダウンサイジングし、2代目エルガからは更にダウンサイジングして5.2リッターターボ付き直4エンジンを搭載している。
初代モデルはノンステップの他にワンステップ、送迎用トップドア・ツーステップ、路線用前中or前後ドア・ツーステップ、中ドア教習車の設定も存在したが、路線用ツーステップと教習車は比較的早期に姿を消し、現行型は路線用前中ノンステップと送迎用トップドア・ノンステップのみの設定。トップドアとノンステの組み合わせはワンオフの改造品として登場した例がいくつかあるものの、正規のカタログモデルとして設定されているのはエルガと統合車種のブルーリボンのみだろう。
ディーゼル車の他、ハイブリッドモデルも設定。初代モデルはハイブリッド用バッテリーを車内最後部席を2席分潰して設置しており、全高がディーゼル車と全く同じになっているのが特徴。2代目は日野のブルーリボンハイブリッドの名前違いになり、ハイブリッド用バッテリーやコントロールユニットが屋根上設置になっている。

・エルガミオ
中型路線バス。現行モデルはノンステップのみの設定。エルガをそのまま小さくしたかのようなデザイン。日野自動車へはレインボーとして供給されている。
ちなみに初代モデルはエンジンスロットルの電子制御化が遅れており、ペダルが無茶苦茶硬かったとか。

・ガーラ
大型観光・高速バス。ハイデッカー、スーパーハイデッカー、ハイデッカー9m車を設定。日野自動車のセレガのOEM車で、フロントバンパーとステアリングホイールのロゴ以外実質同じ。

・ガーラミオ
中型観光・送迎バス。日野自動車のメルファのOEM車で、ほとんど同じ。

・ジャーニー
マイクロバス。日産自動車のシビリアンのOEM車で、ラインナップも同じ。ガソリンエンジンしか設定がない。

・エルガデュオ
2019年に発売された国産初の本格的な連接バス。全長18mという長さは現在の道路運送車両法に定められた制限令を超えるため、導入するには警察や道路管理者の許可が必要。
走行機器類は2代目エルガハイブリッドのエンジンを直4から直6としたような具合。

●バン

・コモ
日産・NV350キャラバンのOEM車。初代の発売からしばらくは乗用モデルもあった。

●海外専売車

・D-MAX
ピックアップトラック。GMとの共同開発車で、いすゞが販売拠点を持たない地域ではシボレーの車種として売られている。

・MU-X
7人乗りSUV。D-MAXの派生車種で、GMとの共同開発車。

・リーチ
北米で販売されているウォークインバン。

・トラガ
2018年に登場した新興国向けの小型トラック。足回りはD-MAX、キャブはエルフがベース。

■絶版車種

●乗用車

・ベレル
いすゞ初の自社製造の乗用車。それまで販売されていたヒルマンミンクスよりも一回り大きく、トヨタ・クラウン、日産・セドリック、プリンス・グロリアがライバルとなる中型セダン。
タクシーや自動車学校の教習車としての導入がメインだったが、トラック用ディーゼルエンジンをほぼそのまま転用した結果振動も騒音も非常に酷いためにタクシードライバーの中にはベレルへの乗務を拒否する者も多く、会社によってはベレル乗務手当を支給するところもあったとか。
ライバルのクラウンやセドリックなどがパワーウィンドウやAT、SOHC直6エンジンなどの先進技術をこぞって採用する中、先進技術を採用せず、デザインも没個性的となった結果売れ行きは非常に悪く、在庫処分目的なのか新車なのに「3台セットで100万円」という捨て値で売られていたという逸話まである。

・ベレット
ベレルの小型版とも言える乗用車。卵をモチーフにした丸い車体が特徴。
日本車では初めて「GT」のグレードを設定した車種である。
ベレルと異なり、3速ATを設定したりガソリンエンジンを選べたり出来た。
2ドアクーペのイメージが強いが、4ドアセダンやファストバックもラインナップされていた。
派生車種として駆動方式をMRにしたスポーツモデルの1600MXも試作されたが、こちらは量産に至らなかった。

・フローリアン
中型乗用車。ベレットが大衆車ならそれよりもうちょっと高級な車をという経緯で生まれた。1983年の製造終了までフルモデルチェンジは行われず、2回のマイナーチェンジを行っただけで末期は営業車や教習車として売られる例が多かった。

・117クーペ
フローリアンがベースの4座クーペ。デザインはジウジアーロが担当。
いすゞのフラッグシップとも言え、1970年代の日本車を代表する傑作の一つ。
当初は完全ハンドメイドで、カローラが40万円の時代に172万円するという超高級車だった。
その後ライン生産が可能となり値段が下げられ、1981年まで生産が続いた。

内気排気口に逆流防止弁がないため、洗車の時にそこへ水をかけると車内に水が入り込んできた。

・ピアッツァ
117クーペの後継として登場したフラッグシップモデルで、デザインはジウジアーロが担当。
コンセプトカーのデザインをドアミラーを除いてそのまま量産化したスタイルは当時大きな話題を呼んだ。
2代目はジェミニベースのクーペモデルだが、あまりのコンセプトの違いから全く売れなかった。

・ジェミニ
ベレットの後継として登場した小型セダン。
当時業務提携を結んだGMの世界戦略車として開発された車種で、世界各国に兄弟車種が存在した。
2代目はFFに変わり、初代と併売されるため当初は「FFジェミニ」と呼ばれていた。
「街の遊撃手」のキャッチコピーでCMでカースタントを行っていたのはまさにこの2代目で、CMでは合成やCGは一切使用していないものの、2台をジョイント棒で接続したりと言った細工は施されていた。
4代目からは自社生産ではなく、ホンダドマーニのOEMとなった。

