カラシン(魚類)

登録日:2017/06/20 Tue 01:06:00
更新日:2021/02/22 Mon 06:58:10
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カラシンとはカラシン目(Characiformes)に属する魚の総称であり、スズキ目、コイ目、ナマズ目に次いで多い硬骨魚類の多数を占める大グループの一角である。
硬骨魚類の中でも比較的原始的なグループでありカラシン目に属する魚に共通する特徴として脂ビレと呼ばれるヒレを背ビレと尾ビレの間に生やしており、
伸びない口と発達した顎と大きな歯が挙げられる(伸びない口に関しては例外もあるのだが)。
しかし、上記で挙げた三つのグループと違い、日本には生息していない。

概要

生きた化石とは言われていないが非常に長い歴史を持つ魚類であり、後期暁新世程には既に発生していた事が化石から明らかになっている。
移入を除いて主にアメリカ大陸とアフリカ大陸に生息しており、ネオンテトラのように美しい種類やピラニアのような肉食性で凶暴な見た目の種類が多い事から、
観賞魚としてもかなり人気である。

大グループである為、大きさも種類によって多様でありネオンテトラのように3㎝程しかない種類もいれば、ゴライアス・タイガーフィッシュのように最大で2mに達する大型種もいる。
あのアマゾンの殺人魚として有名なピラニアもこの仲間であり、意外な所では「熱帯魚と言ったら?」と聞かれたら、
グッピーと並んで真っ先に答える人が多いであろうネオンテトラもカラシンの一種である。
多くの種類が丈夫なので飼うのは楽だが後述する理由から取り扱いは他の魚以上に気を遣う場合もある。

南米産、アフリカ産共に中型種・大型種は原産地では食料にされており、あのピラニアも実は食べると美味だったりする。
一方で南米産、アフリカ産共に殆どの種類は発達した顎と強い歯を持っている上に種類によっては
人の指にも食らいつく程凶暴な種類もいる等先述した通り取り扱い注意な種類もいるのでそうした意味では飼育が大変とも言える。

業界ではとりわけ鋭い歯を持つ種類を牙魚と呼んでいるようだ。


主なカラシン(南米産)

主にベネズエラを流れるオリノコ川やブラジルを流れるアマゾン川を原産とするカラシン。
シクリッド同様に種類が多く、バラエティ豊かで色が奇麗なのが特徴。
ただし人間に対して殺傷力のある種類も多い。

  • ネオンテトラ
南米カラシンの筆頭とも言える存在の一つであり、名前の由来となった光り輝く青いラインと、体の下部に入る赤色のコントラストが美しい。
淡水アクアリウム全般において見ても、グッピーやエンゼルフィッシュと並ぶ人気を持ち、これらをまとめて御三家とも呼ばれるほど有名な魚。
成魚では3~5㎝クラスとなるネオンテトラだが、上にも挙げた通り実はピラニアと同じカラシンの仲間であり、よーく見ると鋭い歯が生えているのだ。
近縁種にカージナルテトラグリーンネオンテトラという種類もおり、前者はネオンテトラよりやや大きく赤色に染まる範囲が広い、
後者は逆にやや小さく赤色が弱めで青いラインは頭から尾びれ直前まで突き抜ける、という微妙な模様の違いがある。
ちなみに、繁殖も醍醐味のグッピーやエンゼルと違い、実は自家繁殖はかなり難しい部類に入る


  • ブルーテトラ
模様のパターンはネオンテトラとほとんど同じだが別属の魚。体表の赤い部分が無く、全体的にブルーで清涼感があって綺麗。
…ではあるのだが、ネオンテトラと違って混泳すら非常に難しいと言えるほどに性格が荒々しく、同種・他種を問わず追い回す事がある。
特にヒレの長い魚は格好の標的となる。混泳は避けた方が良い。というかズタボロにされるのが目に見えているので混泳厳禁。


  • グローライトテトラ
ネオンテトラと同様に古くから愛好されているポピュラーな種類。
体側に入るオレンジのラインが特長的で綺麗、丈夫、温和と3拍子そろっており、飼育初心者にも優しい。
繁殖の難しい小型カラシンの中でも本種は十分に繁殖が狙えたりする。


