運命の三女神

登録日:2016/12/28(水) 23:42:08
更新日:2023/11/14 Tue 20:46:38
所要時間:約 20 分で読めます






一番年たけた私が、このたびは糸をつむぐため招かれました。
運命の糸はかぼそいので、心を配ることも多いのです。

その糸がしなやかで、たおやかであるようにと
一番上等の麻を持ってまいりました。

私の指はこの麻から糸を紡ぐでしょう。
なめらかに、まっすぐに、むらもくせも出ぬように。



けれど心しておきなさい、この糸はとても切れやすいのです。
宴に踊りに度をこすことのないよう、くれぐれもお忘れなきように…







心得ておきなさい、鋏はわたしの手にゆだねられました。
大姉様のふるまいを、みなさま快からずおもっていますゆえ。

大姉様は、つまらぬ無用の糸を光と風につないだかと思えば、
世にも美しき糸を断ち切っておしまいにもなります。

けれどわたしも若さに駆られ、幾百度あやまちをおかしたことでしょうか。
今日はわが手を抑えようと、鋏を鞘におさめました。



このいましめに甘んじて、いまはただ静かにあなたたちを眺めていることにします。
さあ、今日は許された日です。歌に踊りに宴に、心ゆくまでお戯れなさい。











…心おだやかであるのは、このわたくしだけのよう。
ゆえにわたくしは糸を巻き取る役目を仰せつかりました。

動いてやまぬわが手の糸車は、ついぞ早まったことはございません。
来る糸来る糸を枠に巻き、それぞれのすじ道にみちびいて、
ただの一筋もそらしはしない。

糸よ、糸たちよ、ぐるぐると回って従いなさい。



わたくしがひとたび心を怠ると、それはそれは恐ろしいことが起こるでしょう。
わたくしが束ねた糸束は、人の時、命、さだめを織りたもう
大いなるあの方の御手がお取りになるのですから。












― ゲーテ「ファウスト」より 運命の三女神パルカイたちの言葉










「運命の三女神」とは、以下のいずれかを指す言葉である。


  1. ギリシャ神話における運命の女神モイラの3姉妹、クロートーラケシスアトロポスのこと。

  2. 北欧神話における運命の女神ノルンたちの長である3姉妹、ウルズヴェルザンディスクルドのこと

  3. 上記の女神らをモチーフにしたキャラクターのこと。


【概要】

運命・時間を司る神は多くの神話で女神とされ、さらにケルト神話やギリシャ・ローマ神話では3姉妹の女神とされた。
運命の女神(Fate)である彼女らはそれぞれ過去・現在・未来の3つの時間、誕生・生涯・死の3つの運命を司る女神である。
運命の女神はどの神話でも例外なく重要な神の一柱として扱われ、それぞれの神話の主神格でさえ抗えない場合もあったという。

ギリシャ神話の運命の三女神 モイライ】

ギリシャ神話において、人の運命は女神モイラ*1が司るとされる。
その名の語源は「割り当て」を意味する単語からだという。
彼女らは人々の運命の内容を決め、それを個々人に「割り当てる」役割を担っていたとされた。

モイラは老婆たちであるとも、上から「母」「乙女」「老婆」の姿をしているともされる三姉妹であり、上から

クロートー(Klotho 紡ぐ者)
ラケシス(Lakhesis 描く者)
アトロポス(Atropos 避けられぬ者)

と呼ばれていた。

彼女らはエレボスニュクスの娘とも、ゼウステミスの娘ともされ、主神ゼウスの元で人々の運命を定める役割を担っている。
彼女らは運命が生じるとされる暗黒の洞穴のなかにおり、人の生涯を糸としてつむぎ巻き取り、糸を断ってそれぞれの人間たちに割り当てることで
その人の寿命や生涯を決定付けていたのである。


  • クロートー

    クロートー(Klotho(Clothoとも。 古希:Κλωθώ)は、「紡ぐ者」を意味する名を持つモイラ3姉妹の長姉。
    彼女は闇から生じる運命を糸として巻き取る役目を持つ。
    糸巻き棒を手にした姿で描かれ、彼女がつむいだ運命の糸の太さや色によって運命の内容が決まるという。
    また人がどこでどのように誕生するかを決定づけるとも言われる。

