ドラゴンクエスト 勇者アベル伝説

登録日:2017/05/05 Fri 23:41:26
更新日:2024/01/20 Sat 20:25:55
所要時間:約 11 分で読めます





よぉーし、ドラクエするぜ!


「ドラゴンクエスト 勇者アベル伝説」とは、フジテレビ系列にて放送されていたTVアニメ。
なお、本放送時のタイトルは「ドラゴンクエスト」のみであり、勇者アベル伝説という副題はDVD化の際につけられた。
全43話であるが、その構成は当時としては特殊な分割3クール製。
理由は、32話までの時点であえなく打ち切りの憂き目にあってしまったため。詳細は後述。
放送期間は、1~32話が1989/12/02~1990/09/22。
33~43話までが1991/01/11~04/05となる。

タイトルを見ればわかる通り、RPGの大御所ドラゴンクエストシリーズを元としており、
勿論本編もドラゴンクエストに登場するモンスターやアイテム、魔法などが多数登場。
キャラクター原案がシリーズでお馴染みの鳥山明のため、登場人物の外見も本編のキャラたちと比べてもドラクエらしさに溢れている。
中には発売されたばかりのドラゴンクエストⅣ 導かれし者たちのキャラクターもゲスト出演した。
しかし、その一方でオリジナルの要素や、複数の作品に登場する名称だけを借りた別物として描かれているものも多い。
ゲームとは近すぎず、遠すぎない世界観を目指した結果らしい。
登場する地名など、ベースとしてはDQ3が最も近いようだ。
悪のモンスターは宝石から生まれ、倒すことで宝石に戻る=お金が手に入るという理由付けを描いたり、作中のアイテムが後年ゲームで登場するなど、ドラクエらしさも損なわれてはいない。

呪文の効果は現在のゲームとは異なるものが多く、バギは閃光弾や光の刃を飛ばすものになっているし、ギラは話によって炎になったり雷になったりと一定していない。またギガデインをヤナックやムーアが使用している。

動画や人物作画は今でいうところの作画崩壊してる点もあるが、建物や自然といった暖かみがあり幻想的でノスタルジックな背景描写は現代からしてもハイクォリティ。というか当時の手描きアニメだからこそできた表現ともいえる。

スタッフロールには「マンガ連載:週刊少年ジャンプ」とあるが、これは「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」の事を指しており、アベルの物語がコミカライズされたわけではない。
また、遥かに発達した末に滅んだ古代文明がキーとなっているという点では「ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章」に通じる部分もあるが、これが連載されたのは1991年であり、アニメより後の話である。




【あらすじ】

田舎町アリアハンに暮らす、元気な少年アベルと発明好きの少女ティアラ。
二人が15歳の誕生日を迎えたその日、アリアハンの湖の底に沈んでいた竜の伝説の石板を発見した。
しかし、ちょうどその時、上空に巨大な浮遊要塞が出現。
中から現れたモンスターによって、ティアラはさらわれてしまう。
なんとかアベルも要塞に乗り込むも、中にいた魔王バラモスに歯が立たず、敗北してしまった。
要塞から抜け出すことには成功したアベルは、ティアラを取り戻すため、友人のモコモコと共に旅に出る決意を固めるのであった。



【登場人物】

◯アベルのパーティ


本作の主人公。一人称はオイラ。
アリアハンに暮らすごく普通の少年であり、勇者オルテガの息子。
呪文は使えない。DQ2で言えばローレシアの王子に相当。
見た目は上半身ほぼ裸というラフな服装だったが、途中からは、勇者らしい恰好をするようになり、最終決戦では伝説の鎧を纏う。
ボサボサ気味の長い髪と中の人のおかげで、あるZ戦士を思い浮かべる視聴者も多いとか。
青き珠を守るグロウ族の末裔であるが、彼自身は漁師をして生活している。
幼馴染のティアラには強い想いを抱いていて、彼女のためならどんな危険も恐れず立ち向かっていく。

