スーパー戦隊の敵組織

登録日:2017/06/18 Sun 15:24:00
更新日:2024/04/24 Wed 05:40:02
所要時間:約 67 分で読めます





主役は怪人だ!


※引用: 『百化繚乱 上之巻』帯文




【概要】

スーパー戦隊シリーズにおける永遠の人類の敵対者にして敵役。それが悪の組織である。極稀に和解するのもいるけどネ

当然ながらヒーローとは切っても切れない関係であり、40年近く続く戦隊シリーズでもその関係は健在。
彼らは日夜自分達の野望や目的のために計略を巡らせ、人々やヒーローに危害を加えていく。

組織の目的については幾つかパターンがあり、悪の組織らしく、主に
  • 世界(宇宙)征服
  • 人類への復讐
  • 思う存分暴れたい
の3種類が主流であるが、中には単に金儲けをしたいだけの連中もいたりと色々個性がある。
組織構造も単に秘密結社や悪の帝国、徒党を組んでいるだけの者からカルト教団、古代から伝わる魔物、異世界や異次元の住民など多種多様。

また大きな特徴として挙げられるのが個性豊か過ぎる敵役デザインだろう。
40年以上ほぼ毎年休まず放映し続けているだけあってその数たるや極めて膨大。
『ゴーカイジャー』までの時点でその数は2000体近い数の怪人達が登場し、その殆どが屍となった。
その上デザインのバリエーションも豊富。中には1~2週で使い捨てるにはあまりに惜しい造形のゲスト怪人も非常に数多く存在。
3作目の『バトルフィーバーJ』以降は巨大化した怪人や巨大な追加敵との第2ラウンド戦もお約束になった。
最早戦隊怪人=スーパー戦隊シリーズの裏の主役といっても過言ではない。

怪人以外にも、組織のトップや幹部級の面々から下っ端戦闘員に至るまで、これまた個性的な者達が多数存在している。

最近ではインターネットの発達もあり、テレビ朝日の公式HPで倒された怪人達の解説に加えて小ネタが収録されるようになった。
笑えるものから「あれ、コイツやっぱアカン奴だったんじゃね?」と思えるものなど小ネタの種類は多様である。
ただし『ゴーバスターズ』以前の戦隊はHP運営が終了してしまい、怪人解説も見られなくなっているので注意が必要。


この項目では組織概要と担当したデザイナー関係について簡単ながらまとめている。


◆70~80年代

シリーズ黎明期。
昭和特撮なだけあって概ね「世界征服」が行動目的であるが、黎明期ということもあって以後の敵組織と比べても非常に異質な組織もある。
「黎明期=テンプレな悪の組織」と考えるのは早計。ギャグ色の強めな組織だってこの時期に存在するのだから。


◆90年代

時代は平成真っただ中。
とはいえ世界(宇宙)征服や星々の破壊・蹂躙を目的とした王道のスタンスは今までと変わりない。
組織全体がギャグ色が強めだったり、イロモノ集団としか言いようのない組織が豊富となったのはこの頃からだが、その一方で
  • 黒幕として組織を裏で支配し構成員を平気で使い捨てる
  • 自分の障害になれば仲間どころか肉親すらも陥れて死に追いやる
  • 洗脳等の手段で敵の恋人や肉親同士を殺し合わせる
  • ヒーローの素顔を暴いた上で社会的抹殺を目論む
等の手段を選ばぬ極めて残酷な悪役や組織が数多く登場しており、そのあまりの悪辣さは演じる役者すらも辟易した程だったと言う。
戦隊シリーズの悪役デザインの常連とも言うべき篠原保氏もこの時期から幾度もメインデザイナーを担当するようになった。
その他、今まで通例だった戦闘機ポジションに当たる兵器は激減している。


◆00年代

各年ごとに一風変わったコンセプトを打ち出すようになってきたのがこの年代。
行動目的が金儲けだったり、複数の組織の寄り合い所帯だったり、そもそも個人個人が好き勝手暴れてるだけだったりと、今までとは異色な敵が増えている。


◆10年代

映像技術の発達に伴い、スケールのデカい悪の組織が増加傾向。
反面顔出し幹部の数が全体的に大幅に減っているのも特徴。
ベテラン声優による安定した敵役の演技が見れると取るか、顔出し幹部がいなくなって寂しいと捉えるかは人それぞれだろう。