  • ラケシス

    ラケシス(Lachesis 古希:Λάχεσις)はモイラたちの次姉。その名は「測る者」「(運命を)描く者」とされる。
    彼女はクロートーが決めた運命を、それぞれの人間に割り振る役割を担う。
    糸巻きや天眼鏡を手にしており、姉が紡いだ糸を巻き取り束にしてその長さを決める。
    そしてその束をどの人間に渡すかを決定づけて、ゼウスに渡すという。

  • アトロポス

    アトロポス(Atropos 古希:Ἄτροπος)はモイラの末妹で、その名は「曲げられない女」「不可避の者」という意味であると言われる。
    彼女は手にハサミを持ち、姉らがつむぎ束ねた糸を音高く断ち切り「死」を決定づけた。

○神話・伝承について

運命の女神である彼女らは主であるゼウスから人の運命を決める権能を与えられ、暗黒の中で粛々とその務めを果たし続けていた。
そうして決定された運命には、ゼウス含めた神々でさえ口を挟むことはできなかったのである。
ただ伝承の中では他の神々や人間の機転により決めた運命を変えられてしまったり
内密にすべき運命の内容をこっそり教えてしまったりと、意外と人間味のある部分も持つ。

また普段はあまり表舞台に立とうとも他者とかかわろうともしないない彼女らだが、
世界そのものの危機に際しては武器を手にして敵の前に立ちふさがり敢然と戦いを挑んだともされる。


運命の女神としての伝承

ギリシア神話の中での彼女らは、ゼウスの直轄としてオリュンポス十二神とはまた別の枠組みのなかにあり
神々でさえ逆らえない権能の持ち主、絶対者として登場することが多い。
代表的なものとしてはゼウスに彼の寵愛する3人の息子の延命を打診された際ににべもなく断ったというものがある。

その息子はミノス・アイアコス・ラダマンテュスの3人で、結局ゼウスはモイラの了解を得ることが出来ず今度はハデスに相談する。
ハデスはゼウスの頼みを快諾し、3人を冥界の幹部として迎え入れたという。


またゼウスはトロイア戦争など大きな戦いに際してはその趨勢を決定づけるためモイラの意見を仰いだとされる。
そのさいには、黄金の天秤を用いて彼女らの定めをはかったという。
ゼウスは戦う両者の運命を皿に乗せ、下がった方、すなわちより冥府に近付いた方に敗北を与えるため
勝利すべき側に力を与えて盛りたて、他方死すべき側の覇気を挫いた。
こうしてモイラたちが決定した運命をゼウスが成就させていたのである。

ただし、これらはあくまでゼウスが自身で定めたモイラたちの権能に従っていたというだけで
ゼウスがモイラの下位であったということは意味しない。(後述)


このように絶対的な権能を持つモイラたちであったが、神々や人間たちは彼女たちの決定をなんとかして覆そうとして知恵を回していた。
アポロンは自分の配下であったテッサリアの王アドメトスアルテミスに無礼をはたらいて死の呪いをかけられた際、モイラたちに彼の延命を頼みに行っている。
アポロンは彼女らに酒をふるまい上機嫌になったところで「身代わりを用意してくれるならいいよ~」という約定を取りつけてしまった*2

またアルゴナイタイのひとりであるメレアグロスについては、以下のような伝承が残っている。
メレアグロスが誕生して7日目、母親アルタイアーの寝室にモイラたちが現れ彼の運命を取り決めた。
クロートーとラケシスは彼に栄光ある生涯を与えたが、アトロポスはおもむろに燃えさかる暖炉に手にした木切れをくべて

「この子の寿命は、この木切れが燃え尽きるまで」

と無慈悲な決定を下す。

アルタイアーはとっさに木切れを拾い上げ誰の目にも触れないよう隠すが、成長したメレアグロスが自身の叔父、
すなわちアルタイアーの兄弟を殺してしまったのを知ると息子を呪って隠してあった木切れを燃してしまう。
戦いのさなかであったメレアグロスは焼けつくような痛みにさいなまれ、敵に討たれてしまったという。



ただこれらの結末もまた、モイラたちの手ですでに運命の糸の中に織りこまれていたのかもしれないが・・・

ギガントマキアでの活躍


無慈悲に冷徹に人々の運命を決め続ける彼女らであったが、世界の危機には自ら武器を取り戦いに挑んだ。

神々と巨人(ギガス)の戦いであるギガントマキアには姉妹全員が青銅の棍棒を手にして参戦し
アグリアスとトオーンというふたりの巨人を三人がかりで殴り倒してしまったという。
3人に勝てるわけないだろ