  • モコモコ CV:桜井敏治
アベルやティアラとは幼馴染の少年。
職業は力持ち。……職業?
口癖は「モコッチ」。
ふとっちょで怪力、大喰らいという分かりやすいパワーファイター。
戦闘でも巨大な石の棍棒やおおかなづちで戦う。
隙は大きいが当たればボスクラスの強敵にも大打撃を与えられる、会心の一撃が得意。
精神的にまだ未熟な部分も多く、一行をピンチに追い込むことも多々ある他、一度アリアハンに戻った際に家族から「家が恋しくなって旅に出られなくなるのでは」と心配された。
物語終盤、バラモスが竜の血を飲むのを阻止するために命を落とした……かに思われたが、気絶しただけで済んだ模様。
彼の身に着けていた骨の帽子は、後に「ドクロのかぶと」としてゲーム本編に逆輸入されることとなる。

  • ヤナック CV:キートン山田
旅の途中でアベル達が出会った男性。
見た目は口ひげにターバンと、DQ3の男商人のような姿だが、これでも立派な魔法使い。
ただし魔法使いといっても、作中では回復魔法、補助魔法にも長けた魔法全般のエキスパートであり、実質の役割としては賢者が近い。
魔法の「ざる」に座っているおかげで、いつもぷかぷかと浮かんでいる。
酒と女には目がなく、デイジィにもよくちょっかいを出している。
しかし年の功ともいうべきか、物事を見定める力はパーティの中でも随一であり、モンスターであってもいたずらに撃退することはしない。
スタミナの種を食べると暴走する。

  • デイジィ CV:三田ゆう子
男勝りな性格の女剣士。
名称が「デイジー」で表記されることも。
金にうるさく、宝石モンスターを倒して宝石を集めている。
しかし、それはかつて商人に売り飛ばされた弟トビーと妹ルナに再び会うためであり、そのために旅も続けている。
ネズミだけは大の苦手で、見ると某青狸よろしく動けなくなってしまう。
出会った当初はアベル達をひよっこ扱いしていたものの、物語中盤からアベルに好意を寄せ始める。
その為、ティアラと出会った時には敵対心を燃やすこともあったが、彼女のアベルへの想いを感じ取って身を引いた。
最低限の鎧と兜を身に着けただけの軽装であり、下半身はほぼ無防備。
俊敏な身のこなしと優れた剣技の持主であり、旅を始めて間もないアベルに剣術の稽古を付けた。
比較的マイナーなアニメでありながら彼女だけは非常に人気が高く、DQ3の女戦士と肩を並べるほどといっても過言ではない。


◯アベルの協力者たち


  • ティアラ CV:勝生真沙子
本作のヒロイン。
赤き珠に選ばれた聖女で、ボーン族の末裔。
発明好きで、風の翼(風に乗って飛ぶハングライダーのようなもの)などを作り上げた。
また、歌も好きで彼女の歌はドドンガ達の心をひきつけた。

  • チチ、カカ CV:青葉美代子、嶋方淳子
ティアラのペットであるスライムの夫婦。
水色の方が夫のチチで、ピンクの方が妻のカカ。
チチはアベルと、カカはティアラと共に行動する。
アベルとティアラには彼らの言葉が分かる。
物語の終盤には子供も7匹生まれ、親子で合体してキングスライムとなって(ただし冠はない)バラモスに立ち向かった。

バラモスの元でティアラの世話をしていた、太ったのようなモンスター。
どんくさくて頭もよくないが心優しい性格で、ティアラにも丁寧に接した。
しかしあくまでバラモスの宝石モンスターであるため、清らかな水に弱いうえ、バラモスの魔力で正気を失い襲い掛かってくることもあった。
だが、その戦いの末にティアラの力で体内から宝石を取り除かれ、清らかな水にも触れられるようになる。
物語終盤、ジキド将軍のベギラゴンからティアラを庇い、その命を落とした。
友達の宝石モンスターにリザードマンのガガンボとオークのボロンガがいるが、彼らもティアラ達を助けるために命を落としている。

  • バハラタ CV:鈴置洋考
カジノで出会った海賊の男性。悪徳商人のみを襲う義賊である。
アウトローでありながら義に篤い男であり、魔物の現れる危険な航海にも付き合う。

  • ザナック CV:大竹宏(33話まで)、龍田直樹(33話以降)
ヤナックの師匠である魔法使いであり、古代エスターク人の生き残り。
バラモスとの戦いでメガンテを使用した事により倒れるが、彼の持っていた賢者の杖は弟子のヤナックに受け継がれた。

