化け狐・化け狸

登録日: 2017/06/02 Fri 22:58:30
更新日:2024/02/07 Wed 00:16:49
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現在この項目は 【提案所】肥大化項目記述独立・簡約化等議論所 において、
記述の独立・簡約化の議論対象となっています。本項目に詳しい方のアイディアを募っています。



――おいらにしてみりゃ、きみはほかのおとこの子10万人と、
なんのかわりもない。
きみがいなきゃダメだってこともない。

きみだって、おいらがいなきゃダメだってことも、たぶんない。
きみにしてみりゃ、おいらはほかのキツネ10万匹と、
なんのかわりもないから。

でも、きみがおいらとなかよくなったなら、おいらたちはお互い、
あいてにいてほしい、って思うようになる。

きみは、おいらにとって、世界でひとりだけになる。
おいらも、きみにとって、世界で1匹だけになる――

――「星の王子さま」(サン・テグジュペリ)より
キツネの言葉



化け狐・化け狸とは、人や魔物などに姿を変えたり幻を見せて人を惑わすなどの怪異をなす狐・狸
(もしくはそれが妖怪や魔物に変じたもの)のことである。

日本では古来より狐や狸が多数の伝承・民話の中に登場している。
獣の妖怪としては最も古くから存在しかつ最もポピュラーなものだろう。

なおこの項目では、あくまで「霊的な怪異をなす」狐・狸に限って扱う。
実在のキツネ・タヌキはもちろん「ごんぎつね」のように知恵を持ち人語を解するのであっても、
妖術を使い人に化けたり人を惑わしたりなどといったことをしないものは除外する。









【概要】

狐・狸はいずれも日本の山林に生息する食肉目の中型獣である。
彼らは犬ほどに人に慣れることはなかったが、それでも人里の近くまでをその生息域とし人と関わりあいながら生きてきた
基本的には家畜を狙い畑を荒らす害獣としてだが、それと同時に彼らはネズミをはじめとした他の害獣を追い払う益獣でもあった。

そんな彼らは、中国からの文化伝播により怪異をもたらす獣として知られるようになり
人に災いをなすこともあれば力を貸すこともある身近な妖怪として扱われたのである。

その生態や起こす怪異などには共通する点が多い狐と狸であるが、
それでも両者のキャラクター性にはかなり大きな違いがある。

【化け狐】

○中国における狐について

獣が年を経て妖怪変化へと転ずるという考え方が成立したのは、中国から伝わってきた伝承の影響が大きい
狐もその例にもれず、50年生きると女性に化けることが出来るようになると言われた。
さらに100年生きると美女や巫女、男性に化けられるようになる上に天眼通を身につける
1000年を経れば天に通ずるようになり、体毛は金色に輝き尾は9本に裂ける。
そして日月の宮殿にて天帝に仕える、狐の最高位である天狐となるのである

最終的には神に等しい存在となる化け狐も、その過程では人を惑わすこともあった
陰陽思想では狐は「陰」に属する獣であり、同じく陰に属する女性に化けることが多かった。
特に仙孤となるための修行法に「人間と交わって精気を吸い取る」というものがあったため、
下位の狐はよく男の精気を狙って女性に化けて近づいてきたのである。

それ以外でも化け狐は雌であったり、雄雌問わず女性に化けたりなど中国に限らず世界各地で女性と結び付けられることが多い(後述)。
これらのイメージは仏教とともに日本に伝えられ*1、人をたぶらかし仏や僧に退治される悪しき化け狐が成立した。

しかし、もともと狐は人里近くに棲む身近な獣でもあった。
さらに日本では、もともと狐は魔物ではなく神の使いであった。
日本の狐はこれらのイメージが混然一体となり、化け狐は悪しき魔物・神の使者
そして身近な妖怪として広まっていったのである。

三狐神

本来は狐そのものではなく、また狐であったとしても「化け狐」のカテゴリには間違っても入らない存在だが、
「日本における霊的存在としての狐」といったらこの神だけは絶対に外せないため例外的に記述する。

三狐神(ミケツカミ)。本来は「御饌津神(御食津神)」と書き、食事・食物を司る神の総称
体内から取り出した食物で素戔嗚命(すさのおのみこと)をもてなそうとして斬られた大気津比売神(おおげつひめのかみ)をはじめ、
保食神(うけもちのかみ)豊宇気毘売神(とようけひめのかみ)若宇迦乃売神(わかうかのめのかみ)あたりが有名。

しかしこれらの神々の中でも「三狐神」の文字を当てられるのはただ一柱、宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)のみである。

宇迦之御魂神は伊弉諾命(いざなぎのみこと)伊弉冉命(いざなみのみこと)の娘とも、素戔嗚命と神大市比売(かむおおいちひめ)の娘ともいわれ、
「倉稲魂命」とも書かれるように稲魂・稲倉の神であり五穀豊穣をもたらす神としてあがめられた。

やがて宇迦之御魂神は同じく稲の神である稲荷神と習合され、他の御饌津神たちや
密教の荼枳尼(ダキニ)天までもを取りこんで稲荷神社の主祭神として全国に広がっていき、
「正一位稲荷大明神」として広く知られるようになった―



― すなわち お稲荷さまのことである。



お稲荷さまは現在食の神から発展し商売繁昌・産業興隆・家内安全・交通安全といった日本の生産活動全般の守護者となり
天照大神八幡大菩薩をも超えて日本第一の分社数を誇る主祭神となっている。
そのお稲荷さまの使いと呼ばれるのがである。

その後日本でも「白面金毛」「狐憑き」など悪狐の存在が広まっていったが、
稲荷神(あるいはその使い)としての狐はついにその神性を失うことなく
現在に至るまで日本でもっとも信仰を集める神の一柱として存在し続けている
詳しくは個別項目を参照。

○玉藻前(白面金毛九尾の狐

冒頭で述べた通り「九尾の狐」は中国における化け狐の最高位に属するものである。
その名の通り9つに裂けた尻尾を持ち、人間の道士をはるかに越える神通力をあやつるが
もはや天界の住人なので人と積極的にかかわることは無くむしろ吉兆を示す瑞獣として知られ、基本的には人間に害をなす存在ではない
なので本来は固有名詞でもなければ悪しき狐でもない。


しかし、九尾の狐のなかでも白面金毛と呼ばれるもの…
金色の毛並をもち顔を白毛で覆われている狐というと、ただ1体。


殷の紂王の妃、妲己(だっき)

天竺においては耶竭陀(マガダ)国の王子班足太子(はんぞくたいし)の妃、華陽夫人(かようふじん)

周王朝では幽王の妃、褒姒(ほうじ)

そして日本に渡り、鳥羽上皇の側女(そばめ)玉藻前(たまものまえ)となった妖狐。




アジア全土をまたにかけ、それぞれの国家の王をその美貌色香で惑わし骨抜きにして

暴政をしかせて国を傾け人々に恐れられた大妖怪の名である。




その名はあらゆる妖怪の中でももっともスケール、存在感の大きいものとして知られており、
日本で「九尾の狐」というとたいていはこの白面金毛九尾の狐を指す。
その存在はお稲荷さま同様狐という枠を超え、半ば恐怖・邪悪の象徴とまで化している。
詳しくは個別項目を参照。



また、この妖怪の原型は古く室町時代に遡り、当時はまだ 三国を股にかける設定も、九本の尻尾も金色の体毛もなく
日本国の帝を惑わす 二尾の白狐「玉藻前」 伝説として知られていた。
これが後にインド、中国の王を惑わした毒婦と同一人物=生まれ変わりとされ、今日知られる物語へと到る。



葛ノ葉

三狐神が神としての狐、白面金毛が悪しき狐の代表ならば、
人と身近な存在としての狐を代表するのはこの信太(しのだ)の森の白狐、葛ノ葉(くずのは)だろう。
摂津国の人安倍保名(あべのやすな)は、和泉国の信太の森を訪れた際、狩人に追われていた白狐を逃してやる。
その際手傷を負ってしまった保名の前にひとりの女性が現れた。彼女は保名を介抱し彼の家まで送り届ける。
その後も女性は幾度となく保名を見舞い、いつしかふたりは恋仲となった
ふたりの間には男児がもうけられ、童子丸と名付けられた。

親子3人は仲睦まじく暮らし、童子丸は利発な少年として成長した。
しかし彼は5歳のとき母親の秘密を目の当たりにしてしまう。
庭で白菊の花に見蕩れていた母の顔が、狐の面相に変じていたのだ。

その顔に恐れおののき泣き叫ぶ童子丸、そしてそれをいぶかしむ乳母の前で正体をわが子に見抜かれたことを知った女性は己の身の上を語りはじめる。
自分は信太の森で、保名に救われた白狐であると。

子を寝かしつけた女性は、夫保名に書置きを残す。
己の正体、今後のこと、夫への子への想いに別離の哀しみを切々としたためて息子に託し、
最後に障子に一種の歌を書き残し、一人静かに去っていった。



― 恋しくば 尋ね来て見よ 和泉なる  信太の森の うらみ葛の葉



この女性こそ、信太森稲荷の使い葛ノ葉である。


保名は葛ノ葉が残した歌の通り、童子丸とともに信太の森を訪れる。
白狐の姿で現われた葛ノ葉は、夫と子に稲荷大明神からさずかった宝具を託す
童子丸は宝具の力で魔を討ち払い、さらに陰陽術・天文道を修め、長じて陰陽師・安倍晴明(あべのせいめい)となった。
そしてその子孫安倍泰親(あべのやすちか)が、中国から渡来した大妖狐白面金毛九尾の狐を迎え撃つことになるのである。
白面金毛の伝承は、日本の狐と中国の狐の対決でもあるのだ(当該項目参照)

なお葛ノ葉の伝承についての詳細は当該項目を参照されたし。

○その他

●寺社にまつわる狐

他に著名な化け狐というと、寺社関連の者たちがまず挙げられる。
神仏の教えを修める彼らは、より位が高いと言われる男性に化ける狐が多い

主なものとしては、入山式で般若湯を飲み正体を現してしまったにもかかわらず
常日頃から真摯に学問にはげんでいたため入山を認められ境内に棲むことを許された橋門の伝八(でんぱち)
和泉国少林寺で住職を50年ものあいだ務め上げた白蔵主(はくぞうす)
白髪の翁の姿で吉凶を占い法話を説いてきたが、熱すぎる風呂につかったせいで正体を現し雲隠れした放菴(ほうあん)
和尚の使いで書状を届けに行くが泊まり先の猟師に撃ち殺されてしまう興禅寺の蛻庵(ぜいあん)など。

●狐女房

葛ノ葉のほかにも、人と情を交わし子をなした狐は多い。
そういった異種婚姻の話全般を「狐女房」と呼ぶ。

日本霊異記(にほんりょういき)」には人の妻になり子をもうけたが、正体を知られ逃げ去ろうとした狐の話が載っている。
夫は彼女に「帰つ寝(きつね)(帰ってこい、共に暮らそう)」と呼びかけ、それ以後もこれまでどおり共に暮らした。
この時の呼びかけが、キツネの名の由来になったのだという*2

