人類に供す(ミステリー・ゾーン)

登録日:2017/4/16 (日) 16:40:00
更新日:2017/04/17 Mon 00:28:36
所要時間:約 8 分で読めます




「人類に供す」(原題:To serve man)とは、アメリカのオムニバスドラマ「ミステリー・ゾーン」(原題:The Twilight Zone)の一話として、1962年3月2日に放送された作品である。
原作はデーモン・ナイトの短編小説で、こちらもSFファンの間では有名。
ドラマ版も非常に人気のあるエピソードであり、シリーズを代表する作品の一つである。

ぶっちゃけ原題を20秒ほど眺めればオチは読めるが、それでもラストシーンの不気味さは秀逸である。

アシェットの「ミステリー・ゾーンDVDコレクション」では26巻に収録。






以下、ネタバレ注意







あらすじ


物語は男がとある部屋の中で横になっているシーンから始まる。
快適な生活をしているように見え、さらにドアの向こうからは彼の健康を心配してアドバイスする声が頻繁にかかってくるのだが、その男マイケル・チェンバース(演:ロイド・ボクナー)は何故か苛立っている。
マイケルは横になり、なぜこんなことになったのかを回想する。







ある日のこと、地球に突如異星人の円盤が降りてきて、地球人に援助を申し出る。
国連会議の席上で、「高エネルギー変換装置」「安価で豊作になる肥料」「国を守るバリアー発生装置」の3つを無償で提供すると宣言するキャミナッツ星人(演:リチャード・キール)。


そんな上手い話が信用できるかと、諜報機関はキャミナッツ星人を嘘発見器にかけるが、彼らは嘘をついておらず、本心から地球人を援助したいと思っていると判定される(今の視点で見るとかなりシュール)。
そこで、彼らの一人がうっかり忘れていった一冊の本を暗号解読班に回して解読させることにする。


マイケルはその解読チームの一員であり、美人の助手のパティ(演:スーザン・カミングス)と共に解読に取り組む。
しばらくして、タイトルが「To serve man(人類に供す)」であることが判明した。
その時にはすでに地球上からは戦争や病気が無くなり、みんな快適で幸福な生活が出来るようになっていたこともあって、
「本も人類と接する際のマニュアル本みたいなもんだろうし、これ以上心配することは無い」と判断され、解読班は解散される。


やがて多くの地球人がキャミナッツ星に観光や留学で出かけるようになる。
よほど居心地がいいのか、みんな一度行くと帰ってこない。
戦争がなくなったのでマイケルも暇になり、キャミナッツ星行きを志願するが、順番が回ってくるのは当分先だった。
一方、パティは暇つぶしに、本の残りの部分の解読をこっそり続けていた。








やがて、遂にマイケルに順番が回ってくる。
意気揚々と宇宙船のタラップを上るマイケル。
そこに、血相を変えたパティが駆けつけてきて、キャミナッツ星人に阻止されながらマイケルに必死で叫んだ。



「逃げて、あの本は「人類に供す」じゃなかったのよ!! 最初の1ページを解読できたの、"To serve man"、あれは……クッキングブックよ!!



全てを悟ったマイケルだが、「一度乗り込もうとしたら降りられない」というルールらしく、無理やり宇宙船の中に押し込まれ、キャミナッツ星人たちの母星へと成すすべなく運ばれていくのだった。


確かにキャミナッツ星人が地球人に行った行為は純粋な善意によるものだったが、それは畜産業者が家畜を我が子のように愛情込めて育てるのと同じことだったのだ呼んだか?


