キャンディマン(映画)

登録日:2017/04/30 Sun 01:27:40
更新日:2024/03/29 Fri 23:15:36
所要時間:約 8 分で読めます






我が生け贄となれ――


キャンディマン』とは、1992年に公開されたアメリカのホラー映画。

キャンディマンという伝説の殺人鬼に生け贄として目を付けられてしまった大学院生の悪夢を描かれた作品であり、
今やホラー定番のジャンルと言える「都市伝説ホラー」を築き上げた傑作である。

『ヘルレイザー』シリーズで有名なクライヴ・バーカーの短編小説集『血の本』シリーズの一冊、『マドンナ』に収録された一編『禁じられた場所(原題:Forbidden)』が原作であり、監督のバーナード・ローズが脚本を担当して映画化。ちなみに監督も劇中に出演している。
のちにシリーズ化され3作目まで制作された。2021年には、同名の直接的続編が公開されている。
1993年に日本で公開され、アヴォリアッツ映画祭では主演女優賞、音楽賞、観客賞を受賞した。

ちなみに『キャンディマン』とは、日本語で“お菓子売り”の意味を持つ。またスラングで“麻薬の密売人”や“甘い言葉で惑わせる色男”という意味もある。



【あらすじ】

大学院生のヘレンは、論文の題材として黒人居住区に伝わるキャンディマンの都市伝説を研究していた。
大学教授の夫トレヴァーから恩師を紹介してもらったヘレンは、 彼からキャンディマンの基となった黒人奴隷の話を聞く。
彼によると、かつて地主の娘と身分違いの恋に落ちた黒人奴隷がリンチで惨殺されたという事件があり、その現場が現在の黒人居住区にあたることから伝説が生まれたという。
話を聞いたヘレンは、荒れ果てた公団住宅となっているカブリーニへと調査に向かうが…。



【登場人物】

  • ヘレン・ライル(演:ヴァージニア・マドセン/吹替:土井美加
主人公。
都市伝説について研究している大学院生でショートヘアが特徴の金髪美女。
当初はキャンディマンの伝説には懐疑的だったが、面白半分に鏡の前で「キャンディマン」の名前を5回唱えたのを境に周囲で奇怪な事件が次々と起きるようになり、それに呼応するかのごとく目の前に現れたキャンディマンによって連続殺人事件の犯人に仕立て上げられてしまう。

それからは彼女の人生は転落の一途を辿り、社会的に追い詰められ、無実を訴えても信じてもらえず、周囲からは異常者とみなされて精神病院に入院させられる羽目になってしまった。
その1カ月後にキャンディマンの手引きで病院から脱走して久しぶりの我が家に戻ったが、この時既にトレヴァーが別の女と新たな生活を送っていた事を知り、思わずその場から去ってしまう。
全てを失い、愛する者からも見捨てられたヘレンは絶望に打ちひしがれ、キャンディマンに言われるがままに彼の元へと訪れた。そこで待っていたのは……


  • トレヴァー・ライル(演:ザンダー・バークレー/吹替:家中宏)
ヘレンの夫である大学教授。
中盤でヘレンが事件に巻き込まれて一度逮捕された時は無実を信じて弁護士を雇い、彼女を釈放させて家に連れて帰った。
しかし、それからほどなくヘレンがバーナデット殺害の容疑者として再び逮捕されると、流石に匙を投げて彼女を見放していた。

実は事件が起きる以前からヘレンに隠れて教え子のステイシーと不倫しており、ヘレンが精神病院に収容されたのを機に彼女に見切りつけてステイシーと一つ屋根の下で暮らす体たらくであった。
ヘレンが家に戻ってきた後は案の定修羅場となり、彼女から裏切りを非難された際には当然ぐうの音も出なかったが、大っぴらにステイシーと交際できるようになった生活を手放すことができず、結局ヘレンを拒絶してしまう。これがヘレンにとっての決定打となってしまった。


  • バーナデット・バーニー・ウォルシュ(演:カシー・レモンズ/吹替:相沢恵子)
ヘレンの友人。
キャンディマンの伝説を調べるためとはいえ、治安の悪いカブリーニでの調査には乗り気ではなく、むしろ危険を承知で真相を近づこうとするヘレンに苦言を呈していた。
中盤で一度釈放されたヘレンのお見舞いに訪れたところ、ちょうど目の間に現れたキャンディマンに運悪く殺害されてしまう。


