壊れた神の教会/メカニト(SCP Foundation)

登録日:2017/07/11 Tue 13:08:59
更新日:2023/05/27 Sat 16:51:50
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この項目では、シェアード・ワールド「SCP Foundation」に登場する『メカーニズム(Mekhanism)』という信仰についてと
その実践者『メカニト/メカーナイト(Mekhanite)』、及び現代におけるメカーニズムを信仰している要注意団体『壊れた神の教会』について解説する。


概要

The Church of Broken God(壊れた神の教会)』は、ある機械の神様を信仰する宗教団体である。
ある事件で「壊されて」しまっているこの神様を信仰する人たちがメカニトとよばれ、信仰そのものはメカーニズムと呼称される。

なお、サーキック同様、財団はメカニトとひとくくりにしているが、メカニトの宗教団体が『壊れた神の教会』で、「壊れた神の教会=メカニト」ではない。
(異世界にお住まいだが)壊れた神の教会以外のメカニトもいるし、この場では『壊れた神の教会』を指す場合あることに留意して欲しい。

なぜかというと、壊れた神の教会には神様を復活させることを目的とし、自身を機械化することで神に近づこうとする『歯車仕掛正教』『マクスウェリズム教会』、機械のアノマリーを蒐集する『壊れたる教会』という紛らわしい名前の連中がいるせいである。

ただし神を蔑ろにする『プロト』『ネオ』と異なり、前者二派閥は自分たちの神格化が目的。まあ神様の復活が必要なら復活させる気はまんまんだが。

派閥

壊れたる教会/The Broken Church

職人はただ神にのみ答えるのだ
その手で彼の者の御身体を修復するために。
-構築者ロバート・ブマロ

ロバート・ブマロによって率いられる、もっとも主流な派閥。
『壊れたる神/Broken God』と呼ぶ壊れた神の復活を目指し、「元々は我々の神様の一部である」機械系のアノマリーを返還要求しているが、「はいそうですかお返しします」と財団が言うはずがないので敵対している。

気になるのは1946年に教皇となっているロバート・ブマロ。
壊れたる教会の構成員も体を機械化していないわけではないらしいので、若きイオンと話し、夏王朝と交流しているウンベルト・ブマロと同一人物ではないかという疑惑が立っている。



歯車仕掛正教/Cogwork Orthodox Church

神の意匠を鋳込む、我等は忠実なる者。
-総主教の図式

壊れたる教会から分裂した、自身たちの神格化を目指す団体。
日本のSCPコミュニティではこの呼称が一番使われる。
他派閥から『刻み屋(Tickers)』と軽蔑され、神を『MEKHANE』と呼ぶ構成員はカチカチ音がするアナログなサイボーグ体。
産業革命後期の機械も祈りの一形態とするこの団体の特徴は、蒸気や時計仕掛けのようなアナログ機械を至高とし、デジタル機械……いわゆるネットワークを唾棄する。

情報の共有が知識の散逸に繋がるとして嫌っていたプロメテウス研究所が倒産した際には手を叩いて歓喜したという。

つーかメカニトの歴史からすれば産業革命後期の蒸気機関や時計仕掛けも「新しい」部類なんですがねえ…。



マクスウェリズム教会/Church of Maxwellism

個性とはファイルシステムであり、それを通して私たちの主はコンパイルされるのです。
-Yogensha_No_Kotoba.txt

ネットワーク大好き、知識の共有大好きでコンピュータのファンノイズの中で祈るという歯車仕掛正教の対極。ネットワーク接続されたサイボーグたちが『WAN』と呼ぶ神様はネットワーク上に知識の断片として存在するため、信徒が接続して収集することで再コンパイルできるという考えを持つ。
ぶっちゃけリアルの座標に縛られないので中央組織を有さず、各支部はすべて対等な立場を維持している。

唸り屋(Hummers)』と蔑称される信徒はプロメテウス研究所(お得意様)の倒産で悲嘆に暮れたという。



古代メカニト

メカーニズムの信仰は紀元前にまで遡る。

かつてユーラシア大陸一帯には人間とは異なる種族「ダエーワ」が支配する異常な文明ダエーバイト文明があった。

これと同時期に存在する宗教組織という確固な形を取らずにMEKHANEを崇める信仰を古代メカニトと呼ぶ。
この中にはダエーバイトの圧政に耐えかねて崇高なるカルキスト・イオンに乗っかるものもいたが、そもそもイオンはなぜヤルダバオートの力を得ようとしたのだろう?

