ゴブリン

登録日:2017/05/04 Thu 01:35:57
更新日:2023/11/29 Wed 12:07:25
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ゴブリン(goblin)とは、以下のいずれかを指す言葉である。
  1. 民話や童話などに登場する、醜いいたずらな妖精の総称。
  2. 近年のファンタジー文化における一種族の名称。地下に住む邪悪な小型のヒューマノイド。



【民話・童話におけるゴブリン】

「ゴブリン」という言葉が本来指すものは、ヨーロッパにおける悪意を持った妖精の総称である。
その名の語源はドイツの妖精「コボルト(kobold)」を英語化したもの。
だが現在は、コボルトとゴブリンは別種として扱われるのが一般的。(後述)

もともと固有名詞ではなくいろいろな形態の妖精や魔物が含まれており
ノームやドワーフのような小人たちも「ゴブリン」と呼ばれることがある。

後述する共通点の一つとして「人間に対して悪意を持つ」というものがあるが、
その「悪意」の度合いにも種族によってピンからキリまであり、
ほほえましいいたずら程度のことしかしてこない「小鬼」というべきものもいれば、
人と見るや血祭りにあげるような「悪鬼」としかいいようのないものまでさまざま。

しかしその後、それらのイメージを統合して「ゴブリン」という名の固有の存在として扱われるようになり、
次の項目で説明する「一種族としてのゴブリン」の元となっている。

なおゴブリンと呼ばれる魔物の種類・内訳については、後の項目にてまとめて解説する。

○外見・性質について

ゴブリンは妖精・小人・精霊など多くの種族を含む名で、その形態も性質も様々。
だが外見・性質ともに明確な共通点が存在する。
外見の共通点としては、「小さい人型」であり「醜い」ということ。
性質の共通点は「暗がりを好む」ということと、「人間に対して悪意のある行為を行う」ということである。

  • 外見について
    ゴブリンと呼ばれるものたちは、すべて四肢を備えた人型の体型である。
    獣の頭を持っている場合はあるが、その場合でも体は人間のものであるのが一般的。
    かぎ爪がのびていたり鼻や耳がとがっていたりすることはあるが、
    完全に獣の姿をしているということはあまりない。
    そして体躯が小さく顔つきが醜いのもほぼ共通。
    体型こそ人型だが亜種などをのぞき大抵人間の子供程度かそれ以下の大きさしかなく、
    顔も一目見てそれとしれる魔物じみた異様な顔つきをしているのが一般的。

    仮に次で説明する性質において合致していようと、巨大だったり獣の姿をしていたり、
    見眼麗しい姿だったりというゴブリンはまず存在しない。
    いたとしても、それはおそらく別の魔物として扱われるだろう。
    これらについては、彼らのルーツが大いに関係していると思われる。(後述)

  • 性質について
    ゴブリンと呼ばれる魔物たちの性質についての共通点は大きく分けると
    暗がりを好むということと人に悪意を持って干渉してくるということである。

    ゴブリンは地下・鉱山の中や民家の中、廃墟・遺跡の中に森林の中など
    さまざまな場所にいるがどこにいるにせよ狭く暗い場所にいるのがほとんど。
    民家の中であれば家や馬屋の片隅に倉庫の奥深くなど、森林なら木の洞の中などである。

    また、程度の差こそあれ人間に様々な悪さをはたらくのも共通。
    前述した通りその内容は多様で、部屋を散らかしたり人を転ばせたりするいたずら程度のものから
    夜の森や洞窟の中で道に迷わせるといった生死にかかわりかねないもの
    さらには直接的に人を殺傷するようなものまでさまざま。

    特に子供に対しては強い執着心を持つものが多く、闇に潜んで子供を捕らえたり
    むさぼり食ったりするようなものたちも存在する。

    ただいずれの場合においても、積極的に人間とかかわろうとする傾向があるとも言える。
    悪意を持ったまま手を出さないということは無く、むこうから積極的に人間に干渉しようとしてくる。
    これらは手伝いや人助けなど、彼らがまれに行う善意による行為にも共通しており
    善意にしろ悪意にしろ、特にこちらが何もしていなくても手を出してくるのが彼らの特徴。