他にも木幡狐(こわたぎつね)など、人と狐の婚姻はだいたい離別によって終わる悲恋の物語となることが多い。
ただ当然のように、情を交わすとみせかけて化かされだまされ捨てられるパターンも多いが…
また前述の信太妻のように、別れた後に残された子が優れた能力を発揮するという話も多くみられる。

●身近な狐

雌狐だけではなく雄狐も人に恩義を感じたり忠義をたてたりして尽くすことは多い。
飛脚より早馬より速い脚で早文をとどけ殿様に重宝されたが、鼠の天ぷら*3の罠にかかって命を落とした
桂蔵坊(きょうぞうぼう)が有名。

ただ、最も多いのはやはり人を化かしてやりこめる話だろう。
この場合の狐はだいたいにおいて小才をひけらかすひねくれ者であり、
人間あるいは狸など別の獣をはなから見下して一杯食わせようとするが、
それを見抜かれて反撃され、ほうほうの体で逃げかえるというパターンが多い。

また逆に狐なんかに騙されはしない、俺には怖いものなどないとうそぶく人間たちを
騙しすかしていたぶってこてんぱんに叩きのめす話も多く残っている。

こういった「化かす狐」はそれこそ数限りなく存在するが、その中でも名のあるものを挙げるとすれば
妙齢の美女に化けるのを得意とする「おさん狐」だろう。
おさん狐はしばしば男をその美しさでたぶらかして手玉に取り、その仕返しに殺されたり手ひどく痛めつけられたりしてしまうことが多い。

しかし多くの眷族を引きつれた風格ある狐であった、化かしもだましもせず月夜の下で男らと酒をくみかわしていたなどという
人々の善良な隣人としての言い伝えもなされており、西日本を中心に九州から東北まで日本中にその名を残している。


○狐がもたらす怪異

●狐憑き

狐に限らず、霊的な存在が人に憑依する現象のことを「憑き物」と呼ぶ。
憑き物の多くは獣の霊、あるいは妖魔のたぐいで、憑りついた人にあらぬことを口走らせたり
奇怪な行動をとらせたり、さらには凶事や怪異を引き起こしたりさえする。

人につく獣としては狸や蛇や犬・狼に猫、妖怪としては天狗や河童あたりがよく知られるところだが
この中でもっとも広く知られているのはやはり狐によるもの、狐憑きだろう。

狐はしばしば女性に憑りつき、前述したような常軌を逸した言動…
現在で言うところのいわゆるヒステリー症状を引き起こすとされた。
人に憑く狐としては以下のものが知られている。

  • 尾裂狐(おさき)
    • 関東に伝わる化け狐で、その名は「尾が裂けた狐」の意味。その名の通り複数の尾を持ち、動きは素早く神出鬼没。
      しばしば群れを成して現れ人を惑わすという。
    • ただその姿と大きさは狐というよりもむしろネズミに近いらしく、ネズミとイタチの合いの子のようだとか
      ハツカネズミより少し大きいくらいだとかなどと描写される。
      体毛はまだらで、背中に白い斑点があるとか頭から尾まで黒い一本線の条紋があるなどと言われている。
  • 管狐(くだぎつね)
    • 中部地方に伝わる狐。名前の通りに竹筒に入るほど細長い体型が特徴。
      しばしば筒に入れられたまま持ち運ばれ、主人の命令に従い飛び出してきたとされる。
      さらに繁殖力が非常に強いとも伝えられ、正体はオコジョではないかと言われている。
    • また飯綱(いづな)という呼び名もあり、これは飯綱権現(いづなごんげん)の行者たちに使役されたところからきている。
  • 野孤(やこ)
    • 単に位の低い狐、野良狐を指す場合もあるが、化け狐としては九州に伝わる人に憑く狐のことである。
      姿は黒いイタチ・ネズミに似ており、しばしば群れを成した。
      脇の下から人の中に潜りこみ、これに火傷の生傷や病でできた(かさ)をなめられると死ぬと言われる。

これらの狐は野山に潜み見境なく人に憑くこともあるが、悪しき意志を持った人間に飼いならされ、主人にけしかけられて特定の人間に憑くこともあった。
その術は修験者巫術士のほか、その才能を持った血筋…憑き物筋と呼ばれる家系の者たちに伝わり、
狐憑きは白面金毛とはまた違う身近な恐怖をまとって人々の間に浸透していったのである。

そしてその恐怖は、現代に至るまでなお残り続けている。
現代文明のもとではすべての俗信や迷信が消え失せたかのように見えるが、
実はそれらは社会の裏側でなおその恐怖とともに息づいており、ほんの少しのきっかけさえあればたちまち息を吹き返すのだ。(後述)

●狐火・狐の嫁入り

夜の闇に浮かぶ妖しい火、いわゆる鬼火の一種で、狐のしわざとされるものを狐火と呼ぶ。
その名の通りしばしば狐とともに現れ、赤あるいは青みを帯びた炎がゆらゆらと人気のない山林をただよっていたという。
特に蒸し暑い夏の夜に現れ、近づこうとすると消え失せてしまったり、逆に離れようとすると追いかけてくるとも言われる。
また大量の狐火が一列につらなって現れる現象は狐の嫁入りと呼ばれた。*4
これらは死骸をあさった狐の鼻先に付着したリン成分によるものという説がある。


【化け狸】

○中国における「狸」について

「化ける獣」の代名詞として狐と並び称されるとは、やはり中国から伝わってきたものである。
陰気の獣である狐と対照的に狸は陽の獣とされ、狐と同様人を化かし精気を吸い取ったとされる。

ただし中国における「狸」とはタヌキではなく大型のヤマネコのことを指す。
「狸」という存在はその文字ごと狐とともに伝播してきたが、日本にはヤマネコに相当する生き物がいなかったため
ヤマネコと同じように山林にいた獣、タヌキの字としてあてられたという。

なので日本の化け狸は当初は中国の伝承そのままに、ヤマネコと同じように時には人にさえ襲いかかる獰猛な魔物として扱われた。
しかし日本のタヌキは本来穏やかで臆病な性質の生き物である。
しかも人里近くに棲みつきしばしば人目に触れ、時には養殖もされて人間たちと共存していた。
なので時代が下るにつれて、臆病だが人なつこくひょうきんで、知恵者だがどこか少し抜けており、
良きものであれ悪きものであれ自分の想いにまっすぐに、どこか哀しい生き様を見せる。
そんな身近な愛すべき妖怪として定着していったのである。

また狸は庶民的な存在としてのイメージが強いが、俗に狐七化け狸八化けというように化け術に関しては狸が上とされることが多い。
ある意味化かしあいにかけては妖怪変化にも劣らない人間の庶民たちを常に相手取っているからだろうか。


○カチカチ山

日本で一番有名な化け狸といったら間違いなくこの話に登場する狸だろう。
もはや説明の必要もないだろうが、いちおうかいつまんで話の内容を整理すると…

老夫婦の畑に悪さをしていた化け狸は、ある日ついに罠にかけられ捕らえられてしまう。
ところが狸鍋の準備をしていたお婆さんをだまして脱出したあげくお婆さんを叩き殺して鍋で煮込み
さらにお婆さんに化けてその鍋をお爺さんに食わせてしまう


じじいが婆汁食った、じじいが婆汁食った!

正体を現しあざけり笑って山へ逃げ帰る狸。
お爺さんは仇を討つべく知り合いのウサギに相談する。

ウサギは悪狸を成敗するべく柴刈りに誘い出して、狸が背中に背負った柴に火をつけた
その上に薬と称して火傷の上からトウガラシ味噌を塗りたくった

傷の痛みに身もだえする狸を今度は漁に誘い、大船に見せかけた泥船に載せる。
そして船とともに沈んでいく狸を櫓で殴り沈めて、ウサギはお婆さんの仇を討ったのである。

この話での狸は、このあと紹介するものも含めた日本の数ある化け狸たちと比べても飛びぬけて凶悪である。
ウサギの報復も大概だが

それもそのはず、この話が成立したのは室町時代末期
まだ化け狸が凶悪なものとして認知されていたころの話なのだ。

カチカチ山の話は後世でも勧善懲悪の物語として長く語り継がれていったが、この話での化け狸のイメージはその後一般的なものにはならなかった。
江戸時代には悪だくみをするのでもたわいないイタズラで終わったり、うまくいく前に見抜かれやりこめられてしまったりと
どこか間の抜けた人間臭い化け狸の物語が主流となっていくのである。
これは恐らく都市化によってタヌキが身近なものになったことによるものだろう(後述)

○日本三大狸話

日本で最も有名な狸話は「カチカチ山」であろうが、「日本三大狸話(伝説)」に数えられる話は以下の3つ。
どれもカチカチ山に劣らない知名度を持ち、現在に至るまで老若男女だれもが知る名作である。
またこれらの伝承に登場する狸たちは化け狸の枠を超え、それぞれが舞台となった寺社で篤く祀られており
いまも地域の人々の身近な存在としてあり続けている。

●文福茶釜

下手をするとカチカチ山よりも有名かもしれない、日本を代表する昔話の一つ「文福茶釜(ぶんぶくちゃがま)」。*5
茶釜の中から手足を出した狸が傘を手にして綱渡りを披露するさまは広く知れ渡るところだろう。


茂林寺の和尚が買ってきた古い茶釜で湯を沸かそうと火にくべたところ、茶釜が「熱い!」と悲鳴を上げた。
和尚は薄気味悪がって、茶釜を古道具屋にただで譲ってしまう。

古道具屋が茶釜を持って帰ってためつすがめつしてると、どうやら狸の化けたものであるようだ。
観念した狸が語ったところによると、化けているうちに茶釜から元に戻れなくなったのだという。

同情した古道具屋は元に戻れるまでここにとどまるよう促す。
その恩に感じ入った狸はみずからを見世物にすることを持ちかける。
言うがままに小屋を立てて客を呼び茶釜狸の芸を見せたところこれが大当たりし、古道具屋は食うに困ることが無くなったという話である。

他にも親狸が子狸のために金を稼ごうと茶釜に化けて寺に売られていった、
老夫婦の世話になった狸が茶釜に化けて寺に売られたが火にかけられてほうほうの体で逃げだしていったなど様々なバリエーションがあるが
いずれも「恩返し」の話であるところは共通している。

  • 茂林寺の釜
    実在する寺院である群馬県茂林寺に伝わる、文福茶釜の元になったと言われる伝承。
    ただ昔話のほうとは大分趣が異なる。
    応永年間*6に茂林寺で住職を務めていた僧侶守鶴(しゅかく)は、
    汲んでも汲んでも湯が無くならないという不思議な茶釜を持っていた。
    本人もまた立派な僧であり7代にわたって学頭を務め上げていたが、
    ある日昼寝をしていたところうっかり大きな狸の尻尾を出してしまう。

    守鶴は実は齢数千年を経た古狸であり、天竺で釈迦の説法を受け入滅を見届け中国を経て日本に渡り僧となったのであった。
    正体を知られた守鶴は、自分が見てきた釈迦の姿を弟子たちに幻で見せ、寺を去っていったという。