とどめこそヘラクレスに刺してもらっているが、多数参戦した神々の中でもオリュンポス12神以外で巨人を打ち倒すことが出来たのは
ハデスの命によって参戦した冥府の女神ヘカテーと彼女らだけ。
神の力が及ばない巨人たちでさえ、時間と運命にはかなわないのだろう。

さらにガイアが産み落とし指し向けてきた最強最後の敵テュポンに対しては、
力を与える「勝利の果実」といつわり力を失わせる「無常の果実」を渡している。
まんまと果実を食べたテュポーンは無力化してゼウスに倒されてしまった。
こうして彼女らは神々の勝利に最大級の貢献をなしとげたのである。



北欧神話の運命の三女神 ノルニル】

北欧神話の運命の女神はノルン(Norn、複数形ノルニルNornir)と呼ばれた。
その名は「編む」という意味の単語から来ていると言われる。
ノルンは数多く存在しており、神の血を引くものや妖精、小人、中には巫術士や予言者といった人間など様々な種族のものがいたという。

そんな彼女らの長である、巨人族の娘である三姉妹が

ウルズ(Urðr なしとげたこと)
ヴェルザンディ(Verðandi なさんとすること)
スクルド(Sculd なすべきこと)

の三人である。

三人は世界樹ユグドラシルの根元にある、長姉より名をとった泉ウルザルブルン(Urðarbrunnr)のほとりに居を構え、
清めの力を持った泉の水を泥と混ぜてユグドラシルの根元に注ぎ、世界樹の手入れをしていると伝えられている。

  • ウルズ

    ウルズ(Urdr ウルズルとも 英語ではウルド Urd*3は、三姉妹の長姉ですべてのノルニルの長である。
    彼女らの住処であるウルザルブルンの名は彼女から取られている。

    彼女の名の意味は元来「織る者」であったという。
    そこから転じて織りなされるものである「運命・宿命」、そしてその結果である「死」を指すようにもなったとも言われている。

    なお古ノルド語でのウルズという言葉自体の意味は「生じたこと」「起こってしまったこと」を指す。
    彼女は次女のヴェルザンディとともに人間の寿命を計り、書版に記すと言われている。

  • ヴェルザンディ

    ヴェルザンディ(Verdhandi 英語ではヴェルダンディ Verdandi)はノルニルの長である三姉妹の次女である。
    名の意味は「発生させるもの」「生み出すもの」「いま起きていること」を指す。
    姉のウルズとともに人間の寿命を計り、それを書板に記すと言われる。

    姉のウルズと役割がほぼ同じで他の神話での記述が少なく、名前の由来がもともと同一の言葉の過去・現在形であったという説もあり、
    元来ウルズと同一の存在であったのではないかという説もある。

  • スクルド

    スクルド(Skuld、Sculdとも)はノルニルの長である三姉妹の末妹。
    名の意味は「税・債務」「義務・責務」、つまりは「支払うべきもの」「為すべきこと」を指す。

    スクルドはヴァルキュリアを兼ねており、絵画などではしばしば運命を記す姉たちの傍らで鎧兜を身につけ剣を佩いた姿で描かれている。
    彼女は姉たちが決めた人の寿命に基づき、それを終えた人間を連れ去る役割を負っているとされる。
    つまりは北欧の国々の戦士たちにとっての「なすべきこと」・・・「戦いと死」の管理者なのだ。

○神話・伝承

北欧の運命の女神として有名な彼女らだが、神話や伝承に直接登場することは少なく
他の人物によってその存在などについて言及されるといった程度の扱いが多い*4

そのなかでも数少ない、彼女ら自身が登場する物語として「ノルナゲストの物語」がある。

ノルナゲストの物語


北欧各地でキリスト教化が進んでも、ノルニルはまだ運命の裁定者として人々に信仰されていた。これはそんなさなかでの物語である。

キリスト教を篤く信仰するノルウェーの王オーラヴのもとに、ひとりの若者が訪れた。
彼は名をノルナゲスト(ノルンの客)といった。
王は一目で彼を気に入り臣下として取り立てるが、王には一つだけ不満があった。
ノルナゲストはキリスト教徒ではなく、逆に王に対し「古くからの神をおろそかにしている」といさめてくるのである。
しかし王の意志が固いことを知ると、ノルナゲストも多くを語らなくなった。