    また逆に、人間の側から干渉されるのを嫌がる傾向がある。
    人間のそばにいる場合でも姿を見られたり名を呼ばれたりすることを非常に嫌がり、
    彼らが欲するものでなければそれが善意の贈り物であってもはねつけてしまう。*1

    これらの性質についても、後述する彼らのルーツによるところが大きい。

【ファンタジー作品における一種族としてのゴブリン】

前述した通りゴブリンとは元来固有の魔物を指す言葉ではなかった。
しかし近世では彼らに共通する外見・性質などの要素が統廃合されていき
ついには固有の種族としてのゴブリンが産みだされたのである。

○誕生の経緯

種族としての「ゴブリン」誕生がいつになるか、明確な線引きは難しい。
1800年代でもまだ「ゴブリン」という言葉は「悪意ある魔物」の総称として扱われていたようである。*2
しかし同時代の童話である「お姫様とゴブリンの物語」では、「地下に住む醜く悪意のある種族」としてゴブリンが登場する。

彼らは山地の地下に王国を作っており、自分たちをここへ追いやった(と思っている)人間たちに恨みを抱いている。
そこで地上を人間から奪うため王城の地下につながるトンネルを掘って姫君の誘拐をもくろむという
現在のファンタジーにおける「ゴブリン族」の特徴をすべて備えた存在となっている。

さらにこの作品に強い影響を受けたと言われるかのJ.R.R.トールキンによる童話「ホビットの冒険」では
同じく邪悪な種族としてゴブリン族が登場する。
ただこの後続の作品である「指輪物語」では、童話のイメージを払拭し広い世代をターゲットにするため、
「ゴブリン族」に「オーク(orc)」というオリジナルの名をつけた*3
このゴブリン・オークという種族の設定は、後代のファンタジー作品に大きな影響を与えた。

そして「ゴブリン」という名が、オークはじめ他の種族から完全に独立した一種族として定着したのは
1974年に刊行されたテーブルトークRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』においてだろう。
この作品ではゴブリン・オーク・コボルドなどがそれぞれ違った特徴を持つ独立種族として設定された。
この作品におけるゴブリンの外見・性質といった特徴は、現在に至ってもなお
すべてのファンタジー作品におけるゴブリン族のイメージの基礎となっている。

○D&Dにおけるゴブリン族(≒現代ファンタジー作品におけるゴブリン族の設定)

前述した通りD&Dのゴブリンの設定は、そのまま現在の「ゴブリン族」の基礎設定として受け継がれている。
細かい部分では作品それぞれにおいて差があるが、基本的にはここで説明するとおりの外見・性質だと思えば間違いないだろう。

  • 外見・体格
    小さな人型生物で、身長は3~3.5フィート(約90~105cm)、体重は40~45ポンド(約18~20kg)程度。
    平べったい顔につぶれた鼻、とがった耳を持ち大きな口からは小さく鋭い牙がのぞいている。
    目の色は赤から黄色でどんよりと曇っていることが多い。
    肌の色は黄色からオレンジ色~深紅色までさまざま。また同じ部族の者はみな同じ肌の色なのが普通である。
    2本足で立って歩くが、長い腕を膝のあたりまで垂らしている。

    • D&D以外での設定
      現代のアニメなどでは、肌の色は爬虫類じみた緑色をしていることが多い。
      またD&Dのゴブリンにあった体毛も無いことが多く、禿頭の栽培マン小悪魔といった外見である。
      腕が長いという特徴も省略されがちで、子供のような寸詰まりの体型として描写されるのが一般的。

  • 知能・性質
    ゴブリン語と呼ばれる言語を話し、集落を作ってそこで集団生活を営む程度の知能はある。
    知力の高い個体は共通語を話し人間含めた他種族との会話も可能。
    また手先はそれなりに器用で、皮鎧など自分たち用の武具を作ることもできる。
    性格はきわめて陰湿で狡猾、かつ執念深い。

    あまり強力なモンスターではなく、冒険者からはほとんど脅威とは思われていない。
    だが速やかな繁殖能力を持ち凄まじい数の集団を形成するため、
    放っておくと文明地域を略奪し蹂躙することもできるようになってしまう。

    • D&D以外での設定
      ときおり人間と友好的に共存共栄している場合もあり、その場合はそれなりの知性と技術力を有する描写がなされる。
      童話・民話のゴブリンのように地底・鉱山に棲み、ドワーフやノームに劣らない金属・宝石の加工技術を持つとされる場合もある。

