SCP-999-JP

登録日:2017/05/14 Sun 12:12:50
更新日:2024/03/26 Tue 09:25:35
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永「久」に対応策は見つからない、ってか?



SCP-999-JPとは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」に登場するオブジェクト
オブジェクトクラスは文句なしのKeter。正しい意味で、「収容困難」ゆえのKeterである。
項目名は「I am No.9」、通称は「可愛くない方の999」。


特別収容プロトコル

まず、このオブジェクトは人型実体であり、収容手順として通常の人型オブジェクト収容セルに入れておくことになっている。
が、現在のところ、財団がコイツの収容のために出来るのはそれだけである。
なぜならばコイツの持つ異常な特性に対し、SCP財団は打つべき手を何も持っていないからだ。そのため、コイツを無力化する、終了するための提言は常に募集されている。

そしてコイツの報告書は、研究員や職員による提言や覚え書きが非常に多く、なんと通常ないことに特別収容プロトコルの部分にさえ存在する。
それがこちら。

有効な手段など存在しない、という可能性を考慮すべきかもしれない。我々の行動すべてが、あれのために存在しているようなものだ。
少なくとも、あれに対しては9回の実験、9回の終了措置、9回のインタビューが行われ、この報告書は第9版なのだ。
だから、頼む。誰か、この報告書を欠陥文書としてくれ。こいつを破棄して、第██版を作ってくれ。
──九鬼 九平サイト-9999第9試験課主任

この時点で、このオブジェクトがどんなものなのか、おぼろげにわかるだろう。
それではここから、SCP-999-JPについて説明していくことにする。

概要

コイツが何かというと、異常な特性を持ったモンゴロイドの男性である。人間であることは間違いないのだが、問題はその異常性。
ずばり言ってしまえば、コイツは現実改変者なのだ。現実改変能力の持ち主と言えば、「ちいさな魔女」やシリアルキラージェームズフランクリン」、あるいは「メアリー・スーの怪物」を思い浮かべる人も多いだろうが、この男の場合怪物のタイプに近い。

というのはこの男、自身の意志で現実改変を行っているわけではないからである。
そして、改変の内容はズバリ、「自身に関係するあらゆる事象を『9』に帰結させる」というものである。
たったこれだけのことが、財団において途轍もない脅威となっているのだ。

具体的にどんな感じなのか、まずは財団が記録したパーソナルデータをざっと見てみよう。

  • 年齢:99歳
  • 身長:99.9999999999999999999999999999999999999999999999999999……cm
  • 体重:99.9999999999999999999999999999999999999999999999999999……kg

この時点でその力のほどはお分かりのことだろう。ちなみに99歳となると余程元気でない限り寝たきりのはずだが、恐らくは10年以上前の診断でも同じ結果が出ていることから、99歳という年齢は改変されたもので、本来はもっと若いのだと思われる(じーさんかおっさんか、程度の違いだろうが)。
ちなみに、この男自身は至って温和な性格で、別に9という数字に拘りがあるわけでもない。収容にも協力的で攻撃的でもないのだが、自分で能力を制御できていないばっかりに財団はてんてこ舞いさせられている。

そして上の覚書を見ればわかるように、収容されているサイトナンバーは9999、行われた措置はすべて9回ずつ、担当は第9試験課、その主任は九鬼九平さん、報告書は9版のまま動かず、と何から何まで9ばかりである。


ちなみに現実改変だが、実は、コイツにかかわらない物事にも働くことがある。その場合、連鎖的に改変が進んだ結果、その物事は最終的にコイツの周りに帰結することになる。
そして財団が調査したところ、現在までに一般社会において改変されたと判明したのは9例だが、改変前とそのあとの比較が困難であるため、実際にはどれほど影響が及んでいるのかは全く分かっていない。

ただし、さすがに影響範囲は限界があるらしく、地球の引力圏より外には改変が及ばない模様。これは、地球が太陽系の第9惑星になっていないことが根拠となっている。
また、9への改変は一定の基準があるらしく、この男が認識するそれが9であるならば、単位を変えたり価値観を変えたりしても改変はされない。
例えば身長測定をフィートにしても、99.99999999999999999……cmをフィート換算した数字が出る。


さて、ここまでだと改変を止められないからこそのKeterに思えてくる。
実際それは正しいのだが、問題は「この能力の何が本当にまずいのか」という部分である。
それは、ここから先の補遺が示している。
それを見てみよう。