そしてキャミナッツ星。
マイケルは自分の置かれた状況に絶望し、出された食事を床に叩きつける。
すると、ドアが開いてキャミナッツ星人が入室してくる。マイケルが床に投げた食事を丁寧に拾い上げ、


「マイケルさん、ちゃんと食べなさいね♪ もっと太らないと~」


と、にこやかな笑顔を浮かべながら注文の多い料理店みたいなセリフを残して出ていく。


マイケルは最後に視聴者らに「みんなも、純粋な善意だけで近寄ってくる相手だからって信頼してはいけないよ」と述べ、自暴自棄になったように食事にかぶりつくのであった。





なんとも後味の悪いラストで、それまでのストーリーも起伏とスリルに富んでいて見事な一作である。
一方現代の目から見れば、厳しく健康状態を管理しているのにタバコの持ち込みは許しているキャミナッツ星人のガバガバな管理体制、うっかりクッキングブックを地球に忘れていくお茶目なキャミナッツ星人
誰も「serve」の他の意味に気が付かない諜報部、パティがまずいことを叫ぶのを止めようともしないキャミナッツ星人、
タラップを閉めながら物凄く雑にマイケルを宇宙船に乗せるキャミナッツ星人と物凄く雑に抵抗するマイケルなど、多々ツッコミどころもある。






余談



原作との相違点は以下。

  • 原作では話は時系列順に進み、回想シーンは無い
  • 原作のキャミナッツ星人は地球人より小さな豚のような姿とされているが、ドラマでは頭部が張り出したジャイアント馬場のような容姿
  • マイケルの助手は原作では男だが、ドラマでは美女に。露骨なテコ入れ


タイトルの「To serve man」には、「人類をもてなす」という意味と「人類を食卓に乗せる」という意味があるのがこの話の肝。
さすがに作中の地球人が誰も気が付かないのは不自然な気がするが……
あと、なぜ異星人の言語で英語の同義語による誤解ネタが成立するのかも、よく考えると謎。

小説版は日本では「人類供応法」「人類饗応法」というタイトルで知られている。
こちらは「人類を供応する」と「人類『で』供応する」という2通りの意味に取れるため、原題のトリックを活かしているが、
ドラマ版の「人類に供す」は、片方の意味しか訳出できていない。


本作で特殊メイクでキャミナッツ星人を演じたリチャード・キールはその後、007シリーズのジョーズ役として有名になる。
身長218cm、体重143kgという人間離れした体型を生かして異星人役を好演している。
2014年に死去。


ちなみにアメリカではキャミナッツ星人のアクションフィギュアも発売されている。
誰得だって? このシリーズでは「あるエピソードの主人公のただの弁護士」とか「あるエピソードに登場する飛行機」とかのフィギュアも出ているので、それに比べたらマシなほうだ。


この時代は冷戦を背景として「異星からの侵略」をテーマとした映画やドラマが多く作られた。
「ミステリー・ゾーン」にもやたら異星人や核戦争の話が出てくるが、本作もそのバリエーションである。
なおこの時代の異星人遭遇譚では、異星人が「核を扱うのやめなさい」などと地球人(ほとんどの場合政府の高官などで無く、その辺の農夫や主婦)に説教をかまして帰るパターンが多いが、
地球人より遥かに進んだ文面を持っているくせに地球人の核を怖がるとはおかしな話である。
あるいは彼らは、自分たちの食料が放射線で汚染されたり、風評被害が発生することを恐れていたのかもしれない。
なお、星新一の「牧場都市」もこれとよく似た話(こちらは異星人の外見からしても、小説版「人類供応法」のほうをヒントにしたと思われる)だが、こちらは最後にもう一捻りがある。



ドリームワークスのアニメ映画「マダガスカル」では、このエピソードのパロディが出てくる。
「To Serve Lemurs(キツネザルの食べ方)」という本が登場するのだが、表紙のレイアウトまでそっくり。

また、レスリー・ニールセンの映画「裸の銃を持つ男2 1/2」でもパロられている。
そこでは「To Serve Man」という本を手にした男が「It's a cook book!」と叫びながら逃げ回るというシュールなシーンがあり、本作と組み合わせたMA動画も作られている。






追記・修正はTo Serve Kanamitという本を書き上げてからお願いします。






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