U19(漫画)

登録日:2017/06/27 Tue 22:57:08
更新日:2024/03/31 Sun 20:18:40
所要時間:約 10 分で読めます






僕の正義はゆがんでなんていない!!



U19(アンダーナインティーン)とは週刊少年ジャンプで連載されていた漫画。

2017年の『ぼくたちは勉強ができない』『ポロの留学記』『腹ペコのマリー』『Dr.STONE』『ROBOT×LASERBEAM』ら新連載6連弾における第2弾目。
連載期間は11号から28号(2月13日~6月12日)で全17話。
作者は木村勇治。2012年ジャンプネクストでデビュー、本誌では読み切り「PEACH PLUCK」「GARDEN」を掲載。U19が初連載となる。

●目次

概要

主な内容は、若者に絶望した大人たちが16年前に結党した「大人党」によるディストピアに、主人公ら未成年が反逆するという物。
これに当たって、抑圧された欲望によって発露する特殊能力「リビドー」で兵器を駆使する大人と戦う能力バトルの側面を持つ。
連載獲得まで期間があったこともあり、「能力解放の為に拷問されて泣き叫ぶ少年」のシーンを描くなどイラストや作風に独自の方向性や濃さはある。
その突飛な作風や一話どころかシナリオがネタにされがちではあるが、作者の高い画力を評価する声も多い。
背景の書き込みは全てアシの仕事だけどな!

あらすじ

そこは大人たちによって支配された絶望の国・日本。
横行する不条理と弾圧、その中にあっても子供たちはそれぞれの希望を胸に生活していた。
部活、恋愛、アイドルにオカルト...。
主人公・紅童衛児もまたこの不条理な世界に疑問を感じながらも、
幼馴染・朱梨への密かな恋心だけを希望の光として生きていた。
しかし、「大人党」の新政策によって二人は...。
少年よ、今こそ立ち上がれ。



登場人物

ガレージキッド

紅童衛児(くどう えいじ)
主人公。名前の由来は「紅衛兵」?
大人党の政策を気に入らず、ちょくちょく教師に反抗的な態度をとっている。そのため小学校中学校と友達が少なく鬱屈した毎日を過ごしていたが、
現在は同じように大人を嫌う同級生からは一目置かれるなどクラスで孤立する状況は免れている。
幼馴染の朱里とは両思いだったが、告白しようとした矢先に大人党の政策によって連れていかれてしまい、その過程でリビドーに目覚める。
能力の目撃者である担任を冤罪で追放し、ヒロインの顔見たさに警備の厳重な首都に仲間の制止も聞かず単身自転車で特攻。
潜伏していた対抗組織「ガレージキッド」は登場を余儀なくされ、能力と組織の存在がばれる羽目に。
最終話付近では、剣と化した自身の能力を投げつけ、パイロットが載ったままの戦車を大破・爆発させるなどの力を見せつける。

リビドー:「紅い糸(レッド・スレッド)」
小指から伸びる針と糸で様々な形を作り出すことができる。
眼鏡の人は「最弱のリビドー」「細い、脆い、見た目も地味。戦闘では何の役にも立たん」と酷評したが、衛児の裁縫スキルが組み合わさることで「何でも作れる」可能性を秘める。
初使用時にはその理屈でピッキングをこなした。
ただし、糸の強度が異様に強いため手に巻き付けて殴るだけでも常人の数十倍のパンチ力を叩きだせたりもしてしまい、到底「最弱」とは呼びづらい。
血から精製しているため使いすぎると危険…と思われるのだが、そういった描写は特にない。
針の成長率が異常で、発現してから数日で傷を縫って瞬時に治癒できるようになり、果ては戦車をも貫く巨大な針(もはや剣)になったりする。

月野朱里(つきの あかり)
ヒロイン。
遺伝子的に極めて優良な因子があったことが分かり、政府直下の学校に転校させられた。
生活レベルは上がったが品種改良政策で転校先でろくに知らないクラスメートと結婚前提の付き合いを指示される。
命令に対し衛児を思いだし拒否するなど一途な面がある一方、人との接し方が不慣れな「お相手」を人格否定レベルで罵倒し、同じようにパートナーの言動に悩む別の女子には付き合ってやればいいなど、感情にかなりムラがある。