◆20年代

遂に平成を跨ぎ令和に突入。
この時代になると一般怪人枠は「共通素体のボディ」を使い回しながら頭部や胴体などを新規造形していく流れへと変化。
一般怪人と巨大戦担当が別個体の戦力であることが多くなり、昔のように一般怪人がそのまま巨大化して戦う流れはめっきりと減った。
また男女問わず、昔のように顔出し幹部が多くなってきたのも見所の一つ。

闇の帝国ヨドンヘイム魔進戦隊キラメイジャー)

怪人名:邪面師/○○邪面
    邪面獣/邪面獣○○△△(素体の闇獣名)
戦闘員:ベチャット
本拠地:ヨドンヘイム
巨大化方法:なし(邪面師のモチーフに対応した邪面獣の召喚)
担当デザイナー:K-SuKe

令和初の戦隊の悪の組織。
暗く淀んだ異世界より現れた美しいものを忌み嫌う悪の侵略者軍団。強大な支配者ヨドン皇帝とその配下である戦闘部隊「ヨドン軍」で構成されている。
地球や人々を汚し、痛めつける事で発生する「闇エナジー」を利用し、地球とヨドンヘイムを繋げる侵略ゲートを開通すべく作戦開始。前日談であるエピソードZEROにて宝石の国クリスタリアを征服し、次の標的として地球に狙いを定めた。
等身大怪人である邪面師は巨大化せず、代わりに巨大な怪物「邪面獣」を召喚するというヴァグラスに似た巨大戦戦術を取る。
最終的に指導者の地位についた元幹部が「他の文明を侵略しない」と方針を決定したため、組織としては和解する形で決着となった。
名前の由来は淀み+ヨトゥンヘイム。

「頭部以外は共通素体を使い回す」という20年代の主流になっていく流れを作ったキーパーソン的組織。
ただしただ手抜きというわけでもなく、頭部だけで怪人の個性を演出する手前、イロモノじみた個性豊かなモチーフとキャラクター性を有するバラエティ豊かな敵組織として1年間作品を盛り上げていた。
またヴァグラスから数えて約8年ぶりに顔出し女性幹部枠が復活したという点でも大きな注目を集めた事でも知られる。

デザイン担当は『キュウレンジャー』以来のK-SuKe。
邪悪な力を宿した仮面「邪面」が共通シンボル。
幹部達は複雑で奇怪な意匠であるのに対し、邪面師達は非常にシンプルな器物モチーフの仮面と全身タイツという懐かしの仮面怪人スタイルを取っている。
邪面師、邪面獣共に今までのシリーズでモチーフになったことの無い物・なったことが少ない物をモチーフにしているのが特徴。クラウドや冷熱といった概念をモチーフにしたかなり挑戦的で個性的な物も。


キカイトピア王朝トジテンド機界戦隊ゼンカイジャー

怪人名:ワルド/○○ワルド、ダイワルド/ダイ○○ワルド
戦闘員:クダック
本拠地:キカイトピア/トジテンドパレス
巨大化方法:なし(巨大戦闘員の強化)
担当デザイナー:K-SuKe、篠原保

並行世界キカイトピアを統治する特権階級で構成された悪徳王朝で、構成員全員が特権階級意識に染り自分達以外のキカイノイドを見下し支配している。
劇中ではほぼ全ての並行世界(過去のスーパー戦隊の世界を含む)をトジルギアに封じ込めた。
しかし最後の世界であるゼンカイジャーの世界だけ封印できないため、業を煮やした大王・ボッコワウスの指示の元、武力行使で最後の世界を占領・支配せんと目論む。

物語開始時点で既に他の世界を実質制圧済みという成果の割には実戦経験の乏しさから来る油断、更に幹部同士の仲の悪さなどから、「悪事の規模と成果はザンギャックやジャークマター以上なのに知能はボーゾックレベル、しかもチームワークは歴代最悪」という戦隊悪の組織の集大成となった。