D&Dでは他にも近似種であるコボルド・ホブゴブリン・バグベアなども設定され、
ゴブリンはあらゆるメディアにおけるファンタジー作品の代表的なザコキャラクターとして広く認知されることになった。
現在に至るまで彼らは、主人公たちや無辜の住民たちを苦しめ、そして倒されるための存在として勧善懲悪の物語に欠かせない役割を果たしている。

なお、あまり強力でないといってもそれは人間でいうところの一般人にあたるゴブリンの場合であり、D&Dでは高いクラスレベルを持っていれば元の種族が人間でもエルフでもゴブリンでもコボルドでも強敵になる。

【解説】

○起源について

彼らがいつ、どのようにして誕生したのかは諸説あり定かではない。
ただそれらの説を大きく分けると、もともとは神であった・あるいは人であったの二つとなる。

  • 零落した神としてのゴブリン
    他の多くの妖精のようにもともとヨーロッパの民俗信仰の神々であったものたちが魔物として貶められたという説。

    欧州には民族大移動期以前から新石器時代にルーツを持つ民族が根付き、独特の文化を形作っていた。
    もちろん宗教も独自のもので、ペイガニズムと言われる古い形態の多神教を信仰していたと言われる。
    当然人々の生活域にも神々はおり、野の中・街の中・家の中においてそれぞれの場所を守り、
    正しい行動をとるものには恵みを、過ちを犯すものには罰を与えていたのである。

    しかし欧州各国のキリスト教化が進むと、彼ら異教の神はその妨げとして迫害・駆逐されていった。
    それでも人々の間に深く浸透していた彼らは、神から魔物となってもなお人々のそばに残った
    かつてもたらしていた恵みや罰はたわいないイタズラとされ、
    わんぱく坊主を脅しつけ怖がらせるような神や天使には出来ない役割を担ってきたのである。

  • 欧州の先住民族としてのゴブリン
    上述の説よりももっと直接的に、欧州の先住民族それ自体をルーツをするという説。
    新石器時代にルーツを持つ彼らは大民族たちの移動に押され、彼らの生活域の外側に押しやられていった。
    彼らは主たる文明からは疎まれ、あるいは敬して遠ざけられ、妖精や魔物として扱われるようになったのである。

    特にゴブリンと呼ばれる魔物たちのルーツは穴居人たちに求められるという説がある。
    日本でも土蜘蛛*4と呼ばれる民がいたが、欧州の彼らもまた一目見てそれとわかる異様な風体をしており、
    ヨーロッパ文明下においてもなお洞穴をねぐらとしたと言われる。
    迫害されてきた彼らは多くの場合排他的であり、自分たちの生活域を侵されることを極度に嫌い自分たちの存在を明るみに出されることも避けた。
    それでも彼らは都市の周辺でその恩恵をうけつつ暮らしており、自分たちの安全を確保した上で市民との交流もまた望んでいたのである。
    ゴブリンの異質な外見や人との関わり方をはじめとした性質など、多くの点に説明がつけられる説だがやはり真偽のほどはさだかではない。

○ゴブリンに分類される魔物

前述のとおり、ゴブリンとは本来共通した性質を持つ多くの魔物たちの総称である。
彼らは棲みついている地域や場所、その外見や性質などによって様々な名で呼ばれた。

後代のファンタジー文化において「ゴブリン」が一種族として成立すると、彼らの亜種・近似種として扱われるようになり、
ゴブリン族とは似て非なるものたちとして認識されている。

コボルド(kobold)

ドイツの鉱山の精で、ゴブリンのルーツとなった魔物
名の由来はギリシア語の「子供」を意味する「コバロス(Kobalos)」から来ているとも、
ドイツ語で「部屋の精」を意味する「コーベンホルト(Kobenhold(「Kobe「家」、hold「忠実な」)」から来ているとも言われる。
その姿は金髪の小さな子供のようで赤い絹のコートを着ていると言われるが、その姿を人目にさらすことは滅多にない。
鉱山に入りこみ貴重な鉱物を盗んで役立たずの鉱石を置いていったり*5、人家に住みこんでこっそり家事を手伝ったりすると言われる。