七海夕哉(ななみ ゆうや)
眼鏡。鮭の人。例のシーンはコラの題材としてよくいじられている。
大人党に反抗を企てる秘密組織「ガレージキッド」のメンバーで、人情味はあるが規律も重んじて目立った行動はとりたがらない。
比較的落ち着いた性格に見えるが、皆のアイドル・谷先生を痴漢冤罪で追放した際、馬鹿笑いしていた。
後にヒロインに会いにこっそり抜け出した衛児を、GPSがついているのに丸一日以上見失うというポカをやらかした。
ちなみに、彼の名前は能力ではなく、主人公とヒロインが再会する橋渡しをするという意味で「七夕」からきているらしい。
紅童が谷先生を殴った時の笑顔が邪悪と専らの評判。

リビドー:「太刀斬(たちぎり)」
棒状のものを別の形状に変化させることができる。その威力は愛着に比例する。
作中では愛着のあるペンを刀へと変化させて、戦車の砲塔基部をぶった切った。
この際、3台並んだ戦車をまとめて一太刀で切っているようだが、長さについての言及がないのでもしかしたら13㎞くらいまで伸ばせるのかもしれない。

安室健(あむろ けん)
もじゃもじゃ頭。ゲーム好き。テコンドーもサッカーもやらない
度々泣き言を言っている。それ以外はあまり出番がなく、最終話付近でようやくリビドーを披露した。

リビドー:「電信操作(コントローラー)」
ゲーム機のコントローラーを様々な機器に接続し、自由に操作できる。操作方法の把握はどうやっているのか不明。
接続に力は不要で、戦車の装甲にでもOK。

合歓木眠木(ねむのき みんく)
名前は「ねむのき みんく」と読む。よく寝る子でガレキの希少な清涼剤。
寝てばかりで、それがリビドーのトリガーにもなるためか誰も注意しない。
リビドー:「無念夢想(ドリーマー)」
直前に見ていた夢を現実に反映させることができる。寝ぼけている間だけ有効で、目が覚めると効果が消える。
一旦寝て起きなければ発動できないと、ただでさえ制御しづらいのに眠木の夢次第で当たり外れがある(基準は不明)。

響音羽(ひびき おとは)
パンクな格好をした少女。ハチミツ飴をなめている。
敵陣に突っ込んでいった主人公を助けるために登場した。
ガレージキッドの宿敵・大和に能力の特性と弱点を看破され、無力化されてしまった。

リビドー:「絶響和音(シャウト・アラウンド)」
耳で聞き取った音を自身の声で再現することにより、それによって発生した事象を再現できる…はず。
作中では発砲音を複製し、弾を撃ち返したのだが、アサルトライフルの「ガガガ」という音に対して「バン」で弾を精製し、それによって相手の放った弾が銃口に戻るという謎効果を発揮している。
大音量を流して発声した音をかき消してしまえば無効化できてしまう。

大矢門人(だいや もんど)
角刈りのデカブツ。下ネタ好きで、少なくとも硬さには自信がある模様。
音羽とともに主人公の救援に駆け付けた。糸の能力を雑魚と罵っていたが、その多様性を見て華麗に掌を返したと思ったらまた雑魚呼ばわりしたりと忙しい人。
後述の能力のため、なまじ防御力に自信がある分、あえて攻撃を受けようとする気質が足を引っ張る形となって敗北した。

リビドー:「鉄骨隆々(ハード・ボーン)」
体を硬化させる。戦車砲の直撃でも傷一つつかない。傷は。
何故か作者的に硬化=重量増加ということらしく、高い所から落下すると物理的にあり得ない形状にレンガ床が波打つほどの衝撃を発生させる。
一方、体の内部は強化されないため、衝撃によって脳を揺らされたりすると昏倒してしまう。

尾宅等怜(おたくら れい)
オタクっぽい。
自身のリビドーを用いた長距離移動や新しいアジトの電力確保などガレージキッドのライフラインを一人で賄う等実質生命線と化している人。

リビドー:「絶対領域(マイワールド)」
空間に穴をあけ、別次元に通じるゲートを作り出せる。
なお、リビドーは何かしら制約や代償があるのだが、健・眠木・音羽・門人・怜の5人はそれが何か描写されずに終わっている。

班田公園(はんだ きみえ)
ガレージキッドのリーダー。唐突に血を吐くなど今にも死にそうだが、人柄は朗らか。
生まれた時から病弱で車椅子が欠かせない。そのため、誕生早々最低ランクに割り当てられ、親から親権を放棄された。
大人党に保護された後は、その治療のために一粒20万円もの薬を定期的に与えられていたのだが、無理矢理投与され生きながらされたと本人はとても否定的に受け止めている。だがその薬のおかげて今では寿命を削るリビドーを行使し大人党に牙を剥いているのは皮肉としか言いようがない。
その後は、問題児を徹底的に教育して都合のいい公務員に仕立て上げるための学校に引き取られるが、障害のこともあってまともに授業についていけず自習状態となる。
そして、とても高価な薬の支給を受けつつ、有害図書として没収された漫画を読みふける生活をしていた。
ガレージキットを結成し、大人党に反逆するテロリストになった切っ掛けはジャンプを読んだからである。
自分は国に生かされているの、ジャンプ主人公の少年は好きなように生きている、と彼が思ったからなのだ
そんな彼の屈折した人格故に、発現したリビドーは良くも悪くも強力なものとなっている。