・アスカ
フローリアンの後継として誕生した中型セダン。
こちらもGMの(ry
2代目からはスバル・レガシィの、3代目からはホンダ・アコードの名前違いとなった。
早い時期からOEM車になってしまったものの、いすゞが最後まで販売していた乗用車でもあった。

・ステーツマンデビル
デビルとはまがまがしい名前だが、正しい読み方はステーツマン・デ・ビル。
高級車市場参入のため、GM系のホールデンから同型車を輸入し日本仕様にしたものだが246台しか発売されなかった。
マツダのロードペーサーとは兄弟車にあたる。

・ビークロス
1997年に発売されたクロスオーバーSUV。
現在ではクロスオーバーSUVは珍しくは無いが、当時では珍しい存在であったため少々早すぎたモデルでもある。
サイモン・コックス氏デザインの近未来的な前衛的デザインが特徴であり、93年の東京モーターショーで「ヴィークロス」として発表されたデザインとほぼ同じもので市販化された。
2001年まで国内向けで販売されていたが、2002年は北米市場のみの販売となった。
余談だが、何故かゲーム「首都高バトル01」にも収録されている。

・パンサー
インドネシアで生産され、東南アジア地域で販売していたMPV型ワゴン・ピックアップトラック。
インドネシアの環境規制に適合できなくなったため生産を終了。

●貨物車
・ニューパワー
TD/TPの後継として誕生した大型トラック。ニューパワーは元を辿ると搭載しているエンジンの愛称。末期にはV型12気筒エンジン車も存在した。

・810
読みは「はちいちまる」。現在のギガのご先祖にあたる大型トラックで、車名は開発コードの810と、将来の「発展」をかけたもの。アーッ的な意味はない。絶対。

●バス
・BX
トラックのTXをベースにしたフロントエンジンバス。ボディはボンネットバススタイルとキャブオーバースタイルの2種類。
最後まで新車で製造されていたからか、何気に現在も動態保存されている個体が多い。

・ジャーニーK
中型バス。末期のモデルは傾斜したフロント1枚ガラスが特徴的だった。現在のエルガミオのご先祖。

・ジャーニーQ
マイクロバス。マイクロバスとしては一般的なフロントエンジン車だが、1986年のフルモデルチェンジ後はフロントエンジンのまま前ドアが設置可能に。路線バスとして使われる事例も出てきたが、エンジンの上に運賃箱が来る構造のため、運賃箱が壊れてしまう事もあった。
最末期のモデルはミッドシップエンジンとし、幅も大型バスに匹敵するサイズへと拡張している。

・キュービック
大型バス。現在のエルガのご先祖。10mクラスのキュービックLV系と9mクラスのキュービックLTの2種類があった。純正ボディはヨーロッパのトラックのパクリ影響を受けた大型1枚ガラスと左右の三角形の固定窓が特徴。LV系はV8エンジンを積んでいた。

・スーパークルーザー
大型観光バス。国産初のアンダーフロアコクピット車をスーパーハイデッカーに設定したり、2軸のまま車重が重くなりがちなスーパーハイデッカー車を設定したりとかなり挑戦的だった。

・ガーラ(初代)
スーパークルーザーの後を継いで発売された大型観光バス。2000年のマイナーチェンジで誕生した8TD1-S型エンジン搭載車は国産観光バス最高出力を誇った。

・エルガJ
日野自動車・レインボーHRの名前違い。長さ10.5m、幅2.3mのいわゆる中型ロング車で、いすゞが自社生産しなかった中型ロングのラインナップを埋めていた。
総販売台数は15台と非常に少ない。

■NAVi5のお話

NAVi5とはいすゞが開発したオートマチックトランスミッション(AT)。NAVi5は普通のATのようにトルクコンバータとプラネタリーギアの組み合わせではなく、マニュアルトランスミッションのようにクラッチと変速機が存在し、車速やアクセルの踏み込み量などに応じた制御をコンピュータが自動で行うのが特徴。

ある社内エンジニアが「カメラやオーディオなど生活の隅々にまで進出しているコンピュータをクルマにも使えないか」と考え、それを休み時間の雑談で他のエンジニアに話したところ若いエンジニアから共感され、プロジェクトはスタートした。藤沢工場でスタートした本プロジェクトは廃車寸前の1台のジェミニを譲り受け実験台に用い、業務の合間の休み時間や休日などに行われていた。走行に成功した頃、たまたま社長の目に留まり正式なプロジェクトになった。当時いすゞの乗用車に搭載されていたATは輸入品の3速ATで、他の国産乗用車が4速ATに移行する中、時代遅れ感が否めなかった。

そして実用化されたNAVi5は1984年9月に発表された初代アスカに初めて搭載された。直感的な変速操作とMT車と遜色ない燃費性能などで好評価を得たが、トルコンATに慣れた人達からすればクリープ現象がないなど運転の感覚が違うと好評価を得られなかった。このため乗用車では初代アスカと2代目ジェミニに搭載されただけだったが、トラックでは小型トラックのエルフに搭載され、中型・大型トラックへは発展型のNAVi6などが搭載された。
トラックだけでなく、大型路線バスのキュービックにも搭載された。横浜市交通局や京王電鉄などATを好んだ事業者に導入されたが、あまり普及しなかった。

NAVi5は当時のコンピュータ制御技術が追いつかなかっただけで、現在のスムーサーシリーズやDCTなどの普及を考えれば、コンセプトそのものは決して間違っていなかったと言えよう。


追記・修正は、いすゞの車に乗ってからお願いします。

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最終更新:2023年06月19日 03:11