  • ファンタジー作品での扱い
    コボルドはD&Dにおいて、鱗を持つ犬のような頭を持つ小人として描写されている。最初期のD&D('74)ではゴブリンのようなと描写されており、
    性質はゴブリンに似ているが体型はゴブリンよりもさらに小型で、以降のファンタジーでゴブリンの下位種族的な扱いを受けることも多いが、D&D('77)およびAD&D1st以降のコボルドはドラゴンの血を引く爬虫類系の種族と明言されており、ゴブリンとは独立した種族である。
    その他の作品でもおおむねそのような扱いとなっており、邪悪な犬頭の小人として出現することが多い。
    コボルトとコバルトを関連付ける設定としてはソードワールドRPGでは、銀を腐らせる存在として鉱夫に嫌われ、
    「腐銀」がコバルトと呼ばれている。
    『ソードワールド2.0』では最下級蛮族として扱われており、
    実力史上の蛮族社会では生きる事自体がきつく、人族に寝返る者も多い。
    戦闘力は低くルール上絶対に高レベル成長出来ないが、が人に好かれやすい愛らしい容姿であり、手先が器用なのでコックや裁縫などをさせると意外な才能を発揮する模様。
    モンスター娘のいる日常では、コボルト族の女性ポルトが出演。犬の耳としっぽをもった小柄な女性として描写されている。
    またこの世界のコボルト族はコバルト鉱床を所持していて、経済活動の資金源にしている設定を持つ。


平均的には弱小な種族であるが、人間の一般人と冒険者の強さがまるで違うのと同じことで、ゴブリンであれコボルドであれ高レベルのキャラクターであれば強敵に化ける。

ホブゴブリン(hobgobrin)

ゴブリンのなかでも善良で、好んで人家に住まうものを特にこう呼ぶ。
「ホブ(hob)」とは「コンロ」を意味し、また親しいものを呼ぶときの愛称でもある。
その名の通りかまど周りに棲み一日一皿のミルクで家事を手伝ってくれるが、
それを忘れると災いをもたらし、また忘れてなくても気まぐれにいたずらをすることもあるという。
ゴブリンと同じく様々な種族を含む「家の妖精」の総称で、ブラウニー(brownie*6ボーグル(bogle*7プーカ(puka*8などを含み、
イギリスの妖精パック(puck)ロビン・グッドフェロー(Robin・goodfellow)などとも同一視される。

  • ファンタジー作品での扱い
    ゴブリンより善良とされる彼らだが、D&Dでは指輪物語のゴブリン→オーク、ホブゴブリン→オークの大型種で、
    ウルク=ハイ(オークの上位種)のイメージを引き継いでゴブリンの上位種として設定された。*9
    性質はゴブリンに似ているが体型はゴブリンより大きく知能も上回るが、その分繁殖力には劣り数が少ない。
    その他の作品でもおおむねそのような扱いとなっており、ゴブリンの上位種として出現することが多い。
    どの作品においても、大型種とはいえ所詮元がゴブリンなので、それほど強力なモンスターではない場合がほとんどだが…

バグベア(bugbear)

主にウェールズに出没するとされる、黒い毛むくじゃらの怪物。
名の由来はbwg(魔物)+bar(邪悪)で、熊とは関係ない。
異名が多く、バグ・バグス(bug・bugs)・バグルブー(bugleboo)・ブルベガー(bullbegger)などとも呼ばれる。
闇夜に突然現れて、特に一人歩きの子供をさらってむさぼり食う。
多くの家庭で、子供の夜歩きをいましめるために語り継がれてきた魔物である。

  • ファンタジー作品での扱い
    D&Dではゴブリンのさらなる上位種として設定されている。
    熊のような鼻を持ちホブゴブリンよりさらに体格が大きいが、知能ではあまりゴブリンと差が無く繁殖力で大きく劣る。
    ゴブリン社会の戦士階級の中核を占める種族。
    他のゲームでもやはりゴブリンの上位、それも最上位種としての扱いが多い。

レッドキャップ(redcap)