リビドー:「健康勇良児(ヘルセルク)」
筋骨隆々な巨人に変身する。ミサイルを掴んだりもできる。
その代償は「寿命」ととりわけ重く、少し使っただけで5年も縮んだ。ただし、縮んでいることの判定が生命線の長さなので、本当に縮んでいるのか不明。


谷先生と鈴木くん

鈴木陽介(すずき ようすけ)
衛児のクラスメイトかつ親友の野球少年で、教室では衛児の後ろの席に座っている。
おせっかい焼きな性格らしく、常に教師に反抗的だった衛児に構っていくうちに打ち解けて友人となる。
衛児を散々ネタにした上に朱里の机を投げ飛ばすという奇行に走った谷の行動に堪忍袋の緒が切れ、彼に飛び蹴りをかまして生徒指導室に連れていかれる。
「一生野球ができない体にしてあげる」との谷先生のお言葉通りに、生徒指導室ではバッドを使った激しい暴行を受けていた。
その後、谷先生を痴漢冤罪で追放するための準備として衛児の能力によって指導室の天井に亀甲縛りで吊るされた。
モデルは作者の中学時代の友人とのことで、当時人見知りが激しかった作者に気軽に接してくれた恩人らしい(鈴木同様にかなりの野球好きだった模様)。
再登場した時は折れた腕が逆になっていた


谷先生
衛児のクラスの担任で社会科教師。全体での立ち位置は中ボス。みんなのアイドル(※むさ苦しいおっさんです)。
物語冒頭で女子生徒の頭をバリカンで刈ったり冷え性の女子生徒から校則違反の上着を奪い取って切り刻んだり祖母の遺品らしいピアスを無理矢理引きちぎったり、と横暴な人物として描かれる。
過酷な体罰をするが校則は概ね順守しており(度合いは学校ごとに異なるが、作中の学校は体罰を認めている)、セクハラなどはしない。
上記の行いにしても、
  • 髪を刈る前に何度も注意している。
  • ちぎったピアスもそもそも校則違反品で奪った後もちゃんと保管していた。
  • 切り刻んだ上着もそもそも衣替えが済んだ6月になっても着ていたため。
などとむしろ生徒の行いに不備がある様子が見受けられる(左利きの生徒を責めるなどの流石に横暴な行為もあるがそれが谷先生だけが決めたルールか大人党が決めたルールなのかは不明)。
逆に問題児扱いしている衛児が自分の父親はD(最下位)ランクとしてキツい仕事をしているがそれも町を支える立派な仕事だと公言した際には「ランクで差別しないのは立派なことだ」と素直に褒めているため、読者と作中生徒の温度差が広がる要因の一つである。

朱里が転校した翌日、急に豹変し、朱里の机を窓を壊してでも投げ飛ばすという奇行に走った(これについて読者からは…察して)
その後、リビドーの目撃者として不幸にも追放ターゲットとして衛児らに目をつけられていたこともあり、男子生徒へのSM行為という痴漢冤罪を食らうという悲惨な目に遭う。

大人党

四季大和
大人党の党首で内閣総理大臣。即ちラスボス。爪をとがらせるという謎おしゃれをしている。
優れた遺伝子を持つ日本人を、より完璧な存在である「旭民」(きょくみん)として作り替える民族改良計画を推し進める。当然、その過程で下位ランクの国民は切り捨てるつもりでいる。
最終目的は「第二次大戦の報復」ならびに、日本による世界征服「日本統世」の実現である。
完璧な国民を生み出すために遺伝子改造などの人体実験も繰り返しており、その過程で生まれた試作体は人間扱いをせず道具のように使い捨てるなどの非情さを見せる。
一方で、双眼鏡を貸してくれた部下にも礼を言う、部下を助ける、異能力者を前にしても毅然とした態度を崩さず弱点を看破するなどカリスマ性はある。

