SCP-711

登録日:2017/04/16 (日) 22:38:26
更新日:2023/12/30 Sat 16:04:40
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SCP-711は、SCP Foundationに登場するオブジェクトのひとつ。
オブジェクトクラスはSafe。
項目名は「Paradoxical Insurance Policy(逆説的な保険証書)」。


概要

初めにことわっておくと、このオブジェクトは財団が作った物品である。
SCP財団が自らSCPオブジェクトを作り上げた場合、それはほとんどの場合「財団の最終兵器」と位置付けられるThaumielクラスが割り当てられ、最高機密として扱われることになる。

ところがコイツの場合、オブジェクトクラスはSafeである。つまり、収容方法が確立している=異常な特性が発揮されないように収容しておく必要があるオブジェクトなのである。

財団製オブジェクトにも関わらず、Thaumielでない理由。
それはこのオブジェクトが、Thaumielクラスの初出前に書かれたもの財団世界の存続を、期間限定で保証する存在だからである。

具体的にどういうことなのか、それをここから説明していく。


まずこのオブジェクトは、とある計画から引き継がれたとあるエネルギー制御の理論をベースに、SCP財団が製造した「Cメール」の送受信デバイスである。Cメールとは簡単に言えば、未来から過去へと送られるメッセージのことである。
このデバイスによるメッセージの送信は時間に対して正方向には決して行えない。現在から過去へ向かってしか、送れないのである。

そしてこのデバイスは現在までに、17のメッセージを受信しており、そのうちの16は財団によって実際に送信されている。
最初のメッセージはこのデバイスが正常に機能していることを確認するための「test」の四文字であり、完成直後に早速受信された。そして、その事実を確定するために、受信から4分後に送信された。
これは完璧に送信されたが、次の試行では通信精度がいきなり悪化。
16回目の送信ではやはり「test」の文字を送ったが、受信されていたそれは5kbの無意味なノイズと「t$3s^f@」の文字で構成されていた。
さらにその後になって、財団が現在までまだ送信していない、四つの明らかに無意味なノイズでのみ構成された文字列が受信されている。



そして、肝心なのはここからである。
完成から10年後、SCP-711は一つのメッセージを受信した。「文字列17」と呼称されるそれは、347文字で構成された未来からのメッセージであった。
それは厳重に暗号化されるか、もしくは機密にせねばならない何らかの処理を受けていた。さらにその最初の50文字は、SCP-1780「時間制御部門」と同様のケースにより、送信者が財団職員の誰かであることを確定づけるものであった。
作成日時は不明であり、現在まで送信されていない。

この機器の特性上、このメッセージは未来のどこかで必ず送信されるものであり、それが財団職員によるものが確定している。
ということは、このメッセージが送信されない限り、財団と世界の存続は、どんな形にしろ保障されている、ということである。しかし裏を返せば、このメッセージが送信されてしまった瞬間に、世界存続の根拠は消滅してしまうことになる。

よって、財団は文字列17の送信を、あらゆる対価を支払って限界の限界まで延期することを決定。
これに伴い、恐らくそれまでは違うものであった取り扱い方は変更された。
要約すると、

  • コンクリートに詰めて操作を封じるよ
  • さらにその状態で、あるサイトの貴重品保管庫に入れるよ
  • 最低でも四つの予備施錠システムと、クリアランス2以上の武装職員4名以上で警備するよ
  • どんな理由があってもSCP-711を操作してはならないよ
  • 財団や社会の存続にかかわる事態が発生したら、担当者はすぐにこれを破壊して、直ちに組み立てなおすための場所を確保するよ
  • 操作に関わる人員は、文字列17に関するどんな知識も与えられないよ

というもの。
要するに、あらゆる手段で文字列17の送信を防げ、というものである。
財団が存続する限りこの処置が中断されることはないが、言い換えればこの処置が実行されない状況では、もはやSCP財団は組織としては消滅していることになる。

さらに特筆すべきは、許可なくSCP-711の操作を試みた者は、いかなる理由であれ、SCP財団に存在する、もっとも厳しく激しい処罰によって処分されるという対応である。
実は、財団世界においてDクラスやバカをやらかした職員が処分を受ける、または終了されるという事例は多々あれど、具体的にどういう手段で行われているのか、までは言及されていないことがほとんどである。
その中にあって「財団でもっとも厳しく激しい」とまで表現される処罰がどれほどのものなのか……想像するだに恐ろしい、というかもはや想像が出来ないレベルである。

SCP-711はある種の保険証書です。我々は、文字列17が送信されるまではどんな危機に瀕しても生き残れると知っています—そうでなければ、文字列17はBLクラス予定説に矛盾します。
一度それが送信されてしまえば、もはや我々は保険を失います。ええ、我々はいつかの時点で必ず失敗するでしょう。結局のところ、我々は文字列17を受信しているのですから。
しかし、我々はその送信を引き伸ばせば、それだけ長く生存し続けられることを知っています。
通信を止めてください、皆さん。我々が存在していられるかは、そのことに依存しているのですから。


文字列17。
それは、送信されるまで財団世界の存続を保証する保険であると同時に、いつか必ずその時が来る、という審判でもあるのだ。
なにせそれは受信されたメッセージなのだから、どんな対策をしようと、必ず送信される。だから世界の存続は保証される

未来を変えることはできる。だがそれは、文字通りの「未来」である場合。誰も知らない未来だけが、変更を許される。
財団は見てしまった。未来から送られた347文字のメッセージを。恐らくは、「その時」をつづったメッセージを。

「その時」は必ず来る。
世界存続の保証が消える、その時は。


そして、「その時」が来たら。
全方向で危機に瀕している財団世界が、その先も問題なく続いていくなどと、誰が言えるのだろうか?


追記・修正は文字列17を送信してからお願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-711 - Paradoxical Insurance Policy
by Photosynthetic
http://www.scp-wiki.net/scp-711
http://ja.scp-wiki.net/scp-711

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最終更新:2023年12月30日 16:04