勇午(漫画)

登録日: 2017/05/28 Sun 21:25:21
更新日:2024/01/04 Thu 23:07:42
所要時間:約 4 分で読めます





『勇午』(ゆうご)は、原作:真刈真二、作画:赤名修により、1994年から2004年までは『月刊アフタヌーン』で、2004年から2015年までは『イブニング』で連載された漫画作品。
『フリーのネゴシエーターによる交渉劇』という一般人には余り馴染みの無い題材を扱っている。
普通ネゴシエーターと聞くと警察や国家、国連などに所属し、その安寧の為に一般的に悪とされている組織犯罪に立ち向かう、というイメージだが、主人公の別府勇午は何処にも所属をしておらずあくまでも個人で依頼を受ける。
だから必要とあらば人一人を救うためにテロリストに金を流したり、国家に対して「核攻撃を行う」と脅しをかけたりもする。犯罪者の依頼を受け彼らと行動を共にすることすらある。
また、作者二名は交渉の舞台となる国の現地取材を緻密に行い、そこの風俗や社会情勢などを物語に反映させるという手法を用いている。
これを上記の勇午の「個人の、フリーの」という視点と絡ませることで、交渉という人と人の触れ合いを通じて世の中の必要悪、権力の闇、宗教観、民族・国の在り方等をダイナミックに描写する事を可能としている。これがこの作品の特徴。
また、交渉というものは必ず「二つの異なる利害が存在する」故、勇午は行く先々で様々な困難や拷問に見舞われることになる。それを持ち前の明晰な頭脳と揺らぐことのない信念をもってどう切り抜けていくのか、というのもこの作品の大きな見所である。
古今東西で様々な試みがなされている漫画というジャンルにおいて、「個性的」「異彩を放つ」という言葉ほど陳腐な表現もないだろうが、それを踏まえて尚「個性的で異彩を放つ作品」と言えるだろう。

追記修正お願いします。
























……え?拷問?

そう、拷問

何を血迷ったのかこの作品、各エピソード毎にほぼ必ず凄惨な拷問シーンが挿入される。その内容も

「アッラーの加護があるか確かめるために磔の勇午の耳に蜜を塗って(脳を食い破る)蟻をけしかける。」*1 (パキスタン)

「かつて異端審問に使われていた椅子に座らせ、毒塗り仕込み棘で全身をグッサリ。意識不明になったところをそのまま埋葬。」(ハンガリー)

「"水銀は毒じゃないよ。ただ悪人が次のサンサーラにいくだけだよ(建前)"といって気化水銀が充満した部屋に閉じ込める。」(インド)

「ドネルケバブを作るよ!肉はお前な!」(トルコ)

「友人に麻雀牌を引いて貰おう。→白が出たから勇午は小さいツボに塩漬けな。大丈夫だって、水分抜ければ丁度良く収まるから。」 (香港)

「全裸にガソリンをぶっかけ、吹雪に曝す。→"この寒さは堪えるだろう?辛かったらこれ(ライター)で暖をとるといい。"」(ロシア)

等々、非常にバリエーション豊かで異国情緒に溢れている。というかあんたらは一体なにを取材してきたんだと。
なんか物騒な言葉もチラホラ見受けられるが決して処刑ではない、あくまで拷問である。なんでって?

死なないからだよ。(最後は勇午じゃないからノーカン)

と、このように文字どおり"異彩を放つ"作品なのだが、これらもただの拷問これくしょんとしてあるわけではなく、交渉相手や協力者との接触といった事態が進展する装置として使われたり、勇午自身の機転のよさや、信念の強さ、またそれゆえの愚直さ等を描写する役割となっていたりと、各エピソードのアクセントとなっている。
そういう意味も含めて、拷問シーンはこの作品の大きな見どころの一つであると言わざるを得ないだろう。


登場人物


主人公。
明晰な頭脳、あらゆる女性に好かれる甘いマスク、決して挫けることのない強靭な意思力、どんな拷問にも耐え抜く幾らでも替えの利く驚異的な肉体、テロリスト相手でもまずは理解し信頼を得る所から始めようとする誠実な性格、とおよそ人間社会において長所と呼ばれるあらゆるモノを備えた現代の完璧超人。
交渉成功率97.4%(連載初期)という驚異的な数字をもつ事からもその能力の高さがうかがえる。
しかしそんなハイスペックさとは裏腹にその仕事ぶりはおよそ「完璧」という言葉とは縁遠く、彼が扱う交渉は常に数多くの困難や拷問、そして周囲の人間の犠牲がついてまわる。
よって彼を最高のネゴシエーターと認めつつも、最悪のトラブルメイカーと疎んじている者も少なくない。詳細は人物の項にて。

  • 小暮蛉一
勇午が旅先で使う様々な道具の提供、コンピューターのハッキングによる情報収集、彼が大立ち回りをする際の演出効果の担当など、主に技術面で彼をサポートする人物。
長年の付き合いによる信頼からか、彼のスタンスは徹頭徹尾「勇午のサポートにまわる」で一貫しており独断で行動を起こすことは決して無い。
勇午が死亡したという報が入り、知人が現地に調査に行こうと提案した際の
(小暮)「俺は待つのが仕事だ。勇午が来いと言わない限り俺は待つ。」
(知人)「例え勇午が死んでいたとしてもか。」
というやり取りからもそれを窺い知ることが出来る。ビビリなわけではない…決して。





追記、修正は拷問に耐えきってからお願いします。

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最終更新:2024年01月04日 23:07

*1 その後彼はもう一度証明するために、マチェットを自らの腕に突き立てる羽目になる。