蒼天航路

登録日:2017/06/16 Fri 05:24:19
更新日:2024/01/30 Tue 08:49:10
所要時間:約31分で読めます




『蒼天航路』とは、原作・原案:李學仁、画:王欣太により1994年10月から『モーニング』で連載された漫画の事。
1998年9月に李が死去してからは王欣太一人での執筆になり、2005年11月に完結した。
キャッチコピーは「衝撃のネオ三国志」と結構大仰な看板ではあるが、その言葉に恥じないだけの特徴をきちんと備えている。

まず一つ目の特徴は『三国志演義』では専ら悪役とされている曹操を「最も人というものに興味を示した英雄」として主人公に据えた所。
これは単に曹操視点の三国志という意味に留まらず、この作品自体がストーリー云々よりも場面場面での人物描写の方に注力しているという意味でもある。
寧ろ曹操は作品の象徴的な存在で、主役は各エピソード毎にいると言った方がより正確かもしれない。

二つ目の特徴はその人物描写に非常に大胆なアレンジが施されている所。
曹操が何でも出来る完璧超人だったり、孫権が超絶野生児だったり、孔明がまるで人外だったりする。
表現も中々過激で

  • 張角の吐いた血反吐が龍をかたどる
  • 曹操が「いきなり巨大化する」「"漢中王"という言葉にぶっ刺される」といったどこぞの美食家みたいなリアクションをとる
  • 孔明が怒りのあまり爆肉鋼体筋骨隆々になる

とまるで自重していない。
加えて、曹操の死をもって終劇となる事や、話がちょくちょく端折られている事*1からも、「三国志の物語を追う」という点では少々不自由するところがあるかもしれない。
しかし、各エピソードでそれぞれが吐き出す力強い言葉や場面を盛り上げる迫力満点のコマの数々は、その欠点を補って余りある魅力を産み出しており、一目見たなら忘れられないインパクトを読者に残す。既読者ならば

「ならばよし!!」


「兵卒の夏侯惇です。よろしく。」


「ニイメンハオ。」


「陳宮ーー!!!!」

といった台詞を挙げただけで、その場面がすぐさまフラッシュバックされるだろう。

どいつもこいつもキャラが立ちまくっているので、(それが正確かはともかく)武将の覚え易さに関しては他の漫画の追随を許さない。それどころか、「この作品が今日の日本人が抱いている曹操の人物像に少なからず影響を与えている」といっても言い過ぎではないかもしれない。
三国志という物語のある瞬間を切り取り、極彩色で彩って、目にする者の網膜に焼き付ける。そんな漫画である。

主な登場人物

念のため断っておくが、これはあくまで「蒼天航路」での人物像なので注意されたし。





「北部尉殿!追記、修正されてしまいました!」
「ならばよし!!」


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最終更新:2024年01月30日 08:49

*1 例えば、関羽が劉備の下を離れるシーンはクローズアップされるが戻ってくる所の描写はない、といった具合

*2 父の死はあくまで切っ掛けであり、曹操はこの決断に一切の私情を挟んでない。現に程イクの「報仇雪恨」の文字を掲げて攻めるという案は曹操自ら却下している。

*3 これは余談だが、董卓を討とうとした王允がかつて言及したように「死後自分の名前がどのように後世に残るか」は当時の中華に生きる群雄達の大きな関心事の一つであり、それに執着した劉表は特別おかしいわけではない。ちなみに曹操は「百年もたてば(自分の)名さえきれいさっぱり無くなろう、清々するな」と口にしていた。「この漫画で」「曹操に」こんな事を喋らせるとはなんともメタくて皮肉な話である。

*4 魏諷は自分と孔明の接点を知らない。また劉備の配下になった訳ではなく、むしろ天子を利用して劉備を従わせようと考えていた。

*5 同志の1人が劉曄に捕縛され、激しい拷問の末に自白した。既に精神は崩壊しており、魏諷の相棒とも言える銭申という猿の首を下げている。

*6 相国として魏の内政を取り仕切っていた鍾繇も、魏諷を官職に取り立てた事で処罰の対象になっている