  • ステイシー(演:キャロライン・ローリー/吹替:不明)
トレヴァーの教え子の1人。
上記にある通り、トレヴァーの不倫相手であり、ヘレンが殺人容疑で逮捕された後はトレヴァーと一緒に暮らすようになる。
この手のポジションのお約束なのか、ヘレンと比べると若々しい雰囲気。
病院を脱走したヘレンが家に戻ってきたシーンでは真っ白だった家の中をペンキでピンクに塗り替えており、トレヴァーの裏切りを知って激怒したヘレンを見るなり終始怯えるようなそぶりを見せていた。


  • アン=マリー・マッコイ(演:ヴァネッサ・A・ウィリアムズ/吹替:不明)
カブリーニに住むシングルマザーの黒人女性。
白人を快く思っておらず、カブリーニを訪れたヘレン達に対しても当初は猜疑心から警察と勘違いして敵意をむき出しにしていたが、ほどなく彼女達が友好的だと判断するとすぐに謝罪して自宅へと招き入れた。
生まれたばかりの赤ん坊のアンソニーの子育てを生きがいとしており、中盤でキャンディマンに飼い犬を殺され、アンソニーが誘拐された際には血まみれになった部屋で泣き叫び、その場にいたヘレンを犯人と決めつけて掴みかかった。*1
直後にヘレンが逮捕されたのを機にアン=マリーは姿を見せなくなるが……


  • ジェイク(演:デファン・ガイ/吹替:峰あつ子)
ガブリーニに住むホームレスの黒人少年。
他の住人達とは違い、ガブリーニを訪問したヘレンとすぐに打ち解けていた。


  • フィリップ・パーセル(演:マイケル・カルキン/吹替:不明)
トレヴァーの同僚である教授。
やや肥満体の長髪でキャンディマンの伝説に詳しい。


  • ヴァレント刑事(演:ギルバート・ルイス/吹替:不明)
黒人の刑事。
序盤でヘレンを襲ったキャンディマンの模倣犯を逮捕した。


  • キャンディマンの模倣犯(演:テレンス・リギンズ/吹替:不明)
序盤で登場したキャンディマンを名乗る黒人の暴漢。
キャンディマンの真似事でカギ爪を所持して数人の手下を引き連れている。
キャンディマンの都市伝説を調べようとしたヘレンの前に現れ、彼女を殴り倒して負傷させた。

それからほどなく警察に逮捕されてフェードアウトしたが、彼の存在が皮肉にもヘレンが本物のキャンディマンに目をつけられる遠因となってしまう。


  • バーク医師(演:スタンリー・デサンティス/吹替:不明)
第一級殺人犯として精神病院に収容されたヘレンと面談した心理学者。
無実を証明しようとヘレンが鏡に向かってキャンディマンの名を5回呼んだ直後にタイミングよく現れたキャンディマンに惨殺された。


  • キャンディマン(演:トニー・トッド/吹替:玄田哲章
本作の殺人鬼。ヘレンのストーカー
毛皮のコートを着た長身の黒人男性で手首を失った右腕にカギ爪を装着している。ちなみにコートの下は肋骨がむき出しで体内には無数の蜂が巣くっている。
鏡の前で彼の名を5回唱えると現れる都市伝説の怪人であり、神出鬼没でどこからともなく姿を現す。
黒人居住区の住人達の間では有名な存在となっており、カブリーニの隠し部屋にはキャンディマンの壁画が描かれている。

元々は19世紀に生まれた奴隷の息子だったが、父親が南北戦争後に靴の大量生産機を考案し巨万の富を築いたため、一流の教育を受けて上流社会で育った。
また、絵の才能があったおかげで富裕層の人々からは評価され肖像画の依頼が殺到していたが、ある地主の依頼で肖像画のモデルとなった地主の娘と恋に落ち、その過程で交際した彼女は妊娠した。
当時は黒人の差別が激しかった時代だったといえ、その事に腹を立てた地主に雇われたゴロツキにノコギリで右手を切り落とされた上、
蜂蜜を全身に塗られた挙句に付近にあった養蜂場の蜂に刺されて死亡。遺灰は現在のカブリーニに撒かれた。

