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SCP-036-JP

登録日：2017/05/27 Sat 16:50:12
更新日：2024/02/05 Mon 19:06:19
所要時間：約 3 分で読めます



問1.時速300kmの縄文土器と、その3オクターブ高いNaClとがおなじ前置詞から移動を開始しました。
3秒後、あなたは生きているか死んでいるか？


SCP-036-JPは、シェアード・ワールド「SCP Foundation」に登場するオブジェクト(SCiP)のひとつである。
オブジェクトクラスはEuclid。

項目名は「Shock in 会議」。
ダジャレではないのでトマトはお帰りください。


特別収容プロトコル

内容はこんな感じ。

SCP-036-JPは敷地内全域をフェンスで囲い、機械警備を行います。月曜から金曜までの午後３時半から午後６時の間、警備員に偽装した財団エージェント1名による巡回を行います。侵入者を発見した場合、財団フロント企業による再開発を名目に退去させて下さい。必要な場合は拘束し、記憶処理を行います。財団職員か否かを問わず、SCP-036-JPの実体に遭遇した者への救助活動は行いません。

侵入した人間は助けません、というのがポイント。


概要

微妙に物騒なこのオブジェクトは、とある県のどこかの市のなんとか中学校の職員室。
通常、入って観察しても何も起きないが、祝日でない月曜日～金曜日、要は平日の16:00になると活性化状態に入り、内部には本来頭部があるべき位置に何かしらが取り付けられている13体の人型実体が確認できる。
18:00になるとこれら実体は職員室を出て消失。廊下に現れたことが一度もない点から、やはり異次元の存在であることが伺えるオブジェクトは非活性状態になる。

人型実体には順に「SCP-036-JP-01～13」が振られているが、ここでは省略するとして、内容と行動はこんな感じ。

  • 実体01
一番奥の机に座る恰幅のいい男性型実体。推定役職は校長。
頭はトロフィーになっていて、何らかの権限を有していると考えられている。


  • 実体02
「校長」の隣に座る男性型実体。推定役職は教頭。
頭は「校長」より小ぶりなトロフィーで、「Shock in 会議」の進行役を務めている。


  • 実体03
くたびれたスーツの男性型の実体。頭は三角定規。
デスクに向かったままひたすら計算に没頭しているので推定役職は数学教師。
確認された一例では未知の計算式をもとに、10÷3の計算を延々と続けていた。


  • 実体04
真新しいスーツを着た女性型の実体。頭部は今や懐かしのテープラジオカセットレコーダー。
常に大音量で「クケモニ」と「ガキュータ」という人物の会話を流しているが、唐突に未知の言語に切り替わる。しかも最後には激高したクケモニがガキュータを殴り殺して終わる。
推定役職は英語教師。

  • 実体05
ラフなスーツ姿の男性型実体。頭部は毛筆の先。
デスクには教育書籍が山積みだが、確認されたタイトルは「さけざべあれあ」「けあをずとあ」「いちれすうさけざ２のあ」と無茶苦茶……*1推定役職は国語教師。

  • 実体06
薄汚れた白衣を着た男性型実体。頭部はフラスコ。
この内部にはホルマリン臭の液体に脳が浮かんでおり、これをゆすって何かを確認している。推定役職は理科教師。

  • 実体07
ネクタイをつけていないワイシャツを着た男性型実体。
頭部は縮尺がめちゃくちゃな地球儀。
この地球儀は国境線が条文か何かの形で書かれていた上に不正確だった。推定役職は社会科教師。

  • 実体08
ほつれたセーターを着た男性型実体。
頭部は油絵の具と水彩絵の具ででたらめに着色された石膏の胸像。これを鏡で確認しながらノミを用いて延々と削っている。
推定役職は美術教師。

  • 実体09
やぶれたカーディガンの女性型実体。頭部はメトロノーム。
指揮棒を手にして常に揺らしているが、振り子とはまったく一致しないという地味に高度な真似をやってのけている。
推定役職は音楽教師。

  • 実体10
汚れたエプロンをつけた女性型実体。頭部は鍋。
この鍋からは湯気が立ち上っており、確認された映像では裁縫道具をコトコトと煮込んでいた。
推定役職は家庭科教師。

  • 実体11
油染みまみれの作業服を着た男性型実体。頭部はネジ。
ハンダゴテとヤスリを持っており、ネジにハンダ付けをしてはヤスリで削り取るという謎の行動を繰り返している。
推定役職は技術教師。

  • 実体12
泥だらけのジャージを着た男性型実体。頭部はボール。
頭のボールをひっきりなしにバレーボールやバスケットボール、ラグビーボールと交換し続けている。
推定役職は体育教師。

  • 実体13
赤い、恐らくは血のシミがついた白衣を着た女性型実体。頭部は救急箱。
自分の手をメスで切り裂いてはヨードチンキで処置する、というえらく前時代的な処置方法を繰り返している。
推定役職は養護教諭。