●證誠寺の狸囃子

漢字で書くといまいちピンと来ないかもしれないが、
「しょうじょうじのたぬきばやし」と音読すればまずわからない人はいないだろう。

野口雨情の手による童謡「証城寺の狸囃子」の元となった説話である。


♪ しょ しょ しょうじょうじ

しょうじょうじの 庭は

つ つ 月夜だ

みんな出て こいこいこい ♪


このリズミカルな歌詞は、日本人なら知らない人はまずいない。
舞台となった證誠寺は千葉県木更津市内に実在し、證誠寺の狸囃子はこの寺に伝わってきた伝承である。


證誠寺はもともとうっそうと生い茂る竹林の中にぽつんと建つ、さびれた寺だった。
昼でも薄暗いこの寺には、夜ともなれば大入道やらろくろ首やらが出てくると噂された。

そんな噂を知ってか知らずか、この寺に新しく一人の和尚がやってくる。
はたして夜となると、噂通り数々の妖怪たちが次々と現れた。
ところがこの和尚、妖怪どもたちを目にしてもまったくひるむ様子もない。
すると今度は、寺の庭からお囃子のような音が聞こえてきた。

実は寺に現れた妖怪たちはこの付近に住んでいた狸が化けて出たものだった。
彼らは妖怪を見ても平然としている和尚の姿がしゃくに障り、なんとか驚かせてやろうと思案する。
そして親分格の大狸が思いついたのは、狸一族総出で狸囃子を行うことだった。
親分狸が腹鼓を打ち、子分がそのまわりではやし立てればきっと驚くに違いないと。
どうしてそうなった

だけれども、その様子を見た和尚は驚くどころかその楽しそうな様子につられて自慢の三味線を持って縁側に座り囃子に合わせてかき鳴らした。
狸のほうもさらに意地になって腹鼓をうち歌を歌い、さながら音楽合戦のようであった。

しかし4日目の夜、狸囃子はぴたりと止んでしまう。
翌朝庭に出て見ると、腹鼓のうち過ぎで腹を破ってしまった親分狸の死骸が転がっていた。
和尚は不憫に思い、親分狸をねんごろに弔ったという。

なお狸囃子は證誠寺が有名だが、日本全国に伝わっている怪異でもある(後述)

●松山騒動八百八狸

伊予国(愛媛)松山に伝わる、他の三大話の中でもひときわ異彩を放つ伝説。
享保の大飢饉に際して起こったお家騒動を狸話と交えて講談にしたもので、松山城の守護者であった八百八匹の狸たちを描いた物語である。

彼らは天智天皇の御代から松山の地に棲みつき、城内の家臣からも城下の民にも慕われていた。
だが彼らはお家騒動の際には謀反側に利用され、松山城内でさまざまな怪異を巻き起こしたのだ。

そんな彼らを率いていたのが狸の本場四国の中でも三大狸として称えられ
さらにそのなかでも筆頭格として名高い伊予(いよ)刑部(ぎょうぶ)



隠神刑部(いぬがみぎょうぶ)である。



隠神刑部と八百八狸は心ならずも謀反側に協力していたが、最期には討伐されて久万山の岩屋に封じられてしまう。
この物語の顛末は個別項目を参照されたし。


○日本三名狸

日本を代表する狸の伝承の中でも特にその個人名が有名になった3匹の狸を指す。
彼らもまた化け狸の枠を超えて、ひとりひとりが明神号を持ちそれぞれの土地で祀られているれっきとした鎮守神でもある。

彼ら三狸は出身地も日本中に散らばっておりエピソードもそれぞれ独特で、
キャラクター性も豪放磊落な団三郎、温和で知的な太三郎、小粋で洒脱な芝右衛門と、しっかり分かれているところが面白い。

二ツ岩の団三郎

日本海に浮かぶ金山の島、新潟県佐渡島。
その中でも日本最大の金鉱脈を有する相川金山のはずれに、下戸という集落があった。
その集落からほど近い山上に鎮座する、二つ並んだ巨岩「二ツ岩(ふたついわ)」。
修験者の修行場ともされたこの岩付近を根城にしていたのが100頭以上とも言われる佐渡(むじな)の頭領*7とも
佐渡島の総大将とも呼ばれた日本三大狸の筆頭格

二ツ岩の団三郎(だんざぶろう)である。

化け術に秀でているのはもちろんのことだが知恵も回り度胸もあって情も深く、
化け術を用いずに佐渡から狐を追い払ったり、盗みや金山といった危うい手段で大金を稼いだと思えば
その金を惜しみなく貧しい人たちにある時払いの催促なしで貸し出したりと器の大きさをしめすエピソードに事欠かない。

それでもやっぱり化け狸、人間に知恵比べで負けて恥をさらすこともあったが
それでもその懐の深さと情の篤さで人々に慕われ、いまも二ツ岩大明神として佐渡に祀られている。
詳細は個別項目を参照。

  • 佐渡四天王
    佐渡には団三郎のほかにも100頭以上とも言われる化け狸がおり、相撲のような番付までつけられている。
    その中でも有名なのが西の横綱団三郎と並ぶ東の横綱、徳和東光寺の禅達(ぜんたつ)
    名前の通り禅寺で修行を修め、問答をしかけられると生半可な僧侶では太刀打ちできなかったという。

    あとの3頭は、団三郎の妻とも言われる関の寒戸(さぶと)お杉、潟上湖鏡庵の財喜坊(ざいきぼう)
    真野新町の重屋(おもや)の源助(諸説あり)とされる。

屋島の太三郎

日本三大狸のひとりであり狸の本場四国の三大狸のひとりでもある、屋島(香川県高松市)に伝わる古狸。
屋島の禿狸(はげだぬき)の名称で知られ、化け術では四国随一と称えられた彼は古来より屋島寺の守護者であった。

唐の名僧鑑真和上弘法大師らを屋島の地に招き案内をし
彼らに感銘を受けた太三郎狸は屋島に教育の場をひらき、全国の若い狸を集めて勉学を教えていたとされる。

その後太三郎は平家の守護者ともなったり、日露戦争で日本軍を手助けしたりもした。
そして現在でも太三郎狸は屋島寺に蓑山(みのやま)大明神の名で土地の氏神として祀られており、今なお多くの人たちが足しげく参拝に通っている。

詳細はこちらの項目を参照されたし。

●洲本の芝右衛門

淡路島は洲本、その裏山の三熊山。
芝右衛門(しばえもん)はその山の頂上で妻のお増とともに棲み、月夜には景気よく腹鼓を打っていたという。
芝右衛門の腹鼓は瀬戸内の魚たちもうっとりと聞き入り、翌日は必ず豊漁になったといわれる。

芝右衛門もやはり狸らしく木の葉のお金で酒を買ったり芝居を見たりと悪さをはたらくこともあった。
ただ人や他の狸らを害するようなことはせず、また棲み処の山中で迷った人たちを丁重に案内し送り届けるなど
親切な行いをしていたため誰からも憎まれることは無かったという。

酒と芝居と妻をこよなく愛した彼は、芝居小屋が開くと妻や子とともに見物に出かけ、
芝居がないときには自分で三熊山のふもとに仲間と一緒になって芝居小屋を建て、得意の化け術を存分に発揮して淡路の人々の目と耳を楽しませていたのである。

ある時芝右衛門は浪速の中座*8で大人気を博していたその名も高い片岡仁左衛門*9の芝居を見るため、お増とともに海を渡った。
華やかな大阪を物見遊山し気が大きくなった柴右衛門は化け比べをはじめる。
芝右衛門は上機嫌で浪速の人々を驚かせたが、たちまちその騒ぎを聞きつけ役人がやってきた。
芝右衛門はどうにか逃げ延びたものの、お増は捕らえられ斬り殺されてしまった

悲しみにくれた芝右衛門だが、せめて妻も観たがっていた芝居は観て帰ろうと思い立ち三熊八兵衛と名乗って木の葉のお金で芝居小屋に通う
しかし木戸銭*10に木の葉が紛れこんでいることをいぶかしんだ中座の人々は入口に番犬をつなぐことにした。

そうとは知らず芝居見物にやってきた芝右衛門は犬にほえかかられ、たちまち正体を現してしまう。
あわれ芝右衛門は犬を連れた人々に追われ、頭を割られて死んでしまった。

ところがその日から、中座の客入りがたちまち悪くなってしまう。
今をときめく片岡仁左衛門の芝居、客が来ないなんてありえない。
淡路の人々から腹鼓が聞こえなくなったとのうわさも届き、
さてはあの時殺した狸は名高い洲本の芝右衛門であったかと気づいたもののもう後の祭り。

やむなく中座の中で芝右衛門を祀ったところ、なんとか客足が持ち直す。
それから芝右衛門は八兵衛大明神」「芝右衛門大明神として中座の中で代々信仰された。

「芝右衛門大明神」は中座の閉鎖に伴い、故郷である洲本八幡神社に移された。
芝居好きの芝右衛門は芸事・客入りにあらかたなるご利益をもたらす神として
当代の片岡仁左衛門や中村雁治郎・藤山寛美といった昭和の名優たちから篤く信仰され
今でも芸能人や彼の人柄を慕う多くの人々から崇拝されている。

四国三大狸

狸の本場と言われる四国でもっとも高名とされる三匹の狸のこと。
筆頭格は日本三大狸話の隠神刑部、続くのが日本三名狸の屋島の太三郎。
そして三人目が「松山狸騒動」の主人公である、小松島の金長である。

●小松島の金長


「松山狸騒動」は江戸時代に入ってから狸王国四国の阿波で巻き起こった、二頭の化け狸を中心とした総勢1000匹以上の狸が勝浦川で激突した一大合戦。
四国の狸伝承の中でももっともスケールが大きく高名なものの一つで、昭和初期に映画化もされている。
この物語の主人公が四国三大狸最後のひとり、小松島(こまつじま)金長(きんちょう)である。

金長は齢200を超える古狸で、日開野(ひがいの)の染物屋大和屋の主人茂右衛門に助けられ、
恩返しとして彼と彼の店を大いに栄えさせた。
そしてさらなる栄達を求めて化け狸の総大将津田の六右衛門のもとで修行するが、
後継ぎの問題をめぐって対立、ついには激突することになってしまう。

詳細はこちらの項目を参照されたし。

○その他

●豆狸

西日本を中心として伝承され、日本全体でもある意味最も広く知られる化け狸。
傘をかぶって酒徳利と大福帳を持ち、八畳敷きをおっぴろげて小首をかしげるあの狸…
信楽焼きのタヌキ」のモチーフとなった存在である。

しばしば造り酒屋に棲みつき夜中に大音を立てたり酒桶にいたずらをしたりしていたが、
よい酒を造るには必要不可欠な存在ともされ崇められていたという。
欧州におけるゴブリンに近いだろうか。

また雨の日の前夜になると山頂に灯りをともしたり、便所に入った女性の尻をなでまわしたりなどといった話も残っている。
あと八畳敷きを使って人を化かすことでも有名(後述)

○狸のもたらす怪異

●狸寝入り

怪異というよりは性質、習性に近いだろうか。
驚かされた狸が死んだふりをするという例のあれである。
現在でも「狸寝入り」というと「寝ているふり」を指す言葉になっている。

しかし、長らくこれは「死んだふり」という意図的なものではなく、恐怖のために失神しているだけとされてきた。
だが同じように失神すると思われていたオポッサムが脳波測定の結果、動けなくなっている最中にも意識があるということがわかった。