ゴブリンと呼ばれる魔物の中でも、もっとも危険な種族のひとつ。
名の赤 帽 子(レッドキャップ)とは、彼がかぶっている返り血で染まった帽子のことを指す。
指からは猛禽のような長く伸びた鉤爪がのび、帽子と同じく常に血に染まっている。
その姿はあごひげの長い小さな老人のようだが、目はらんらんと輝き風のように走ると言われている。
古戦場や番兵の詰所など流血ざたのあった場所に出没し、不用意に近づいた人間を血祭りにあげるという。

  • ファンタジー作品での扱い
    あまり扱いは多くなく、ゴブリンの亜種というよりは凶悪な妖精・悪鬼としての出番が多い。

ノッカー(knocker)

コーンウォールの鉱山に棲みつくゴブリンの一種。
名前の意味はそのまま「ノックする者」で、坑内で音を立てることで鉱脈の在処や危険の存在を知らせるとされた。
坑内で騒ぐことや自分の存在を暴かれることを嫌い、それを犯すものには容赦なく報復するとされる。

  • ファンタジー作品での扱い
    これもあまり扱いは多くなく、ゴブリンの亜種というより小人の一種とされることが多い。

グレムリン(gremlin)

20世紀初頭にイギリス空軍パイロットの間で語られたのが発祥とされる、機械をいじくる小鬼。
山から山へと空を渡り歩き、高速で飛行する戦闘機にも飛び乗って様々な機器の不具合を引き起こすと言われる。
また人間社会にも潜りこみ、ゼンマイ時計から半導体機器までありとあらゆる機械に様々な故障や誤動作をもたらす。
人間に発明のヒントを与えることもあるが、発明家たちに顧みられることも無かったため復讐をおこなうようになったらしい。

実在するか否かは明らかではないが、少なくとも空軍パイロットと整備班にとっては、
マシントラブルの責任を引き受けてもらうことで両者の軋轢を避けるために不可欠な存在であったことは確かであろう。


その他、ファンタジー作品では魔法を操る「ゴブリンシャーマン」や、
王としてゴブリンを従える「ゴブリンキング」などの亜種がまま見られる。

○エロ要員としてのゴブリン

ゴブリンは言葉としてはともかく、種族としての成立自体はそこまで古いほうではない。
それでも暗がりに潜み人を襲うゴブリンたちには、かなり初期のころから性的なイメージもついて回った。
19世紀の児童文学「ゴブリン・マーケット」では、ゴブリンからもらった果実の魔力に侵された妹を救おうとした姉に対し、
集団で襲いかかり服を破きひっかき傷をつけたあげく白い果汁をぶちまけるという
隠喩というにはかなりあからさまなエロゲのような描写がある。*10

これは現在でもそのまま踏襲されており、オーガ・ミノタウロスのような巨根要員とは対を成す、オークと並ぶ輪姦専門種族としての登場が多い。
彼らは単体では冒険者どころか一般人にさえ撃退されてしまうほどの力しかないが、その数と悪知恵、そして執念深さを武器にして、
平穏な人里を蹂躙し、罠を仕掛け、時には実力ではるかに上回るはずの騎士や王族さえもその毒牙にかけてしまうのである。
『ゴブリンスレイヤー』では、一般向け作品ながらゴブリンたちによる虜囚(女性)への凄惨な強姦・輪姦・拷問描写が一巻に付きほぼ一度は挿入されており、
コミカライズ版でのその場面はさながらハードな成年向け漫画の様相を呈しているが、アニメ版では局部(乳首)の描写が抑えられるなど、一応配慮されている。

○登場作品など

この項目では基本「ゴブリン」という名で登場している魔物のみを対象とし、
他の種についてはゴブリンの亜種として設定されていない限り基本取り上げない。
それでもファンタジー文化を代表するザコキャラである彼らの登場作品は多岐にわたり、
彼らが出演しない作品を探す方が難儀するくらいである。

童話

  • アンデルセン童話(H・C・アンデルセン):「ゴブリンの雑貨屋」他多数。
  • グリム童話(J・グリム&W・グリム):「ルンペルシュティルツヒェン」ほか。「コボルド」名義が多いが参考として。
  • ゴブリン・マーケット(C・ロセッティ):ゴブリンの魔力の虜になった妹と、彼女を救おうとする姉の物語。
  • お姫様とゴブリンの物語(G・マクドナルド):前述のとおり。「指輪物語」のトールキンや「ナルニア国物語」のルイスらに影響を与えたと言われる。