ご存知モンバーバラの姉妹であり、発売されたばかりのDQ4からのゲスト出演。
マーニャは悪魔の騎士に捉えられており、ミネアは老婆の姿にされてしまっていた。
老婆の姿でも心優しく接してくれたアベルに、ミネアは好意を抱くこととなる。
マーニャに関しては寝てる時こそ大人しいものの、目が覚めれば笑顔の似合う明るいイメージ通りの性格となった。
ちなみに、アリーナもゲスト出演するもののほぼモブ同然の扱い。



◯バラモス軍


浮遊要塞ガイムを根城とし、世界中を死せる水で埋めている魔物たちの長。古の都エスタークの民の怨念により生まれた。
竜の生き血を飲み、永遠の命を得ることを目的としている。
DQ3に登場した太ったプテラノドンのような見た目から一転、DQ5に登場するライオネックのような長い手足に翼の生えた、悪魔らしい外見。
かなり大胆なリデザインであるが、おそらくDQ3未プレイのプレイヤーへの配慮のためか。
後にゾーマと一体化して更に禍々しい超魔王バラモスとなるが、伝説の装備を身に纏ったアベルに押されたことで、ゾーマに見限られ、ゾンビのようなボロボロな姿となった。

  • ムーア CV:柴田秀勝
バラモスの側近で、ムヒョヒョヒョという笑い声が特徴。
魔法の扱いに長けていて、ヤナックとは壮絶な魔法戦を繰り広げた。
また、常に泡のようなバリアの中に隠れており、たいていの攻撃は通じない。
「竜の生き血の残りでもすすれれば」という下心があるものの、バラモスには絶対の忠誠を誓っている。
しかし、バラモスが竜の攻撃から身を守るために彼の体を盾としたことで、無残な最期を迎えた。
なお、緑の体に黒いぶちが付いたでかいカエルのような外見がムドーに酷似しているが、彼の方が登場はずっと先である。

死せる水で満たされたカプセルを頭にかぶっている、バラモスの幹部。
かつての上司だった親衛隊長ジャーク将軍が、ゾーマを鎮められずにバラモスに粛清された事をきっかけに、親衛隊員から将軍に昇格した。
残忍で狡猾な性格で、その実力も魔法、剣技、ともに非常に高く、幾度となくアベル達を追い詰める。
カプセル内の死せる水が無ければ活動できないというわけでなく、カプセルを割られても活動可能。
部下のシーザーオライオンをドラン王国の王に成り替わらせて国民を苦しめたり、オルテガやアドニスを利用するという、人間の心を利用した作戦も厭わない冷血漢。
またオルテガ、トビー、ドドンガと、アベルのパーティの仲間達を3人も殺している。
だが、功を焦りすぎた事が仇となって作戦失敗が続いた結果、バラモスからの信頼は徐々に揺らいでいく。
最後はバラモスを裏切り竜の血を手にしようとするも、アベル達に敗れ、バラモスの手で粛清された。

どこかの引換券のような銀髪の美剣士。
人間でありながら、ジキド将軍の部下として暗躍。
アリアハン王からの使いとしてティアラに近づき、彼女から聖杯を奪った。
アドニスというのは花の名前から取った偽名で、本名はトビーであり、デイジィの探していた生き別れの弟。
デイジィを庇う直前に一度だけデイジィを「姉さん」と呼ぶ。
しかし、デイジィの心に負担を残さないためか、最期まで自身がトビーである事は認めず、デイジィには「あんたの弟が生きていたら、ジキドの手下になどなってはいない」と言い残して息を引き取った。
なお、妹のルナに関しては人買いにさらわれた後、残念ながら衰弱死してしまったらしい。
鳥山明つながりで言えばドラゴンボールに登場するトランクスにも外見が酷似している。登場順で言えばトランクスが似ているというべきか。
そして担当声優の堀川りょうはご存じの通りベジータ役も務めているため「トビーと同じ声のキャラに、トビーとそっくりの子供が生まれる」という、偶然ではあろうがアベル伝説も知る人間にとっては若干縁を感じないでもない展開になった。