もしかすると狸寝入りも、昔の人がそうとらえたように相手をだます手段なのかもしれない。

●狸の腹鼓

大きく腹を膨らませ、手でたたいて音を出す。狸と言えばこれと言われるほど有名な術である。
ただ本来の伝承ではこれとはやや違った扱いであり、山の中で木を倒すような大きな音をさせたり
人の名を呼ぶような声を出したり太鼓をたたくような音を出したりといった山中での音にまつわる怪事をまとめてこう呼んでいた。

いわゆる「天狗倒し」「天狗太鼓」と呼ばれるものの同類である。

●狸囃子

平たく言えば、狸の腹鼓を複数で行うもの。
山中だけでなく町中などでも、夜分遅くにどこからともなく太鼓や笛など複数の音…
つまりはお囃子のような音が聞こえてくる現象を指してこう呼んだ。

江戸に伝わる本所七不思議のひとつでもあり、音のする方向に向けて歩いても音は次第に遠ざかっていき、いくら調べても音の出どころはけして分からなかったという。

●狸火

狐火の狸バージョン。性質もあまり変わらないが、狐火よりはややマイナーな存在。
狸の本場、徳島などで伝えられている。

●狸憑き

狐憑きの狸バージョン。当然と言えばそうだが、狸も人に憑いて悪さをすることがある。
これもやはり四国に多く、憑かれると腹ばかり膨れて体が衰弱していき死に至るという。
四国に狸の祠が多いのは、神となった狸は人に憑かなくなるから狸憑きを恐れた人々が建てたのだとも言われる。

●八畳敷き

狸が自分の陰嚢をおっぴろげて、家に見せたり姿を隠したりと様々な術に使うこと。
またはその陰嚢そのものを指す言葉。
その名の通り畳八枚分にまで広がったという。

前述の豆狸が得意とした術で、山中になぜか忽然とこぎれいな作りの小屋が現われ
中でくつろいでいた最中、畳の毛をむしったりキセルの火を落としたりしてしまって
痛み熱さに耐えかねた狸が八畳敷きをしまいこんで逃げ出すという話が多数伝わっている。

一説では、金箔をひろげる際に狸の陰嚢の皮を用いたことから着想を得たと言われる。
職人が金の粒を陰嚢の中に入れて叩くと、みるみるうちに八畳になるかとばかりに金箔が広がっていったのである。

偽汽車

幽霊船の地上版?その正体は……。

【解説】

○化け狐と化け狸の違い

日本における化け狐と化け狸は、共通点も多いがキャラクター性には明らかな違いがある。
見た目が違うのは当然だが、男女の差、化け方の差、扱いの差などいずれも対照的に分かれているものが多い。

それらの差異がどのように生じたのか読み解いていくためには、まず本来の彼ら…
実在するキツネとタヌキの生物学的特徴や生態などから考えていくのが早道だろう。

●狐と狸の共通点

  • 人里近くに住む食肉類である
    キツネとタヌキはいずれも、哺乳類ネコ目(食肉目)イヌ科の中型獣である。
    さらにどちらも食性が肉食に近い雑食性で、また人里に近い山野・里山に生息していることが多い。
    なので比較的人間の生活域に近いところに生息していたというのがまず第一の共通点だろう。

    もともと生息域が都市部に近く、さらに食性の幅が広いため人間の残飯なども食べることが出来た。
    キツネもそうだが特にタヌキは狩猟よりも採取がメインで、残飯をあさることが自然にできたのだ。
    なので両者とも、古来より日本人になじみ深い食肉目であったということが言える。

    あとはそれに関連して、両者とも害獣であり益獣でもあったということもあげられる。
    人里近くに住む肉食獣なので、残飯をあさられたり家畜や作物を荒らされるといった彼らによる害も当然生じた。
    しかしそれ以上に彼らは、農業の大敵であるネズミを主食として狩る益獣であったのだ。
    米を食い荒らし田に穴を空け、駆除してもたちまち増え広がるネズミは古代農業の最大の敵であった。
    キツネやタヌキはそんな彼らの天敵として直接捕食するのはもちろん、
    そこにいるだけでネズミを寄せ付けず繁殖を抑える力も持っていたのだ。

    特にキツネが日本で神聖な獣とされたのはこの要素が大きく、
    強い体臭による忌避作用を活かすためしばしば神社や米蔵では
    キツネの尿が撒かれたりキツネが餌付けされていた
    りしたのである。
    どちらもそれほど大型では無いため家畜などに与える害もそこそこで、
    人間を直接的に殺傷することもほとんどないことも幸いしたのだろう。
    キツネもタヌキも、もたらす害以上の利益をもたらす獣として、
    人から避けられながらもそのそばで暮らしていくことが出来たのである。

  • 知能が高い
    キツネもタヌキも肉食動物、捕食者であるが、狩りを行う時には思いもよらない頭脳プレーを見せることで知られている。

    キツネは獲物を捕らえるとき「魅了(チャーミング)」という手段を用いることがある。
    獲物の前に近づき、いきなりひっくり返ってもだえてみせたり
    子猫のように自分の尻尾を追いかけてくるくる回ったりしだす
    のだ。
    この行動を前にした臆病であったはずの草食動物たちはまさしく魅了されたかのようにふらふらと近づき、
    たちまちのうちに狐の牙にかかってしまうのである。
    はたから見ればまさしく狐に化かされたようにしか見えないだろう。

    またタヌキも、狩りを行う際には集団で連係プレーを行うことが知られている。
    狸寝入りも、知らずに出くわせば一杯食わされたとしか思えないだろう。

    これらが知恵によるものか本能によるものかは定かではないが、

    少なくとも歴史の中ではそんな彼らの行動が「知恵」として捉えられ、
    キツネとタヌキの「人を騙す獣」というイメージが成立する要因のひとつとなったのであろう。

  • ペットにはあまり向かない
    彼らはどちらも食肉目の中では性質が比較的穏やかで、人にも慣れないことはない。
    現に人に飼われているキツネやタヌキも多い。
    だが、飼育法が確立していない過去においては、
    少なくともペットとして犬に勝る点は何一つなかったのである。
    タヌキは非常に臆病でしつけが成立しづらく、
    キツネは体臭がきついため都市部で飼うには適さなかったのだ。
    しかし、それがキツネとタヌキの「身近であるが一定の距離を保つ」という、人間との絶妙な関係性を生みだしたのだろう。
    彼らはさして珍しくない生き物でありながら、その内に野生と神秘を秘めて人間と向き合っていったのである。

    またこの来歴のためかそれとも実際の反応を見てか、完全に人の側に立った犬とは激しく対立することが多い。
    どれほど妖力を秘めた狐狸でも犬には一方的にやられてしまうなど、時には天敵のような扱いさえされる

●狐と狸の相違点

  • 分布・生息範囲
    キツネは食肉目のなかでも比較的新しい種類で、環境に適応することに成功し最も繁栄した種の一つである。
    世界のほとんどの地域、それこそ砂漠にも極地にもキツネはいる。
    逆にタヌキはイヌ科の中でも最も古い種の一つで、一時は大繁栄したものの氷河期を経て環境の変化についていけず、
    ヨーロッパなど多くの地で絶滅してしまったのである。

    なので日本の化け狐のイメージは悪女などといった比較的全世界のスタンダードなものに近いのに比べ
    化け狸のそれはそのほとんどが日本独自のものである。
    化け狸の多くが地名を名に冠し、その土地に深く根付いて活躍しているのはそのあたりに原因がありそうである。

    また生息範囲にも微妙な差があり、同じ野山でもキツネはある程度開けた草原などに居を構え
    タヌキは川沿いのやぶや森林の生え際の茂みなど、狭いところに巣をつくることが多い。
    なのでタヌキのほうがより都市部への対応がしやすかったと言える。
    都市周辺のさまざまな構造物による環境は、キツネよりもタヌキの暮らしに向いていた。
    また後述する理由によりキツネとタヌキの集団がかちあうとだいたいタヌキのほうが勝ってしまう。
    現在日本でも、人間の生活圏内では広大な平地がひろがる北海道を除けば
    キツネよりもタヌキのほうが目にする機会が多いだろう。


    これらは恐らく、化け狸が恐るべき魔物から愛すべき妖怪に変化した要因のひとつでもあるだろう。
    中国からの伝来当初はまだ人里離れた山林に生息していることのほうが多く、謎めいた部分があったタヌキも
    江戸時代になり集落の都市化が進むにつれてタヌキの移住も活発になり、
    よく庶民の目に触れるようになった結果臆病さなどが広く認知されていって現在のひょうきん者のイメージが定着したのではないだろうか。
    いずれにせよ都市部に広がったタヌキはより庶民的になり
    そこからはじかれたキツネは神・魔物としての神秘性をより強く残していったのである。

  • 集団構成
    キツネとタヌキの、明らかにそれと知れる大きな差のひとつ。
    タヌキは一夫一妻制で、自分の子供たちを引きつれた大きな集団を作る
    キツネは比較的小集団で生活していることが多いように見えるが、実のところ彼らは一夫多妻制であり
    一匹の夫を中心としてそれぞれの妻たちとその子供の小集団がコロニーとなっているのである。*11
    なのでこれらの小集団個々にはオスのいる可能性が低い。
    化け狐が女性的で化け狸が男性的とされるのはこのあたりに原因がありそうである。
    タヌキの集団には必ずオス狸が一匹おり、キツネの集団にはオスのいる可能性が低いのだから。
    なおこの性質のため集団同士でかちあうとたいてい数で勝りオスを含むタヌキ側のほうが勝つ
    狐七化け狸八化けというのはこのあたりからきているのかもしれない。

    また一夫一妻制で大家族を作るタヌキは夫婦・家庭円満の象徴とされることも多い。
    男を手玉に取る悪女のイメージが付きまとうキツネとは対照的だろう。

  • 日本社会との関わり

    日本人の身近にいた野生動物であるかれらは自然資源としての価値も昔から高かった。
    タヌキもキツネも上質の毛皮を持ち、古来より市場で取引されてきたのである。
    ただその需要については若干の差異があり、どちらかと言えばキツネの毛皮は装飾品として価値が高く、
    タヌキの毛皮は日用品として有用だった。

    金毛とも呼ばれる狐の毛皮はその美しさと防寒機能から世界各国でしばしば着衣として利用され
    ひとつの集団の小ささ、養殖のしづらさによる希少価値から高級品として扱われることが多かった。

    タヌキの皮もまた「皮算用」という言葉が残るように、古来から取引されてきた品である。
    毛皮として防寒着などの需要も当然あったが、優れた弾性・耐久力を持ったタヌキの皮は
    日用品・実用品としても価値のあるものだったのだ。
    その皮は団三郎の伝承が示す通り、炉に風を送りこむふいごや金箔を延ばすための緩衝材として用いられ
    また籠手など装身具としてもよく使われていた*12
    タヌキは大集団を組み一度で獲れる数が多く、また飼うのに広いスペースがいらず比較的養殖もしやすかったことから、
    その革は良質かつ安価な素材として広く用いられたのである。