小説ほか

  • ホビットの冒険(J・R・R・トールキン):前述のとおり。地底に棲む邪悪な種族として登場。後続のシリーズでも「邪悪な魔物」を指す言葉として残っている。
  • ハリー・ポッターシリーズ(J・K・ローリング):魔法界の住人で人間たちと共存している。知能や技術にすぐれ、武具を作ったり銀行を経営したりと多芸。邪悪ではないが独特な価値観をもち、それが原因でトラブルになることも。
  • スレイヤーズ(神坂一):「闇の獣」と称される邪悪な種族。悪戯好きで、家畜や食料を襲う害獣。ゴブリン語はちょっと勉強すれば人間でも使える。外伝小説ではゴブリンハンターなる職業が登場した(下記の小説とは無関係)。
  • 転生したらスライムだった件(伏瀬):火の精霊力を受けて生まれたモンスター種族。基本は短命かつ低めの知性で多産なのだけが取り柄の非力な種族なのだが、上位種「ホブゴブリン」(雌は「ゴブリナ」)になると人並みの寿命と知性を持つようになる。また作中では主人公が最初に配下にした種族で、主人公がそれとは知らずに彼らに「命名(ランクアップ)」した上で牙狼族とコンビを組ませたため、前線で活躍するホブゴブリンライダーズが誕生している。ライダーズ以外も最古参の配下種族ということで要職に就いている者が多く、一部は上位魔人とも互角以上に戦える。
  • ゴブリンスレイヤー(蝸牛くも):表題の通り、ゴブリンとそれを退治するものを主題とした物語。狡猾で陰湿、集団で人里を襲うという要素は他の多くの作品と共通。しかし彼らがもたらす被害についての描写が克明になされており、ゴブリンの「駆逐するべき存在」としてのリアリティを浮き彫りにしている。
  • 魔物娘図鑑(健康クロス):魔物娘の一種族として、とがった耳と角を持った少女の姿で登場。子どもっぽくていたずら好き、徒党を組んで人を襲うといった、伝承と近年のファンタジーのゴブリン両方の性質を持つ。ただしいたずらも襲撃も性的なものだが。