デザイン担当は戦隊怪人の重鎮、K-SuKeと篠原保の2人。
K-SuKe氏がメインデザイナーで、篠原氏はボッコワウスや追加幹部、巨大ロボ(とピンチヒッターとして2体のワルド)を担当。
ワルドは全員素体が同じかつ、今までモチーフになったことの無いもの・概念が多く時にストレートに、時に捻られて機械的にアレンジされたデザインはコミカルで華やかな見た目となった。
またK-SuKe氏担当の幹部〜戦闘員と6話までの怪人は「過去の戦隊衣装」が、篠原氏担当の追加幹部と巨大ロボは「過去の戦隊ロボや東映特撮ヒーロー」がモチーフとして組み込まれている。


脳人獣人ヒトツ鬼暴太郎戦隊ドンブラザーズ

怪人名:ヒトツ鬼/○○(戦隊名)鬼
    ヒトツ鬼ング/○○(戦隊名)鬼ング
戦闘員:アノーニ(脳人)
本拠地:脳人レイヤー・イデオン(脳人)/眠りの森(獣人の森)(獣人)/なし(ヒトツ鬼)
巨大化方法:ヒトツ鬼ングへの自己蘇生(ヒトツ鬼)
担当デザイナー:篠原保

今作は他の作品に比べて事情がかなり複雑。
まず「ヒトツ鬼」は人間の欲望から生まれ、宿主に乗り移り変身。その欲望をとにかく叶えようと暴れ回る。
作中に登場したヒトツ鬼は体内にセンタイギア/アバタロウギアを取り込んでいる為過去戦隊に似た姿、能力を使用。
次に「脳人」は人間世界に重なるように存在する「脳人レイヤー」を管理する上位存在で、脅かそうとする者を戦闘員アノーニと共に対処する。
そして「獣人」不死身で、人間の姿をコピーしその人間と移り変わってしまう。
…と、立ち位置だけで言うならば脳人が幹部格、獣人が追加幹部、ヒトツ鬼が今週の怪人枠に当たるが、実際の所この三陣営は敵対関係にある。
詳しく言うならば、ヒトツ鬼は人間の欲望から生まれるが、脳人が管理する脳人レイヤーは人間(資源)の波動で維持されヒトツ鬼の強い欲望はノイズとなる。つまり駆除対象。
それだけならドンブラザーズも同じだが、脳人は取り込まれた宿主ごとヒトツ鬼を殺処分しようとしている。
そこに獣人は横槍を入れてくるのだが、そんな獣人の主食は戦闘員のアノーニ。つまり獣人がいるだけで脳人は資源と人員を失う事になる。
なのでドンブラザーズと脳人は人々を取り戻し被害を出さないようにしたい…のだが獣人不死身のため対処法がない。
…このようにそれぞれがそれぞれに悪影響しか与えないため全陣営が敵対しているという、前例なきカオスな敵組織となっている。

デザイン担当は本作で16回目の登板となる大重鎮の篠原保。
ヒトツ鬼はその戦隊の容姿・ロボ・構成要素を巧みに使い分け、頭部・胴体換装式にもかかわらず「戦隊版アナザーライダーに等しい個性的なシルエットの怪人を生み出し続け、Vシネクストを含めると歴代45戦隊のコンプリートを達成。
脳人は石森作品以外の東映特撮ヒーローをモチーフに、デザイン上の共通点を残しつつ西洋甲冑のようなヒロイックで美しいビジュアルに仕上がった。


地帝国バグナラク宇蟲王一味(仮称)王様戦隊キングオージャー)


怪人名:怪ジーム/○○ジーム(地帝国バグナラク)
    宇蟲五道化(宇蟲王一味)
戦闘員:サナギム(地帝国バグナラク)
    なし(宇蟲王一味)
本拠地:チキューの地底深く(地帝国バグナラク)
    ダグデドの部屋(宇蟲王一味)
巨大化方法:異常成虫(地帝国バグナラク)
      それぞれ異なる(宇蟲王一味)
担当デザイナー:余湖裕輝

カクレンジャー以来の2部構成ということもあって、ゴセイジャーのように対決組織がガラッと変わるのが大きな特色。

『バグナラク』は奈落王デズナラク8世が統治する異形の帝国。
かつて5人の英雄と守護神シュゴッドとの戦いに敗れて以来、チキューの地下深くで息を潜めていたが、2000年の時を経て復活。
人類を皆殺しにするため、「チキューの秘宝」と呼ばれる三大守護神を狙い、地下トンネルを使って各国に神出鬼没に現れ、破壊行為を繰り返す。
『リュウソウジャー』以降音沙汰がなかった一般怪人がそのまま巨大化して戦う久し振りの敵組織となる。