補遺

実はSCP-999-JPとは、改変の根幹である人型実体のみならず、それに関係する事象全てを包括した集合に与えられたナンバーである。実際そうとしか言いようがないのである。

SCP-999-JPを収容して以来、財団内部にもその現実改変は及んでいる。
収容施設のナンバーは9999に変更され、人型存在収容セルは9番が割り当てられ、収容担当職員の平均歩数は999歩9999歩となり、サイト内部では死亡事故が9度発生し(さらにその全てを例外的な偶然で目撃)、たまりかねた職員による無許可の暴行が9度発生、と何もかもが9である。

これら、「SCP-999-JPを構成する9」に対して明確に変更、あるいはそれを阻む行動は、予想外の理由を以て阻止されることになる。ここに挙げた事例も、変更の試みは全て偶然による事故で失敗していることから、SCP-999-JPは何をどうあがいても9でしかない、ということがあげられる。
これに対する危機感を現した、報告書内でのディスカッションがこちら。

予測が一切不可能だ。分かっているのは9という数字だけで、それが一体どの事象にどのような形で適用されるのか、適用された事象が発生したとして、我々がそれを感知し得るかどうか。 ──████博士

奴は9度の食事をし、日に9時間眠り、9回くしゃみをし、9本の歯を歯ブラシで一日に9回磨く。奴は9で構成されているが、奴がそうあるために世界はどれだけの犠牲をこれまで払い、これから払い続けるのだろうか?
財団の規則は大きく歪められ、我々がそれに対応するにあたって損失した金額は9億円だ。あらゆる事象が奴によって9へと導かれるのだ。
しかし、手はあるはずなのだ。奴は完全に全てが9によって構成されている訳では無い。少なくとも奴は「9人目の死者」では無い。必ず限界があるはずだ。
この性質に我々が何らかの矛盾を叩き付け、SCP-999-JPの性質がそれを許容すれば、もしかしたら奴の暴走を止められるのかもしれない。──████ ███████実験主任

その時こそ、最も致命的な現実改変が発生する時だ。今、世界すべてがSCP-999-JPによる改変から脱したならば、そこに何が残るのかは予測不可能だ。
現在SCP-999-JPは大人しく収容施設内にいてくれている。これだけで、我々は奇跡的な成功を収めているのかもしれない。SCP-999-JPが「ここにいる」という事実が、SCP-999-JPが現在はいわゆる安定状態に入っている事の証拠と言えるだろう。 ──███博士

SCP-999-JPによる改変は、すでに一般社会に及んでいる。財団は9例のみとはいえ、それを確認しているのだ。
確かに実験主任の言うとおり、コイツの現実改変能力は万能ではなく、範囲は広大、改変は強制的とはいえ、限界が存在している。この人の言うとおり「9人目の死者」ではないし、目と耳は二つで鼻と口は一つずつ、手足は二本ずつ。
まつわる事象を9に帰結させるとはいえ、オブジェクト自身は9以外の数字を含んでいる。だから、突破するとすればそこに手がかりがある。

しかし、万が一コイツによる改変が全て消えてしまったら、一般社会には何が起きるのか?
改変された事象のもとで回っている社会がその影響を失ったら、混乱が発生するのはほぼ疑いない。
それらの恐れがあるから、迂闊なことが出来ない。財団内部に影響が収まっている現状は、確かにある程度の成功のあかしと言えるだろう。


だがそれは、SCP-999-JPのもたらす影響を放置することとほぼ同義だ。
これに対して真っ向から異を唱え、対抗を試みた職員がいる。
それが、神山政蔵博士である。


補遺2

神山博士は、サイト-9999ヘの監察代行に任命されたことによる権限を以て、ある声明を出した。
サイト-9999の職員による、SCP-999-JPへの対応には著しい欠陥が生じているという。
SCP-999-JPによる現実改変、そこにはもう一つの効果があったのだ。

それは、未来に発生する事象の固定化、あるいは予知である。
SCP-999-JPは自身に関係する全ての物事を9に帰結させるが、それは何も、数字や回数を9にする、というだけではない。
例えば、この男がペンを落としたとする。
すると現実改変の発動により、このペンは9回落とされることが確定する。

だが、問題なのはまさにここなのだ。

9という数字が適用されるのは、このペンである。
しかし、これは最初の1回なのか? そうであるならば、あと8回落とされるだろう。
しかし、これは最後の1回なのか? そうであるならば、既に8回落とされただろう。

そもそも、ペンを落としたから現実改変が発動したのか?
そうではなく、現実改変によってペンを9回落とすことが確定したから落としたのではないのか?

