ヨーグモスの意志/Yawgmoth's Will

登録日:2017/04/16(日) 21:50:00
更新日:2024/02/21 Wed 12:11:56
所要時間:約 5 分で読めます




《ヨーグモスの意志/Yawgmoth's Will》は、マジック:ザ・ギャザリングのカード。
ウルザズ・サーガに収録された。レアリティはレア。


Yawgmoth's Will / ヨーグモスの意志 (2)(黒)
ソーサリー
ターン終了時まで、あなたは、あなたの墓地にあるカードをプレイしてもよい。
このターン、カードがいずれかの領域からあなたの墓地に置かれる場合、代わりにそのカードを追放する。

この時点で何らかのトレーディングカードゲームをプレイしたことのある諸氏なら気づくだろう。


文句なしのぶっこわれカードである。


何がヤバいのか

どのTCGにも墓地という概念は存在する。
最近ではリアニメイトやサルベージを主力とするデッキも多く見られるようになり、第二の手札とかいわれることも増えてきたが、墓地は基本的には役目を終えたカードが眠る場所である。
また大体どのカードゲームであっても使い捨てのカードは存在し、それらのカードを再利用する場合大抵多くの制約がかかるのが普通である。加えてコストが軽い場合干渉できるカードの種類なり枚数なりは少なくなってしまう。

その前提を踏まえてこのカードの効果を見てみると

  • コストは軽め
  • すべてのカードを再利用できる
  • デメリットは軽い

何だこれ。

まず3マナというコスト。
黒には《暗黒の儀式/Dark Ritual》という1マナで3マナ一気に加速出来る素敵カードが存在する。
これで加速した後に打てば実質1マナの元手でこのカードを唱えられる。
それでなくとも3ターン土地を起き続ければ使用可能。その頃には墓地もいい感じに肥えているだろう。
また黒のシングルシンボル(色マナを1つしか必要としない)ため、デッキ内の黒マナソースが薄くても使用可能であるという点もメリット。

そしてデメリットの軽さ。
一応デメリットとして「このターン、墓地にカードが送られる場合、代わりにそのカードを追放する」という効果がある。
つまり「これを使った後のカードは一度使うと再利用できませんよ」という意味なのだが、大事なのは

"このカードを唱えるまでその制約はない"

ということ。

つまりこのカードを唱えるまでは好きなだけカードを使用した上で墓地=このカードで再利用可能な領域にカードが置けるということである。
例えばさっきの暗黒の儀式と組み合わせると、

黒1マナで《暗黒の儀式/Dark Ritual》→《ヨーグモスの意志/Yawgmoth's Will》→黒1マナでもう1回儀式

あれ?たった2枚+2マナの消費で1マナ増えた上に墓地のカードを好きなだけ使えるぞ?

そして墓地にさえあればこのカードで再利用できるカードには一切の制約がない。
あの《Black Lotus》であっても再利用できる。



WotCの扱い

ここまでいかにぶっ壊れであるかと書いてきたものの、まともなデザインならこの世に完全無欠のカードが存在しないように、このカードにも欠点がある。
このカードの強さは周りのカードの強さに比例する。
いくらこのカードが強くても周りに再利用に値するカードが少なければこのカードの強さもそれまでということである。

その為スタンダード環境では禁止カードに指定されなかった。
それでも当時のスタンダードには上記《暗黒の儀式/Dark Ritual》に加えて生贄に捧げると好きなマナ1点が出せる0マナアーティファクト《水蓮の花びら/Lotus Petal》が存在したのでフリースペルのようなことができていた。
黒系デッキの後半の息切れ防止という真っ当な使い方から、マジック史上最も美しいコンボとも言われる「ピットサイクル」でトドメ用の《魂の饗宴/Soul Feast》の水増しに使われたりはしたが上記の通り禁止は免れた。

が、エクステンデッド以下の環境では一変。
軽いどころかコストがあってないような強力なカードが多数存在するため、このカードを1回唱えるだけで10枚以上のアドバンテージを簡単に稼げる強力呪文になる。
特にヴィンテージでは先程の《Black Lotus》を初めとしたパワー9がすべて使えるため、それらをまとめて再利用できるこのカードは「パワー9を超える強さを持ったカード」になりうる。

そんなわけで登場から1年後の1999年10月からType1(現在のヴィンテージ)で制限カード、エクステンデッドとType1.5で禁止カードに指定され現在も解除されていない。
その後Type1.5から移行したレガシーでも当然禁止。
ちなみにこれは当然スカージ登場前(=ストーム登場前)の平和だった時代の話である。ウルザ・ブロック自体がそもそも平和じゃないというのは無しで