『宇蟲王一味』は第2部に登場した宇蟲王ダグデド・ドゥジャルダンと彼の配下「宇蟲五道化」で構成される超少数組織。
キングオージャーの世界を支配し、星に住む生物を憎み合わせて内紛で自滅させる遊びで多くの星々を滅ぼしてきたが、遂にチキューにその魔の手を広げた。
今週の怪人枠は愚か戦闘員枠すら持たない戦隊史上初の組織であり、配下全員が幹部枠という強豪揃いの集団。
組織のノリとしては『冥府十神』に近いが、ゲーム感覚で悪行を成すなど方向性は『デスガリアン』の同類。
ちなみに組織の正式名称は未だ明かされておらず、『バンドーラ一味』同様暫定的な呼称となる。

デザイン担当は両組織とも『ニンジャスレイヤー』のコミカライズなどで知られる漫画家の余湖裕輝。
両組織とも虫がモチーフになっており、禍々しいビジュアルが特徴。
虫モチーフの先例であるウォースターが「翅のある昆虫」という括りだったのに対し、こちらは昆虫だけでなくダンゴムシやミミズといった広義の「虫」も取り入れることで差別化されている。


大宇宙侵略大走力団ハシリヤン爆上戦隊ブンブンジャー

怪人名:苦魔獣/〇〇グルマ―
戦闘員:ネジレッタ
本拠地:不明
巨大化方法:ギャーソリン大暴走体
担当デザイナー:島本和彦とビッグバンプロジェクト

宇宙のならず者達で構成された宇宙マフィア。肩書は「だいうちゅうしんりゃくだいそうりょくだん」と読む。
宇宙を跳梁跋扈しながら数々の惑星を侵略し、住民の悲鳴から生じるエネルギー「ギャーソリン」を収集して回りながら勢力を拡大している。
物語開始時に三人組の現場監督「サンシーター」が一番乗りと称して地球に襲来、新たな縄張り(と自分達の出世の足掛かり)とするべく活動を開始する。

詳細な組織構造は現時点では不明。
サンシーターが従来作品の幹部怪人枠に相当するが、あくまで彼らは下っ端の「現場監督」に過ぎない立場のため、組織内には彼らよりも格上の幹部が存在すると見られる。そもそもネーミングからして「三下」だし。

デザイン担当は燃える漫画家こと島本和彦が、自身が受け持つ会社「ビッグバンプロジェクト」との共同名義でシリーズ初参加。


◆番外




【代表的なデザイナー】

  • 石ノ森(いしのもり) 章太郎(しょうたろう)
日本で知らぬ者はいないであろう特撮界の大巨匠。
仮面ライダーのイメージが強い御方だが、ゴレンジャーの原案はそもそも石ノ森氏である。
彼がいなかったらこのシリーズは存在していなかっただろう。

  • 久保(くぼ) 宗雄(むねお)
東映特撮の企画を手掛ける『企画者104』に所属していたデザイナー。
スパイダーマン』のデザイン作業を経て、『バトルフィーバーJ』に参加。
しかしラフデザインしか進んでいなかったヒーロー側に加え、敵側のデザインまで引き継ぐ羽目になり、突貫工事で大変だったという。
その後も『ゴーグルファイブ』まで4作連続で参加し、ヒーロー側デザインとの差別化に四苦八苦しながらも戦隊怪人という未開の地へ先人を切った影の功労者と言っても過言ではない。

  • 野口(のぐち) (りゅう)
戦隊シリーズのみならず東映の特撮ヒーロー番組全体を支えた、今は亡き偉大な巨匠。
『デンジマン』~『チェンジマン』のアイキャッチイラストを手掛けたと言えばわかる人もいるだろうか。
左右非対称デザインや有機物と無機物の融合というコンセプトを見事に昇華させ、師匠の石ノ森章太郎テイストに縛られない独自の路線を開拓。
40年以上の永きに渡り続くことになるスーパー戦隊シリーズの黎明期を支えた最大の立役者である。
その後も『ジェットマン』『ジュウレンジャー』のデザインワークを手掛けその腕を存分に見せたが、2012年に病没。

