デッキ破壊(TCG)

登録日:2017/06/17 Sat 00:18:24
更新日:2024/02/13 Tue 09:28:26
所要時間:約 22 分で読めます






デッキ破壊も立派な戦術のひとつ あなたも始めてみませんか?



デッキ破壊とはトレーディングカードゲーム(TCG)の用語の一つ。
デッキ、山札のカードの一部または全部を捨て札にしたりなどして勝利手段とすること。
または、勝利のための補助手段とする戦略のこと。

TCGによっては山札破壊、デッキデス、ライブラリーアウト(LO)などとも呼称される。


概要

まず、デッキ(または山札)はTCGにおいてプレイヤーにカードを供給する役目を持つ。
このデッキの中に眠るカードを直接墓地(トラッシュ/捨て札とも)などに移動させてしまえば、正常にカードが供給されなくなる。
つまり、デッキ破壊とは「相手のデッキの中のカードを使用不能にしてデッキとしての機能を破壊する」ことを意味する。

語源は遊戯王原作で海馬瀬人が使用したカード「死のデッキ破壊」及びそれをOCG化したカード「死のデッキ破壊ウイルス」と言われている。

また、多くのTCGではデッキのカードが無くなると敗北するルールが存在するため、その勝利条件を満たすためにそうした戦術が取られることもある。
デッキ破壊はよくこの「デッキアウト(またはライブラリーアウト)」、つまりデッキを0枚にすることそのものと同一視されるが厳密には両者は似て非なる概念である
これはデッキ破壊を細かく定義した場合、デッキ破壊の目的は2つに分けられ、デッキアウトはその片方の面でしかない。


その二つとは「勝つために行うデッキ破壊」と「妨害手段としてのデッキ破壊」である。


ちなみに、多くのTCGで行われる自分で自分の山札のカードを墓地に送り込む行為は「墓地肥やし」として扱われる。
それらは「リアニメイト」や「サルベージ」など、墓地を利用する戦術の補助として行われる。

おろかな埋葬」や「ダンディ・ナスオ」が規制されている現状を考えるに、非常に有用な戦術に間違いはない。
ただし、デッキを削るということは自分の寿命を縮めることに変わりないため、相手がデッキ破壊をしてくると友情コンボになってしまう点については留意したい。


勝つために行うデッキ破壊

既に述べたとおり、多くのTCGでは「デッキの残り枚数が0枚の場合に敗北する」というルールを採用している。
0枚になった時点で即敗北が決定したり、0枚のデッキから更にドローしようとした場合に敗北したり、
0枚で自分のターンを迎えた場合に敗北したりとそのTCGによって条件は様々だが、ようするに相手のデッキを全て無くしてしまえば勝ち、ということである。
この勝利条件を満たすため、相手のデッキからカードを大量に墓地に送る、またはすべてドローさせてしまう。

これが勝つためのデッキ破壊である。

基本的に、ライフポイントやそれに相当する概念が設定されているTCGでは、搦め手として扱われることが多い。
だが、今は亡き「GUNDAM WAR」や「金色のガッシュベル!!THE CARD BATTLE」など、デッキ破壊が基本的な勝利手段とされているタイトルもある。
他方、後述の「WIXOSS」のようにデッキ枚数が少なく通常のプレイでデッキが無くなることを想定しており、
その場合はダメージを受けつつ墓地のカードをシャッフルして山札に戻す、というタイトルもある。
当然、デッキ破壊は致命傷足り得ないが立派な戦術として成り立つ、という扱いになる。

勝つための破壊においては、相手のデッキを墓地に送る効果は質よりも量が優先される。
即ち、「デッキの上からX枚墓地へ送る」といった効果でXの数が多いほど強力になるのだ。
また、この戦術をとる場合は何も墓地に送らずに、大量かつ強制的にドローさせてしまっても良い。
それは戦術の根本を成し、TCGにおいて最も重要視される行為である手札の補充が敗北への階段となることを意味する。

この戦術が別名でデッキアウト戦術、デッキデス戦術などと呼ばれる。

利点

  • 通常の勝利手段を狙わないため、相手の防御カードが機能しなくなる。
  • クリーチャー/モンスターをあまり展開しないため、自軍を巻き込む全体除去が使用しやすい。
  • サーチやドローといった、アドバンテージを稼ぐ行為を躊躇させることができる。

欠点

  • 墓地利用、除外/追放利用が得意なデッキが相手の場合逆に相手の動きを助けてしまう。
  • ライフよりも削りきるまでの道のりが長い。
  • ルール上可能な場合「デッキ枚数を増やす」という簡単な対策が存在する。


妨害手段としてのデッキ破壊

一方でこちらは「相手の勝ち筋を潰すこと」を目指すデッキ破壊のことである。
即ち、デッキの中の特定のカードだけを使えなくし、そのカードを引かせないようにする戦術のこと。

デッキには必ず切り札となる強力なカードやコンボの起点となる重要な1枚が入っている。
だがもしそのカードがデッキの中からなくなってしまったら?