  • ラミーノーズテトラ
真っ赤な頭部に白黒のストライプの尾びれが美しい種類。
水質が悪いと赤の色合いが薄くなる事から水質テスターとしても有能。
環境変化(絶食・温度・水流・水質等)で繁殖を促す事が出来る。


  • グラスハチェット
ハチェット(手斧)の名の如く、手斧(hatchet)のような形とうっすらと透けた体が特徴。
普段は水面直下を泳ぐが、そのジャンプ力が凄く、飛び跳ねて水槽外に飛び出す事故も多いので飼育時は蓋や網での対策が必要。
野生下ではこのジャンプ力によって天敵から逃げるのだとか。
一回り大きいマーブルハチェット、シルバーハチェットという種もいる。


  • ブラインドケーブカラシン
白みがかったピンク色の体色が特徴で洞窟に生息するというカラシンの仲間でも変わり種の種類。
洞窟に適応した結果目が退化しており、物理的な視覚は持ち合わせていない。
その代わりに嗅覚と側線が発達しているため、普通の魚と同じように生活する事が可能。
なので目が見えないからと甘く見てはいけない。気性も荒いため混泳には注意が要る。
かつてはメクラウオと呼ばれていたがめくらという言葉が差別用語にあたる為、現在ではこの呼称は使われていない。


  • ペンシルフィッシュ
鉛筆のような細長い体型が由来。種類によっては体を斜めにして泳ぐ習性を持ち、ますます鉛筆っぽい。
頭が尖っていておちょぼ口なので餌は小さめのものが食べやすいが、口より遥かに大きいフレークや顆粒を意外と器用にかじる一面も。
大人しい種類が多く、スーーッ…とゆったりした泳ぎ方をするので混泳もしやすい。
おちょぼ口で稚魚を捕食できないからと、小型シクリッドなどの繁殖水槽で余った餌を取る役目を担う事も。
ただしスリーラインペンシルやアークレッドペンシルなど、喧嘩っ早い種類もいない訳ではない。
コケを食べる魚として紹介されるが、たまーに気まぐれでついばむ程度なので掃除屋としての活躍は期待しない方がいい。


ネオンテトラと同じくこちらも南米カラシンの筆頭の一つでご存知アマゾンの殺人魚の通称で呼ばれる魚。
恐らくアマゾン川の魚と聞いたらピラルクーに並んでこの魚の名を挙げる人が多いだろう。
殺人魚のイメージが根付いているが実は臆病な性格であり、ケガなどで血を流していない限りは人を襲うことは稀な魚である。
とはいえ、歯が鋭く顎が強い為噛まれないに越したことはないのだが。
ピラニアの仲間には他にもいるのだがこの魚が最も知られている。


  • パクー
別名「ボールカッター」、もしくは「ボール・バスター」と現地では呼ばれている、ピラニアの仲間。
成長すると体長約1メートル、重さ25キロに達する比較的大きな魚で、雑食性で木の実、水生植物、葉、カタツムリのほか、他の魚を食べるものもある。
歯はとても丈夫で人間の歯の様であり、好物の木の実をかみつぶして食べる。男性の睾丸も食べる。
別名の由来だが、衣服を着用せずに川に入る習慣がある現地では、男性の睾丸が木の実に似ていることから、間違えて食べようとするのではないかとみられている。
素っ裸では泳がない方が賢明。


  • ドラド
アマゾン川の怪魚として有名な魚の一つ。
金色に輝く体にサケやマスに似た体つきをしているのが特徴。
1mを軽く超えるので相当大きな水槽でないと飼えない。
しかも飼育下だと光が足りないのであまり綺麗な金色にならないとか。
ベテラン飼育者や業界のプロは天窓のある部屋などで自然光を入れて金色を引き出すそうだが、
初心者が付け焼刃で真似すると過度の水温上昇やコケの大発生といった問題に追われる事になるだろう。