    美しく高級なキツネ革と、便利で安価なタヌキ革
    この二つの特長も、上記までで挙げられてきた化け狐と化け狸の差異に符合するようで面白い。

    なお、生き物であるからには食肉としての利用法も当然存在する。
    だがこの分野ではどうやらタヌキのほうが圧勝してしまうようである。
    どちらも野生の肉食獣なのでクセは強いが、秋~冬季に入って冬を越すため
    木の実を主に食べて脂肪を蓄えたタヌキはクセも無く美味であるという。*13
    逆にキツネは体臭同様肉のにおいも大変きつく、食用には適さないらしい。
    タヌキがより身近になり、キツネがより距離をおかれたのはこのあたりにも原因があるかもしれない。

●信仰の対象としての化け狐と化け狸

  • 神としての狐と狸
    本来、キツネもタヌキも日本人にとっては山の神であった。
    古代日本の汎霊説(アニミズム)的信仰の中で、彼ら山の獣は山の神の使い、あるいは山の神そのものであったのだ。

    しかし全世界に分布し、そのそれぞれの国で伝承を残していたキツネは外来の価値観の影響を大きく受けた。
    稲荷神の大元である稲作文化も本来は弥生時代に渡来した外来文化である。
    そこからさらに中国の伝承やインドからの仏教・密教の影響を受け狐たちは先進国の権威のもと堂々と、
    しかしどことなくよそいきの雰囲気をまといながら日本社会に広まっていった。


    逆にタヌキは分布域が非常に狭く、「化け狸」という存在は海外にはほとんど類型がない。
    化け狸のイメージはそのほとんどがこの国で形作られていったものである。
    都市部にも多く生息し、犬ほどではないにせよキツネよりもさらに人々に密着していたタヌキたちは
    神秘的な存在から一歩離れより人間的・庶民的に、欲深く俗っぽいキャラクター性を与えられたのである。
    狸たちはその土地土地の鎮守、おらが神として祀られ、
    さらに信楽焼きのタヌキに代表されるひょうきんで福々しい姿でもって縁起物として日本中に広がっていった。

    ただし、彼らは最初から人間社会に馴染んでいたわけでもないし、また現在においても無条件に受け入れられているわけでもない。
    霊的存在である以上、「祟る」「憑く」という人間への脅威・恐怖となる側面は、どうしたってつきものだったのである。

  • 「祟り神」「憑き物」としての狐と狸
    冒頭の項目で述べたが、生き物がよわいを経て化けるという考え方はもともと中国のものである。
    中国における「化ける獣」は、例外なく人々にとって大きな脅威であった。
    白面金毛をはじめとした悪狐はもちろん、化け狸も江戸時代になるまでは恐怖の対象であったのだ。
    これは「憑き物」という概念が社会に広がるにつれてより顕著となる。

    「憑き物」とは人に憑依する動物や妖怪、そしてそれによりもたらされる変異のことを指す。
    これらに取りつかれた人は常軌を逸した言動をとったり健康を害してしまったりする。
    しかし憑き物は害ばかりではなく、特別な力や幸運をもたらす場合もあった。*14
    現在では「憑き物」とは精神疾患であるとされている。現在であればしかるべき機関で適切な処置を受ければ完治するものとして認識されているが、
    そんな概念のない当時の人たちにとって精神疾患とは親しかった人たちがいきなり豹変する原因不明の怪異として大いに恐れられていたのである。
    それへのせめてもの対策として「原因がわからないなら原因を作ってしまおう」という発想のもと作り出されたのがいわゆる「憑き物」である。
    正体不明の変異は憑く獣・魔物のせいとされ、人々は「正体不明のものへの恐怖」からはかろうじて逃れられたのだ。

    なので「憑き物」という概念は本来「落とすためのもの」として造られたのであろうが、
    その概念が定着すると今度は意図的にそれを憑けようとする技術が造られ始めた。
    前述の「憑き物」をつけることにより得られるという力や幸運を得るため、
    あるいはもっと直接的に敵対する相手への攻撃手段としてこれらは発達していったのである。

    そして狐はもちろん狸も「憑く獣」として扱われた。狐のいない地域では狸が人に憑く獣として恐れられたのだ。
    しかし「憑き物」としてもっとも多いのはやはり「狐憑き」であろう。
    狐はお稲荷さまの使いとして日本中に広まっていたが、まだ中国からもたらされた化け狐への恐怖のイメージは完全に払拭されたわけではなかった。
    そのため、「憑く獣」「祟る獣」のイメージもまた稲荷神とともに日本中に伝播されたのである。さらに稲荷神自体が密教のダキニ天と習合されたこともあり、
    修験者らによって狐を憑けたり落としたりする技術がそれらへの恐怖とともに大いに広められていったのである。

    さらに「憑き物筋」という考え方がこの恐怖に拍車をかけた。
    前述の通り「憑き物筋」とは「憑き物を操る家系」のことであるが、このイメージはその家系そのものから生じることより、
    むしろ「村八分」の道具として周囲から押し付けられることのほうが多かったのだ。
    集団内で権力や財力を握る家に対して「あの家は憑き物筋だ」「あんなに栄えてるのは憑き物のせいだ」と差別して孤立させるための
    民衆たちの武器として扱われたのである。
    こうして「狐憑き」のイメージは人間を変質させる精神疾患共同体内の陰惨な対立という二つの大いなる恐怖をまとい}伝えられていったのだ。

    そしてその恐怖は今なお消えていない。
    普段は意識されていなくても、ちょっとしたきっかけさえあれば現代社会であってもたちまち表面化するのだ。

    その特異的な現象としてはいわゆるコックリさんがあげられるだろう。
    元は西洋渡来のヴィジャヤ盤だったと思われるが、日本にも伝わり占い遊びになっていった。
    コックリを狐狗狸といういかにも神霊らしい当て字で読ませることがあるがこれは由来から言っても後付けであろう。
    けれども日本でのコックリさんは狐と結び付けられ、日本では文字盤代わりの紙にお稲荷さまの象徴である赤い鳥居が描かれた
    西洋においてもある種の心霊現象として扱われたこの遊びが「狐」と結び付けられたのは、ある意味自然ななりゆきだったのかもしれない。

    しかしこのことにより、たわいない遊びであったはずのコックリさんは狐憑き」の恐怖を現在に呼び起こしたのだ。
    途中で手を硬貨から離したりなどすると狐に取り憑かれてしまうと言われ、実際に精神に変調をきたす子供たちが続出した。
    これは自己暗示によるものとされているが、その暗示の核となったものは古来からあった「狐憑き」の恐怖のイメージだろう。
    さらにこっけいにもおぞましいことに、「標的とした相手に口裏を合わせた残りのメンバーがコインを意図的に動かしいたずらをする」という形で、
    かつての「憑き物筋」の手口まで復活を遂げたのである

    1970年代以降にはつのだじろう『うしろの百太郎』「コックリ殺人編」の影響によっていわゆるコックリさんブームが発生し、より一般化した。
    狐関連の記述も他の動物妖・霊よりも一般に膾炙していったようである。
    これ以降ホラーとしてのコックリさん現象というのも定着したシーンとなり、必ずしもというわけではないが狐神のイメージも付随するとうになった。
    これは日本だけでなく韓国など各国でも使われる。

    一方、庶民の間に広く浸透したタヌキは一部例外を除いてはこのような扱いを免れ、
    むしろ縁起物として人々に愛され受け入れられている。


●まとめ

前述までの狐と狸の共通点をまとめれば身近な野生・神秘と言えるだろう。
比較的よく目にする獣でありながら家畜になることを拒み、
人の目につかない・理解の及ばない部分を持ちつづけてきた獣たちである。

彼らは人智の及ぶところと及ばないところとの境目に立ち、
普段はただの獣として人智の及ぶところで暮らしながら
時には人智の及ばないところから人に手出しをして惑わした。

しかし逆に人を人智の及ばないものたちから遠ざけて守ったり
人を人智の及ばないところ、神秘の世界へとみちびきもした。
彼らは人間社会と霊的世界のはざまに立つものたちなのである。

そしてその差異により狐はより神秘的で女性的な役割を、
狸はより人間的で男性的な役割を担ってきたのだ。

キツネは世界中に広く分布しており、それぞれの国で様々な伝承を産みだした。
日本における化け狐も日本古来の神の使いとしての性格を残しながらも中国の伝承や仏教・密教の影響を受け、
先進国の権威のもと堂々と、しかし近寄りがたくよそよそしいイメージをまといながら広まっていった。

逆にタヌキは分布域がごく限られており、化け狸のイメージはそのほとんどが日本発祥のものである。
彼らは化け狐よりもさらに日本人に身近で、さらに日本人に近しい存在として人々の間に広がっていった。
狸たちは人と同じように欲と俗にまみれ、日本人という存在とがっぷりよつで取っ組み合ってきたのである。

彼らのありようは対照的なものであり、数々の伝承で対立もしてきた。
しかしそのありかたは、実のところは互いを補完しあい並び立つものである。
彼らは明らかに異質の存在であり、けして同一のものとしてまとまることはない。
けれども両者は時に対立しながらも、互いの得意な分野を見だしてそこで活躍し
互いの欠けている部分を補いあって、寄り添いながらももたれかかることなく並び立ってきたのである。
それはそのまま、現実の人間の男と女の関係の映し鏡であったのだろう。


全世界に広まっていった新しい獣と、時代に追いやられていった古い獣
地の果てにあったこの国で出会い、互いを最良のパートナーとしたのである。


○現代の創作における化け狐・化け狸

これまで各地の伝承や言い伝えなどを紹介してきたが、今においても化け狐・化け狸はお話の素材として度々使われる。
化ける要素がなくても、擬人化される獣としては犬・猫に次ぐほどの登場数であろう。

ただ近年の商業作品では、後の項目を見てもらってもわかる通りやはり狐のほうが優勢である。
こういった作品では男性よりも女性、人間的なキャラクターよりも神秘的なキャラクターのほうがより求められる傾向があるからだろう。

ただ、これらは狸というキャラクターの弱さを意味するものではない。
むしろ狸はキャラクター性が強すぎて扱いに困るという面もある。
どんなシリアスな展開でも、狸が出てくるとどうしても場の空気が緩んでしまう。
どんな状況でも一気に自分の側に話の雰囲気を引き寄せてしまうので、扱いどころが難しいのだろう。

それでも化け狸は化け狐とあらゆる点で対照的な存在として、彼女らと対比する形で現われたり、
欲にまみれた俗物の象徴として物語の要所要所に強烈な個性を持って登場したりすることで、
全体の登場数で劣るものの化け狐にひけをとらない存在感を示している。

特に化け狸が光るのは、日本社会を戯画化(カリカチュアライズ)する場合においてである。
原典である「松山騒動八百八狸」「阿波狸合戦」においてすでにそういう要素を含んでいたが、
近~現代でも映画化された「阿波狸合戦」に「狸御殿」、「平成狸合戦ぽんぽこ」などはまさに狸が描き出す現代日本社会の縮図である。