  • 出渕(いずぶち) (ゆたか)
闘将ダイモス』にてデビューしたメカニックデザイナー。
『ダイナマン』で初メインデザイナーを務めた。
アニメチックなアプローチを取り入れた、今までの特撮怪人とは全く毛色の違うスタイリッシュな怪人・悪役デザインが好評を博し、
以後『フラッシュマン』までの4年間に渡りメインデザイナーとして最前線で戦い続けた。
「戦隊悪役」という概念をさらに進化・深化させた立役者その2。

  • 荻原(おぎわら) 直樹(なおき)
専門学校時代にバイト先からの勧めで企画者104にイラストを提出したことがきっかけで漫画家集団『いちごはうす』と共に『マスクマン』『ライブマン』にて怪人デザインを手掛けることになった当時新進気鋭のデザイナー。
当時は特撮番組の知識が皆無の状態でいきなり幹部を含む全体のデザインワークスを任されたことや、いちごはうすの面々が書き慣れていたことから相当プレッシャーを感じていたという。
当時主流だったハリウッドのSF映画の影響から、氏のデザインは洋画のクリーチャー寄りの傾向が強く出ており、『今までにない変わったデザインを依頼された結果』であると述べている。
『ライブマン』終了後は本業のTVゲーム開発会社に勤務していたが、2002年ごろにアニメーション制作会社に転職し、東宝の『幻星神ジャスティライザー』にて15年ぶりに特撮作品に参加。ヒーローデザインと怪人・怪獣デザインを手掛けており、本シリーズでの経験が役に立ったと語っている。
その後2011年ごろに再び退職し、デザイナー業からは引退しているとのこと。

  • 篠原(しのはら) (たもつ)
多分、野口氏に次いで戦隊悪役界最大の功労者。
手掛けた作品数は『ターボレンジャー』から数えて驚異の累計16作品
おまけに少しスパンが開いたかと思いきやそのスパンの間は別の作品で怪人を手掛けるという仕事の過密ぶりが特徴。
非戦隊も含めると『マジレンジャー』から始まり2016年までの約10年間ひたすら休まず怪人デザインを描き続けた訳の分からない御仁(誉め言葉)。
近年ではアイデアも枯渇気味と自嘲しており、アイデア作り兼マンネリ回避ために作品ごとに複雑なコンセプトを決めて書いているのが特徴的。
流石にスタッフも篠原氏に頼り過ぎたと反省したのかは不明だが、近年では篠原氏に頼らず新規のデザイナーをメインに取り立てている。
……といってもやっぱり安定性が段違いなのか、幹部枠のみ篠原氏が手掛けるパターンが近年は多い。

  • さとうけいいち
アニメーター。
戦隊以外では『THEビッグ・オー』のメカデザインや『TIGER&BUNNY』の監督として知られる。
『ガオレンジャー』で初参加すると、以後『ハリケンジャー』で単独メインを張り、その次にデザイナー殺しなエヴォリアンのデザインを単独メインで引き受けた結果かなり疲労困憊したとか。
かなりしっかりした画風は野口氏も太鼓判を押しており、『アキバレンジャー』では野口氏が手掛けた機械生命体の二次創作を手掛けている。

  • 森木(もりき) 靖泰(やすひろ)
主にアニメ作品を中心に活躍するメカニックデザイナー。
超人機メタルダー』にて怪人デザインを初めて手掛け、戦隊ではPLEX側のデザイン作業*22を経て『オーレンジャー』にて怪人デザイナーとして初参加。
以後、『デカレンジャー』でメインデザイナーを務め、『ゴーバスターズ』でも最も多くの本数を手掛けた。
『メタルダー』での経験から、下半身に力を入れずに上半身をボリューム良く描くことでカッコイイデザインに仕上げる手法を得意とするが、『ゴーバスターズ』では他デザイナーへの対抗意識からそのルールを敢えて破り全身隈なくデザインしてやり切ったと語っている。

  • 韮沢(にらさわ) (やすし)
平成ライダーシリーズ』などでの輝かしい功績で有名な今は亡き天才造形作家。
『ゴーカイジャー』にて戦隊に初参加し、ライダー怪人の時とは別の切り口で独自のデザインワークスを展開。
結果、戦隊怪人としての法則性は守りつつも唯一無二とも言える個性的なクリーチャーが多く誕生する事になった。
生前のインタビューにて『次にオファーさせあれば、またスーパー戦隊シリーズに参加したいですね。』と語っていたが、2016年2月に若くして病没。
『ゴーカイジャー』が最後の東映特撮参加となり、2度目の戦隊登板は叶わず仕舞いとなってしまった。