  • ペーシュ・カショーロ
銀色の体に大きく裂けた口を持ち、非常に長く鋭い牙を生やした魚。
やや頭を下に下げて泳いでおり、餌となる魚が通りかかった途端急速接近しガブりと捕食する。
長い牙はずっと出していると邪魔な為普段はナイフのようにして収納しているようだが、
あまりに長いので獲物に暴れられて抜けてしまったり折れてしまう事も多い。
しかし他のカラシン同様に折られたりしても鮫のように再生できるので大丈夫な模様。
名前はポルトガル語で犬の牙を持つ魚という意味があり、英語ではその長く鋭い牙からヴァンパイアフィッシュとも言われている。
かなり獰猛そうな顔つきだが、ピラニア同様に臆病でむしろ混泳するといじめられてしまう方になる事が多いとか。


  • タライロン
ブラジル北部のシングー川に生息する大型のカラシンでハゼに似た体型をした、カラシンとしては異質な姿をしている魚で待ち伏せ型。
1mとかなり大型化する上に非常に凶暴な性格で人間にも食らいついてくる上に力も強いので取り扱い注意な種類の一つである。
どうやらカラシンの仲間では原始的な形質を持っているらしい。


  • コロソマ
アマゾン川に生息している魚でピラニアを巨大化させたような外見が特徴。
実際にピラニアに近い仲間だが肉食のピラニアに対してこちらは草食性。
全長1mを超えるなど南米のカラシンの中でもかなり大型の部類に入る種類で丈夫なことから
原産地では食用に養殖され、日本でも水族館などでよく見られる。


  • ブラントノーズガー
ベネズエラやコロンビアの河川に生息しているカラシンで30㎝ほどに成長する中型種。
名前の通り古代魚のガーに似た姿形をしたカラシンであり、外来生物法によってガーが
規制された後にその代わりとなるのではないかと密かに注目されている魚である。
ちなみに海外では体色や形状からsilver gar、或いはrocket garと呼ばれているようである。



アフリカ産

コンゴ川やルアラバ川、タンガニーカ湖などに生息しているカラシン。
南米産に比べて種類が少なく、コンゴテトラを除けばやや地味目。

  • コンゴテトラ
アフリカに生息するカラシンの一つでオレンジと青と銀色のコントラストが美しい種類。
オスとメスで姿が異なり、オスはヒラヒラした尾びれを持つのに対しメスは短い尾びれである。
最大10㎝とカラシンとしてはやや大きくなる中型種。
昔は高価だったが現在は比較的お手ごろな値段で入手できる。
近年はゴールデンコンゴテトラやサファイアコンゴテトラといった近縁種にマニアの注目が集まっている。

  • ジェリービーンテトラ
黄緑のメタリックな体にオレンジのヒレを持つテトラ。
細身な上に体長約2㎝と非常に小型。
あまりにも小さいので餌の種類や混泳相手には気を遣いたい。

  • ゴライアス・タイガーフィッシュ
アフリカに生息するカラシンの中では最大級の魚。
まるで杭のような太く鋭い牙を持っており、非常に凶暴な性格でワニや鳥すら捕食し、時に人間にも襲い掛かる事からアフリカの殺人魚とも言われる。
非常に丈夫で適応力が高いがこれはこの魚の体内にステロイドホルモンという特殊な物質があり、環境に応じてこれを分泌させて肉体を変化させている為だという。
よくテレビ番組や雑誌などでアフリカの殺人魚やムベンガという名前で紹介される巨大な魚は実はコレ。
日本でも販売されているのでペットとしても一応飼えるが野生個体ほどではないにせよ飼育下でも十分大きくなるのでそれなりの設備がないと飼えない。
平均して1.5mだが大きい個体になると優に2mはあるとか。


  • アフリカンパイクカラシン
アフリカに生息するカラシンの仲間。
名前の通りカワカマスに似た体型をした魚でアフリカのカラシンの中では原始的な形質を持っているという。
また、カラシンの仲間では珍しくベタのように泡で巣を作るバブルネストビルダーという繁殖方法を持っている。
現地では50㎝や70㎝という化け物サイズが捕獲された情報もあるが未確認な部分も多く、飼育下ではせいぜい大きくても30㎝程度。


追記・修正はピラニアのいる川を泳いだ方にお願いします。



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最終更新:2021年02月22日 06:58