どんな強力なカードも使えなければ意味がない、どんなコンボも成立しなければ勝つことはできない。
アニメなどでよくあるディスティニードローもそもそも逆転のためのカードがデッキの中になければ意味がないのだ。
なお、その場で創造するという特例についてはここでは触れない

あらかじめ相手のデッキを把握、または相手のデッキのタイプから切り札を類推し、そのカードだけをデッキから排除する。
この場合は相手のデッキを墓地に送る「量」よりも「質」が優先される。
デッキを確認し特定のカードを探して墓地に送らせる、または条件に合うカードを全て墓地に送らせるようなカードが採用される。
前述の「死のデッキ破壊」はこちらに分類される。つまりデッキ破壊の源流はこっちを指す用語である。

なお、墓地は第2の手札という格言があるように、墓地のカードをリソースとして扱うゲームでは、
むやみにデッキのカードを墓地に送るだけではかえって相手にアドバンテージを与えるだけで終わってしまう。

また、TCGにはデモコン理論という考え方があり*1、デッキ破壊を意に介さない人間もいる。
これは「墓地に落とされたカードも山札に眠ったままのカードも、ゲーム中に引けていないという事実に変わりはないためデッキ破壊に実害はない」という豪快なもの。
ただし本来は主に自分のデッキ枚数そのものをリソースとして使う際に使用される理論である。

大事なのは「キーカードを的確に落とす」ことであり、適当に落とした中にキーカードがあることを祈るようなプレイングは避けるべき。

利点

  • コンボデッキや1枚の切り札を活躍させるタイプのデッキに強い。
  • 3セット2先取のようなマッチ戦では2戦目以降により安定して戦える。

欠点

  • デッキ破壊をしても手札、盤面には影響しない事が多くカード使用の分だけアドバンテージを失いやすい。
  • 特定のキーカードを持たないグッドスタッフ系のデッキには効果が薄い。


各TCGにおけるデッキ破壊

Magic the Gathering

MTGにおいてはゲーム中におけるデッキ領域はライブラリーと呼称する。
そのためデッキ破壊ではなくライブラリー破壊といったほうが話が通じやすい。
色の役割(カラーパイ)の中で「勝つためのライブラリー破壊」を行うのは、「妨害のためのライブラリー破壊」を行うのは(初期は青)の役割となっている。
また、ラヴニカのギルドでこの両者の複合色、つまり青黒のギルドであるディミーア家はライブラリー破壊を得意としている。

詳細は「デッキ破壊(MtG)」を参照。

遊戯王

このゲームではプレイヤーのライフポイントに比べてモンスターの攻撃力が高く、多くのデッキがビートダウンとして組まれる。
そのため、ライフロス狙いよりも手間のかかるデッキ破壊は結果を残しにくい。

現在は墓地に送られたカードの再利用が非常に豊富なため、下手なデッキ破壊は相手を有利にさせるだけなことも多い。
そのため、デッキ破壊を狙うならばゲームから除外してしまったり、ソリティアコンボから1ターンの内に削りきるような方法が主流。

詳細は「デッキ破壊(遊戯王OCG)」を参照。

デュエル・マスターズ

デュエマの山札は40枚だが、うち10枚が手札とシールドに振り分けられるため、ゲーム開始時の枚数は30枚。
また、マナコストさえ払えば比較的簡単にドローができ、山札の上からマナブーストする能力も多いため、意外と山札が減りやすい。

したがって、特化したデッキなら中々のスピードで山札を減らす事が可能。
また、S・トリガーという逆転要素のある本作では、それを避けつつ勝利を狙う手段としてもライブラリアウトは魅力的である。
デュエマのルールでは「山札が0枚になった時点で即敗北確定」となるため、尚更である。

ただし、他のTCGに比べてデュエマにおけるこの戦略はやや冷遇されており、またプレイヤーからの評価も賛否両論。
該当するカードの数自体も15年という歴史の割には多くなく、製作側もこの手のカードのデザインには慎重である。初期?知らん