  • K-SuKe
『ゴーオンジャー』で戦隊に初参加、『ゴーバスターズ』で怪人デザインを務め以後頻繁に悪役デザインを手掛けることになるデザイナー。
本職は児童向け書籍などを中心に手掛けるイラストレーターで、過去にはゲーム会社のコナミにも在籍していた。
複数のモチーフや要素を押し込めた「ジオラマ怪人」というとんでもない発想を成し遂げるなど非常にアイデア力が豊富な方。今度は篠原氏じゃなくてこの人に頼りっぱなしじゃないですか東映さん……?
また『キョウリュウジャー』や『ゼンカイジャー』などの「自身がメインデザインを務めつつ他者と共作した作品」ではなぜか出演者に好きな怪人を聞くと自身が担当していない怪人が挙げられるという妙なジンクスを持っている。

  • (ひさ) 正人(まさと)
『ノブナガン』『ジャバウォッキー』『エリア51』などを代表作に持つ漫画家。
父は同じく漫画家のヒサクニヒコ氏。
『キュウレンジャー』で初参加し怪人デザインだけでなく主要人物のキャラデザやコンセプトアートも担当した。
後に『ルパパト』『リュウソウジャー』のデザインワークに3年連続で参加。さらには、近年の仮面ライダーゼロワンで劇中に出てきた漫画『パヒューマン剣』の作画も担当している。
アメコミを彷彿とさせるポップな作風と古生物、オカルト、兵器などの小ネタが詰まったデザインが特徴的であり、手がけた怪人達のなかには自身の漫画に登場するキャラクターに酷似した奴が時々出てくることもある。


【関連書籍】

あまりにジャンルがマニアックすぎる上、ウルトラ怪獣やライダー怪人ほど知名度が高い奴が少ないためか設定資料があまり出回らないことが多かった戦隊悪役界隈であったが、2012年には『ゴレンジャー』~『ゴーカイジャー』に登場した怪人デザイン画のみを集めた画集『東映スーパー戦隊シリーズ35周年作品公式図録 百化繚乱』が上下巻で販売された。
上巻は『ゴレンジャー』~『カクレンジャー』まで、下巻は『オーレンジャー』~『ゴーカイジャー』まで収録されている。
下巻は上巻では惜しくも収録されなかった銀河闘士・合身銀河闘士のカラーデザイン画が載っている他、次作『ゴーバスターズ』のデザインに関する言及もチラッと書かれてるので、上巻よりも価格が高い。
ちなみに怪人以外にも担当デザイナーが手掛けた劇中のキャラのイラストも解説として一部掲載されているので怪人しか載っていない訳ではない。
デザイン画と実物の着ぐるみでデザインやカラーリングなどが違ったりすることが多いので、その違いを比べることで新鮮な気分を味わえる。

1巻で定価5000円オーバーとサブカル系資料本では値が張る部類なのだが、発行部数がそもそも少なかったのか現在では絶版状態な上にプレミアが付いて価格も絶賛高騰中*23
安い買い物とは言い難いが、貴重な当時のデザイナー達の感想や制作秘話、怪人以外の小道具などのデザイン資料、デザイナー自身による各怪人の解説が読めるので資料的にも価値のある一冊。
もし定価で買える機会があれば、興味のあるファンは買ってみることをお勧めする。

ゴーカイジャー以降の怪人の設定画を見たい場合は、各戦隊の『公式完全読本』を買うと設定イラストを見ることが可能。
その他だと特撮関連雑誌『宇宙船』に年1回のペースで付属する別冊付録「宇宙船イヤーブック」に収録されている。*24

