ドクツルタケ

登録日:2012/04/24(火) 20:36:49
更新日:2024/04/22 Mon 21:59:05
所要時間:約 6 分で読めます




うふふ


あなたキノコを取りにきたんでしょ?



ある場所まで一緒に来て欲しいの


…素敵なキノコがあるのよ



白い傘が綺羅星のように輝いて…


とっても美味しいのよ?









退屈なんてさせないんだから…
だからキノコ大好き発動するのはやめてね…?






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依頼主
白いドレスの少女

報酬金:109000z

契約金:45900z

指定地:森と丘



こちらのクエストを受注しますか?


はい   いいえ

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ドクツルタケはテングタケ科のキノコ。北半球に広く分布し、初夏から秋にかけての森林地帯の地上に生える。
その見た目はとても美しく可憐。

画像出典:PIXTA


いっさいの穢れない純白の傘はまるで地上に舞い降りた天使のようである。
実際に西洋では天使の異名を持つ。


ただし、死の天使(destroying angel)だが。

そも、世に危険とされる毒キノコは数多存在する。
単純な毒性の強さで言えば最強クラスの天然化学兵器カエンタケロケット燃料と同じ有毒成分を持つシャグマアミガサタケ、得体の知れない奇病のようなえげつない中毒症状を引き起こすドクササコ、長年致命的な毒性を持つこと自体が知られてこなかったスギヒラタケ……などなど、挙げればキリがないほど。

しかしこの可愛らしいドクツルタケ、それらの並み居る強豪たちに勝るとも劣らぬ悪名を誇る猛毒殺人キノコなのである。
何故それほどに恐れられているかと言えば答えは単純。

致命的で凶悪な毒性を持っているにもかかわらず、あまりにも「ありふれた」キノコだから。

厳密に言うと、毒キノコの毒性の強さと危険性はイコールではない。
例えば上で挙げたカエンタケは持っている毒こそとんでもないものだが、実際その猛毒でもって人間をバンバン殺しまくっている……なんてことはない。
というのもそこまで頻繁に見つかるキノコというわけではないし、そもそもの話見た目からして毒々しすぎるので不用意に触れたり食べたりする人なんてそうはいないのだ(なんなら、そのせいで割と長い間毒があるかどうかすらはっきりしないという扱いを受けていたくらい)。
それに対しドクツルタケは日本を含む北半球に広く分布しており、生える場所もあまり選ばない。
もし機会があるなら夏場、近くの雑木林でも散策してみよう。
大して探さなくてもその可憐な姿をお目にかかれるだろう。
嫌いな奴に食わそうとか考えるなよ
そんな身近さに加えて「純白」というよく目立つが毒々しくもない色合い、可愛らしい形から、
素人目には人を殺せるほどの猛毒キノコには見えず、古くから誤食による死亡事故を頻発させているのである。
味の方は美味しいとされているが、もちろん興味本位で味を見たりしてはいけない
だから嫌いな奴に食わそうとするなっつってんだろ!Wiki籠もりから逮捕者出したくないんだよ!!

同様に間違われて食べられやすく、致死性の高いキノコにシロタマゴテングタケタマゴテングタケがあり、
この3つを合わせて猛毒キノコ御三家と称されている。
こういった知名度の高さから英語圏では上で触れたような物騒極まりない異名を持つほか、日本でも「あたると死ぬ」という意味合いを込めて「テッポウタケ」と呼ぶ地方も。

万が一にもドクツルタケやシロタマゴテングタケを誤食しないように、「天然物の白いキノコを食べてはいけない」というのがキノコ狩りにおけるひとつの鉄則とされている。
当然白いキノコ全てが有毒なわけではないが、誤食した際のリスクがあまりにも大きすぎるし、有毒種との判別も難しい*1ため、よほどはっきり区別できるもの以外はそもそも手を出さない方がいい。
もっとも白いキノコに限らずタマゴテングタケやコレラタケのような地味な色合いの致命的な毒キノコは少なからず存在するので、生半可な知識で天然物のキノコに手を出すこと自体が危険な行為であることは念頭に置いておきたい。