  • ハーゴン CV:真地勇志(第一部)、永井一郎(第二部)
バラモスの配下である将軍の1人。ゲームのハーゴンと名前もデザインも同じ。
レイアムランドの侵攻を担当。炎を操る。
ピンチになるとシドーの姿になる。
将軍は他にも、大魔道(ゲーム版4の大魔道と名前もデザインも同じ)、デスゲーター(ゲーム版バラモスに酷似)、名称不明の将軍(ゲーム版ゾーマに酷似)、マギャン将軍(北部地方を統括するエスターク人の将軍。ハーゴン達よりも前の話で一度だけ登場)がいるが、いずれもアベル達とは戦っていない。

バラモス軍の黒幕。
エスターク人の怨念の集合体で、かつての栄光を取り戻すためにバラモスを尖兵として操る。
実体のない無数の怨霊といった存在で、ゲームのゾーマとはまるで異なる。
が、鳥山明氏のデザインし、没となったゾーマ第2形態が元となっているのかもしれない。

  • 宝石モンスター
本作に登場するモンスターで、バラモスが宝石から生み出した存在。
倒すと宝石の姿に戻ることと、死せる水ではない清らかな水に触れると死んでしまうことが特徴。
なお、宝石モンスター以外にも自然発生したモンスターも存在している。


【打ち切り】


残念ながら、この作品を語る上で欠かせない要素となっているのがこちら。
強力な裏番組や度重なる野球中継による放送中止の結果か、視聴率が振るわず、32話であえなく打ち切りとなってしまった。
だが、ファンからの熱い要望によって関東圏でのみ完結編となる33話以降が放送された。
1990年初頭にインターネットなど存在するはずもなく、関東圏以外に住んでいた当時のちびっこは、そもそも完結編の存在を知らないということも多かった。
なお、話の区切りとなる32話はTV放送版とソフト版で異なっており、2つの展開が存在することとなる。再放送ではソフト版のものが流された。
TV放送版のストーリーは、数十年後のティアラと思しき老婆が、アベルやティアラそっくりの孫に昔話を話して聞かせるという、分かりやすい途中終了ものである。
本筋としては数多くの仲間が戦いの中で犠牲になっていくという壮絶なもの。

また、2009年に千葉テレビにて放送をされるも、6話放送後に「放送権利の問題で急きょ放映できなくなりました」とHPにてアナウンスがあり、再放送も打ち切りとなっている。
どこの何が引っ掛かったのかについては現在も不明。
これ以前に行われたローカル局での再放送では最後まで行われていた。

勿論、DVD等の映像ソフトが発禁になっているというわけではなく、近年は動画配信サービスも充実しているため、興味がある方は是非探してみよう。
2017年現在はアニマックスでHDリマスター版が時折放送されている。
2022年現在はdアニメストアでも配信中。


【テーマソング】


◯OP
  • 33-43話
未来をめざして(アベル(古谷徹))

◯ED
  • 1-26話
夢を信じて(徳永英明)

  • 27-32話
虹の都(カブキロックス)

  • 33-43話
虹のBRAND NEW DAY(ティアラ(勝生真沙子))


OPについては1-32話までは存在しておらず、メインテーマのアレンジが流れるだけに留まっている。

どれも良曲揃いだが、中でも特筆すべきは「夢を信じて」
これは徳永氏のシングルの中でも最高の売り上げを誇っているほどの人気曲。
しかし、その反面、自身の作詞ではない、アニメのタイアップ曲が売れてしまったことが、シンガーソングライターとしてのプライドに傷をつけてしまった。
その結果、徳永氏自身、長い間この曲を自身の曲と認められずにいたという。
しかし近年では、そのあたりのわだかまりは解消されたらしく、2013年の紅白歌合戦ではなんとこの曲を披露するまでになった。


追記・修正は竜の生き血を飲んでからお願いします。


この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • アニメ
  • ドラゴンクエスト
  • 勇者アベル伝説
  • 剣と魔法の世界
  • ドラゴンクエスト 勇者アベル伝説
  • ドラクエ
  • DQ
  • ファンタジー
  • 打ち切り
  • 脳筋パーティ
  • 勇戦戦魔
  • 未来をめざして
  • 夢を信じて
  • 徳永英明
  • 虹の都
  • カブキロックス
  • 虹のBRAND NEW DAY
  • フジテレビ
  • 89年秋アニメ
  • 91年冬アニメ
  • 80年代テレビアニメ
  • 90年代テレビアニメ

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年01月20日 20:25