SCP-755-JP

登録日:2017/04/15 Sat 23:26:38
更新日:2022/05/16 Mon 20:51:01
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確保。収容。ナナホシ。



SCP-755-JPとは、シェアード・ワールド『SCP Foundation』に登場するオブジェクトのひとつである。
タイトルは「ナナホシホシテントウ」。JPのコードが示す通り、日本支部生まれである。
オブジェクトクラスは「Neutralized」。
異常性を失ったオブジェクトである。



概要

コイツが何かと言うと、異常な特性を持ったナナホシテントウである。
生態その他は普通のナナホシテントウと同じだが、前羽が青色になっているという特徴がある。
言うまでもないが普通は赤だ。

さて、コイツにどんな特性があるのかと言うと、認識汚染である。
ミーム災害の一種だが、厳密には不明な経路による認識災害に近い。

では、具体的にどんな影響が出るのか?
コイツに曝露した(?)対象は、並行して覚えている三つ以上の事柄の内の一つを「ナナホシ」というワードと置き換えてしまうようになるのだ。
例えば、信号機の色を尋ねられたら、普通は「赤、黄、青(緑)」と答えるだろう。しかしこのテントウムシに曝露してしまうと、例えば「赤、黄、ナナホシ」「赤、ナナホシ、青(緑)」となってしまうのである。
これは曝露者の全ての知覚と認識に影響する。要するに信号機の例えで行くと、「青」が「ナナホシ」になってしまった曝露者は、青い色をしたものに対して「ナナホシ」と認識し、呼称するのだ。
で、これについて「お前、それ認識おかしいぞ」と指摘されると混乱に見舞われるとか。

曝露者同士の会話だと、置き換えられている単語が同じであれば、支障なく意思の疎通ができる。しかしそうでない場合、無視できないレベルの認識の齟齬が発生する。
例えば「東西南北」の概念の中で、「東」がナナホシになっている者同士なら問題なく会話できる。
が、「東」がナナホシになった者と、「南」がナナホシになった者だとまともに会話できない。
相手の言う「ナナホシ」が示す意味、置き換え前の概念を理解できないからである。

で、置き換えられる単語は一度に一つではなく、該当する事柄は全て、いずれか一つずつが置き換えられる。

ちなみにこのテントウムシだが、休暇中のあるエージェントが発見し、仕事に戻ったこのエージェントが曝露していたことが発覚して収容と相成った経緯がある。
当初はEuclidクラスが割り振られていたのだが、実は当時の報告書を書いたスタッフもしっかり曝露してしまっていた。
その一部を抜粋したものがこれ。

SCP-755-JPの異常性への曝露条件が解明されるまで、給餌はナナホシクラス職員に行わせてください。

SCP-755-JP-1へのナナホシクラス記憶処理は異常性の除去に繋がりませんでした。

例えば東西ナナホシ北の4方向の内、東が南に置換されているSCP-755-JP-1同士は正常な会話が可能です。
ですが西が南に置換されたSCP-755-JP-1とナナホシが南に置換されたSCP-755-JP-1の間で行われた会話は方角や世界史の話題において支障を来します。

で、インタビュー記録の抜粋がこちら。

博士:光の三原色を知っているかね?
Dクラス:それぐらいなら分かる。赤、緑、ナナホシだろ?
博士:私の記憶では赤、青、ナナホシだがね……まぁ良いとしようか。

(虹の絵を見せられて)あぁーえっと虹だから、赤、橙、黄、緑、青、紫、ナナホシだっけ?

D-3759に三原色について尋ねた時は青を緑だと主張したが、虹の絵を見せると橙を紫と言い、藍色と言うべきタイミングで紫と言った。何について話しているかによって、ナナホシに置き換えられる単語は変更されるらしい。更なる調査が必要だ。 -██博士

インタビュアーの博士もしっかり曝露してしまっているが、このテントウムシによるミーム汚染、ややこしいことに、話題によって置き換えられる単語が変わってしまうのである。
さらにこれは単なる置換というより「交換」に近い現象である。どういうことかというと、曝露した人間は、並行して覚えている三つ以上の事柄の一つを「ナナホシ」と置き換えてしまう。
「東西南北」で南がナナホシになったのならば「東西ナナホシ北」となる。要するに、こうなると本来「南」というべきところで「ナナホシ」と言って/書いてしまうのだが、逆に「ナナホシ」というべきところで「南」と言って/書いてしまうのである。

このインタビュー記録の場合、曝露してしまった博士は光の三原色「赤、青、緑」では緑がナナホシになり、虹の七色「赤、橙、黄、緑、青、紫、藍色」では紫がナナホシとなっているのだ。まあ、これだと終了報告の部分がどう置き換えても成立しないが*1
Dクラスは三原色の青がナナホシ、虹では藍色がナナホシとなっている。
そして旧報告書の曝露者についての説明も、「南」がナナホシになった結果、あんなわけのわからない表記になっていたのである。

その危険度を示す追記がこれ。

20██/ナナホシ/█、おそらくサイト-ナナホシの殆どが汚染された。SCP-755-JP-1-nの指定作業なんてしている暇はない。私の知人はすべて話が通じなくなってしまったし、私が普段関わらない職員の中に正常な人間が残って居るかすら怪しい。
部屋番号102だとか方角は南だとか言われても分からないし、Euclidなんていうふざけたオブジェクトクラスが作り上げられている。この報告書も酷い有様だったので、混乱を避けるために全ての範囲の単語とその順番を訂正して編集権限をロックした。完全に復旧出来た訳ではないが随分マシになったはずだ。
感染媒体が分からないからといって他サイトへの救援要請を渋っている場合では無い。このままSCP-755-JPの効力が世界を覆えばナナホシK-クラス文明崩壊シナリオを招くだろう。絶対にそれを許してはならない。
確保。収容。ナナホシ。

エージェント自身もしっかり曝露していますありがとうございました。
ちなみにこのエージェントの場合、「サイトのナンバー」「12ヶ月のいずれか」「部屋番号の102」「方角の南」「オブジェクトクラスのEuclid」「K-クラスシナリオのC」「財団理念の『ナナホシ』」がそれぞれ置き換わってしまっている。

だが結局、このK-クラスシナリオは起こらなかった。
この旧報告書が書かれている時点では汚染の拡大が止まる保証がなく、現在進行形でサイトが汚染されていたため、このままでは……とエージェントの一人が危惧を抱いていたのだが、杞憂に終わった。

2000年代のある時、収容されていたSCP-755-JPの全個体が、収容室で餓死しているのが発見された。
原因は給餌が途切れたことだったが、これに伴い曝露者のミーム汚染が消失したことが確認。
結局、曝露する条件は解明されないままだったが、このテントウムシの死が異常性の喪失につながったと考えられている。

その後、初めて確認された地域で大規模な捜索を行ったものの、新しい個体は発見されず、この報告を以てオブジェクトクラスがNeutralizedに変更された。


以上が、SCP-755-JPに関する全てである。



余談

このオブジェクトは初めに述べた通り、Neutralized認定されている。
だが、元記事のページの上、サイトのロゴの部分をよーく見ると……。


追記・修正は財団の理念を正しく唱えてからお願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-755-JP - ナナホシホシテントウ
by DocRone
http://ja.scp-wiki.net/scp-755-jp

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最終更新:2022年05月16日 20:51

*1 me_te_de_ko氏曰く、元の報告書の部分は意図的に表現を混乱させているらしく、ご自身でも矛盾の全ては修正できていないという