それから何日かして、ノルナゲストは自身のことを王に語る。彼の年齢はなんと300歳であるという。
彼が産まれたとき、彼の親の元に現れたノルンの長姉と次姉はそれぞれ彼に輝かしい運命を与えた。
しかし道中で人に突き飛ばされ押しのけられした末妹は火をともされていたロウソクを指さし

「この子の寿命は、このロウソクが燃え尽きるまで」

と定めてしまった。
しかし長姉がとっさにロウソクを吹き消し母親に手渡したことで赤ん坊は死を免れる。
そしてロウソクはノルナゲストに手渡され、彼は事実上不死身となったというのだ。

それから彼はジークフリートらに仕えて長い年月を生きたのち、オーラヴ王の決心を変えるべく彼のもとを訪れたという。
しかし心を変えず逆に回心を勧めてくる王を前にし、ノルナゲストは引き際を悟ったのであろうか。
王は彼に洗礼を受けさせ、さらに迷信に縛られてはならぬとロウソクに火をともすよう促す。
ノルナゲストは「仰せのままに」とロウソクに火をともした。

はたして彼は燃え落ちていくロウソクとともに、見る間に追い衰えていってしまった。
王はあわてて火を消そうとしたが、彼は静かにかぶりをふった。



ロウソクが燃えつきた後には、枯れつきた300歳の老人の死体が転がっていた。
ノルンの気まぐれで得たノルナゲストの長い生涯は、こうして幕を閉じたのである。



【解説】


○三相女神について

女神信仰発祥の地ともされる古代アナトリア*5において、 女神は3つの相を持つ とされた。
すなわち躍動する生命力を体現するうら若き乙女 、 慈愛にあふれる成熟した母親、 そして知恵をたくわえ死を暗示する老婆の三相である。

これはそのまま人の人生を示すものであり、誕生と成熟と死の象徴であった。
ここから女神が時間や運命を司るものとなったのはむしろ当然の成り行きだろう。
モイラやノルン以外にも、3姉妹の運命の女神は数多く存在する。

パルカ

ローマ神話における運命の三女神はパルカ(Parca、パルクとも。 複数形パルカイ Parcae パルツェとも)と呼ばれた。
役割などはギリシャ神話のモイライたちとほぼ同一であり、しばしば同一視もされた。
冒頭のファウストにおけるパルカイたちもそれぞれ「クロートー」「アトロポス」「ラケシス」とモイライたちの名で呼ばれている。

彼女たち本来の名は、長姉がデキマ(Decima 出産の女神)、次姉はノナ(Nona*6 妊娠の女神)、そして末妹がモルタ(Morta 死の女神)である。

フォルトゥナ

古代ローマで特に母親・寡婦から信仰され、フォーチュン(fortune 運命)という言葉のもとにもなった女神フォルトゥナ(Fortuna*7
彼女もまたレゲア(Legea 支配権の女神)、ボナ(Bona 幸運)、マラ(Mara 悪運)の三姉妹とされた。


○モイラとノルンの違い

モイラもノルンには運命の女神であることのほかにも「その決定権は絶対である」「古き神々の一族である」など共通点が多い。
ただ、それぞれの神話でのその立場は少しずつ異なっている。

北欧神話のノルンは神々の運命でさえ決定づけ、主神オーディンでさえ彼女らの決定には逆らえない。
だがギリシア神話のモイラはあくまでゼウスから「人々の運命を定める」権能を与えられているだけである。
太陽神ヘリオスが太陽の御者という役割をゼウスから与えられ、ゼウスには太陽の運航についての決定権がないように
あくまでゼウスは自分自身が決めた枠組みに従っているだけであって、彼女らに従っているわけではないのである。
現にゼウスはモイラ誕生以前に、「自分の息子に殺される」という死の運命を覆してしまっている。
ゼウスはやろうと思えば運命に逆らうことが出来てしまうのだ。

この差がどこから生じているのか、明確な根拠を立てるのは非常に難しい。
強いて言えばオーディンは「人類の叡智」の象徴でありゼウスは「人間の感情」の象徴である、ということは言えるだろうか。

世界、宇宙の神秘を知るためにその身を捧げることもいとわないオーディンは、宇宙をあまねく存在する大いなる法則に服するものである。
運命を含めたあらがいようのない存在を静かに受け入れるのは、人類の叡智によるものだろう。