ゲーム

  • ダンジョンズ&ドラゴンズ:前述のとおり。種族としてのゴブリンを決定づけたといえる作品。
  • Wizardryシリーズ:第3作「リルガミンの遺産」で初登場。シャーマンやプリンスなど、様々な地位・能力のゴブリンが出現。オークやコボルトと違い序盤では出現しないことが多い。
  • エルミナージュシリーズ:CRPGでは珍しく”人間やエルフといった多種族と共存しPCとして使用可能”という特徴がある。意外なことに賢さは人間やホビットよりも上。
  • ファイナルファンタジーシリーズ(スクウェア・エニックス):初作から出演。天野義孝氏の手による、帽子と短剣を持った小人のイラストが印象的。後のシリーズでは召喚獣としても登場、「ゴブリンパンチ」を披露してくれる。
  • FINAL FANTASY ⅩⅠ(スクウェア・エニックス):人類と敵対する獣人族の一種。小柄でマスクを被っている。高い技術力と商魂を持った商人の種族であり、他の獣人とはもちろん金次第で人類とも商売を行う。
  • 魔法大作戦(ライジング/エイティング):ファンタジー世界を舞台とした縦スクロールシューティングゲーム。敵は人間の王ゴブリガンが率いるゴブリンたちの王国「ゴブリガン王国」で、魔導兵器を大量生産して各国に侵攻を開始した。
  • ブルーフォレスト物語(ツクダホビー、TRPG・TVゲーム):雌ゴブリンの変異亜種としてゴブリナなる種族が登場。「幼女」・「獣耳」・「褐色肌」と現代で言う「萌え属性」を揃えた外見によって人気を博し、『転生したらスライムだった件』で「雌ゴブリン上位種」の名として使われる等後世においても影響を残している。
  • 遊戯王オフィシャルカードゲーム(コナミ):「ゴブリン突撃部隊」をはじめとしたゴブリンシリーズのカードが多数存在。耐久力絶無の一発屋カードだが意外と優秀。「成金ゴブリン」からストーリーが派生したカード群もあり、こちらはドローや墓地肥やしに優れたものが多い一方、「ゴブリンのその場しのぎ」などのやや使いづらいカードも。
  • Magic the Gathering(ウィザーズ・オブ・ザ・コースト):「ゴブリン」「オーク」「コボルド」「グレムリン」がそれぞれ独立したクリーチャー・タイプとして存在する一方、レッドキャップやホブゴブリンなどゴブリンで統合されているものも存在する。「モンスのゴブリン略奪隊」をはじめ、いずれもの軽量クリーチャーを中心とする種族である(例外的にオークは指輪物語コラボで黒をあてはめられたため、黒が多い)。MTGの種族の例に漏れず、次元によって性格や特性が違う。例えば、ゼンディカー及びラヴニカのゴブリンのように間抜けながらも他種族と共存する例もあれば、シャドウムーアやエルドレインのように邪悪な種族として描かれることもある。
  • メガテンシリーズ:種族は妖精。ジャックフロストやジャックランタンに比べるとマイナーだが、比較的話は通じる悪魔として登場することが多い。これはホブゴブリン、トロールも同じ。コボルトのほうは地霊となるが、こちらも話は通じる。
  • 神撃のバハムートShadowverse(Cygames):「ゴブリン」「ゴブリンプリンセス」を始めとしたカードが存在。基本的には人間と対立しているが、中には「ミニゴブリンメイジ」という無害なゴブリンも存在する。男性は他の作品同様に醜悪な悪鬼といった風貌だが、女性は何故か人間と何ら変わりない美少女のような容姿となっている(恐らく「ゴブリナ」が元ネタか?)。
  • Styx:Master of Shadows(Cyanide Studio):ゴブリンの盗賊「スティックス」が主人公のステルスアクションゲーム。続編「Shards of Darksness」もある。ゴブリン像としては「緑の肌で腕の長い小人」という正統派のもので、真っ向勝負では勝ち目のない人間やエルフを悪知恵で出し抜くというゲーム性が特徴。
  • ラストオリジン(スタジオヴァルキリー(旧名:PiG Corporation)):設定のみ登場。劇中では女性しかいないバイオロイドにおいて、過去唯一量産された男性バイオロイドにして、初の軍用バイオロイド「T1ゴブリン」。高い性能を誇っていたが、暴走事件で多くの死傷者を出した事で生産中止&全機廃棄処分になった。またバイオロイドの素材となるオリジンダストと男性ホルモンとの相性が最悪であり、精神面で激昂すると暴走を起こす致命的な欠陥が発覚し、以降男性バイオロイドは一切生産されていない。
  • 悠久の車輪:なんとグランガイアという国を築いている。しかし実際のところは治安が悪くスラムがいいところで、特に力の無い子供は大人にこき使われるのが常であった。グランガイアシナリオはそんな虐げられた弱い者たちの逆襲、そしてそれらを成し遂げた後の代償の話となっている。種族としては小柄でブサイクで力も弱いが意外と知能は高く、機械類の扱いが得意でありグランガイア中に存在するガラクタを繰り他の国と渡り合う。また女性のゴブリンはシャーマンとなり不思議な力を使いこなす。そして男性ゴブリンは女性に対しては下手に出てしまう厄介な特性があったが、混沌に囚われたらその特性はなくなる。そして知能はあっても知性は低く、機械の性能は高いが故障が多かったり、火を吐く能力を備え付けたら味方の方が被害が大きかったりと割とコメディリリーフなキャラが多い。女性ゴブリンは人間の美少女に近いがやっぱりイタズラ好きな物が多くフリーダムな集団となっている。ただしストーリーの中枢を担うキャラはちゃんとシリアスである。