それ以前に、9という数字は何に対して適用されたのか?
ペンが落ちることか?
それともペンが落ちて壊れたことか?

財団職員には、そしてSCP-999-JP自身にも恐らくは、それは判断できない。
それがわかるのは、全てが終わってからなのだ。


サイト-9999の職員たちは、職務の関係上SCP-999-JPの一部として認識される。つまり、彼の起こす現実改変には否応なしに巻き込まれることになるのだ。
だからこそ、彼らはこの現実改変を恐れている。少しでもミスを犯せば、それは何度も繰り返される。そうでなくとも、9度の恐るべき未来が待っているかもしれない。おまけにこれには終わりが見えない。これでは士気も下がろうというものである。

SCP-999-JPは自分が9であるために世界を9にします。それは止めようがありません。SCP-999-JPが現状を維持しているという事は、現在彼は「比較的望ましい形での9」なのでしょう。だからこそ、職員たちは何かを為す事すら恐れています。どんな事でも、カオス理論的なごく僅かの影響であっても、SCP-999-JPの9に影響を与える事は、即座に世界全体の修正に繋がりかねません。

神山博士はこの事態を憂慮し、正式に得た権限を以てサイト-9999に人事再編命令を下した。
SCP-999-JPはその脅威をどうにか取り除かねばならないタイプのオブジェクトだが、割り当てられた研究チームはたったの9人。これでは進むものも進まない。

これは、SCP-999-JPへの宣戦布告でもあった。危うい現状に安寧するのではなく、何としてもこの脅威を取り除く、という。
そして、









現実が、捻じ曲がった。






そして

人事再編命令が下されてから9日後のことである。
命令を下した神山博士は99-XXナンバーの乗用車に撥ねられて事故死、命令を受けたサイト-9999の人事部長は強盗犯に襲われ、胸を9回刺されたことで死亡してしまった。
SCP-999-JPが、自身を9にするために、9を破壊しようとする要素を、9を以て排除してしまったのである。

さらに、それだけでは終わらなかった。
本来、9で始まるナンバーは大特、大型特殊自動車に与えられる番号である。だが、事故に先立って、乗用車にも99ナンバーを割り当てる内容を含んだ政治的決議が発生していた。
人事部長を殺害した強盗犯についても、本人とその親族、それらの知人、さらにその知人に対する、記憶改変と過去改変が発生。
改変に辻褄を合わせるため、あまりにも多くの物事をさらに改変してしまったのだ。
もっとも神山博士については、後任の「兄弟」が財団にやってきたのだろうが……。*1


SCP-999-JPの真の恐ろしさは、自身を9にすることと、そのために周りを9にすること、そしてそのために世界を9にすることだが、その基準が全くわからないことにある。何を以て9と認識しているのか、それに対してどうすれば9でなくなると認識されるのか。
何が厄介といって、この男自身が意識的にそうしているわけではなく、勝手にそうなっていることだ。つまりコイツ自身をどうにかしても止められる保証がないし、それ以前にどうにか出来る手立てがない。

なお元記事の筆者曰く、10進法を許容しているのは、9進法に「9」が存在しない=9であるために10進法に従っている、というだけらしい。また、呼吸によって取り入れる空気の分子と吐き出す分子の数も、やはり9であるらしい。

そして、恐るべき真実の示唆が一つ。
ディスカッションにいわく、




こいつの真の性質は現実改変ではないんじゃないかという気がしてならない!
作者にとっては、それはかなりイイ所をついた読みであると考えます。




筆者はそれ以上の言及をしていないため詳細はわからないが、一体コイツの正体は何なのだろうか。


打つべき手がまだあるという点に異存は無い。だが、必要なものは今もって足りていない。
──O5-9



追記・修正は9回ずつお願いします。


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SCP-999-JP - I am No.9
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最終更新:2024年03月26日 09:25

*1 神山博士が死ぬと、彼と同じ知識を持った一卵性の兄弟が、遺言に従い仕事を引き継ぐべくサイトに現れる。これが過去18回ほど行われている