亜種・リメイク


Regrowth / 新たな芽吹き (1)()
ソーサリー
あなたの墓地にあるカード1枚を対象とし、それをあなたの手札に戻す。
由緒正しきリミテッド・エディションからのカード。ある意味このカードの先輩。
2マナで好きなカードを1枚サルベージする。ちなみにこれで当時のType1の制限カード。
《ヨーグモスの意志/Yawgmoth's Will》はこれに1マナ増やしただけで全カードを再利用できる。
いくらなんでもやりすぎである。


Yawgmoth's Agenda / ヨーグモスの行動計画 (3)(黒)(黒)
エンチャント
あなたは、各ターンに呪文を1つしか唱えられない。
あなたは、あなたの墓地にあるカードをプレイしてもよい。
いずれの領域からでも、あなたの墓地にカードが置かれる場合、代わりにそれを追放する。

直接のリメイクその1。
唱えられる呪文を1つに限定し、コストを2マナ増やしたことでだいぶマシになった。
その性質上コンボデッキでは使えないが元々唱える呪文の数が少ないコントロールデッキなどではこれでも十分強い。


Praetor's Counsel / 法務官の相談 (5)()()()
ソーサリー
あなたの墓地にあるすべてのカードをあなたの手札に戻す。法務官の相談を追放する。ゲームの残りの間、あなたの手札の上限は無くなる。

亜種その1。
《新たな芽吹き/Regrowth》に合わせてか効果が大規模サルベージになり、マナコストが約3倍になった。サルベージになったのでこのカードを唱えて以降もこのカード以外のカードは追放されない。
異常なまでの軽さが魅力だったので大幅なコスト上昇は痛いがそれでも墓地のカードの全再利用は強力。
ついでに以降手札上限もなくなるのでドローも気兼ねなく使える。


Past in Flames / 炎の中の過去 (3)()
ソーサリー
あなたの墓地にある各インスタント・カードと各ソーサリー・カードは、ターン終了時までフラッシュバックを得る。そのフラッシュバック・コストはそれのマナ・コストに等しい。
フラッシュバック(4)()(あなたはあなたの墓地にあるこのカードを、そのフラッシュバック・コストで唱えてもよい。その後それを追放する。

亜種その2。
マナコストが1増え、対象がインスタントとソーサリーに限定された。
嬉しいことに一時的なマナ加速は赤に移動しているため、このカードとのシナジーも抜群。
インスタントとソーサリーだけとはいえ大規模な再利用ができる呪文は貴重なので各種ストームデッキに採用されている。
そしてこのカード自身にもフラッシュバックがあるのが一番のミソ。
《ライオンの瞳のダイアモンド/Lion's Eye Diamond》との相性はバッチリで、手札を全て捨てるデメリットが気にならなくなるため、まるで《Black Lotus》の様に使うことが出来る。


Magus of the Will / 意志の大魔術師 (2)(黒)
クリーチャー — 人間(Human) ウィザード(Wizard)
(2)(黒),(T),意志の大魔術師を追放する:ターン終了時まで、あなたはあなたの墓地からカードをプレイしてもよい。このターン、いずれかの領域からカードがあなたの墓地に置かれるなら、代わりにそのカードを追放する。
3/3

リメイクその2。クリーチャー化した。
ご丁寧に召喚コストは本家そのまま。新たについた起動コストも本家のマナコストと同じである。
本家と比べると妨害されやすく、工夫しないと即座に効果が使えず、コストも実質倍だが非常に強力な効果はそのまま。
登場後早速《浅すぎる墓穴/Shallow Grave》などと組み合わせてレガシーで活躍している。


Underworld Breach / 死の国からの脱出 (1)()
エンチャント
あなたの墓地にあり土地でない各カードはそれぞれ脱出を持つ。脱出コストは、そのカードのマナ・コストに「あなたの墓地から他のカード3枚を追放する。」を追加したものに等しい。(あなたはあなたの墓地から、カードをそれの脱出コストで唱えてもよい。)
終了ステップの開始時に、死の国からの脱出を生け贄に捧げる。