…と、長らくゴーカイジャー以降のデザイン画集は発売されていなかったのだが、2022年11月に怪人ファン待望となる『ゴーバスターズ』~『ゼンカイジャー』まで(と『ゴーカイジャー』)の怪人デザイン画をまとめた画集第3弾『スーパー戦隊怪人デザイン大鑑 戦変万化 2011-2021』が発売された。
『百化繚乱』同様の大判印刷で怪人たちのデザインだけでなくデザイナーのコメンタリーもしっかり見れるのでファンなら手に取る価値があるのではないだろうか。
そして2023年11月30日にはデザイン画集第4弾『スーパー戦隊怪人デザイン大鑑 戦変万化 1975-1988』の発売が決定。
本のタイトル通りゴレンジャーからライブマンまでのデザイン画を収録、デザイナーのコメントも『百化繚乱』から再録されている。
フォーマットは先に発売されていた『メタルヒーロー怪人デザイン大鑑 奇怪千蛮』や『平成仮面ライダー怪人デザイン大鑑 完全超悪』を踏襲しており、数作置きに章立てした構成になっている。
ついでに本書はシリーズ化するとも告知されており、実質百化繚乱上下巻の復刻に等しい朗報に、買い逃してしまい悔し涙を呑んでいたで怪人ファンからは喜びの声が上がった。



追記・修正は、『百化繚乱』上下巻や『戦変万化』を片手にお願いします。


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最終更新:2024年04月24日 05:40

*1 最終回でシャインが遠くから通信を送ってただけと知った鉄の爪が騙されたと悔しがる描写があり、劇場版ではシャインについて一切触れない。

*2 増尾隆幸氏も参加していたとする資料も存在するが、同年に『宇宙空母ブルーノア』に参加していた事もあり、実際には怪人デザインは手掛けていない。

*3 第15話のカタツムリ怪人と第16話の格闘技怪人が該当。その内前者は久保氏のラフデザインが元になっている。

*4 旧作3本の組織は首領は異星人のようだが、組織自体は地球で設立されている。

*5 第7話のヤキュウモンガーを担当。本作を最後にシリーズからは離れ、翌年の『宇宙刑事ギャバン』にてメインデザイナーとして活躍した。

*6 当時レインボー造型企画に所属していた造形作家。第39話のムカデモンガーを担当。

*7 超星神シリーズやウルトラシリーズなどで知られるベテランの造形作家、レインボー造型企画の前澤範社長からの勧めで第44話のムササビモンガーを担当。

*8 第19話のガマモンガー、第21話のイソギンモンガー、第27話のエイリアンモンガーが該当。このうちガマモンガーは板橋しゅうほう氏によるものとする文献もあったが、本人により否定されており、他デザイナー6名にも確認した結果、これらのデザイン担当者は不明でいずれも同一人物の手によるものという結論に至った。

*9 久保氏によればこの人物によるサインが入ったデザイン画が複数確認されているとのことで、デザインを描ける造形スタッフ側の人間ではないか(意訳)と推測している。

*10 第6話のサイカンスを担当。その後、いちごはうすのメンバーとして『マスクマン』『ライブマン』に参加。

*11 第28話のタコカンスを担当。本作を最後にシリーズからは離れている。

*12 ガンダムシリーズのコミカライズなどで知られる漫画家、本作ではゲスト怪人4体分に加え、プロップデザインも手掛けた。

*13 第1・2話の次元虫の親虫、第27話の亡霊次元獣軍団、第34話のジゴクメドゥーサは数えず

*14 大サタンはバンドーラ一味の仲間ではないので除外。

*15 野口氏のデザインが印象と合わなかった為河野氏がスケッチした西洋甲冑が決定稿となった。野口氏のデザインは後にドーラナイトに。

*16 組織拡充などのため宣伝・勧誘活動を行うこと

*17 本編ではTask.2にてボウケンブルー/最上蒼太が操作するタブレットの画面で名称が確認できるのみ

*18 デザイン制作会社『京田クリエーション』に所属するイラストレーター、デーボ・アキダモンネのデザインに加え、その攻撃案も採用された。

*19 例として、デーボ・ペシャンゴはスクラップカー、フォーククロー、ハエ叩き、ランマーなどを盛り込んでいる

*20 Space.18にて、ジャークマターが支配しているのはこれまでの戦隊がいた宇宙とはパラレルワールド的な別の宇宙と描写された

*21 ゴーマ族・ブルーレイ係長、機械生命体・スマホモンガーなど

*22 『ジェットマン』のジェットイカロスなどを担当。

*23 ネット通販だとサイトによっては1冊数万円になっている。例えばAmazonだと上下巻セットで10万円近くにまで達してしまった

*24 ただし収録された一体一体のサイズは小さめ