ポケモンカードゲーム

山札の枚数は60枚固定であるものの、初期手札7枚+サイド6枚分ドローしているため、ゲーム開始時の山札は47枚となる。
ポケカでは古くから相手の山札をトラッシュする技を持つポケモンやトレーナーズカードが定期的に登場するため、「勝つためのデッキ破壊」がどのレギュレーションでも割と現実的なTCGである。
しかし1ターンあたりに相手の山札を安定してトラッシュできるのはせいぜい5枚ちょっとであり、単純にデッキ破壊だけしていると相手にサイド6枚を取られきって負けになりやすい。
そのため相手のバトルポケモンを混乱眠りなどの状態異常にして技を使えなくさせたり、グッズ・サポートを使用不可能にさせたりする等のロックも必須になってくる。

状態異常の持続にコイントスが絡む関係上、安定性に少し欠けるため決してメジャーではないものの、地味に人気がある戦術なのも確かであり大型大会で結果を残すこともたまにある。
最たる例として、他カードとのコンボで凄まじく強力なロックと山札破壊を同時に行えるサポート『ジュジュベ&ハチクマン』が大会で大暴れしたため、スタンダードレギュレーションで禁止カードに指定されたことがあった。

余談だが、アイアントのカードは何故か山札をトラッシュする技も持っていることが非常に多い。

バトルスピリッツ

デッキ破壊が公式的に勝ち筋の一つと認められており、「勝つためのデッキ破壊」の分野においてはあらゆるTCGを凌駕する多様性を誇る。
青が「色の役割」としてデッキ破壊効果を持ち、豪快な数十枚破棄ものから条件付きで何度も破棄するものまで効果は多岐にわたる。
そして初心者ガイドには「デッキ破壊だ青属性!」とまで紹介文が載っている。
ジョークカードでも禁止カードでもない1枚のカードに平然と「相手のデッキを12枚破棄する」なんて書いてあるのはバトスピくらいのものだろう。
青以外にも黄色のループソリティアコンボやら紫の一部のカードにもデッキ破壊に利用しろとばかりな効果がある。
近年では2017年4月に行われた全国大会「バトスピチャンピオンシップ 2016-神皇杯-」の優勝デッキはデッキ破壊であった。

強力な分、対策カードの種類も非常に豊富。
そのためデッキ破壊で勝つためには「デッキ破壊対策の対策カード」をどう採用するか、が構築の一つの指標となっている。


WIXOSS

タカラトミー/ホビージャパンのTCG。デュエマの妹分。
デッキが0になっても敗北こそしないが、墓地(トラッシュ)を新たなデッキとした上でライフが1削れる(これをリフレッシュと呼称)ため、リフレッシュでライフを削ることによるデッキ破壊は戦術として成立する。最後のライフのみはアタックによってダメージを与えなければならないため、デッキ破壊だけで勝てるわけではないが。

ただしルール上、ループ抑止のためにターンプレイヤーのリフレッシュが1ターンに2回行われると、その時点でターンが強制終了される。
理屈の上では自分のターンに相手のデッキのみリフレッシュを繰り返せばターン中にライフクロスを削りきれるが、そのようなデッキは現在のところは開発されていない。

また、リフレッシュ時には相手のトラッシュのカードが全てデッキに戻るため、トラッシュのカードをリソースとして使うデッキは、ここぞというタイミングでリフレッシュを行ってしまうと計算が大幅に崩れてしまう。
下手にデッキ残り枚数を削りすぎてリフレッシュ1つで盤面が崩壊したり、逆に相手の盤面を崩すためにリフレッシュを狙うなどの戦術もWIXOSSでは基本。

フューチャーカード バディファイト

デッキ破壊をテーマとしたカテゴリ《死竜》が登場する。
このカード群は相手のデッキを削る効果と、
「相手のドロップゾーンが10枚以上なら、このカード以外の場のカード全てを能力を無効化して破壊する」
「相手のドロップゾーンが20枚以上なら、そのターン中、このカードは『3回攻撃』を得る」
といった、相手のドロップゾーンを参照するメリット効果を持つ。
基本的には、これらの効果を当てにして普通にビートダウンや妨害を行い、あわよくばライブラリアウトという感じで戦う。

