SCP-619-JP

登録日:2017/05/17 Thu 21:52:23
更新日:2024/04/02 Tue 08:49:11
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時さえ凍ったあの場所は、さぞかし寒かろうね。



SCP-619-JPは、シェアード・ワールド「SCP Foundation」に登場するオブジェクト (SCiP) のひとつである。
オブジェクトクラスはEuclid。
項目名は「ミレニアム・タウン」。
タグの時点でもうバレバレだが、要注意団体のひとつである如月工務店絡みである。


概要

まずは特別収容プロトコル。

SCP-619-JPに指定される区域への立ち入りは管理者の許可を得た上で行われます現在停止されています。エリア上空への一般航空機及び飛行機器の侵入を防ぎ、区域内の視覚情報の流出を防いでください。自治体などの外部からの情報提供の要請には虚偽のデータが使用されます。

コイツが何かというと、長野県の山間部、とある市と市の境目に位置する、半径600メートルほどの開けた空間である。
この区域は未整備林となっており、平たんではあるが人が居住した記録はない。
また、この場所は山の中であるため自然や獣の脅威こそあるものの、そこに踏み込んでも、何かをしても異常なことは起こらない。
では異常な特性はどうやったら現れるのかといえば、ずばり映像記録装置を使うことである。

ビデオカメラ、テレビカメラなど、とにかく映像を記録する装置でこの場所を撮影すると、本来の開けた場所とは全く違う、のどかな冬の村の風景が広がるのだ。これをSCP-619-JP-Aとする。

この村はさびれた小規模山間集落であり、区域正面を通る未舗装道路と、その片側に沿って並ぶ小規模商店街の形態を成した家屋群で構成されている。
それら家屋の多くは明りがついており、なおかつ壁面やポール・広場に存在する簡易ステージといった建造物を繋ぐように点灯された提灯コードが掛けられているなど、祭りの様相を呈している。

なお、掲示物や積雪、家屋の状況から、どうやらこの村は実際の時期を問わず、1999/12/31の夜間で固定されている模様。

この内部には、SCP-629-JP-1と呼称される、行動力を持った人型実体(現実には存在していないのだが、一応実体とする)が存在している。現在のところ400体前後が確認されているが、大半はおじさんおばさんお年寄りである。
個人の特定は今のところ出来ていない。
これら実体は、SCP-629-JP-A、村の内部においては現行人類と同様の行動が可能で知性も同等である、というか完全に日本人である。
ちなみに向こうからも、こちらが映像記録装置で村の中を観測しない限り、こちら側を認識することは出来ない。

そしてこの「村人」たち、コンタクトには友好的に接するものの、自発的に接触を持ってくることはなかった。





なかったのである。ある実験におけるDクラスの、不用意な一言がなければ。





事案記録

Dクラスを用いた探査実験(恐らく5回目)においてそれは起きた。
録音機能付きのビデオカメラを持たせたDクラスを使い、村の内部をリアルタイムで探査するというものである。
当然ながら現実の空間は倒木や石ころだらけで歩きづらいものの、Dクラスはやっとこ村の中へ。

映像を見ながら何もない空間を歩く。シュールである。

村の内部を探査するDクラスの記録により、上にあげたような特徴があらためて確認されており、内部の時間が固定されているだろうことが推察された。
その後、外の机の上にあった資料を撮影したDクラスは、「村長」と呼ばれている個体へ接触(もちろん映像記録の中の、である)。

で、村長曰く、

こんな寂れた村で名所もなく、若者はみんな麓や都会に行っちゃいました。もうすぐここも廃村か、という所で助けてくれた方々がいるんです。「███村を永遠に残る思い出の場所へ!」って再興計画を立てて頂いたんですよ。しかもボランティア! もういらっしゃるはずなんですが…

とのことだったが、Dクラスは気になっていたことをそのまんま口にしてしまった。

…気になってたんだけど、さっきからずっとあの壁の時計"11時50分"のまんまだよ。壊れてんじゃないの。
(村長の腕時計を見て)その時計、秒針が同じ所を行ったり来たりしてるぞ。
そもそも今2013年だし。おたくらいつの人間?

後方で記録を担当していた博士は会話を自重するよう指示したが、遅かった。
Dクラスの言葉で様子の変わった「村長」は、うわ言のようにつぶやき始めた。同時に、「村人」たちが映像の中で、Dクラスに向かってゆっくりと歩み寄ってくる。

忘れてた。みんな、忘れてた。あまりにも長すぎた。気づけなかった。いや気づいていた。わからなくなっていた。
永遠だった。ここは永遠だ、そういう事か。再興なんかじゃない。こういう事だったんだ。わからなかった。あいつらは、

あんたは違う。私たちが違う。消えている。あんたの身体、私たちには、
たすけてくれ、つれてってくれ、

ここは違う、


この村は、


ない、

もう、



わたしたちも




こ こ か ら 出 し て く れ 。







Dクラスは記録装置を放棄してその場から逃げだした。正しい判断だが、この後確保されたDクラスは重度の錯乱とパラノイアの症状を発症。
写真を撮ってみたところ、「村長」が抱きつくようにして同化しているのが判明した。
ミーム的効果を考慮し、閉所での実験の後このDクラスは終了。さらに回収された記録装置の映像を後で確認したところ、逃げていくDクラスを「村人」たちが凝視し続けている姿が映っていた。
何だこのホラー映画。

その後、別のDクラスで探査実験を行ったが、今度は開始と同時に「村人」がDクラスを認識。ゆっくりと接近してきたため実験は中止、以後の予定は未定となっている。
どうやら「村長」の一件から、外部の人間に憑依することで村を出られる、と認識してしまったらしい。


文書

ところで、例のDクラスが撮影した資料だが、最初の1ページのみ内容が確認できている。

平成11年12月31日

█████村長及び███村の皆様へ

有限会社 如月工務店

平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。

さて、この記念すべき区切りとなる時に███村の皆様との貴重な絆を結ぶに至りました事、大変喜ばしく思います。
この時代、地方村落の過疎化は全国的に憂うべき問題でございます。人々と自然が調和し、伝統を重ね永くの時を共にしたこのような集落はまさに人々の心の故郷であり、財産であり、永遠に守るべき大切な宝のような存在です。
この度皆様のご依頼でありました「永遠に残る███村」のご希望に沿う為、弊社一同心を込めて全力で向かわせていただきました。
本日深夜、記念すべきミレニアムの瞬間に、私達は皆様に「永遠の███村」をご披露致しましょう。
微力ではありますが、笑顔溢れる皆様の助力となれました事、大変嬉しく また誇りに思います。
この笑顔の村が終わりなく続く事を祈り、締めの言葉とさせていただきます。

皆様の今後より一層のご発展を、心より祈念申し上げます。

謹白


永遠ってそういう意味じゃねぇええええ!!
日本の要注意団体は本部に比べてかなりえげつないのが多いが、その中でもニッソと並んでコイツらはタチが悪い。
確かに嘘はついていないし、悪意があってやっているわけでもないのだが、依頼内容を四角四面に拡大解釈するという斜め上っぷりなので……。



現実の世界から切り離され、存在もろとも永遠に変わらない「映像という思い出の世界」に移住させられてしまった人々。
彼らは今、あの場所で何を見ているのだろうか。

憑かれ

追記・修正は取り憑かれてからお願いします。

CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-619-JP - ミレニアム・タウン
by rkondo_001
http://ja.scp-wiki.net/scp-619-jp

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最終更新:2024年04月02日 08:49