漫画

  • スパイダーマン(スタン・リー、スティーブ・ディッコ):突然変異で強大な能力と邪悪な精神を得た軍需産業の社長が「グリーン・ゴブリン」を名乗った。スパイダーマンに倒されるがその後も社長の息子をはじめとした他者にその名が引き継がれていき、強化版の「ホブゴブリン」も登場。
  • ザ☆ドラえもんズ(田中道明):悪人「黒騎士」が操る召喚獣軍団。コウモリのような羽を生やした邪悪な子鬼。ドラえもんズを襲うも、老魔導士テラリンのジロー・カードで全滅させられる。
  • アイアンナイト(屋宜知宏):人間が変異した怪獣として登場。主人公は人間の心を保ったままゴブリンに変身し邪悪なゴブリンと戦う。
  • ジークジオン編(SDガンダム外伝)最弱のモンスターとして「ゴブリンザク」が登場する。色違いの亜種に「シーフザク」「パイリットザク」も。裏設定によれば戦士ザクが退化した存在でさらに退化すると「スコーピオンザク」など人型ですらないモンスターとなるらしい。漫画版第一話のみ生物を木像に変えてしまうビームを斧から発射する能力を持っていた。また漫画オリジナルのエピソードには嘗て騎士ガンダムと騎士アムロに救われ、アムロがアルガス騎士団に行っている間にアムロの弟を騙って騎士ガンダムと騎士セイラと共に妖精の村を救った「カムロ」という個体も登場している。黄金神話(ゴールドサーガ)編(SDガンダム外伝)の時代には絶滅しているとラクロア騎士団が話している。
  • 天空の扉(KAKERU):生態系最底辺でありながら、その生態から最低最悪の害獣として猛威を奮っている。詳しくはゴブリン(天空の扉)にて

特撮


名前のみの使用

  • ゴブリン(漫画家):日本の漫画家、旧「ゴブリン森口」。80~90年代に成人向けの作品で一世を風靡。ネット上では『太チンの竜』『竿竹のケン』『抜か八』『ガロン塚本』ら『四天王』画像が有名だろう。
  • マクダネルXF-85ゴブリン(戦闘機) : アメリカの試作戦闘機。爆撃機に爆弾代わりに詰みこまれて空中で投下・飛行するというトンデモ兵器。試作段階で性能や安全性に問題が見つかり実用化はされなかった。
  • デ・ハビランド ゴブリン(エンジン)-:イギリスのデ・ハビランド社による航空機用のターボジェットエンジン。二次大戦中に生産され、後継機種のゴースト(Ghost)も存在する。
  • Goblin(ロックバンド):イタリアのロックバンド。「サスペリア」「ゾンビ」「デモンズ」など、ホラー映画の音楽を手掛けたことで有名。
  • ゴブリン(声優):日本の声優、大沢事務所所属。主としてナレーター業を行い、ものまねタレントとしても活動。

余談

深海ザメの一種として有名なミツクリザメは英語ではゴブリンシャークと呼ぶが
これは水揚げされた時の血に染まった姿がまるでゴブリンを思わせるからとも、
日本における別名テングザメの英訳からとも言われている。

編集・追記はゴブリンを一匹残らず駆除してからお願いします。

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最終更新:2023年11月29日 12:07

*1 家に棲みつくホブゴブリンを追い払いたいときにこの性質を利用して、上着などをプレゼントするというものがある。彼らは感謝するどころか「やった、もう仕事なんかしないぞ」と捨て台詞を吐いて出ていってしまうという。

*2 『1匹は猫の顔してて 1匹はしっぽを振ってて 1匹はネズミみたいに駆け回る 1匹はナメクジのようにはい回り 1匹はウォンバットのようにのろまでふっさふさ 1匹はアナグマのように慌しく転がってた』C.ロセッティ「ゴブリンマーケット」(1864)より

*3 語源は冥府の神オルクス(orcs)から。

*4 天皇に恭順することをよしとしない、いわゆる「まつろわぬ民」の総称。名の意味は「土籠り」から。穴居人であり手足が長く胴が短かった、有尾人であったなどとの記述が残る。

*5 その鉱物はのちにコバルト(cobalt)と名付けられた。外観は銀鉱石に似ているが、精錬しても当然ながら銀は得られない。

*6 brownie「茶色さん」の意。スコットランドの妖精。全身茶色の巻き毛に覆われた老人の姿をしている。

*7 bogle ラップ音を起こすといわれる性悪なホブゴブリン

*8 puka ケルト系の妖精で夢魔ともされる。好んで馬の姿で現れ、人を乗せてあちこち走り回る。イギリスの妖精パック(puck)のルーツ。

*9 山のオークなど、ウルクハイではない下級種の大型種もいるようだが

*10 この作品には他にもきわどい描写が多く、児童文学として翻訳を行った訳者を大いに悩ませたと言われる。