しかし自らの欲望に忠実で奔放な行動を繰り返すゼウスは、ある意味人間の欲望・感情の象徴であると言える。
時間や運命そのものを変えることはできなくとも、その受け取り方は人間の心ひとつ。
過去も未来も人間にとっては結局感情で受け止めるものでしかない以上、人間の感情は人間にとっての時間や運命を超越しうるのである。


○二次創作における運命の三女神

神話・伝承の中で重要な役割をはたしてきた運命の女神たちは、後世においてもやはり特別な存在として扱われてきた。
つまりは人の運命・寿命を決める絶対者としてである。
なので人にも神にもあらがえない運命、特に死を意識した役回りが多い。
また同じ理由で毒物など死をもたらすもの、宇宙に関するものにしばしばその名称が名付けられる。

中世~近世

  • ゲーテ「ファウスト

    もはや説明の必要もないだろう、ドイツの文豪ゲーテを代表する大作。
    第2部でギリシア神話の世界に入ったファウストの前に次々と神々が現れるが、そのなかに運命の女神パルカイたちも存在する。(冒頭文参照)
    ただ彼女らの名称はモイラのものが使われ、しかもなぜか長姉クロートーと末妹アトロポスの役割が入れ替わってしまっている。
    彼女らはファウストの前で人の運命のはかなさ・危うさ、そしてファウストの苦難を暗示するような言葉を告げていく。

  • ポール・ヴァレリー「若きパルク」

    フランスの詩人ポール・ヴァレリーの最高傑作として名高い500行以上にわたる韻文詩。
    運命の女神パルクの独白という形で語られ、生と死・愛と別離などが韻を踏んだ精緻な筆致でつづられている。

現代

  • 名称としての使用

    ノルン3姉妹もモイラ3姉妹も、小惑星にその名称が用いられている。
    またベラドンナの学名・成分はアトロポスに由来し、人の老化に関わる遺伝子にはクロートーの名が用いられている。

  • ファンタジー文化
    扱いはけして多くないが、登場作ではことごとく強大な存在として扱われ、かつ重要な役割を担う。
    神話通り時間・運命を司る神として登場するほかストーリ上重要な役割を果たすことも多く、
    中にはまさしく人類という種自体の存亡をも決定する絶対者として扱われている作品もある。
    代表的なところとしては藤島康介「ああっ女神さまっ」永野護「ファイブスター物語」など。


主な出演作品など


中世~近世

  • ファウスト(ゲーテ):前述のとおり。神話の世界に入ったファウストの前に現れる。
  • 若きパルク(ポール・ヴァレリー):前述のとおり。運命の女神パルク(アトロポス?)が胸中の想いをひとり語る。

名称

  • 小惑星:「ウルダ・ヴェルザンディ・スクルド」、「モイラ」という名の小惑星がそれぞれ存在する。
  • ベラドンナ(植物):学名はアトロパベラドンナ(Atropa bella-donna)。「アトロパ」は「アトロポス」の名から。同様に、含有成分の「アトロピン」の名も彼女にちなんでいる。
  • クロートー遺伝子:近年発見された遺伝子。老化を制御する役割を持ち、これを欠損すると急速に老化が始まる。

漫画・アニメ

  • ああっ女神さまっ(藤島康介):ゲームキャラクターデザインなどでも有名な氏の代表作。主人公を取り巻く三人の女神「ウルド」「ベルダンディー」「スクルド」*8が登場する。
  • ファイブスター物語(永野護):ガンダム・エルガイムのメカニックデザインで知られる永野護氏のライフワークとも言えるこの作品においては、準主人公格として人工生命体ファティマの三姉妹「アトロポス」「ラキシス」「クローソー」の三姉妹が登場する。ファウストに倣ってか、アトロポスとクローソーの立場と役割が入れ替わっている。
  • ノルニル(やくしまるえつこ):メトロオーケストラ名義で発表した、自身の5枚目のシングル。輪るピングドラムの前期OPテーマ。