これら実体は基本的に各々の作業に没頭しているが、「教頭」が会議の開始を宣言するとそちらに参加する。
が、恐らくは異世界あるいは狂った世界の教師（後述するが、恐らく元基底現実の人間である）だけに、学校の在り方もそこに通う生徒たちも色々とおかしいことが「会議」の内容から垣間見られる。

その一例は、

  1. プールの消毒用塩素による健康被害の報告→試験的に塩酸に置き換えてみることで決定
  2. 集団検診の生存率が2.7％だったため、次回からはギロチンを導入する→予算が回せるかわからないため保留
  3. 溶解部が県大会で準優勝し、全員が死亡したことの報告→まばらな拍手。あんまりよい結果ではないらしい
  4. 来週からヌンパ災の準備期間に入るため、各学級から男子・女子・それ以外を1名ずつ生贄として選出することの提案→「英語教師」の提案により、全員を生贄とすることで決定

何だこの死人学校は。

教師も変だが生徒はもっと変だった。多分、彼らの世界では「死」が終わりではなく、単なる生命活動の一形態でしかないのだろう。それはそれで嫌だが。


で、これらの実体に遭遇するのは、活性化状態の職員室に侵入した人間のうち、21歳～35歳、つまりこの学校がある県の教職員の求人に該当する年代のみ。
遭遇した場合未知の力で拘束され、「教育実習生」または「新任教諭」として紹介される…………が、会議の終了後に「歓迎」と称して集団で殴り殺される。

そりゃ、あんな生徒たちを教えてる学校の職員だから、彼らからすればこれも「歓迎」なのだろうが……。

さらに遺体の頭部を切り離してどこかに持ち去り、代わりに実体群の手製らしいオブジェクトを取り付けてしまうのだ。

犠牲者に取り付けられたオブジェクトに異常性はないが、どうやら経歴を暗示するオブジェクトを選出しているようだ。

具体的には、

  • 収容前に犠牲になった財団の研究員→スチールウールのホルマリン標本
  • 海外投資の詐欺師だったDクラス→「an egg」と書かれたリンゴの模型
  • ひき逃げ殺人の前科があるDクラス→肌色で赤い水玉の入ったカラーコーン

と言った具合。
研究員だから「実験器具」、詐欺師だから「嘘が書かれたもの」、ひき逃げ犯だから「交通法関連の物品＋犠牲者の暗喩」だろう。
「会議」のメンバーが増えたことはないが、たぶん向こうで正式採用目指して頑張っているのではなかろうか。



事件記録

ところで、前述したがこれら実体は「会議」中に入ってきた外部の人間を「新しい先生」として紹介するが、それに当てはまらないケースが発見された。
これは実験の一環として、生徒に対する何かの犯罪歴を持った元教員のDクラスを侵入させたときに発生した。

いつものごとく「教頭」が「新任教諭」を紹介しようとしたのだが、その言葉が不意に途切れ、同時に「職員」たちが一斉に立ち上がってDクラスに詰め寄り始めたのだ。
で、彼らを見たDクラスのリアクションがこれ。

えっ、な、何？　何だ？　おい、お前らはもしかして……。
やめろ！　こっちに来るな！　来ないでくれ！　俺が、俺が悪かったんだ！　やめてくれ！　お願いだから！

……明らかに何かに気付いた人間の反応である。
そして「職員」たちが口をそろえていわく、




お前じゃない。お前じゃない。お前じゃない。

お前じゃない。お前じゃない。お前のせいで。

お前じゃない。お前じゃない。お前じゃない。

お前じゃない。お前じゃない。お前じゃない。

お前じゃない。お前じゃない。お前じゃない。

お前じゃない。お前じゃない。お前じゃない。






お前だ。








Dクラスは会議の終わりを待たず集団で殴り殺された。
のだが、他の事例よりも執拗かつ強烈な暴行がくわえられた上にオブジェクトは取り付けられず、回収された遺体は人の形が残らないほどに損傷。DNA鑑定以外の方法では個人識別が不可能な有様だった。


この事例がDクラスの職歴によるものか、犯罪歴によるものかは不明であり、財団は今のところこの確認を急いでいる。
そのため、教員歴がなく、かつ就学児童に対する「何か」の犯罪歴を持ったDクラス職員を探しているとか。



狂った世界の、狂った学校の、狂った教師たち。
そんな彼らでも、生徒に対する犯罪者は許せないのだろうか。


追記・修正は新入りを歓迎してからお願いします。

CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-036-JP - Shock in 会議
by shinjimao
http://ja.scp-wiki.net/scp-036-jp

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最終更新：2024年02月05日 19:06

*1 が、一文字ずつ前にずらすと「こくごびんらん（国語便覧）」、「くんわじてん（訓話辞典）」、「あたらしいこくご１ねん（新しい国語１年）」となる……はずなのだが、それでもややおかしい。