ドクツルタケの毒はピロトキシン、ファロトキシン、ベニテングタケやコレラタケにも含まれるアマトキシン類。だが毒性の強さはそれらよりも上とされる。
致死量はたったの15gであり、ちょうどドクツルタケ一本分
毒性としてはカエンタケの方が上だが、結局のところ食えば死ぬのは同じである以上、そんなことを比較してもあまり意味はないかもしれない。
もちろん中毒症状の重さには個人差やその時の体調も影響してくるので、「1本丸々食べなければ平気」なんて思ってはいけない。

中毒者の実に9割が助からないと言えばその恐ろしさが分かるだろうか。


中毒は食べてから6時間足らずで発症。キノコ中毒ではお馴染みの激しい嘔吐下痢に襲われ、その後一度は治まってしまう
そのためこの時点では少なからぬ人が「腹を下しただけ」と甘く見て放置してしまう。
既に手遅れだとは気づくこともなく…


だがドクツルタケの毒はまだ猛威を失ってはおらず、人間が気づかぬ間に、少しずつ…少しずつ…体を蝕んでいくのである。
エロゲの洗脳かな?

そして食べてから約一週間後、第二波が襲いかかる

この時にはもはや末期で、体の維持に必要なタンパク質の合成を阻害するアマトキシン類が体内に残留し続けたりした結果、
自覚症状が出ないまま内臓という内臓が壊死していくことで、肝臓が肥大したり腎臓が壊れたり胃腸が出血したり内臓がスポンジのようになるなどの症状が進行し、
限界を超えたら洗面器が一杯になるほどの真っ黒な血を吐いたりしながら死に至ると言われている。
この特徴的な遅効性の中毒を、ある者は「家族に別れを告げる猶予を与えているようだ」と語っている。


更に第二波の症状は内臓が破壊され尽くした後だけにかなりの苦しみであり、
ある中毒事例では母子でドクツルタケを口にし母が死亡。
子は症状が回復し一安心と母の葬式を準備している時に第二波が襲来した際に


「俺を助けてくれ!!」


と助けを何度も求め畳に爪を立ててのたうち回り部屋中を爪痕と血反吐まみれにしながら息絶えたなんて話もある。


現状解毒方法も無く、有効な治療法があるとすれば、症状が出るより先に胃洗浄をして全て吐き出してしまうことくらい。
とはいえ普通は症状が出始めてから誤食に気づくので、処置をしても手遅れになりがち。こうなれば運良く助かることを祈りながら対症療法を受けるしかない。
何にせよマズいと思ったらさっさと病院を頼るべきだが。

繰り返しになるが、天然ものの白いキノコは絶対に食べてはいけない。というか、白くなかろうが天然のキノコにはおいそれと手を出すべきではない。
キノコだけでなくトリカブトのような野草やフグのような魚でも同じことだが、食べなければ当然中毒はしない。
半端な知識ほど恐ろしいものはないのだ。

当然、販売・おすそ分けなどをする際には自分が食べる時以上に細心の注意を払うこと(特に有識者が間に入り辛いおすそ分け)。
キノコの研究者はどうか分からないが、キノコの販売業者においても判別を間違えた……なんて事例をちょくちょく見かける。まして、素人に見分けが付くわけがない。

天然の食材がとても魅力的なものであることは事実だ。
だが、それを味わいたいなら、確かな知識自分の命への責任を持たなければならないということは忘れないでおきたい。


あまりにもえげつない中毒症状と誤食の危険性からとんでもなく邪悪なキノコのような扱いを受けがちなドクツルタケではあるが、あくまで彼らも人間と同じように必死に生きているだけの生き物。
これまた繰り返しになるが、こちらが食べようとさえしなければ別段何の害もない、美しくて可憐なキノコなのである。
もちろん誤食の危険を甘く見てはいけないが、過剰に恐ろしさばかりを強調するのも考えものである。
正しい知識を持って、正しく怖がろう。


余談だが、純白の姿に悪意さえ感じられるような中毒症状、そして「死の天使」という厨二病感のあるかっこいい通り名から、擬人化も盛んに行われている。
学名からアマニタ・ヴィロサとか名前が付けられることもある。





天然キノコには迂闊に手を出さないと誓って、追記・修正をお願いします。

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最終更新:2024年04月22日 21:59

*1 キノコは育っている途中だったり状態が悪かったりすると大きく外見が変わり、本来さほど似ていないはずの別種のキノコにそっくりになってしまうことがある。実際、色以外は全く違う見た目をしているはずのシロマツタケモドキとドクツルタケを誤認して中毒してしまった例がある