亜種その3。登場したテーロス次元のテーマに合わせてエンチャントになったが、終了ステップ開始時に生贄に捧げるので基本的に使い切り。
本家と異なり土地はプレイできず、カードをプレイするたびに墓地のカード(=カードの選択肢)が消えていく点は劣るが、本家より軽い
更に本家と異なり脱出での追放コスト以外にカードは追放されないので墓地のカードさえあればいくらでもカードが再利用できる。このカード自体も再利用可能。
この為スポイラー公開当初から《ライオンの瞳のダイアモンド/Lion's Eye Diamond》を何度も再利用して高速マナ加速するストームデッキが誕生したりと早速コンボデッキに搭載され、レガシーで即刻収監されてしまった。
再利用カードを追放しない点によりコンボにおいては《ヨーグモスの意志/Yawgmoth's Will》より強い、というのが現状のプレイヤーの認識となっている。


Tibalt, Cosmic Impostor / 星界の騙し屋、ティボルト (5)(黒)()
伝説のプレインズウォーカー — ティボルト(Tibalt)
星界の騙し屋、ティボルトが戦場に出るに際し、あなたは「あなたは星界の騙し屋、ティボルトによって追放されたカードをプレイしてもよく、それらの呪文を唱えるために任意のマナを望む色のマナであるかのように支払ってもよい。」を持つ紋章を得る。
[+2]:各プレイヤーのライブラリーの一番上のカードをそれぞれ追放する。
[-3]:アーティファクト1つかクリーチャー1体を対象とする。それを追放する。
[-8]:すべての墓地からすべてのカードを追放する。(赤)(赤)(赤)を加える。
初期忠誠度5

ETB能力との兼ね合いにより、奥義がすべての墓地対象・効果永続・墓地対策無効・色拘束無視・対戦相手の墓地一掃のヨーグモスの意思の強化版となっているプレインズウォーカー。
とはいえ7マナの重量級プレインズウォーカーの奥義なのでさすがに序盤から使うのは無理だが、
《出現の根本原理/Emergent Ultimatum》《ティボルトの計略/Tibalt's Trickery》などでマナコストや色を無視して出すデッキも存在する。


Gaea's Will / ガイアの意志
〕ソーサリー
待機4 ― ()
ターン終了時まで、あなたはあなたの墓地から、土地をプレイしても呪文を唱えてもよい。
このターン、カードがいずこかからあなたの墓地に置かれるなら、代わりにそのカードを追放する。


恒例行事となった待機つきリメイク。色が緑に変わっており、書きぶりが若干変わっているがやってることは何も変わっていない。
本家は唱えれば相手は死ぬみたいなそういうカードだったので、既に待機で見えている場合即刻打ち消されるか唱える前に自分が死ぬかどちらかなので例に漏れず待機で使うのはちょっと厳しい。
やはりマナ・コストのない呪文の常套手段である踏み倒しで無理矢理唱える形で運用することになるか。


余談

  • マロー曰く「最大の過ち」。単純にマローが作ったカードの中で一番のぶっ壊れだから、という意味ではない。
    上記の通りこのカードが発売される4年半も前に《新たな芽吹き》がType1で制限カードに指定されているのだ。つまり当時「墓地のカードを軽いマナコストで再利用できるカードは強い」ということを認識していた(はず)なのだ。
    にもかかわらずこのカードは作られてしまった。このカードが狂ったオーバーパワーなカードであることは予想できたにもかかわらず。
    「このカードはまずいということを認識しているべきだったのに作られてしまったということ」こそが「最大の過ち」である。

  • このカードの効果が解決した場合、このカード自体も追放される。つまりこのカード自体の再利用は難しめ。《意志の大魔術師/Magus of the Will》もこれに準じて発動条件が自身追放になっている。

  • これだけ強力なカードだが、スタンダード環境であっても1枚打てば十分な場合が多かったこと、使えるフォーマットが現在では少ないため、シングル価格は安め。といっても再録禁止カードなので徐々に値上がりしているのだが…

  • 印刷されたテキストと現在では置換効果で墓地に送られたカードが追放されるようになっている(一度も墓地に送られない)のだが、一時期追放が誘発型能力であるというエラッタが出ていたことがある。
    当時のルールでは問題なかったのだが、第6版でスタックルールが導入されたことで、例えば《暗黒の儀式》を唱える→追放される能力が誘発するのでそれにスタックで墓地に落ちた暗黒の儀式を唱える→以下繰り返し、
    という無限ループが発生してしまう事態となった。黒2マナ出せればたった2枚で無限マナである。
    あまりに簡単に1ターンキルが発生してしまうため元のテキストに修正された。

追記・修正はこのカードを唱えてからお願いします。

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