ある日、(ヤン)はこれにもはや耐えかね、夜に逃げた。彼は 不末(ブーモウ)という名の、伏義に仕える僧侶に会った。

不末は言った。「伏義は父たる蛇なり、金属の神なり、偉大なる知恵を纏ふものなり。もし汝が肉を銅に、骨を鉄に、臓器を絡繰に、血を水銀と換へば、汝の痛みは和らがむ。」

殃はためらい、断った。「もし我が肉体を捨てせば、我はいかで人ならむや?そは愚かなり。」

不末は嘆息して言った。「神に祈り助けを乞うは良し。されど母たる龍に祈るは悪し。」
Tale『蛇について』

MEKHANE(伏犠)を信仰する聖職者・ブマロに「体を全身ロボットにしちゃえばいいんだよ!」とイオンはアドバイスされる。
「ええ…(困惑)それはもう生きているって言えなくね?」とイオンは拒否するが、ウッソだろお前という顔で「MEKHANEを信仰するのはいいけど、ヤルダバオートは糞だぞ」とブマロは返した。

ここでMEKHANEから信仰対象を切り替えたのだろうイオンはやがてヤルダバオートの力を得、ダエーバイトを打ち倒す。
そのままサーキック・カルトが世界征服しはじめた頃に人ではなくなっていたイオンの討伐を決意したブマロはギャロスで打ち破り、イオンを異次元に追放した


夏王朝と古代メカニト

中国最古の王朝『夏王朝』はもともとメカニトの文明であった。
禹王がヤルダバオートの力を得ようとした裏で、異次元に渡った夏王朝の一部と『壊れたる教会』の教祖、ロバート・ブマロと交流を持っている。
調べようにも大羿射日で消滅したためその実態は不明だが、歴代の王*1が龍になる術を学び、国民は蛇になる術を学んでいたとされることから、MEKHANE(父なる蛇)だけでなく、ヤルダバオート(母なる龍)も信仰対象であったようである。







神格

MEKHANE(壊れたる神/WAN/ヤハウェ/伏犠)


壊れた神の教会全体で崇拝されている主神的神格存在。
派閥ごとに呼称も崇拝方法も異なっているが、SCP読者の間では概ね歯車仕掛正教での「MEKHANE」の呼び方が一般的となっている。
夏王朝では中国神話の創世の神の一柱である父なる蛇「伏犠」と解釈されている。

機械の体を持つということ以外具体的にどのような存在かは長らく不明であったが、
サーキック・カルトの存在が明るみになるにつれてこの神格の情報も徐々に記述されるようになる。

遥か古の時代、幾つもの多次元世界の果てにある虚無とも言える空間にて数多の世界、神々を生み出しては自らそれらを貪り喰らっていた強大なる邪神「ヤルダバオート」がある時に地球という星、そしてそこに住まう人類を生み出した。いつも通り喰らう為に。
しかし、その小さな命に気付いたMEKHANEは、ただ本能の赴くまま獣のごとく生きていた人類に干渉し、知恵を付くよう発達させる。いずれその知性で文明を生み、機械を生み作り出しそれを扱える叡智を授けた。やがては自らを崇拝させるように。
しかし、ただ自分が喰うための“餌”に余計なちょっかいを出されたことに気付いたヤルダバオートは怒り狂い、2柱の神は激しく戦いだした。
人類の支配権を賭けた凄まじい死闘の末に、とうとうMEKHANEはその身をバラバラに”壊されてしまう”。
しかし、「壊れたる神」は破壊された自らのパーツをもってヤルダバオートを封印する檻を作り出し、その中に閉じ込めることに成功した。

これ以降、MEKHANEはヤルダバオートを抑える封印となり自らも動けない状態となっているが、
古代メカニトの祖となる人間に自らを復元させるための設計図を精神に宿らせたり自らの力の一部を譲渡する、
神託という形で自らの意思を信者に伝えるなどこの状態でもある程度の人間への干渉は可能らしい。

またこの時に檻の構成に含まれなかったパーツは地球などに散らばり機械系オブジェクトとして財団に収容され、メカニト信者たちからは「神の体の一部」として返還するよう要求したり強奪の対象となっている。

現時点での人類に対しての認識はヤルダバオート達と異なり純粋に人類種の生存と発展を望んでいると思われるが、それが神の慈愛によるものか単純に崇拝者を増やして信仰により自らの力を増したいというメリットを求めてのことなのかは不明。
少なくとも人類への害意や悪意は無く、「にくにくしいもの」の侵攻の際には信者たちに神託を授け窮地に陥っていた財団を救っておりサーキックとの最終決戦においてもその存在の召喚、顕現を財団上層部も「人類を守るために必要なリスク」と容認しているものの、壊れた神の教会の教義や信仰方法の到達点が
いずれの派閥によっても「肉としての人間の体を捨て去り効率化された機械の身に魂を宿す」ことを目的としているため、
結局のところ人間やめて既存の人類社会や文明とは大きく異なる未来になる為、財団にとっては決して良い感情は持てないのが実情だろうか。