もちろん狐も風刺画に用いられることがあるが、その場合は化け狐ではなくただの狐そのものが用いられることのほうが多い。
人々の尊敬を集めながらも腹の中は欲と俗にまみれたタヌキ親父。
見た目も肝っ玉も太く子だくさんで情の深いカカア狸。
好奇心旺盛でいたずら好き、いつも大勢で大騒ぎするタヌキの子供たち。
これらはみな「化け狸」ならではのキャラクターであり、狐やただの狸ではなかなかこうはいかないだろう。


化け狐とな化け狸は、舞台を現代の創作文化に移しても、お互いの得意分野を活かしてしのぎを削りあいながらも並び立っているのである。

まんが日本昔ばなし(毎日放送)

恐らく日本の民俗学史にその名を残すであろう、日本の民話・伝承を語る上では外せない一連のアニメ作品群。
上記で説明した化け狐・化け狸の物語をことごとく網羅しており、彼らのイメージの再確認・再定着に大きな貢献をなしとげている。
あまりに膨大な数ではあるが、機会があればぜひ一度は目を通してもらいたい。

平成狸合戦ぽんぽこ(高畑勲、スタジオジブリ)

圧倒的な力を持つ日本社会相手に奮闘する化け狸たちの姿を描いた、スタジオジブリの異色作。
隠神刑部」「金長」「屋島の禿狸など上記した大妖怪狸たちが多数出現し、大スケールの化け術で現代文明に対抗する。
欲と俗にまみれながらどこか物悲しさもただよう、古来からの化け狸伝承のテイストをきっちりと継承した大作であり名作だろう。

タイトルからして狸の専門のようだが化け狐も登場する。
「一足先に人間に敗れ人間社会に迎合した」という立場で、間接的に狸達の棲家を奪うようなことしつつ自分達のようにした方がいいと勧めるが、この提案が悪意からくるものかは作中明示されていない。
余談だが本作にはBGMなどに宮沢賢治のエッセンスが盛られている*15が、彼の童話作品にも印象深い神秘的かつ擬人化された狐&狸*16が登場する。

白面の者(「うしおととら」藤田和日郎)

近年の日本文化における化け狐を代表するのはこの存在であると言っても恐らく過言はないだろう。
作中の最大最凶最後の敵として登場した白面金毛九尾の狐である。
もとより大妖怪であった白面金毛九尾の狐をこれでもかと言わんばかりに邪悪に狡猾に酷薄に描きあげており、見るものに戦慄を禁じ得ない。
そして最終決戦では果てしなく巨大な正体を現して破壊と殺戮を巻き起こし、文字通り日本全土を揺るがした
藤田氏の精緻かつ大迫力の絵柄で描き出されたその姿は、神の側にあった日本の化け狐のイメージを大きく魔物の側に振り戻すほどの影響力をもたらしたと言っても過言ではない。

●エロ要員としての化け狐・化け狸

もとより女性として描かれたことの多いキツネはもちろん、近年ではタヌキもしばしばエロ要員として登場している。
反獣人の女性、いわゆる「ケモナー」と呼ばれる嗜好の中で、彼らはある意味犬・猫以上にポピュラーな素材である。
誰しも認知している「化ける獣」であるがゆえに、擬人化することに理由や説明が必要ないのだ。
なのでストーリーに厚みを持たせたり絡みを濃厚に描いたりしやすいという利点があるのだろう。
なおキツネ娘についてはこちらも参照してほしい。

化け狐・化け狸にそれぞれ違いがあるように、エロ要員としての彼らにも、その分野ならではの差異がある。
実際の女性の顔を表現する際にも「きつね顔」「たぬき顔」という言い回しがある。
きつね顔は切れ長の目、とがったあごなど全体的に鋭角なイメージ
たぬき顔は輪郭・目鼻など全体的に丸みをおびた顔といったところだろうか。
体型もそれと同じようにそれぞれ骨ばったやせ形丸みをおびた肉付きのいい体型となることが多い*17

やせ形の体型がもてはやされる昨今、やはり主流はキツネ顔・体型であろうが
より女性らしい魅力にあふれたタヌキ顔・体型の女性も根強い人気がある。

また両者には性格にもあきらかな差異があることが多い。
キツネ顔の女性はどちらかと言えば凛として誇り高く
悪く言えばお高くとまっているようにも見えることが多い。
また悪女として描かれることもタヌキ顔の女性よりは多い。
対してタヌキ顔の女性は人懐こくて情が深いという描写になりがち。

これらは顔つき・体つきともに擬人化された時もほぼ同様で、
耳だけ・毛むくじゃら・完全なケモノ、どのレベルであってもだいたい上記の傾向を持つ。
見た目も中身も対照的な二者はしばしば並び立って男の前に現れ、
どちらを選ぶかというぜいたくな悩みを提供してくれるのだ。

【主な出演作品など】

この項目では主な化け狐・化け狸の出演作品を、狐ごと・狸ごとに固有名詞持ち・その他に分類してまとめる。
条件は冒頭で挙げた「怪異をなす狐・狸」であること、あるいはそれらの存在をモチーフにしていることのいずれか。

○化け狐

●玉藻前・白面金毛九尾の狐(妲己、華陽夫人、褒姒)

  • 「白面の者」・・・うしおととら:前述の通り。
  • 九尾の狐と飛丸:岡本綺堂の『玉藻の前』を原作とする(これ自体玉藻と殺生石を基にした作品)長編アニメ映画。魔王に取り込まれて暴虐を揮う玉藻の前を幼なじみの飛丸が止めに来るというバッドエンドまっしぐらな話。現存のフィルムが一本しかない。
  • 羽衣狐(はごろもぎつね)」・・・ぬらりひょんの孫:葛ノ葉・白面金毛をモチーフにした、京の妖怪を束ねる妖狐。
  • 「タマモ」・・・GS美神 極楽大作戦!!:玉藻前の転生体。髪型がツインテールならぬナインテール。ちなみにこの作品の白面は別に悪妖ではなかったそうな。
  • イヅナ」・・・神羅万象チョコ:火群カイと契約する魂獣。幼女→成長→洗脳融☆合告白融☆合イヅナママン一児の母親→未亡人という忙しい変化を遂げるヒロイン。
  • 玉藻の前」・・・Fateシリーズ:キャスターとして召喚された型月おなじみのハジケキャラ。通称キャス狐。
  • 「【因果】のアーク ハクメンスクナ」・・・・コズミックブレイクシリーズ:後述するイヅナカムイとは因縁の間柄にある超大型ロイド。分身したり即死攻撃をしたりと結構やりたい放題。……なのだが慣れれば一番楽なせいで乱獲される。こんなんでも一応CB世界では神様的な存在である。尚、見た目はロボなのだが何故かフッサフサな九尾を持つ。
  • 「玉藻」・・・かのこん:白面金毛九尾の狐本人。温泉宿「玉ノ湯」を経営している、ちずる達の母親。無差別級のおっぱいの持ち主。
  • 「たま」・・・戦国妖狐:第一部ヒロインの妖狐。200歳以上のオレっ娘。義姉上。出自は玉藻前の分霊。力を与えてきた義弟・迅火が九尾の妖狐へ、果ては地を果てさせる「千本妖狐」へと転化してしまう…
  • 妲己(だつき)」・・・多作品:ほとんど中華の大妖狐としてのキャラ。
    • ジャンプ版封神演義:分かりやすい悪女キャラ。外伝のキャラは本編とのギャップがまたすごい。
    • 鬼灯の冷徹:衆合地獄のボッタクリ妓楼のオーナー。EUのレディリリスとは親友。衆合花街の顔役で、人気のキャストであると同時に多数の店を経営する暴君的豪腕経営者でもある。
    • 無双OROCHI:黒幕・遠呂智の参謀役。割と人間味があるためか無双OROCHI2では味方になる場面も。
    • モンスターストライク:限定モンスターとして登場。進化すると「紂王の妃 妲己」、神化すると「千年狐狸精 妲己」となり、獣神化すると「傾国の妖狐姫 妲己」に変貌する。
    • BEAST of EAST:架空の平安時代にて主人公・鬼王丸の幼馴染「(みくず)」に憑りつき、玉藻の前として暗躍する。

●九尾の狐

  • KUMIHO 千年愛:999年生きたクミホ(九尾狐)をヒロインとすえたSEXしたら死ぬというアレな悲恋映画。
  • 九尾狐家族:999年生きたクミホ(またかよ)の一家が肝を食って人間になるためにサーカス団を作って人を集めるミュージカルコメディ映画。
  • 僕の彼女は九尾狐:蘇ったクミホをヒロインとする韓流ラブコメ。
  • リザとキツネと恋する死者たち:日本のサブカル好きなハンガリーの監督が作った、九尾の狐伝説に材をとる恋愛ファンタジーホラー歌謡ミュージカルコメディ映画。
  • 九喇嘛(くらま)」…NARUTO‐ナルト‐尾獣のうち九尾にあたる恐るべき災厄。人柱力はうずまきナルト。
  • 御狐神双熾(みけつかみそうし)」・・・妖狐×僕SS凜々蝶様ベッタリのSS。九尾の狐への先祖返り。でも初対面では「犬にしてください」と言っていた。
  • 「九尾の狐」…どろろ:国を南北に分けるばんもん(板門)に取り憑いている妖怪。百鬼丸の鼻担当。漫画では鼻の仕込み爆弾で、アニメでは普通に斬殺されて死亡。
  • 「セリア(セリアーナ・ヴァーゼンシュタイン)」…お・り・が・み及びミスマルカ興国物語:Sランク魔人の九尾で「先読みの魔女」。しかし尻尾九本で落ち着いていた時期は少ない。珍しくアジアっぽくない狐だが好物はきつねうどんと油揚げで、性格は子供だが容赦なく力を振るう。
  • クオン」・・・神羅万象チョコ:聖龍王サイガに幼い時より使える忍者マスター・絶影の正体。忍者→引退して900年ニート→ナインテールK→忍者という忙しいのか暇なのかわからない変化を遂げる。
  • 「遮那王」…お狐サマシリーズ:白猫を助けた桐緒の下に主としての恩義を果たそうと憑りつく九尾の狐。ダキニ天の親王だからか高飛車。
  • 「SCP-953 妖狐變化」…SCP Foundation:朝鮮妖狐クミホを自称するメスのアカギツネ。新鮮な肝臓が大好きで、採取ついでに拷問するのも大好き。暗示やテレパシーといった超能力で邪悪な悪戯を行う。だけど犬にはとっても弱いんだってさ。あとケモナーの集会参加者を皆殺しにしてから妙に無気力になったようだ。
  • 八雲 藍(やくもらん)」…東方Project(:九尾の狐をモチーフにした八雲紫の式神。
  • 魔尾狐(まびこん)」…奇々怪界:6面ボスの九尾の狐。分身を大量に呼び寄せてくる。
  • 妖魔王キュウビ」・・・大神:傲慢にして狡猾な小者中ボス。通称・赤ペン先生(筆しらべの邪魔をするので)。
  • 「キュウビ」・・・妖怪ウォッチ:初代から登場する妖怪。システム上はフシギ族・Sランク。ゲーム版初代から登場する、キュウビたちの元締めの個体「紅蓮の親方」*18、アニメ版で彼とは別に登場したまだまだ未熟な個体、ちゃお版漫画の立派なキュウビではあるが恋愛になると残念な個体(ちなみに人間態の要旨はアニメ版の個体のに似ている)、『真打』のクエストに登場する個体(アニメ版の設定が逆輸入されており、「未熟なキュウビが一人前になるための試練」がそのままクエストのあらすじになっている)など複数個体が存在する。コロコロ版漫画にも登場済だが、こちらではメインキャラかは疑問が残る。
  • 「如月すず」・・・あやかしびと:人妖ではなく純潔の九尾。能力と嫉妬深さがたまにえげつない。
  • 「九尾れい子」・・・タイホしてみ~な:人の姿を取るが、九尾は健在。魔界から都合よく脱獄してくる美女。やることはえげつないが思考は主人公をからかう愉快犯的な一面が強い。
  • 「くずのは」…戦国妖狐:たまの養母。やっぱり悪女。愛した断怪衆の僧・野禅によって人間に換えてもらおうとしている。
  • 「神城眞那」…ブラッディロア4:ドラゴンの獣人・陵鳳に付き添う九尾の狐の獣人である幼女巫女。幼女なので尻尾は一本。
  • 仮面ライダーギーツⅨ」…仮面ライダーギーツ:主人公である浮世英寿/仮面ライダーギーツが「創生の力」を得てたどり着いた最終フォーム。青い炎が変じた九叉のマントや狐面を模したマスク、装備名(レジェンドキュウビ、カンナギクラッシュ)等、九尾の狐をモチーフにしたデザインとなっている。