「子供は娯楽禁止」など悪党描写も多いが、彼が率いる大人党が行った政策が
  • ランク毎に差はあるが、ランクを問わず就職率及びマイホーム率100%
  • 最下位ランクであっても職と住居(団地)が保証されるなど福利厚生は手厚い。*1
  • 多少の体罰を容認することで子供の学力向上を成功させる
  • ランクの高い教師であっても性犯罪は許さない。前述の谷先生は、生徒からの通報だけで他の教師から取り押さえられた
  • 体の骨がグニャグニャになるという生まれつきの奇病を持ち親権放棄された班田公園に対して養護施設*2に引き取った上に、一粒20万円という高価な薬を支給し、作中世界では最上位ランクである公務員になれるように教育も与え、その勉強に付いていけなかったとしても、彼には自習時間を与えてその時間で禁制品である漫画を読みふけってもお咎め無し。という凄まじい優遇をする。
  • 個人財産没収の描写はない
  • ネット制限しているという割にはオカルトサイトは問題なしで子供たちもネットが使用できてスレや動画の閲覧とかが普通にできているしかも授業中に
  • 最終話で危険思想を持つ子供を大人と同じように罰する法案が可決されたが。逆に言うとそれまでは「危険思想を持っていても子供は罰せられなかった」=「子供は法律で守られていた」ことになる。
  • ↑の法案が可決されたのは1ヶ月後という事はきちんと審議にかけて内閣を通して承認、施行したという事になり、全然独裁ではない事になる
  • 政権発足以降政党支持率80%を維持している。つまり、20%の反対派がいるのだが、大人党がそいつらを弾圧している描写は無し
など世界征服を狙う割には緩い。政権をとったのも普通に選挙で国民に選ばれたからである。
これについては作中4話にて、Twitter股間メダルの事件後、「最近の若者は」と呆れた大人達の支持を集めた為大人党が当選。「超少子高齢化社会」もありほぼ大人の意見のみが反映された結果とされている。更に支持者の中には選挙当時の就職氷河期や学力格差による就職難に直面していた当時の若者も含まれている。ここでは大人による子供への弾圧をテーマにしている為、この作中世界においてはツッコミ所ではない。
後、「第二次大戦の報復戦争を仕掛ける」という目的も七海の推測に過ぎず、国力をあげての富国を目指しているのでは?という説もある。(→作中8話5ページにて、四季自身が片腕を掲げ「日本統世」「これは第二次大戦の復讐だ」と発言するコマが有る事からこれは間違い。)


淀水アキラ(よどみ あきら)
若くして大人党科学省大臣を務める女性。
隈の深い陰気な目が特徴的。『リビドー』に対し並々ならぬ興味関心を持ち、
知識欲を満たすためなら率先して前線に出ることも厭わないアグレッシブな性格のマッドサイエンティスト。
四季と同じくガレキのリビドーを一目見ただけで特性と弱点を看破するなど知力、観察力共に優れる。
…が、四季への忠誠心こそあれど自分の欲望が最優先になりがちなのか、都市の1区画を潰しかねないような兵器の使用を嬉々として行おうとするなど根は冷酷で過激。

瀬川素張(せがわ すばる)
政府直下の学校に転校させられた朱里の「お相手」。
イケメンで常識人そうではあるのだが「飲み物をシェアしようとする」などの人との接し方が下手で彼女からは拒絶された。
親や先生、同級生にも愛されなかったトラウマを持ち、衛児に朱里を連れ去られそうになった際にリピドーが発現してしまう。
ハサミに糸の相性から一時は衛児を圧倒していたが、戦いの最中に「自分はまだ子供なんだ」と泣きじゃくる彼の姿を見て、スデゴロへと切り替える。
結果、衛児との戦いの末に負け、仲間になるのを誘われずに置いていかれた結果、
大人党のリピドー研究の実験台の1人にされてしまった。谷先生と並ぶかわいそうな末路をたどった人。
ただし、本当に彼なのか別人なのかは不明。

リビドー:「嫉妬鋏(エンヴィシザー)」
巨大なハサミで対象の体を切り裂く。
ただ、本作初の能力バトルは先述の理由によりお開きに。


追記修正は自分より強い者に抗う心を忘れない人がお願いします。

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最終更新:2024年03月31日 20:18

*1 最下位ランクである主人公の親は仕事を定時で終わらせた後で家でビール飲みつつ子供と雑談できる環境を持てており、節約さえすればほぼ毎日晩酌ができる模様。

*2 通常の養護施設ではなく大人党が極秘に運営する施設で問題のある子供に大人党の思想を植え付けて都合のいい大人に育成することが目的だが、裏を返せばどんな問題児でも公務員にする施設ということである。