Z/X

デッキ、特に相手のものに触れるカードが少ないTCGのため、直接的なデッキ破壊は存在しない。
なので強制ドローやリソース追加など、他のゾーンへカードを移動させる効果で疑似的にデッキを減らすことになる。

しかし、そもそもデッキが0になってもトラッシュをシャッフルし新たなデッキとするルールなので、リロードエフェクトで確定ライフ-1とはいえ労力に見合うメリットは薄い。
なので普通に攻撃しライフを削る片手間でデッキを消耗させ、デッキ切れによる強制ダメージによりライフリカバリーなどを発動できない状況に追い込むといった使い方が主になる。

例外として、自分のエンジェルが登場した時に相手のデッキを上から3枚除外する「終末天使サンダルフォン」は、トラッシュを増やさずに相手のデッキを削ることが可能なためデッキ破壊による勝利が見込める*2


アニメ、漫画などのメディアでの扱い

遊戯王

デッキ破壊は負けフラグ」と呼ばれ、デッキ破壊を仕掛けた側が勝つことはほとんどない。
現在、自らデッキ破壊戦術を仕掛けてデッキ切れで勝利したデュエリストは未だに現れておらず、
デッキ破壊で決着がつくパターンは「相手のコンボを逆に利用した結果、デッキ破壊で勝利した」というものが大半である。

デュエル・マスターズ

実物で冷遇されている事もあり、メディアミックスでの扱いは更に悪い。
理由については諸説あるが「勝ち方が地味でアニメ等では見栄えしない」「S・トリガーによる駆け引きが描けない」「やり方が陰湿で子供達へのウケが悪い」事などが挙げられている。

バトルスピリッツ

前述のとおりデッキ破壊も勝ち筋の一つであり、作品ごとのレギュラーキャラクターにデッキ破壊の色である青使いが一人以上いる。
いずれのキャラクターも勝率自体はそこまで高くないもののデッキ破壊による勝ち回がきちんと複数回与えられている。

バトルスピリッツ ソードアイズ以降は、
デッキが0枚でターンを迎えたものはキャラクターの足場が爆発する」というデッキ破壊負け専用の演出がなされるようになった。

スピリットのパンチやビームでデッキが上から2ケタ単位で吹っ飛んでいくその豪快さはバトスピならではの爽快演出。

またデッキ破壊対策としてデッキの枚数を多めにしておくというバトラーもそれなりに登場する。効果があるかは微妙なところ*3


そしてもうひとつ忘れてはならないのがラジオ番組「バトスピ大好き声優の生放送!」。
このラジオのコーナーに「やるぜ!生バトスピ!」というゲストとMCが1対1でバトスピ対決を行うコーナーがある。
が、このラジオのMC3人のうち2人(諏訪部順一阪口大助)*4デッキ破壊大好き声優なせいでかなりの頻度でデッキ破壊勝ちが起こる。
そして「初登場の女性ゲストを容赦なくデッキ破壊してトラウマを植え付ける」というのが恒例行事となってしまった。
主な被害者たちは堀江由衣佐倉綾音など。2017年には仮面女子から二人の犠牲者が出ている。
特に堀江由衣のゲスト回である2012年12月の放送回の「4ターンでデッキ破壊勝ち」はもはや伝説。



フューチャーカード バディファイト

三期以降のメインキャラである黒渦ガイト&アビゲールがデッキ破壊の使い手であるため、かなり頻繁に登場する。
「DDD」第24話では上で挙がっている墓地肥やしデッキとのギリギリ対決が描かれた。

「お前のデッキは残り1枚、さあ、諦めながら最後のカードに手を伸ばすがいい!」

「まだだ、まだ諦めないぞ・・・・・ドロー!!」

カン!コーン!

「俺は《追記・修正》を発動!」

「何!?《追記・修正》だと!」

「ああ、俺はこのカードでこの項目の内容を書き換える!」

「な、バカな、我が負けるというのか!ぐああああ!」


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最終更新:2024年02月13日 09:28

*1 「デモコン」の語源はMTGにおける「Demonic Consultation」という自分のデッキを削ることで効果を使うカード

*2 デッキ、トラッシュの双方が0の場合はルールエフェクトで敗北するため

*3 現実ではデッキ枚数が多いとそのぶん欲しいカードを引ける確率が下がるのでやめておいたほうが無難。

*4 残る3人目のMC、マヌガスこと菅沼久義はパワーカードが大好きながらもプレイングが致命的に残念なので、ゲスト相手のバトルではキーカードの召喚には成功するも惜しくも負けるエンターテイナー