三狐神(稲荷神・宇迦之御魂神、及びそれらの遣い)

  • 宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)」…いなり、こんこん、恋いろは。:記紀神話のウカノミタマ本人。主人公に神通力を与える。
  • 「サキ」「ココ」・・・おキツネさまでChu♥:倉稲御魂神の使いである姉妹。子狐なのだが七五三太と合体することで巨乳美女と化し、悪霊を封印する。
  • 「ミサキ神」「鉄砲狐/柚子」…貧乏神が!:悪神になった狐神とそれに力を奪われた元稲荷神社の神使。でかいほうと小さいほう。一度黄泉に送られたが復活した。
  • 「銀太郎」・・・ぎんぎつね:冴木神社の神使。ツンデレニート。「みーかーん!みーかーん!」。
  • 「守山さん」・・・ぼくの・稲荷山戦記:稲荷神社に仕える家系の守とともに山と古墳のレジャーランド化に立ち向かう。ここで説明してる時点でネタバレ乙。
  • 「イナリ」・・・pop'n music:変身キャラ兼剣士キャラ。あと糸目。
  • 「山吹」・・・〃:上記のイナリよりもケモナー向けっぽい。特技は横笛。
  • イナリちゃま」・・・牧場物語 3つの里の大切な友だち:主人公の性別で性別が変化する(結婚相手候補なので)。つゆくさの里を見守る神様。
  • 「神代睦月」・・・いな☆こい!〜お稲荷さまとモテモテのたたり〜:神界から押しかけてきたお稲荷様。とってもエロい。当たり前か
  • 「稲荷」・・・魔物娘図鑑:魔物娘の種族のひとつで、妖狐の亜種。妖狐よりも温和でおしとやかだが、性欲の強さは勝るとも劣らない。高位のものは九尾の狐になるのも同様。

●その他(映画・ドラマ)

  • 浮かれ狐千本桜:歌舞伎『義経千本桜』四段目「狐忠信」を基にした喜劇映画。堺正章の父「堺駿二」(美空ひばりの『七変化狸御殿』にも出演)等、当時の日本を代表する喜劇役者が多数出演している。
  • 恋すがた狐御殿:美空ひばり主演の「狸御殿」の系譜に連なるが、元は菊五郎劇団(つまり歌舞伎)のための北条秀司による戯曲脚本「狐と笛吹き」を援用した作品。室町末期を舞台に人間と狐の悲恋を描く。
  • おこんの初恋 花嫁七変化:美空ひば(ry、元は北条秀司による戯曲脚本(またかよ)。東北を舞台におこん狐の大活躍と悲恋を描く。
  • 狐怪談:韓国の百合ホラー映画「女校怪談」の3作目。願いを叶える狐霊の階段という怪談(ダジャレかよ)のある女子高でドロドロの情念劇が展開する。

●その他(漫画・アニメ)

  • 白山坊(はくさんぼう)」…ゲゲゲの鬼太郎:100年以上生きた白狐の妖怪。死のうとしている人の前に現れ、娘を捧げることを条件に望みをかなえる。
    ちなみにコイツ以外にも半モブやゲストキャラとして化け狐らしきキャラが何人か確認できる。
  • 「コックリさん」…繰繰(ぐぐ)れ! コックリさん…主人公に呼び出されたイケメン設定でナルシストの狐の妖怪。家事全般をこなすオカンでもある。
  • 巴衛(ともえ)・・・神様はじめました:元は危険な妖狐だったが現在は神使として奈々生に仕えている。ツンデレ主夫。
  • 玉藻京介」…地獄先生ぬ~べ~・・・鵺野鳴介のライバルである妖狐で初登場時は教育実習生。その後人間の愛について学ぶという名目で医者になる。最初は危険な敵だったが徐々に仲間となっていき、ギャグ・シリアス双方でぬ~べ~のフォロー役も行うよう*19に。つまりツンデレ。後日譚に当たるスピンオフ作品でも引き続き医者として病院に勤務している。
  • 蔵馬」・・・幽☆遊☆白書:人間に転生した妖狐。かつては危険な盗賊だったが今は穏やかなマザコン。とはいえ戦闘ではかつての片鱗も垣間見える。
  • 「白蔵主」・・・鬼灯の冷徹:紺本寺の尼。狸の守鶴と共同で、住職も務める。もっぱら守鶴と口論を行う。
  • 七宝(しっぽう)」・・・犬夜叉:犬夜叉一行の一人。まだ幼い妖狐なので戦力にはならないが変な変身が得意。地味にのじゃショタ。
  • 「京香」・・・きつねのよめいり:タイトル通り主人公に押しかけ女房してくる白狐。みんなも神社はきれいにしておこう。
  • 「こくり」・・・きつねさんに化かされたい:眼鏡メイド狐。変化はできるが不得手。母親の葉子は九尾のロリババア。
  • 「子狐」…夏目友人帳:夏目に助けられて懐いたまだ幼い妖狐。こんなにかわいい子が女の子のはずはない。原作では一話限りのゲストキャラだったのだが、アニオリで出番が増えて人気も上昇、とうとう原作でも再登場を果たした。遂にはフィギュア化までするのだそうな。
  • 「ヤヒコ」…不機嫌なモノノケ庵:性格も見た目も幼いが100年以上生きる狐神。そんなに生きてんなら遊んでないでもっと落ち着けよと言いたい。
  • 穆淸院門前稲荷桜(ぼくせいいんもんぜんいなりさくら)」・・・はいぱーぽりす:陰陽師の父と九尾の狐の母の子。変化は苦手だが拳銃使いで空も音速で飛べる狐というのは珍しいかもしれない。
  • 天日空狐(てんにちくうこ)」・・・タケヲちゃん物怪録:御年3000歳の空狐。百鬼荘の住人で普段は青年姿。
  • 「廣天」…千年狐:古代中国、燕昭王の墓陵に住み着いた狐の精。春秋の頃から物語の舞台である西晋の時代まで1000年の時を生きている。理知的な物腰の女妖狐だが慎まし過ぎる胸回りと常時発動しているイケメンムーヴのせいで頻繁に男に間違われる。また知性は作中最強クラスだがそれ以外のスペックはポンコツというギャップが凄まじい。

●その他(書籍)

  • 手袋を買いに・・・子狐が母さん狐によって手だけ人間のものに変えられて手袋を買いに行くという童話。イハナシダナー
  • 天狐空幻(てんこくうげん)」・・・我が家のお稲荷さま。:封印されていた三槌家の守り神。通称クーちゃん。性別が不明なのでCVが二人(ゆかな中村悠一)もいる。
  • 「源ちづる」・・・かのこん:玉藻前の娘。JKやってるが400歳以上。人間体だと黒髪ロング
  • 「清原凪」「橘」・・・ふぉっくすている?:九尾の狐であることをやめた無気力系主人公と縁談が破断して押しかけてきた幼狐。
  • 「コン/飛車丸」・・・東京レイヴンズ:春虎に仕える狐の式神で幼い少女の姿。封じられた元の姿に戻ると声まで(豊崎愛生甲斐田裕子)変わる。
  • 野火」・・・狐笛のかなた:「聞き耳」の能力を持つ小夜に助けられた霊狐。しかし彼らの国は根深い争いを続けており…
  • 「信田幸、結、匠、萌」…シノダ!:人間と結婚した狐とその子供たち。かっこいい言い方をすると兄弟3人とも異能の力を持つ。
  • 白狐魔丸(しらこままる)」・・・白狐魔記:仙人の下で変化の術を身につけた狐。源平合戦から赤穂浪士まで日本の戦乱を見つめ続け、足利家を憎む同族・雅姫ともかかわっていく。
  • (ヤン)」…良い狩りを:母親を殺した妖怪退治師の息子(リャン)と交流する少女の妖狐。古来の魔法が失われ蒸気の世界になる中国で娼婦と蒸気技師として再開した二人の行く末は…

●その他(ゲーム)

  • 「コーン・チワ」…セクシーパロディウス:1面ボス。 巨大なトウモロコシのような姿でポップコーンをまき散らして攻撃してくるが、倒すとキツネの正体をあらわす。
  • ハサハ」・・・サモンナイト2:得意属性「鬼」の時に最初に召喚する召喚獣。妖術の他に人の心の色を見られる能力を持つ。
  • 狐邑祐一(こむらゆういち)」・・・緋色の欠片:攻略対象の一人で妖狐の子孫。クーデレ。幻術と炎を操る力を持つ。関連作品には先祖なども出る。
  • 小牟(シャオムゥ)」・・・NAMCO×CAPCOM:有栖零児の相棒であり先輩。765(ナムコ)歳の仙狐。無限のフロンティアPROJECT X ZONEなど客演がやたら多い。
  • 沙夜」・・・〃:零児の宿敵。明るいタイプのヤンデレかもしれない。客演が(ry
  • 紺菊(こんぎく)」・・・朧村正:陣九郎を恋い慕う伏見の化け狐。あとおっぱい。
  • 「イヅナカムイ」・・・コズミックブレイクシリーズ:狐モチーフの空戦ヒューマノイド。ワープしたりホーミング弾撃ったりできる。亜種がそれなりにいる。ソラの戦団では錫杖型の武器と術を使って戦うキャラになった。前述するハクメンスクナとは因縁の間柄。

●その他(18禁)