死後、キャンディマンと名乗って人々を恐怖に陥れてきたが、人々が伝説を信じないと存在を維持できないという性質が弱点となっており、
それ故に自身の伝説を否定する論文を広めようとしたヘレンを執拗につけ狙った。
なお、序盤でさらったアンソニーを隠れ家に寝かせており、ヘレンが自分の伴侶になればアンソニーを解放するつもりであるらしいが……


※以下、終盤のネタバレ















今までの日常を失って絶望したヘレンは誘われるように自らキャンディマンの伝説の場所に行き、そこに描かれた自分と瓜二つの地主の娘の壁画から、自分がキャンディマンの恋人の生まれ変わりであると悟る。
その後、住宅地のすぐ近くにある廃材の山の中にアンソニーがいる事に気づいてそこへ向かうが、その姿を目撃した住人からはキャンディマンと間違えられ、よりにもよってその場所に火を付けられてしまう。
そこにいたアンソニーを抱きかかえたヘレンが外に出ようとしたところをキャンディマンに捕まった上、瞬く間に火の手が廃材の山の内部にも広がってしまった。


我々は彼らの手にかかって死ぬのだ

そうすれば、我々の死に様は彼らの目に焼き付き、消えなくなる

私たちの骨は灰となり、混ざり合ってもはや別れる事はない


キャンディマンは最初からアンソニーをも巻き込むつもりでヘレンと運命を共にしようとしていたのである。
せめてアンソニーだけでも救おうと必死に抵抗したヘレンは燃える角材をキャンディマンに突き刺してその場から逃げ出した。
服や髪に燃え移った炎に焼かれながらもアンソニーを抱いて外へと這い出したヘレンは無事にアンソニーを救出し、ちょうど目の前に立っていたアン=マリーの元へと帰した。
炎に飲み込まれたキャンディマンは「戻って来い」と叫びながら瓦礫の下敷きとなり、全身に大火傷を負ったヘレンも住人達の目の前で息を引き取った。

ヘレンの死後、トレヴァーとステイシーと同僚教授と弁護士の4人で葬儀が行われた。
死化粧が施されたヘレンの遺体を埋葬しようとしたところ、アン=マリーを筆頭にカブリーニの住人達が葬儀に訪れた。
そして、亡きヘレンへの手向けとしてキャンディマンのカギ爪を墓穴に落としたジェイクはアン=マリーと共に立ち去った。


※更なるネタバレ

















葬儀を終えた後、トレヴァーは相変わらずステイシーと一緒に暮らしていたが、ヘレンの死が流石に応えたのか、すっかり意気消沈してバスルームで1人籠っていた。
涙を浮かべながらヘレンと暮らしていた頃の思い出に浸っていたトレヴァーが鏡の前で衝動的にヘレンの名を5回呼んだ瞬間……


どうしたの

何を怖がっているの?


何と死んだはずのヘレンがトレヴァーの目の前に現れ、その手にはキャンディマンのカギ爪が握られていた。
生前とは変わり果てた姿となったヘレンが上記のセリフを口にした直後にカギ爪で容赦なくトレヴァーに襲いかかった。*2
不倫の事を根に持っていたのか、カギ爪でトレヴァーをメッタ打ちにしたヘレンは恍惚の表情を浮かべていた。

その頃、バスルームから出てこないトレヴァーを心配したステイシーがドアを開けると、そこにはカギ爪で切り刻まれたトレヴァーの死体が横たわっており、その光景を目の当たりにしたステイシーの絶叫が響き渡った……

この場面を最後にステイシーは完全に物語からフェードアウトし、彼女のその後の顛末は定かではないが、いずれにしてもまともな生活を送れない事は確かだろう。


場面は変わり、カブリーニの隠し部屋が映し出される。

かつてキャンディマンが寝床にしていた部屋には炎に包まれたヘレンの壁画が新たに描かれており、それはヘレン自身が都市伝説の存在になっていく事を暗示していた……





追記・修正は、鏡の前でキャンディマンの名を5回唱えてからお願いします。

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最終更新:2024年03月29日 23:15

*1 この時のヘレンは服が血まみれの状態で包丁を手に持っていたので疑うのは無理もない話である。

*2 中盤で修羅場となったシーンでも似たようなセリフを口にしていた。