ゲーム

  • 女神転生シリーズ(アトラス):ノルンの初出は『真・女神転生if...』。時計を抱えた単独の女神として登場。『デビルサマナー ソウルハッカーズ』では時計を取り巻く3女神として描かれた。
    モイラの初出は『偽典・女神転生』。なぜか種族は凶鳥で、「クロートー」は「ロト」になっている。(女神としてウルズも登場)その後『真・女神転生Ⅲ』ではボスとして現れ、存在感を示している。
  • Sa・GaⅡ秘宝伝説 GODDESS OF DESTINY(スクウェア):サブタイトルで示されている女神たち。ゲームの核となる「連携システム」のかなめとなる存在。
  • ヴァルキリープロファイル:主人公のヴァルキュリアとしてレナス・アーリィ・シルメリアの「運命の三女神」が登場。
    長姉のアーリィが最も神に近い思考を持ち、末妹のシルメリアは思考が人間に近い。そして次女のレナスはその中間とされる。
  • 百神(ジークレスト):モイライ3姉妹がギリシャ神殿に登場する。クエストとして「モイラ3姉妹のところへ」が存在し、ブリギットからの依頼で手土産のマリネ作りを手伝うことになる。
  • Steins;Gate(5pb.):厨二病である岡部倫太郎が使用するオペレーション名にウルド、ベルダンディ、スクルドが登場。さらにフェノグラムではノルニルがある。またアニメ映画ではオペレーション・ノルンが登場し、孤独の観測者の旅の最後を飾る。
  • ウルフファング空牙2001:敵組織「ラグナロック」の情報処理を統括するマザーコンピューターの名が「ノルニル」、それを守るガードシステムが5-Bボス「ノルン」。3機が分離・合体し変幻自在の攻撃を繰り出す。
  • ゴッド・オブ・ウォーII 終焉への序曲(SCE):「ラケシス」「アトポロス」「クロト」表記。ゼウスに殺された主人公・クレイトスが死の運命を変える冒険を阻む終盤のボスとして登場。終盤だけあって手ごわいが、「スパルタの亡霊」相手では女神であろうと壮絶な倒され方をされる。




追記・編集は運命の女神の前髪をつかんでからお願いします。











金色の灯がわずかな風に消え入った時(Quand (au velours du souffle envole l’or des lampes)

わたしは腕を組んでこめかみを押さえ(J’ai de mes bras epais environne mes tempes,)

わたしの心が輝き出るのを長いあいだ待っていました(Et longtemps de mon ame attendu les eclairs)



わたしはわたしの肉体のあるじなのに(Toute - Mais toute a moi, maitresse de mes chairs,)

その肉体は横たわり震えながらこわばるばかり(Durcissant d’un frisson leur etrange etendue,)



わたしの身はとらわれて 血はとどこおり(Et dans mes doux liens, a mon sang suspendue,)

くねくねと左右に動きながら 視線を走らせ(Je me voyais me voir, sinueuse, et dorais)

深い森に眺め入っている自分の姿を見るのでした(De regards en regards, mes profondes forets.)



森の中でわたしを噛もうとする蛇をわたしは見つめていたのです(J’y suivais un serpent qui venait de me mordre.)







― ポール・ヴァレリー 「若きパルク」 より





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最終更新:2023年11月14日 20:46

*1 Moira、複数形モイライMoirai 古希:Μοῖρα・Μοῖραι 。

*2 この約定を果たすため、アドメトスの妻アルケスティスが冥府へと赴くこととなった。だがこの際彼女を迎えに来たタナトスをヘラクレスが締めあげた、あるいは冥府に来た彼女をペルセポネーがこっそり脱出させたため、結局彼女も死を免れたのである。

*3 古英語ではwyrd。この言葉は後年weird(奇妙な)の語源となった。weirdも元来は「運命」、そして「運命の女神」を指していた言葉である。

*4 「ギュルヴィたぶらかし」ではスウェーデン王ギュルヴィが、「ファーヴニルの言葉」ではジークフリートに討たれ死にゆく悪竜ファーヴニルがノルンについて語っている。

*5 現在のトルコ東部。アジアとヨーロッパをつなぐ位置にあり、先史よりいくつかの文明が発祥した地。

*6 名は『9つめ』を意味する。妊娠9か月目=臨月の女性に信仰された。

*7 ギリシア神話のティケ(Tych)にあたる。

*8 この作品でスクルドが製作したロボット「ばんぺいくん」のキーワードが「なすべきこと」である。彼はベルダンディーに教えさとされ、自分の「なすべきこと」をなそうとする。この言葉は彼のテーマソングである「闘え!ばんぺいくんRX」の歌詞にもなっている。