  • 沢渡真琴」・・・Kanon:ネタバレ。
  • 久遠」・・・とらいあんぐるハート3:マスコットの子狐かと思ったら…ってまたネタバレじゃねえか。
  • 竜胆ルリ」・・・天神乱漫 -LUCKY or UNLUCKY!?-卯花之佐久夜姫(うのはなのさくやひめ)に使える白狐。設定はロリババアだがそんなに落ち着きはない。
  • 「狐炎獣サエラブ/永恒(エイコウ)」「仙狐狐伯蓮(コハクレン)」・・・神採りアルケミーマイスター:俊足紙耐久性能の狐男子とその主で鈍足高火力の九尾。徐々に仲間になっていく。
  • 「音羽葉子」・・・神楽シリーズ:音羽神社の居候で、妖狐をその正体に持つヒロイン。初出は『夏神楽』だがその後の作品にも度度登場しては仲間になったりおまけのボスキャラだったりメインキャラ(『あおぞらマジカ!!』のミツハや『天神楽』の滝峰七歌)の母だったり忙しい。
  • 「妖狐」・・・魔物娘図鑑:魔物娘の種族のひとつ。好色で、男性の精を積極的に奪って魔力を高めていく。魔力が高まると尻尾の数が増え、ついには九尾の狐へと変化する。
    派生として「狐憑き」「狐火」も存在。

○化け狸

四国三大狸隠神刑部(+八百八狸)・屋島の太三郎・小松島の金長)

  • 阿波狸合戦:前述の通り。金長と六右衛門の対決を描いた、昭和初期の名作。製作は新興キネマ
  • 平成狸合戦ぽんぽこ:前述の通り。四国三大狸がそろい踏みする、近代日本タヌキ界の金字塔。
  • 「刑部狸」(ゲゲゲの鬼太郎):隠神刑部本人。八百八狸を率いて蛟龍や大ナマズを操り鬼太郎たちを窮地に陥れる。
  • 隠神刑部(いぬがみぎょうぶ) 玉章(たまずき)(ぬらりひょんの孫)」:隠神刑部狸によって創立された四国の妖怪組織、四国八十八鬼夜行の組長。隠神刑部の息子で、カリスマ性あふれるサディスト。
  • 隠神刑部(いぬがみぎょうぶ)」…(神羅万象チョコ):勢力名で、仙狸の一族。かつて魂獣界に大戦争を引き起こし、栄華を極めながらも滅ぼされた
  • ムジナ」…〃:隠神刑部一族の末裔。ただし母親は人間で他の姉妹とは違う。仇の血統たる白面のサイへの憎悪レベルのツンからデレに入るヒロイン。三刀流だけどゾ○とか言うなよ!
  • 「ミヨ」…姫さま狸の皮算用:四国・徳島県にて金長の子孫である陸の許婚として押しかける六右衛門の子孫。あと巨乳。
  • 陰神形部(おんしんぎょうぶ)」・・・タケヲちゃん物怪録:百鬼荘の住人で八百八狸の首領。普段は女性姿。胸は斬新すぎるキンタマPADを入れている。
  • 「鉄砲(うた)レ狸」・・・ものべの -happy end-:八百八狸の末席の雌だぬき。子狸に見えるが400歳以上。鉄砲を無力化する能力持ち。ちなみに刑部狸も存在しているが、刑部の名は大谷刑部からもらったという設定。
  • 隠神刑部(いぬがみぎょうぶ)…(鬼灯の冷徹):八百八狸の総大将。妲己と同じく衆合花街の顔役であり、彼女の店と鎬を削りあう。片眼に傷の入った強面親爺だが、面倒見のいい親分肌。
  • 「刑部狸」…(魔物娘図鑑):魔物娘の種族名。高レベルの変化術と商才をあわせもち、巧みに男たちをからめとる。

●日本三大狸話(證誠寺の狸囃子・文福茶釜、隠神刑部と八百八狸を除く)

  • 守鶴(しゅかく)」…NARUTO‐ナルト‐:尾獣のうち一尾にあたる狸。人柱力は我愛羅。クラマとはやはり仲が悪い。
  • 「屋島ふみ」…ぶんぶくたぬきのティーパーティ:普段から人間に化けて生活している女の子。化ける力を持たない喋る狸のお兄ちゃんがいる。
  • 「守鶴」鬼灯の冷徹:紺本寺の和尚。分福茶釜の師匠で、彼に芸を教えている。
  • 「分福茶釜」鬼灯の冷徹:分福茶釜本人。恩人であるおばあさんが狸に嵌められたことからすべての狸を憎むようになった獄卒兎芥子(からし)にとばっちりを喰らって襲われる。

●日本三大狸(二ツ岩の団三郎・洲本の芝右衛門、屋島の太三郎を除く)

  • 「芝右衛門狸」…巷説百物語:娘を殺され悲嘆にくれる芝右衛門の前に現れた狸。 「人に化けてきてくれ」と声をかけたところ…
  • 二ッ岩 マミゾウ」…東方Project:団三郎狸をモチーフにした狸の大妖怪。一説には本人とも。

●その他(映画)

  • 狸御殿:「オペレッタ喜劇」シリーズの一つで、昭和初期の名作…だが残念ながらフィルムは現存しない。戦後も大映を中心にリメイクや舞台化がされており、美空ひばりが松竹版でヒロイン・東宝版で男役を演じていた。
  • CHECKERS IN TAN TAN たぬき:80年代の人気バンド『チェッカーズ』の正体は化けタヌキだった!というトンでも設定の実写映画。
  • 人間 ningen:フランス人とトルコ系フランス人の監督が撮った、日本の狸と狐の化かし合いを現代社会に据えて狸の主人公が人生と向き合いつつ狐の旧友を探すというアートっぽい映画。製作はメディア総合研究所

●その他(漫画・アニメ・小説)

  • 「下鴨矢三郎」…有頂天家族:京都で人に紛れて暮らす化け狸の一族。「面白く生きる」ことをモットーに、勝手気ままな生活を送る。
  • ドラえもん」…ドラえもん:「ぼくはネコです!! いつもいつもタヌキタヌキとしつれいな!!」 ↑&↓の皆「「「タヌキといわれてそんなに腹立つか 」」」
    …と言うように本来は「猫」なのだが、来園者が皆別種の動物化する「メルヘンランド」で狸化するくらいたぬき顔。
    またひみつ道具に、タヌキ含むイヌ科動物に幻術を使わせる「ドロン葉」、柿の葉を千円札に変える「タヌキ財布」、人を化かす眼鏡と尻尾のセット「タヌ機」がある。
  • 「ポコニャン」・・・ポコニャン:名前の通り狸と猫をミックスした様な謎生物。原作では「発明家」的ポジションが強いが、アニメ版では化ける力「化けポコリン」を使用している。
  • 「ポコ」・・・うどんの国の金色毛鞠:四国・香川県にて宗太を迎えた化け狸。こんなにかわいい子が女の子のはずはなかった。
  • 「信楽」…繰繰(ぐぐ)れ! コックリさん:マダオっぽい狸の妖怪。でもやる時はマジでダンディだったりする。
  • 渡狸卍里(わたぬきばんり)」・・・妖狐×僕SS:豆狸への先祖返り。一応不良のつもりらしいヘタレ。いじられ役。
  • 信楽太夫(しがらきたゆう)…(鬼灯の冷徹):隠神刑部の娘。どことなく品があって芸達者な衆合花街の人気太夫のひとり。後に芥子ちゃんと親友になった。


●その他(ゲーム)

  • 魔奴化(まぬけ)」…奇々怪界:7面ボスの化け狸。巫女である主人公に化けてくる。
  • 「タヌコー」…セクシーパロディウス:4-B面ボス。 炭鉱の奥底で炭坑節にのって、念力を使ったりセクシー狸に化けたりしてくる。
  • 「たぬちよ」・・・pop'n music:三河出身であり、古だぬきこと徳川家康の要素と分ぶく茶釜の変身要素がある。
  • スーパーこのは」…スーパーマリオブラザーズ3ほか:パワーアップアイテムの一つで、取ると狸の耳と尻尾が生えた「しっぽマリオ」狸の着ぐるみを着た「タヌキマリオ」に変身できる。因みにルイージの場合は狐になる。
  • 「ポン太/一条あか狸」…月華の剣士:土佐のオス狸が一条あかりに化けた隠しキャラ。性能はあかりのコンパチだが必殺技に狸要素が混ざる。

追記・修正は化かし化かされあいながらお願いします。













ねえ、ちょっと心配があるんだけど。

人間はみんな殺すか追い出しちゃうのかい?




少しは残しておいてもらえねえかな?昔みたいに。

だめかなぁ…。いやね、俺だって人間は嫌いだよ。

中にはいい奴もいるが、いや、本当に嫌いだよ。だけど…




うん、だけど…あいつらみんな追い出しちまったら、

もう食えないよ天ぷら。 さんまの干物。 トウモロコシ。






― 平成狸合戦ぽんぽこ(スタジオジブリ)

狸のポン吉の言葉








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最終更新:2024年02月07日 00:16

*1 仏教と化け狐:仏教の説話に登場する「野干」が日本の化け狐のルーツと言われる。元はインド仏典で「ジャッカル」を指した言葉。

*2 狐の名の由来:実際のところは鳴き声が由来であるという説が有力。

*3 鼠の天ぷら:狐の大好物として複数の伝承が残っている。一説では、これの代用品となったのが油揚げだとも。

*4 狐の嫁入り:天気雨のことを指す言葉でもある。

*5 「文福」:「ぶくぶく」とお湯が沸き立つさまとも、「分福」と書いて福を分け与えるご利益のことを指すとも、弱火と強火を指す「文火・武火」から来ているとも言われる。

*6 14世紀末~15世紀初

*7 佐渡で「貉」というと狸のこと。「トンチボ(頓智坊)」とも呼ばれた。

*8 中座:道頓堀の近くにあった劇場、道頓堀五座のひとつ。1661年開業、1999年閉鎖。

*9 初代片岡仁左衛門。豐島春之丞の弟、1656–1715年。山下半左衛門の門人。

*10 木戸銭:入場料のこと

*11 この集団同士で親を失った子がやりとりされたり、若い個体が子育てのヘルプに入ったりすることもある。

*12 籠手:タヌキの名は、その皮が良く使われていた「手貫(籠手)」に由来するという説がある。

*13 食用としてのタヌキ:カラスなどと同じく、都会で生ゴミを漁っているタヌキは食べられたものではないので注意。また古来はタヌキとあまり区別されてなかったアナグマは、季節を問わず大変美味だという。

*14 幸運を指す「ツキ」とは、憑き物の「憑き」のことである。また、狐に限らず憑き物にあった人間が予言を行ったり失せ物を探し当てたりなどといった話も多数伝わっている。

*15 奇しくも本作のBGM・主題歌を担当した上々颱風は宮沢賢治の生涯をアニメ化した「イーハトーブ幻想~KENjIの春」でも同じ役割を務めた

*16 ただし変化能力は見せていないため、本項目では紹介対象外

*17 ただし実際のタヌキは毛足が長いだけでそれほど肉付きは良くない

*18 ちなみに普段は人間に化けて生活している。現在では何回かストーリーにて語られた事でどの人間キャラが「正体はキュウビが化けた姿」なのかほぼ確定した

*19 「受け持ち生徒たちが狐の嫁入りに迷い込んだ上結果的にぬ~べ~も一緒になって祝宴を荒らしてしまった際、たまたま来賓として呼ばれた玉藻が彼らの素性を説明して矛を収めてもらった(彼の説明がなければ全員殺されてもおかしくなかった)」「直後、お詫びとしてぬ~べ~にドジョウ掬いの披露を提案(事実上の強要)する」というシーンは最たる例だろう