まだまだ謎の部分も多い神ではあるが、神喰らいの邪神であるヤルダバオートに唯一タイマンで互角に戦い相打ちになるその力から
財団世界においても多数存在する神格の中でも一般的な神や地球由来の神々とは比較にならない強大な神格であることは確かである。

他団体との関係

派閥ごとに異なるが、財団、世界オカルト連合とは基本的に全派閥が友好的な関係を築けていない。
蛇の手とはそれなりに交流はなくはないようだ。
プロメテウス研究所は歯車仕掛正教からは嫌われていた一方でマクスウェリズム教会はお得意様だった。

なんと言っても特筆すべきは、その宗教の成立の根幹から関わってくる、サーキック・カルトとの関係だろう。
そもそも肉体を唾棄するメカニトにとって、サーキック連中は元々から嫌悪感しかない。
サーキック(肉の)という蔑称をつけたのもメカニトである。
そのうえでブマロ率いる古代メカニトとの壮絶な争いもあって、サーキックとは明確に対立している。
しかし面白いことに、主流派閥たる壊れたる教会と、刻み屋の歯車仕掛正教がサーキックの実在を認識しているのに対して、
マクスウェリズム教会はWANのお告げがあるまではサーキックは既に滅びた御伽噺の住人と捉えていたのである。
財団やGOCよりも高度にネットワークで情報を共有し得る彼らがサーキックの実在を認識していなかった理由はなんなのだろうか?

壊れた神の教会または古代メカニトに関係するオブジェクト

  • SCP-808 - The Mechanical Choir (機械の聖歌隊)
高さおよそ16m、底面積およそ5m×6mの機械的な構築物。内部には様々な産業機械の部品がゆっくりと静かに動いている。
頂上には頂点部分は、女性的な身体つきと四本腕のやや人型に近い形状をした像が立っており、
起動している間は甲高いすすり泣くような音が聞こえる。また、攻撃をするとその音は大きくなり最悪死ぬとのこと。
資料によると、壊れたる神の帰還に備えて建造された歌手のような存在だったらしい。

当初は頂上部分として日本のファッションブランド「UNDERCOVER」が制作したドールの画像が使用されていたが、
現在は権利の関係上削除され、イラストに差し替えられている。

  • SCP-813 - Glass Shard (ガラスの破片)
ガラス製の彫刻。非常に脆く、ちょっとした力でも壊れ、しかも破片は考えられない距離まで飛んで人の目の中に入る。いたそう
その後視神経に入り込むが、こうなった人は一日の内数時間、一定の地点を見つめ続けるようになり、
時間が経つごとに一日の大半をそうして過ごすようになる。

壊れた神の教会はこれを、神の目であると推定して調査をしていたようである。

ひねりもないタイトルだが機械。Dr Gears氏(ギアーズ博士の中の人)によって2008年に執筆され、
以後2012年に壊れた神の教会との関連性を紐付けられ、現在は殿堂入りコレクションにまでなっている。

動力もないのに動き続ける、いかにもSCPらしいSCPな機械で、しかも歯車・ベルトなどが乱雑にくっついている。
金属の組成に一貫性もないが、やたら硬くてそれでいて優れた弾力性を持つ。溶断するだけでも数時間熱を当て続ける必要がある。
この機械が錆びていない時、近くにいる人は幻聴が聞こえてきて、絶えられなくなってこの機械にダイブして死んでしまう。
しかし海水中にあるときは普通の機械より早くサビつき、異常性もなくなる。



ちなみに、以前このオブジェクトに緑のスライムをかけた人がいた。
するとサビが見事ピッカピカに取れてしまい慌てて海水に投げ込んだ。なんで試そうとしたんだよ…。

とあるギリシャの島の浜辺。ここで海岸の侵食や落雷があると、いろいろな形の機械を生み出し、
それが想定され得るであろう機能を普通に有する。例えば時計ができればそのとおり時計として機能する。
壊れた神の工房であるとメカニトの経典では語られる場所であり、三派閥全部の図像をすべて保持している。

財団はかつてこの地を管理していたのだが、壊れたる教会が神のお告げの元、
本来仲悪いはずの歯車仕掛正教およびマクスウェリズム教会のメンバーと共同で財団に襲撃を敢行、
財団のメンバーまで彼らの身内になるなど多大な被害とともに奪取されてしまった。

しかしこの地の奪取に対して対処しようと財団、境界線イニシアチブ、そしてGOCが連合を組んだ時、
にくにくしいものの財団への襲撃が開始され――。

かつて存在していた夏王朝の現実改変兵器。
これを起動した蛇人間さんの語る神話を読み解いていくと、
メカニトとヤルダバオートの関係性が判明する。
ついでにビッグフットも出てくる。
ちなみにTale『蛇について』はかつて前漢を打ち立てた劉邦がこの蛇人間さんに聞いた話の記録である。


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最終更新:2023年05月27日 16:51

*1 皇帝を称するのは始皇帝以降